2020年1月17日金曜日

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(5) ~選手個別雑感その3~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(3) ~選手個別雑感その1~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(4) ~選手個別雑感その2~

中盤センターの選手編。感じたことのメモ。


・MF6 中原彰吾


 宮澤と深井を別格とする前提のもと、駒井は故障がなければ、宮澤のCB起用ともにレギュラー格だったことを考慮すると、中原はやはり荒野との競争関係に敗れたと考えられる。
 どんな監督にも好みはあるが、荒野と中原の比較で考えると、ミシャは中盤センターの選手に一定のフィジカル的な力強さ、そして縦に速く攻撃できる身体的、思考的な速さを求めているように思える(この点は3バックが全員ガチムチだったら別かもしれないが、左サイドにはムチムチの人がいるから中盤がプロテクトすることが必要なのだろう)。この点において、中原は兵藤慎剛と同じくプライオリティが低いまま競争がスタートしてしまった。

 ミシャチームには中盤センターに2つの椅子がある。一つは攻撃方向から見て左側、深井の定位置で、キム ミンテと福森をサポートする役割、もう一つは右側、前線と後方をリンクする役割だ。中原はルヴァンカップでは主に前者の役割を与えられていたが、そもそもこの大会のグループステージでは福森がいない。よって、仕事は深井以上に多く、そんなチームで苦しい役回りを与えられたことが全てだったように思える。
 ただ、新天地としてベガルタ仙台を選んだが、仙台も比較的、フィットネス面での力強さが要求されるチーム。一花咲かせてほしいが、いくつか課題も見えているところだ。

・MF8 深井一希


 (1)の記事に書いた、「最終ラインの実験」(宮澤のCB起用と失敗:キム ミンテの返り咲き)を経て、2018シーズンと比べると、深井と宮澤の仕事はより固定的になった。
 端的に言うと、「深井が後ろ、宮澤が前」の関係が明確になっている。これが決定的になったのは4バックを採用した第8節の横浜F・マリノス戦で、深井が配されていたピッチの左側では福森、菅、チャナティップがボール保持⇔非保持でポジションを大きく変える。この時に、「ミンテと福森の間に落ちる選手」を決めておいた方がスムーズだから、ということで、それまで流動的だった深井と宮澤の役割は固定された。
 この試行錯誤を経て、深井の2019シーズンの役割は、敵陣でのボール保持時には相手のカウンターアタックへの対処(特に、福森の背後を守ること)がメインになった。5月のFC東京戦では、相手のプリケツモンスターことディエゴ オリヴェイラに中央で狙い撃ちされていたが、シーズンの大半において、中央の的に対処しながらサイドのスペースを見る役割をさも簡単そうに遂行していた。深井でなければ、ソンユンが浴びるシュートの本数は(それこそルヴァンカップの菅野のように)更に多くなっていたはずだ。

 相方との関係で言うと、やはりベストパートナーは宮澤。荒野と組んだゲームでは、「荒野下がってくる問題」もあって、意識的に役割を入れ替えることもあった。とはいえ、「強くて速くて動ける」荒野の存在が、膝に不安を抱える深井の助けになることもある。

 最後に、かなり前を向いてプレーできるようになった(安藤隆人氏の記事で本人が語っていたが、2年前ころの深井はアンカーの位置で前を向けなかった)。

・MF10 宮澤裕樹


 文字通り2つの顔を見せたシーズンだった。
 センターバックとしてスタメン起用されたリーグ戦8試合は2勝6敗、失点17。この数字が全てを物語っている。MFとしてはクラブ史上最高の選手だが、守る範囲が3ラインの2列目…後方を屈強なDF、前方を献身的なFWが守り、その間を担当している状況と、最終ラインの広大なスペースを任される状況では話が全く異なる。もうトライアル期間は十分すぎており、起用法についてはチームとして決断すべき時だ。
 ”本職”においては、依然としてトータルで見て最も頼れる選手。本人のパフォーマンスもあるが、周囲からの信頼関係等の影響もあるのだろう。宮澤が定位置に収まっている時は、周囲も含めてプレーに余計なコストがかからない。ミシャが最終ラインでの起用にご執心な理由は、ボール保持の改善意識からくるようだが、「中盤にステイする」と「1列落ちる」の使い分けを適切に行える宮澤は中盤に置いたほうが明らかに機能している。

・MF27 荒野拓馬


 駒井の長期離脱と宮澤のCB起用で舞い込んできた開幕スタメンの座だったが、開幕から数試合はレギュラーに値する圧巻のパフォーマンス。チームが押し込んだ状態で相手のアタッカーを捕捉するハードな守備、そしてポジティブトランジションにおいて、自陣ゴール前から敵陣までボールを運び、陣地をゲインするプレーが特に際立っていた。
 後にミシャは「北海道出身の若い選手を使いたい」と公言する(中野や白井、ミンテはどう思っただろうか)が、開幕当初の荒野は道民でなくても起用される資格のある働きだった。シーズントータルで見ても、遂に荒野の時代が来た! は少々オーバーな表現にしても、トップチームデビュー8年目にして遂に本格化の兆しを見せたと言っていいだろう。

 北海道から荒野のような、身長180センチオーバーで足が速く、サッカー選手になれるだけの基礎的なボールタッチやフットワーク、運動能力、メンタルを備え、90分で13キロを走り切ることができる子どもが今後何人産まれ、グレずにすくすくと成長するだろうか。その恵まれた才能を考えるとまだプレイヤーとして向上の余地は十分に残されている。
 ただ、2019シーズンの活躍は、武蔵、アンデルソンロペスの加入による高速オフェンスへのチームのシフトが荒野の選手特性と噛み合ったところが大きかった。荒野はスペースがあり、オープンな展開に強い。反面、課題はスペースを与えてくれない相手と対峙した時で、自らが視界とスペースを確保したいがためなのか、必要以上にポジションを下げて本来いてほしいエリアから逸脱してしまう特徴は相変わらずだ(これについては、チームとしてそこまで気にしていないのかもしれないが、2019シーズンは宮澤や深井が荒野に「下がってくるな」とコミュニケーションをとっている様子が何度か確認できた)。アンロペの枠がジェイに代わり、チームのオフェンスがポストプレイヤーのジェイ中心にシフトするにつれ、開幕当初ほどの躍動が感じられなくなったのはこうしたことも背景として挙げられる。
 他にも、チームの中心が都倉から同世代の武蔵に変わったことなども影響しているだろうか(荒野に限った話ではなく、やはり若い選手はその方がやりやすいのだろう)。

 2020シーズンは駒井の復帰、(最終ラインの頭数っぽいが)田中駿汰くんの加入もあり、中央のポジション争いは更に熾烈を極める。2019シーズンの締め方から予想すると、駒井と荒野なら、人に強い荒野が現状はややリードしていると筆者は予想する。アンカーポジションでシンプルにプレーする術を見つけられれば、お母さんもアンチから信者に転換するはずだが。

0 件のコメント:

コメントを投稿