北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(3) ~選手個別雑感その1~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(4) ~選手個別雑感その2~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(5) ~選手個別雑感その3~
GK&DFの選手編。感じたことのメモ。
2020年1月24日金曜日
2020年1月17日金曜日
2020年1月12日日曜日
2020年1月7日火曜日
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(3) ~選手個別雑感その1~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~
前目の選手編。感じたことのメモ。
公式戦で目にする機会がない(少ない)選手は割愛。
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~
前目の選手編。感じたことのメモ。
公式戦で目にする機会がない(少ない)選手は割愛。
2019年12月31日火曜日
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~
4.中盤戦の苦境と収穫
4.1 二足の草鞋と倍増する責任
シーズン序盤、後方のポジションにはキム ミンテが欠かせないと判明した(確認された)頃に、開幕直後からのアンデルソンロペスの爆発が終焉する気配を見せる。
第2節、アウェイでの浦和戦では武蔵、ロペスの2トップを後方でチャナティップ、荒野らが支援する速攻重視の布陣採用が的中したが、基本的には武蔵、ロペスとも前線にスペースがある状況で威力を発揮するプレイヤー。(1)で書いたように、敵陣で時間をかけてプレーする(≒味方も相手も枚数が揃ってしまい、スペースがなくなる)ミシャチームとの相性はあまりよくない。これは岩崎も同様だ。それでも彼らの潜在能力や伸びしろに期待して獲得、起用されているのもあるし、もしくは「速攻ができないサッカーなんて怖くない」。武蔵やロペスのような選手は必ずピッチ上に1人置きたいのもある。
4月最後の試合、第9節の磐田戦でロペスが負傷し、最低1ヶ月の離脱を余儀なくされる。ジェイはその前、3月から離脱し復帰が長引いていたところ。特に前線のターゲットとして攻撃の起点を作れるジェイ不在期間が長引くことで、札幌の前線で唯一、狭いスペースでプレーできるチャナティップへの負担は増大する。
札幌が自陣でボールを保持している局面。相手が完全に引いた状態なら難なく敵陣に侵入し、ボールと人を送り込むことができるが、問題は相手が前線から迎え撃つ場合。「後ろの誰か」が前線にボールを届ける役割を担う必要があるが、この役割は殆どチャナティップに依存していた。
チャナティップは密集地帯でボールを受けて保持する役割を単独で担える。そして相手を剥がすこともできるし、前線の選手(中央/サイドを問わない)に展開する能力も持ち合わせる。ミシャは右シャドーのアンデルソンロペスにも、幾分かはチャナティップの仕事を分散させることを期待していたと思うが、そのロペスが離脱し、荒野やルーカスがシャドーに起用される状況が続くと、札幌は殆どチャナティップを経由しないと形が作れない状況に徐々に陥る。
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チャナティップが毎回ビルドアップ部隊に加わる |
キープレイヤーを取り巻く状況は徐々に厳しくなる。相手の警戒に加え、1月にタイ代表としてAFCアジアカップに参加するなど、チームで最も厳しいスケジュールが組まれていた。ただ、シーズンを通じた得点数の減少(2018:8点→2019:4点)の要因は、やはり右シャドーの選手との役割分担にあり、三好のようなタイプの選手が反対サイドにいれば、チャナティップが常に中盤に下がってビルドアップを助けることにはならなかった(≒もっと前線に顔を出すことができた)と見ていいだろう。
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下がって受けるチャナティップをどのチームも包囲する |
4.2 苦境での知恵
追い詰められた時に頑張ったり、知恵が生まれたりする場合がある。鈴木武蔵の右シャドーは必ずしもファーストチョイスではなかったが、6月以降に定着した。
初採用は6月のアウェイ川崎戦。病み上がりながらジェイ、アンロペ、武蔵、チャナティップと揃ったゲームで、アンロペをベンチスタートとし武蔵を右シャドーに起用したこのゲームでは、押し込まれることを覚悟のうえで、川崎の最終ラインの背後を武蔵のスピードで強襲するための限定的なシフトだと思っていたが、その後の試合でも継続的に採用される。クラブが初めてタイトルに手をかけたルヴァンカップ決勝でもこのセットだった。
見ていると、アンロペよりは余程シャドーのプレーを理解し実践できている武蔵。本来FWの武蔵がシャドーに入ると、前線に張り付くだけでなく中央に落ちたポジションを取る。武蔵とチャナティップに対し相手が2枚付けは、(相手が5バックだと仮定して)中央3枚のDFのうち2枚が動いてスペースができるので、シャドーのポジションからスタートする選手がチャナティップに加えてもう1枚いることは重要だ。
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武蔵シャドー起用で前線の受け手を分散 |
4.3 白井の台頭
シャドーが両方右利き(≒相手を背負って左回りにターンしやすい)で、左には福森がいる。必然と攻撃サイドは右サイドに偏る構成で、白井はこの恩恵を存分に受ける。もしかしたら、人生で初めてウイングバックというポジションを経験したかもしれないルーカスが徐々にコンディションを落とす反面、右で固定された白井が夏場以降に存在感を強める。
福森のサイドチェンジ、チャナティップの反転からの右サイドへの展開は2018シーズンから持っていたオプション。これに、武蔵を経由するパターンも形になり、「右シャドー問題」は解決を見る。
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右に集中しやすい設計なので白井の好調は大きかった |
そして充実の白井は、「相手の枚数が揃った状態」からでも仕掛けて勝てる。繰り返すが遅攻主体のミシャチームにとって、1on1で勝てるサイドアタッカーは不可欠だ。但し左サイドの菅にはそこまでの役割は求められない。なぜなら、菅の斜め後ろにはJリーグ最高の左足を持つ男がいるからだ。
5.失速の背景
9月以降の公式戦14試合は4勝3分け7敗、特にリーグ戦では、2勝1分6敗と数字だけを見ると尻すぼみ気味にシーズンが終わった。
ルヴァンカップの決勝が典型だったが、スペースを与えてくれる相手と対峙した時は、札幌が望む試合展開に持ち込める。逆に、スペースを簡単に与えてくれないチームをどう攻略するか、という点が課題として残った。
リーグMVPを受賞した横浜F・マリノスの仲川輝人選手は典型だと思うが、基本的に大半のアタッカーはスペースがあって輝く。日本代表では[1-3-4-2-1]のシャドーで起用されていたが、シャドーとして最初から前線中央で張ると中川の良さは活きない。仲川はスピードに乗った状態で、スペースに突っ込んでいくことで活きる選手だからだ。
札幌にも似たタイプの選手が数人いるが、それらの選手がスペースを享受できている展開だと”札幌らしさ”が現れる。ルヴァンカップの先制点は、①札幌のGKの際に川崎が前線高い位置から守備を敢行したので中央にスペースができる、
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(10/26ルヴァンカップ決勝)序盤は高い位置から守備を開始する川崎 |
②スペースを使ってチャナティップが川崎のMFを引きつける→引き付けたことで、ゴール前に枚数を確保させる状況を作らせなかったことで白井や菅の能力が発揮されたことで生まれた。
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(10/26ルヴァンカップ決勝)川崎が前から来たことで生じたスペースを使って前線に展開 |
この試合、川崎が途中から前線守備の強度を下げてコンパクトなブロックを作る。すると札幌の前線にはスペースがなくなり、チャナティップ以外の選手は殆どボールを持てなくなる。そのチャナティップにも中盤の選手がマンマークで監視すると脅威は半減する。
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(10/26ルヴァンカップ決勝)川崎がブロックをセットすると使えるスペースがなくなり放り込むだけに |
ルヴァンカップ決勝に限らず、リーグ戦の終盤はこのパターンが非常に多かった。札幌の”いい攻撃”は自陣ゴールキックからのものが多かったが、これはゴールキックの際に札幌のク ソンユン&キム ミンテ&深井のユニットを狙うために、相手の2トップないし前線3人で圧力をかけようとするチームが多かったためだ。ここを剥がせれば相手の1列目を無力化して、前線にスペースを作りやすい。
反対に、この展開につきあってくれないチーム相手だと厳しくなる。ゴールキックという、”セットされたプレー”以外の完成度はあまり高くなかった、というのがげん
6.2020シーズンの展望
前提として、この記事を書いている時点では、岩崎悠人の湘南ベルマーレへの期限付き移籍が決定。選手の入り…補強はなさそうで、大幅なメンバーの入れ替えはない。岩崎のアウトを考慮しても、前線は比較的、選手を多く抱えているのでフロントも緊急性は感じていないだろう。
東京オリンピック・パラリンピックが開催され、札幌ドームがサッカー会場として使用される2020シーズンは、ロシアワールドカップが開催された2018シーズン同様に特殊な日程で、短期決戦×2のようなシーズンになることが予想される。チームとして仕上がりが早いことは重要だし、ACLに出場しているチームは特に過酷なシーズンになるだろう。リーグチャンピオンの横浜F・マリノスや3位の鹿島アントラーズが積極的に動いているが、例年以上に選手層を厚くしたいとの思惑が感じられる。
札幌はメンバーが大きく変わらず、仕上がりが早そうなことはプラス。チームとしての課題は、本記事でも触れたように、スペースを簡単に与えてくれないチームの攻略。やり方が大きく変わらないとすると、期待する選手は、
①右シャドーでの起用が想定される金子:FC東京に入団した紺野選手(法政大学)の獲得に動いていたほか、元オランダ代表のロッベンへの”ガチオファー”等、ミシャ就任時から「とにかく右シャドーに左利きで剥がせる選手が欲しい」という意向が透けて見える。アンロペはやはり潜在能力はあるが、何らかの”仕掛け”がないと札幌でも能力が眠ったままになってしまうかもしれない。金子は競争相手として十分だし、アンロペや武蔵を差し置いて右シャドーに定着する可能性は十分にある。
チャナティップ&金子のユニットがシャドーで計算できるなら、前線はそのスペースを使える機動性に長けた武蔵の起用になる(いずれにせよ日本代表がベンチに座ることは考えにくいが)。前線に空中戦で勝てる選手を置かないことは、ここ数シーズンの成功体験から考えるとリスクもあるが、本来志向するスタイルに近づくならそうした転換も必要だ。
②中盤センターor最終ラインのテコ入れ:「相手を引き付けてスペースを作る」仕事をチャナティップに依存しきっているのが現状。遅攻の成立にはDFやGKにもこの仕事を担わせることが不可欠だが、札幌はアンタッチャブルな選手が後方に複数いることがボトルネックになる。福森のロングキックは捨てがたいし、ク ソンユンのシュートストップ能力も同様だ。進藤がベンチに座ることも考えにくい。
となると、2020シーズンもミンテが割を食うことになるのか。リーグ戦終盤を見る限り、CB宮澤は諦めていなさそうだが、宮澤も”引き付けられるDF”かというと微妙なところ。ここでも新人の田中が競争に割って入ってきそうな予感は十分にある。
そして中盤は駒井の本格復帰が期待される。現状はオープン、ダイレクトな展開なら運動能力に長ける荒野、よりポジショナルな展開なら駒井。荒野はこの点の”伸びしろ”を、そろそろ回収していきたい。
本格的なてこ入れは、ソンユン&ミンテの兵役問題がクリアになってからが現実的か。
※2019シーズン選手短評編に(たぶん)続く。
2019年12月29日日曜日
北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~
1.2018シーズンの冒険の書と、2019シーズンの位置づけ
時計の針と記憶を今から1年前に巻き戻す。
「チーム分析のフレームワーク」に基づく北海道コンサドーレ札幌の2018シーズン振り返り(前編)https://t.co/j1ZBt9d63f— アジアンベコム (@british_yakan) January 4, 2019
「チーム分析のフレームワーク」に基づく北海道コンサドーレ札幌の2018シーズン振り返り(後編)https://t.co/nai0rTp5qA— アジアンベコム (@british_yakan) January 7, 2019
1.1 ミシャの「本物」の証明
2018シーズンのコンサドーレについて端的に振り返ると、新監督ミシャの最大の功績は、札幌におけるサッカーやJ1リーグに対する既成概念をぶっ壊したことにある。コンサドーレはお金がない。他チームよりも戦力で劣る。だからボールを保持するサッカーは無理、というのが北海道におけるそれまでの通説だった。
優秀なマネージャーは2ヶ月もあれば、そのチームコンセプトを浸透させることが可能だと言われる。2018年2~3月頃の開幕数試合は移行期間として、3月後半の国際Aマッチウィークによる中断期間を経たチームは明らかに「ミシャのチーム」に変貌していた。2017年7月に札幌に加入したジェイ ボスロイドは、事あるごとに「勝者のメンタリティ」の重要性を説き続けたが、ジェイの神がかり的な決定力をもってしても、チームのメンタリティやクラブステータスの向上はともかく、「札幌のフットボールの構造」を根本的に変えることはできなかった。
野々村芳和社長も指摘する通り、ミシャが来てからチーム内外を取り巻く「サッカーに対する目線」は劇的に変わっている。数年前までは、J1とは失点を少しでも少なくするようにゴール前に引きこもって、それでもボコボコにされて試合後のビールが唯一の楽しみのような存在だったのだ。今求められているのはビールよりもゴールだ。
もっとも、2018シーズンに何もかも達成できたわけではない。ターニングポイントは、9月上旬の北海道胆振東部地震の発生と、その直後に迎えたアウェイの川崎フロンターレ戦。札幌の中途半端なボール保持は川崎のハイプレスの餌食となり、衝撃的な7失点を喫した。
この試合までの札幌はミシャが長く採用してきた、[1-4-1-5]…アンカーポジションに選手を1人置き、ボールを動かすスタイル。
これが川崎戦後は、
アンカーの選手も最終ラインに落とした[1-5-0-5]。完全に前後に選手を分けて運用するスタイルに変わる。札幌の中央には稀代の才能、チャナティップがいるが、チャナティップ以外は中央に殆ど選手を置かなくなり、トップの選手へのロングパスで攻撃を組み立てる比率が高まる。
後方では、最終ラインにコンバートされて1年目のキム ミンテが信用を失い、中央には宮澤、中盤センターは深井と、ミシャが好む駒井、下部組織出身で期待の高い荒野のいずれかの起用が増えることとなる。
一見すると、宮澤、深井、荒野という北海道出身のMF3人を並べたこの布陣は、いかにも「パスを繋ぎますよ」というメッセージに見える。が、試合では相手がいる。単に「うまい」だけではボールは回らない。必要なのは適切なポジショニングだ。中盤のポジションを放棄したこの形は、事実上、短いパスによる攻撃の組み立てを放棄した、ミシャにとっては”妥協の産物”だった(但し、駒井はどのポジションで出てもビルドアップの出口を作ってチームを助けていた)。
10月の横浜F・マリノス戦、ソンユンがボールを保持した時の、ミシャの(久々に出番を得た)ミンテへの要求は鬼気迫るものだった。「GKが持ったらすぐに開いてサポートしろ」…この指示を実践できないミンテを見て、次のシーズンもかなり難しくなるだろうと感じたところだった。
最終的には最終戦でサンフレッチェ広島に勝ちきれず、夢のACL出場を逃したシーズン。結果だけ見ると望外のところまで到達したが、チームとしては上記のような積み残しを含んだ状態でオフに突入した。
ピッチ外の要素も含んだ話になる。野々村社長が常々言っているのは、
移籍マーケットでの動きを見てもこの考え方は明白だ。
リーグ最低クラスの強化費でありながら四方田監督(当時)に、「石にかじりついてでも残留してくれ」と(理解できるものの)無理難題を押しつけた2017シーズンに迎え入れた選手は、32歳(2017シーズン開幕当時、以下同じ)の早坂良太、28歳の金園英学、32歳の兵藤慎剛、28歳の田中雄大といったキャリアのピーク前後であり即戦力級の選手。(失礼を承知で)言ってみれば、「札幌加入以降は選手としての資産価値が下がる」選手だ。
これに対し、2019シーズンに向けて2018シーズンオフに札幌が獲得した選手は、オフの早い段階から報道が出ていたアンデルソン ロペス、鈴木武蔵、中野嘉大、ルーカス フェルナンデス、岩崎悠人。いずれも25歳以下で、一般的には選手としては2~3年後にピークを迎える選手に違約金を支払った上で獲得している。サポーターからの人気も高かった三好康児(市場価格1億円前後にはなっただろう)の完全移籍での獲得を狙ったり、FC東京のDF小川諒也の獲得を企図したりと、噂のあった選手も同様だ。
「アンデルソンロペスが2019シーズンからの3年契約」、「ミシャとは2018シーズンからの4年契約」(実際の契約年数は異なるにしても、それくらいのスパンでチームを作ってほしい、的な話は合ったのだと思う)…これらの情報も、2021シーズンに照準を定める(少なくともアンロペを2021までは保有し、仮に資産価値が上がって引き抜かれれば、違約金をゲットできるリスクヘッジ)とする全体戦略と一致する。
よりミクロな、ピッチ内での事情に目を向けると、2018シーズンのオフにミシャがリクエストしたのは、恐らく①(三好康児に代わる)左利きの右シャドー、②突破力のある右ウイングバック。この2つのポジションには外国人枠を割き、それぞれアンデルソン ロペス、ルーカス フェルナンデスの2人を充てることが早い段階から決まっていたようだった。
この2つのポジションが重要なのは何度か書いたつもりだが改めて。
右シャドーについてだが、ミシャチームでは高い位置を取るウイングバックが関与する、ピッチの横幅を目いっぱいに使った攻撃が生命線だ。ピッチの横幅を使うためには、横68メートルの間でボールを動かすことが必要になる(この点で、福森晃斗を擁している札幌は、サンフレッチェ広島や浦和レッズと比べても非常に恵まれた状況でもある)。
左の福森に加え、左シャドーのチャナティップから右サイドへのサイドチェンジは札幌の得意のパターン。”左利きの右シャドー”は、この攻撃の逆バージョンの充実のために必要だ。そのためには(都倉のような)ゴール前でプレーする選手ではなく、中盤でボールを受けて反対サイドを向く能力がある左利きの選手を右シャドーに置きたい、というのが現場サイドのリクエストだったと思う。
結果、獲得されたのはアンデルソン ロペス。タイプ的には三好よりも都倉に近いが、年齢的にも若く、ボールコントロールに長ける選手なので、個人戦術、グループ戦術を叩き込めばチームにとってアップグレードになるとの考えだっただろう。
右WBについて。
ミシャチームは相手を敵陣に押し込んだ状態で戦うことを志向している。「福森が攻撃参加して進藤がクロスを上げた!」などと象徴的に語られることがあったが、これができるのは相手を全員敵陣に押し込んでおり、カウンターを食らう余地が殆どないためだ(加えて、深井と宮澤が背後を守っているから)。
反面、「敵陣に相手を押し込む」状況になると、相手ゴール前のスペースがなくなり攻め崩しにくくなる。ゴール前にスペースがあったほうが崩しやすいのは明白だし、スペースを作る動き(スペーシング)が重要なのは言うまでもない。ゴール前の見方の人数が多ければいい、というものでもない。
となるとスペースを消され(というか、こちら側から消し)、かつマークにつかれても勝負して勝てる選手が必要で、それは局面の人数に関係なく1on1の関係を作りやすいサイドだと効果的だ。左サイドは北海道出身の菅がいる。右サイドは、2018シーズンは駒井がいたが、駒井は中央の選手としてミシャが評価している。代わって早坂の起用が2018シーズン途中から増えていたが、早坂は狭いスペースでプレーできるタイプではないので、野々村社長の言うところの”クオリティのある選手”…フルミネンセで主力としてプレーしていたルーカスなら十分だろうとのことで、完全移籍で選手を買うとの方針を曲げてまで、期限付き移籍で迎え入れることとなった。
この2ポジションの補強が優先で、岩崎は恐らくポスト・チャナティップも見据えた動き。武蔵は都倉の退団に伴う前線の即戦力であり、”資産になる選手”として理想的な人材だった。中野は、やや飽和気味のサイドアタッカーだが、これも”資産になる選手”であり、ベガルタ仙台のキープレイヤーとして計算できる選手だ。
一方でCBの補強はなし。CBの勘定は、「宮澤を計算に入れられるか」によって大きく異なってくる。この段階では、十分に数に入れられると思っての編成だったのだろうが。
湘南ベルマーレ相手に0-2で敗れた開幕戦だったが、”何がしたいのか”は明白だった(今振り返ると)。
札幌はこの試合、後半の運動量が落ちる時間帯に、湘南お得意の走力を活かした攻撃で福森の背後を突かれて失点している。湘南がどんなチームで何をしてくるかは明白で、また福森の背後がウィークポイントであることはこの時点でわかり切っている。それでもリスク覚悟で札幌がトライしていたのは、極限まで後方の人数を削って相手と同数で守ることに他ならない。
湘南は1-5-4-1⇔1-5-2-3で守るチーム。札幌のボール保持時、湘南の選手が撤退すると、湘南は最前線にFW1人しかいなくなる。この時に、相手が1人しかいないなら、そこに3人も4人もDFを残しておく必要がないじゃん、むしろDFをたくさん残した方が必要な場所に選手がいなくてリスクじゃん、というのがミシャの考え方で、押し込んだ時は湘南の1トップ相手に札幌はCB中央の宮澤しか残していない状態で戦っていた。
サッカーは11人vs11人の戦いであると同時に、ピッチ上のスペースを奪い合う戦いでもある。人だけを見ているとスペースでの主導権を握れなくなる。この場合は、宮澤の左右のスペース…本来そこにDFの選手を置いているスペースだ。ここはGK…クソンユンがカバーすることになっていて、ソンユンはそのために、ボール保持時は常に高いポジションを取り続ける。GKにとってゴール以外のスペースにも責任を負うことは、ミスが許されない仕事において小さくない負担だ。そこまでして、ミシャは最大限の人数を敵陣に送り込むような戦いをしたかったことになる。
開幕前に起こった事件として、駒井の膝の負傷による長期離脱(後に再発し、フルシーズンアウト)が挙げられる。コンディションが万全ならば、駒井は「どこかのポジション」で必ずスタメンに入ってくる選手。右シャドー、右ウイングに外国人選手を補強したなら、残るポジションは中盤センターだ。深井とのコンビが想定されていたと思うが、駒井の離脱によって荒野が初の開幕スタメンに抜擢された。
荒野は開幕2試合で期待に応え、攻守ともに圧巻のパフォーマンスを見せる。北海道で、[身長が180センチある、プロのスポーツ選手になれるくらいの運動能力やメンタリティがある、サッカー選手になれるだけの基礎的なボールコントロールがある]この条件を満たした子どもが野球やバスケではなくサッカーを選択し、かつ中学時代にグレない、そんな奇跡が重なって荒野のような選手が生まれる。荒野にあって宮澤や福森、もしかすると深井にもないものは身体を俊敏に動かす能力で、特に広大なスペースがある状況では、そのスペースをカバーできるスピードはチームに不可欠だ。いつかはボールを失うのだから、ボールを奪回する装備は備わっていなくてはならない。
ミシャが掲げ、理想とするサッカーは開幕6戦で行き詰まりを見せる。第4節の鹿島、第5節の名古屋、第6節の大分との3連戦で3連敗を喫するが、特に大分戦では問題の、「福森の背後、宮澤の左側」のスペースを執拗に突かれて敗れている。荒野の活躍と、2~4月までのリーグ戦9試合で7ゴール2アシストを記録した、アンデルソン ロペスの爆発によってごまかされいたが、宮澤が守れる守備範囲は決して広いとは言えない。
だから守れる保証がないなら、本来は福森の背後を簡単に使われてはいけない。四方田ヘッドコーチは福森(だけでなく右の菊地直哉も)を定位置から動かさないことによって、この問題を解決してきたが、ミシャはそうしたアプローチをとらない。
荒野の負傷もあって宮澤が中盤センターに戻り、干されていたキム ミンテに白羽の矢が立ったのが第7節のセレッソ大阪戦。ロティーナセレッソは所謂「場を整えながら戦うチーム」なので、福森の背後にスペースがあってもすぐには使ってこない。そのためこの試合では、ミンテの特徴は、セレッソのFWとの空中戦によって発揮される。
が、ミンテの真骨頂は、本人がプロフィールに「自分の武器:意外に速い」と書く通りの、その運動能力によって後方のスペースをカバーできることにある。でかくて速い=無理がきく。ミシャのチームには無理がきくDFが不可欠だ。ミンテがカップ戦要員からスタメンに返り咲き、戦績は好転する。第6節までは2勝4敗。第7節から折り返しの第17節までは11試合で6勝3分け2敗。
よく、本来のポジションから逸脱してプレーする選手を「偽のサイドバック(Falso Lateral)」などという。ミシャのチームでは、中盤センターの選手などが本来のポジションから離れてプレーすることが多い。だからミシャの選手起用は他の監督とは一味違う。
が、CB中央の選手はごまかしがきかない。ゴール前は戦場だ。戦える選手が求められる。それに気づくのにリーグ戦6試合を要したことは、リーグチャンピオンを狙うチームとしては痛すぎるが、札幌は現実的にはそこまでにはない。6試合の授業料は、ルヴァンカップによって活かされることになる。
※(2)へ続く
優秀なマネージャーは2ヶ月もあれば、そのチームコンセプトを浸透させることが可能だと言われる。2018年2~3月頃の開幕数試合は移行期間として、3月後半の国際Aマッチウィークによる中断期間を経たチームは明らかに「ミシャのチーム」に変貌していた。2017年7月に札幌に加入したジェイ ボスロイドは、事あるごとに「勝者のメンタリティ」の重要性を説き続けたが、ジェイの神がかり的な決定力をもってしても、チームのメンタリティやクラブステータスの向上はともかく、「札幌のフットボールの構造」を根本的に変えることはできなかった。
野々村芳和社長も指摘する通り、ミシャが来てからチーム内外を取り巻く「サッカーに対する目線」は劇的に変わっている。数年前までは、J1とは失点を少しでも少なくするようにゴール前に引きこもって、それでもボコボコにされて試合後のビールが唯一の楽しみのような存在だったのだ。今求められているのはビールよりもゴールだ。
1.2 2018シーズンの冒険の書
もっとも、2018シーズンに何もかも達成できたわけではない。ターニングポイントは、9月上旬の北海道胆振東部地震の発生と、その直後に迎えたアウェイの川崎フロンターレ戦。札幌の中途半端なボール保持は川崎のハイプレスの餌食となり、衝撃的な7失点を喫した。
この試合までの札幌はミシャが長く採用してきた、[1-4-1-5]…アンカーポジションに選手を1人置き、ボールを動かすスタイル。
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[1-4-1-5] |
これが川崎戦後は、
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(2018シーズン第28節鳥栖戦)CB中央に宮澤を起用しての[1-5-0-5] |
アンカーの選手も最終ラインに落とした[1-5-0-5]。完全に前後に選手を分けて運用するスタイルに変わる。札幌の中央には稀代の才能、チャナティップがいるが、チャナティップ以外は中央に殆ど選手を置かなくなり、トップの選手へのロングパスで攻撃を組み立てる比率が高まる。
後方では、最終ラインにコンバートされて1年目のキム ミンテが信用を失い、中央には宮澤、中盤センターは深井と、ミシャが好む駒井、下部組織出身で期待の高い荒野のいずれかの起用が増えることとなる。
一見すると、宮澤、深井、荒野という北海道出身のMF3人を並べたこの布陣は、いかにも「パスを繋ぎますよ」というメッセージに見える。が、試合では相手がいる。単に「うまい」だけではボールは回らない。必要なのは適切なポジショニングだ。中盤のポジションを放棄したこの形は、事実上、短いパスによる攻撃の組み立てを放棄した、ミシャにとっては”妥協の産物”だった(但し、駒井はどのポジションで出てもビルドアップの出口を作ってチームを助けていた)。
10月の横浜F・マリノス戦、ソンユンがボールを保持した時の、ミシャの(久々に出番を得た)ミンテへの要求は鬼気迫るものだった。「GKが持ったらすぐに開いてサポートしろ」…この指示を実践できないミンテを見て、次のシーズンもかなり難しくなるだろうと感じたところだった。
最終的には最終戦でサンフレッチェ広島に勝ちきれず、夢のACL出場を逃したシーズン。結果だけ見ると望外のところまで到達したが、チームとしては上記のような積み残しを含んだ状態でオフに突入した。
2.コンサドーレの2019シーズンはどのような位置づけだったか?
2.1 見据えるシーズン
ピッチ外の要素も含んだ話になる。野々村社長が常々言っているのは、
昨季は札幌ドームの芝の張り替え、今季はラグビーW杯、20年は東京五輪が控えており、札幌ドームがフルで使用できる21年の飛躍を見据え、チーム人件費などの先行投資を図ってきた。野々村芳和社長(46)は「投資の3年間という位置づけ。21年に今の投資が生きる」と語った。
移籍マーケットでの動きを見てもこの考え方は明白だ。
リーグ最低クラスの強化費でありながら四方田監督(当時)に、「石にかじりついてでも残留してくれ」と(理解できるものの)無理難題を押しつけた2017シーズンに迎え入れた選手は、32歳(2017シーズン開幕当時、以下同じ)の早坂良太、28歳の金園英学、32歳の兵藤慎剛、28歳の田中雄大といったキャリアのピーク前後であり即戦力級の選手。(失礼を承知で)言ってみれば、「札幌加入以降は選手としての資産価値が下がる」選手だ。
これに対し、2019シーズンに向けて2018シーズンオフに札幌が獲得した選手は、オフの早い段階から報道が出ていたアンデルソン ロペス、鈴木武蔵、中野嘉大、ルーカス フェルナンデス、岩崎悠人。いずれも25歳以下で、一般的には選手としては2~3年後にピークを迎える選手に違約金を支払った上で獲得している。サポーターからの人気も高かった三好康児(市場価格1億円前後にはなっただろう)の完全移籍での獲得を狙ったり、FC東京のDF小川諒也の獲得を企図したりと、噂のあった選手も同様だ。
「アンデルソンロペスが2019シーズンからの3年契約」、「ミシャとは2018シーズンからの4年契約」(実際の契約年数は異なるにしても、それくらいのスパンでチームを作ってほしい、的な話は合ったのだと思う)…これらの情報も、2021シーズンに照準を定める(少なくともアンロペを2021までは保有し、仮に資産価値が上がって引き抜かれれば、違約金をゲットできるリスクヘッジ)とする全体戦略と一致する。
2.2 欠けているパーツの補充
よりミクロな、ピッチ内での事情に目を向けると、2018シーズンのオフにミシャがリクエストしたのは、恐らく①(三好康児に代わる)左利きの右シャドー、②突破力のある右ウイングバック。この2つのポジションには外国人枠を割き、それぞれアンデルソン ロペス、ルーカス フェルナンデスの2人を充てることが早い段階から決まっていたようだった。
この2つのポジションが重要なのは何度か書いたつもりだが改めて。
右シャドーについてだが、ミシャチームでは高い位置を取るウイングバックが関与する、ピッチの横幅を目いっぱいに使った攻撃が生命線だ。ピッチの横幅を使うためには、横68メートルの間でボールを動かすことが必要になる(この点で、福森晃斗を擁している札幌は、サンフレッチェ広島や浦和レッズと比べても非常に恵まれた状況でもある)。
左の福森に加え、左シャドーのチャナティップから右サイドへのサイドチェンジは札幌の得意のパターン。”左利きの右シャドー”は、この攻撃の逆バージョンの充実のために必要だ。そのためには(都倉のような)ゴール前でプレーする選手ではなく、中盤でボールを受けて反対サイドを向く能力がある左利きの選手を右シャドーに置きたい、というのが現場サイドのリクエストだったと思う。
結果、獲得されたのはアンデルソン ロペス。タイプ的には三好よりも都倉に近いが、年齢的にも若く、ボールコントロールに長ける選手なので、個人戦術、グループ戦術を叩き込めばチームにとってアップグレードになるとの考えだっただろう。
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(左利きの右シャドーの優位性)背負って受けてから最短距離のターンで左サイドに展開できる |
右WBについて。
ミシャチームは相手を敵陣に押し込んだ状態で戦うことを志向している。「福森が攻撃参加して進藤がクロスを上げた!」などと象徴的に語られることがあったが、これができるのは相手を全員敵陣に押し込んでおり、カウンターを食らう余地が殆どないためだ(加えて、深井と宮澤が背後を守っているから)。
反面、「敵陣に相手を押し込む」状況になると、相手ゴール前のスペースがなくなり攻め崩しにくくなる。ゴール前にスペースがあったほうが崩しやすいのは明白だし、スペースを作る動き(スペーシング)が重要なのは言うまでもない。ゴール前の見方の人数が多ければいい、というものでもない。
となるとスペースを消され(というか、こちら側から消し)、かつマークにつかれても勝負して勝てる選手が必要で、それは局面の人数に関係なく1on1の関係を作りやすいサイドだと効果的だ。左サイドは北海道出身の菅がいる。右サイドは、2018シーズンは駒井がいたが、駒井は中央の選手としてミシャが評価している。代わって早坂の起用が2018シーズン途中から増えていたが、早坂は狭いスペースでプレーできるタイプではないので、野々村社長の言うところの”クオリティのある選手”…フルミネンセで主力としてプレーしていたルーカスなら十分だろうとのことで、完全移籍で選手を買うとの方針を曲げてまで、期限付き移籍で迎え入れることとなった。
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(すごい右WBの必要性)ミシャチームは相手を押し込んでから攻撃するので「1人抜ける」選手が欲しい |
この2ポジションの補強が優先で、岩崎は恐らくポスト・チャナティップも見据えた動き。武蔵は都倉の退団に伴う前線の即戦力であり、”資産になる選手”として理想的な人材だった。中野は、やや飽和気味のサイドアタッカーだが、これも”資産になる選手”であり、ベガルタ仙台のキープレイヤーとして計算できる選手だ。
一方でCBの補強はなし。CBの勘定は、「宮澤を計算に入れられるか」によって大きく異なってくる。この段階では、十分に数に入れられると思っての編成だったのだろうが。
3.”要”は偽れない
3.1 開幕戦で見えた2019モード
湘南ベルマーレ相手に0-2で敗れた開幕戦だったが、”何がしたいのか”は明白だった(今振り返ると)。
札幌はこの試合、後半の運動量が落ちる時間帯に、湘南お得意の走力を活かした攻撃で福森の背後を突かれて失点している。湘南がどんなチームで何をしてくるかは明白で、また福森の背後がウィークポイントであることはこの時点でわかり切っている。それでもリスク覚悟で札幌がトライしていたのは、極限まで後方の人数を削って相手と同数で守ることに他ならない。
湘南は1-5-4-1⇔1-5-2-3で守るチーム。札幌のボール保持時、湘南の選手が撤退すると、湘南は最前線にFW1人しかいなくなる。この時に、相手が1人しかいないなら、そこに3人も4人もDFを残しておく必要がないじゃん、むしろDFをたくさん残した方が必要な場所に選手がいなくてリスクじゃん、というのがミシャの考え方で、押し込んだ時は湘南の1トップ相手に札幌はCB中央の宮澤しか残していない状態で戦っていた。
サッカーは11人vs11人の戦いであると同時に、ピッチ上のスペースを奪い合う戦いでもある。人だけを見ているとスペースでの主導権を握れなくなる。この場合は、宮澤の左右のスペース…本来そこにDFの選手を置いているスペースだ。ここはGK…クソンユンがカバーすることになっていて、ソンユンはそのために、ボール保持時は常に高いポジションを取り続ける。GKにとってゴール以外のスペースにも責任を負うことは、ミスが許されない仕事において小さくない負担だ。そこまでして、ミシャは最大限の人数を敵陣に送り込むような戦いをしたかったことになる。
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(2019シーズン第1節湘南戦)1トップの湘南に対して宮澤1人を残して相手を押し込む |
3.2 荒野の台頭
開幕前に起こった事件として、駒井の膝の負傷による長期離脱(後に再発し、フルシーズンアウト)が挙げられる。コンディションが万全ならば、駒井は「どこかのポジション」で必ずスタメンに入ってくる選手。右シャドー、右ウイングに外国人選手を補強したなら、残るポジションは中盤センターだ。深井とのコンビが想定されていたと思うが、駒井の離脱によって荒野が初の開幕スタメンに抜擢された。
荒野は開幕2試合で期待に応え、攻守ともに圧巻のパフォーマンスを見せる。北海道で、[身長が180センチある、プロのスポーツ選手になれるくらいの運動能力やメンタリティがある、サッカー選手になれるだけの基礎的なボールコントロールがある]この条件を満たした子どもが野球やバスケではなくサッカーを選択し、かつ中学時代にグレない、そんな奇跡が重なって荒野のような選手が生まれる。荒野にあって宮澤や福森、もしかすると深井にもないものは身体を俊敏に動かす能力で、特に広大なスペースがある状況では、そのスペースをカバーできるスピードはチームに不可欠だ。いつかはボールを失うのだから、ボールを奪回する装備は備わっていなくてはならない。
3.3 ”要”は偽れない
ミシャが掲げ、理想とするサッカーは開幕6戦で行き詰まりを見せる。第4節の鹿島、第5節の名古屋、第6節の大分との3連戦で3連敗を喫するが、特に大分戦では問題の、「福森の背後、宮澤の左側」のスペースを執拗に突かれて敗れている。荒野の活躍と、2~4月までのリーグ戦9試合で7ゴール2アシストを記録した、アンデルソン ロペスの爆発によってごまかされいたが、宮澤が守れる守備範囲は決して広いとは言えない。
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(2019シーズン第6節大分戦)福森の背後を執拗に突かれて敗戦 |
だから守れる保証がないなら、本来は福森の背後を簡単に使われてはいけない。四方田ヘッドコーチは福森(だけでなく右の菊地直哉も)を定位置から動かさないことによって、この問題を解決してきたが、ミシャはそうしたアプローチをとらない。
荒野の負傷もあって宮澤が中盤センターに戻り、干されていたキム ミンテに白羽の矢が立ったのが第7節のセレッソ大阪戦。ロティーナセレッソは所謂「場を整えながら戦うチーム」なので、福森の背後にスペースがあってもすぐには使ってこない。そのためこの試合では、ミンテの特徴は、セレッソのFWとの空中戦によって発揮される。
が、ミンテの真骨頂は、本人がプロフィールに「自分の武器:意外に速い」と書く通りの、その運動能力によって後方のスペースをカバーできることにある。でかくて速い=無理がきく。ミシャのチームには無理がきくDFが不可欠だ。ミンテがカップ戦要員からスタメンに返り咲き、戦績は好転する。第6節までは2勝4敗。第7節から折り返しの第17節までは11試合で6勝3分け2敗。
よく、本来のポジションから逸脱してプレーする選手を「偽のサイドバック(Falso Lateral)」などという。ミシャのチームでは、中盤センターの選手などが本来のポジションから離れてプレーすることが多い。だからミシャの選手起用は他の監督とは一味違う。
が、CB中央の選手はごまかしがきかない。ゴール前は戦場だ。戦える選手が求められる。それに気づくのにリーグ戦6試合を要したことは、リーグチャンピオンを狙うチームとしては痛すぎるが、札幌は現実的にはそこまでにはない。6試合の授業料は、ルヴァンカップによって活かされることになる。
※(2)へ続く
2019年12月9日月曜日
2019年12月7日(土)明治安田生命J1リーグ第34節 北海道コンサドーレ札幌vs川崎フロンターレ ~未来は見えているか~
0.スターティングメンバー
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スターティングメンバー |
札幌(1-3-4-2-1):GKク ソンユン、DF進藤亮佑、宮澤裕樹、福森晃斗、MFルーカス フェルナンデス、深井一希、荒野拓馬、菅大輝、鈴木武蔵、チャナティップ、FWアンデルソン ロペス。サブメンバーはGK菅野孝憲、DFキム ミンテ、MF白井康介、中野嘉大、早坂良太、FW岩崎悠人、ジェイ。ミシャが好む宮澤CB。ルーカス、ロペスの先発起用も合わせて、メンバーだけ見ると攻撃的な印象。
川崎(1-4-2-3-1):GKチョン ソンリョン、DF守田英正、山村和也、谷口彰悟、車屋紳太郎、MF大島僚太、田中碧、家長昭博、脇坂泰斗、阿部浩之、FW小林悠。サブメンバーはGK新井章太、DFジェジエウ、マギーニョ、MF下田北斗、FWレアンドロ ダミアン、知念慶、旗手怜央。新井がベンチに復帰したがスタメンはチョン ソンリョン。前線はやはりダミアンではなく小林。
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