2025年9月13日土曜日

2025年9月13日(土) 明治安田J2リーグ第29節 北海道コンサドーレ札幌vsいわきFC 〜待ちガイル戦法の落とし穴〜

1.スターティングメンバー


  • いわきはFW熊田が出場停止で加藤が8節以来のスタメン出場。谷村が移籍してからの6試合はシステム1-3-1-4-2を維持したまま3勝2分1敗で乗り切っています。
  • コンサは前節と同じメンバー。

2.試合展開

ロングボールというかセットプレー特化?:

  • いわきはボールを持った時にほぼ毎回↓のように、FWの選手がサイドに流れてコンサの中央のDFを回避する形でサイドのスペースにボールを放り込み、そこからセカンドボールを拾って攻撃するプレーを試みます。
  • これはこの試合に限った話ではなく、私が見た限りではほぼ毎試合この傾向がみられます。この試合を欠場のFW熊田を含めても、いわきは前線のFWや2列目にボールが収まるタイプの選手が見当たらず、そのこともあってポストプレーというより、スペースに蹴って五分五分の局面をあえて作っていたと思います。

  • コンサはいわきが放り込んでくるプレーに対し無理せずクリアで対抗します。またそれをいわきが放りこむ…というのが開始20分ほどの流れ。

  • その様子を観察していて感じたことですが、
  1. いわきは前に放り込んでそのボールを拾って攻撃(基本的にはサイドでインサイドハーフがポケットを取る狙いが見えます)…という展開に2トップと両インサイドハーフ、ウイングバックで5-6人くらいの人数をかける。
  2. 中盤は柴田1人で担当。最終ラインはコンサの前線3人に対して基本的にマンツーマン、3人で対応。
  3. ただ、この試合のようにコンサもクリアとか長いボールを使ってボールが前後に行き来する展開になると、その度にいわきも自陣に戻って対応が必要になるが、3バックとアンカーの柴田は戻ってくるとして他の選手はそこまで迅速に戻ってこないこともあり、また戻ってきた時やボールが前後に往来するときの優先順位が不明瞭。
  4. 結果的に3バックとアンカー以外は中途半端なポジショニングになり、中央にスペースができ、柴田1人では守れなさそうな状況に陥る。。

  • といった感じの展開になっていたと思います。
  • ですので、いわきは前に人を多く送り込むことが重要になりますが、それが成立するのは流れの中でロングボールを使って攻撃するというよりも、フリーキック、ゴールキック、スローインなどセットプレーでプレーが止まって、いわき側がリスタートできる時に、時間を使って人を移動させたり陣形を整えてからそうしたプレーに持ち込んでいる。
  • ですので放り込みに対してコンサの選手がサイドに蹴り出すとかをせず、前に蹴ってオンプレー状態を続けるなどして、コンサがあまりプレーを切ってくれないと、いわきは前に人を移動させて攻撃することに苦労していたと思います。

  • コンサでいうと2017年の四方田監督のチームも似たことをやっていて、特にゴールキックを長身のFWに当ててセカンドボールを拾うという形を丁寧に狙っていましたが、当時のコンサもいわきと同じくその準備に時間をかけるため、ゴールキック1回の間にプレーが平均40秒止まっているみたいなデータもありました。
  • 私のYouTubeのライブ配信の視聴者の方に教えていただきましたが、いわきはアクチュアリープレイングタイムがJ2で一番短いらしく、上記の四方田札幌を想起した印象と実態がほぼ一致していると思います。

待ちガイル戦法から狙い通りに先制も…:

  • 20分くらい経過して(正確には18分のいわきのCKの直後)、コンサボールのシチュエーションで初めてコンサがボールを前に放り込まないbuild-upを選択していわきの出方を伺います。

  • いわきのpressingは右インサイドハーフの石渡を前に出して、1-3-4-2-1にしてコンサとシステムを合わせるマンツーマンで考えていたと思います。
  • しかしコンサが高嶺を落としてミシャ型?の配置を取ると、石渡が高嶺と西野2人を担当するような構図になって、いわきは誰かもう1人がフォローするのか前線数的不利のまま対応するのか不明瞭で、まず少なくともここでハメるのは難しそうでした。

  • コンサはこのシチュエーションからクリーンに前進できたわけでもないのですが、先ほどのロングボールを放り込んでくる時も、このコンサがボールを持っていわきがpressingを仕掛けてくる時も共通していたのは、あまりいわきは後ろでブロックを作ったり中央のスペースを気にかけたりしないので、基本的にコンサが何をしていようといわきはピッチの中央にスペースができるような状態になっていたと思います。
  • コンサの前線の選手に何らかボールが入った時に、いわきのDFが同数関係でストップできるほどの能力もなさそうだったので、前線のマリオやスパチョーク、長谷川に何らかボールを当てて、20分以降はコンサがいわき陣内に徐々に入っていきます。

  • そしてセットプレーのセカンドボールを拾ってからの展開で、髙尾の縦パスを白井が受けて反転からのシュートで先制します。
  • これも髙尾に渡った時に、いわきの選手が自陣ゴール前に入っていきますが、その前のスペースにほとんど選手がおらず管理できておらず、やはりいわきは一度ロングボールなどで押し込まれたりして陣形が崩れると、あらゆるシチュエーションで中央は空きやすい構造になっていたと思います。

  • ここまで3試合で秋田、甲府、大宮相手に3ゴールを奪っていますが、甲府相手に相手の守備のミス、大宮相手に高嶺のスーパーフリーキックと、ミスかセットプレー、スーパーゴールでしか得点していないのが柴田監督のコンサ。
  • これは別にダメとかではなくて、J2だと毎試合必ず決定的なエラーがあるのでそんなに攻撃として形を作らなくても得点チャンスはありますし、逆にこちらのエラーを潰していくことが勝ちに近づくので、J1ではどうか知りませんが、J2で勝つには柴田監督は必要なアプローチをしてくれているとは思います。

  • その意味では序盤のいわきのラッシュを耐えて、スペースが空いてきたところで30分に先制、というのはコンサにとって理想的な展開でしたが…36分に荒野が足裏を見せたタックルで退場。

  • コンサは人の配置を変えず、高嶺が中盤に1枚という形を一旦は継続します。
  • 一般に今の時代、退場者が出ると前線を削って後ろを増やす処置をとります。この場合だと長谷川とスパチョークを1列下げ、マリオ セルジオだけを前に残す1-5-3-1のような配置にすることが多いかと思いますが、いわきはとにかく放り込んでくるプレーが大半で、そこさえ対処していれば問題なさそうでしたので、コンサがシステムを変えない判断は特に問題なかったと思います。

  • しかし前半終了間際にいわきの得意のセットプレー攻撃でスコアが動きます。ロングスローからCKを獲得して、ニアでフリックしたボールを加藤が合わせて同点。
  • コンサは岩政前監督時代からCKはゾーンで守っていて、この時はゴールの近くに背が高い選手…マリオ、西野、浦上、髙尾でラインを形成。
  • 白井がニアでストーンで、いわきのボックス内の選手に高嶺、パクミンギュ、長谷川でマーキングをしていますが、184センチで見るからにパワーがありそうな加藤に対し長谷川がマークせざるを得ないシチュエーションになってしまいました。
  • おそらく荒野がいたら、荒野がラインに入って、ラインに入っていた選手1人がマークに入ることができたのでもう少しこの辺りのパワー不足は解消されたかもしれません。
  • ただそれでもスパチョークと長谷川、白井といった選手を同時起用していることもあり、また宮の不在もあって高さ不足はウィークポイントの一つであることは明らかかなと思います。

合理的な理由はなさそうだが…:

  • モダンフットボールにおいては、10v11という人数関係はそのまま試合を決める決定的な要素になりえます。
  • というのは、フットボールにおいてはプレッシング、ビルドアップ、ゴール前での崩しと守り、トランジション、セットプレーといった局面がありますが、まず今日では前線からのプレッシングは数的同数のマンツーマンを前提とした対応が多いので、1人少なくなるとそうしたプレッシングができなくなり、自陣に下がって相手にボールと攻撃権を渡してひたすら守ることしかできない…そんな試合展開にまずなりがちだからです。
  • 加えて自陣で守る際も、例えば4バックと5バックではピッチの横幅を守れるスペースが全然違いますので1人少ないビハインドはこのことにも直結します。

  • しかしこのコンサvsいわきというマッチアップは、人数が多い側のいわきがボールを持った時にロングボールしかほぼ手段がなく、簡単にボールを攻撃権利を手放してくれますし、中央にスペースが空きやすいので、まだコンサとしては10v11でも試合を諦めるには相当早い状況でした。

  • そんな中でHT明けにコンサはスパチョーク・長谷川→青木・近藤で西野を中央、パクミンギュを左DFに。いわきは山中→加瀬で五十嵐を左に。

  • スペースが与えてくれるいわき相手に近藤をいつどこで使うかは間違いなくキーポイントで、私はWBだと守備で下がらないといけないので、より前の方が良いのでは?と思っていましたが柴田監督は右に入れる選択をします。

  • しかしその是非が判明する前に試合が動きます。
  • 岩政前監督体制で開幕左CBだったパクミンギュ。CBとしてはプレス耐性に乏しく簡単にボールを手放してしまうことをシーズン序盤で露呈していましたが、この時も受け手が整わない状況でパクが縦パスをしたところからいわきボールに。
  • そこから浦上と髙尾がお見合いしてしまいましたが、浦上はおそらくパクに出して、パクからリターンを受けるために中央から左に動いていたので、髙尾との距離が開いてうまくいかなかったのかと思います。この辺りも人数が少なくなった影響といえばそうなのかもしれません。

  • そしてマリオが競り合いでいわきの加瀬をジャンプして回避した?と思いきや踏んづけて退場。
  • マリオのここまでの振る舞いを見ていると、彼がそうした軽率かつ愚かな行為をするのは信じられませんが、踏んづけているのは事実なので主審がよく見ていたと思います。

  • 58分にCKからいわきの深港が押し込んで1-3。これもコンサの高さ不足が出た形だったかと思います。
  • まずストーン(白井)が小さすぎて低くて速いボールを蹴り放題ですし、中央もゴール前の西野のところはともかく、そこ以外は跳ね返せる強さが足りなさすぎるなと感じました。
  • これ以上は特に語るところがないです…


雑感

  • いうまでもなく荒野の退場がチームを苦境に追い込みました。ただ、退場が1人でとどまっていれば、いわきのボールの捨て具合を見ていれば十分勝ち点を拾える展開でもありました。
  • ここまで4試合を見ての感想ですが、柴田監督は試合を寝かせて、ボール保持にこだわらず、リスクを冒さず、相手のミスを待って得点して逃げ切るというのが勝ちパターンに見えます。
  • そもそも途中就任かつ解任の経緯がアレなので難しい状況で、そうした勝ちパターンらしきものを持っていそうに見えること自体が評価されるべきですが、こうした試合展開になるとミス待ちだけだとやはり上位に食い込むのは厳しいかもな、と思わされるところもあります。
  • あとは前から思っているのですが、日本のサッカー選手の大半はスライディングタックルをまともに練習していないのではないでしょうか?(荒野はその中でも特段という印象ですが…)

  • いわきが放り込みが多いのは事前に知っていましたが、浦上に大きい選手をぶつけてくるようなやり方ではないため、DFのどこかに大きい選手…家泉のような選手を起用しなくとも十分に対処できると予想していました。
  • 実際のところ、流れの中では髙尾、浦上、西野の3枚でも対処できましたが、セットプレーとなると荒野の退場もあってシンプルに高さ不足、パワー不足が露見されたこととなりました。ただ家泉を入れると試合運びに甚大な影響を与えるであろうことは、岩政前監督体制で散々見てきたので、柴田監督がそこを慎重に考えていることもよくわかります。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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