2019年5月6日月曜日

2019年5月4日(土)明治安田生命J1リーグ第10節 北海道コンサドーレ札幌vsヴィッセル神戸 ~妖精は左足から右足へ~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー

 札幌(1-3-4-2-1):GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MFルーカス フェルナンデス、宮澤裕樹、深井一希、菅大輝、チャナティップ、荒野拓馬、FW鈴木武蔵。サブメンバーはGK菅野孝憲、MF檀崎竜孔、白井康介、中野嘉大、早坂良太、FW岩崎悠人、藤村怜。2トップとの筆者の予想は外れて慣れ親しんだ1-3-4-2-1の布陣。負傷者を除けばトップチームの選手でメンバー外となったのはGK阿波加とDF濱、中村のみ。またU-18所属の本間は5/3にプリンスリーグ北海道のリーグ戦に出場しており、特別指定選手の金子と高嶺もそれぞれ所属チームでの活動に参加しているため起用できず、起用できる選手にかなりの制約を受けている。
 神戸(1-4-2-3-1):GKキム スンギュ、DF西大伍、ダンクレー、宮大樹、橋本和、MF山口蛍、三田啓貴、古橋亨梧、郷家友太、FW田中順也、ダビド ビジャ。サブメンバーはGK前川黛也、DF渡部博文、大崎玲央、MFセルジ サンペール、安井拓也、FW小川慶治朗、ウェリントン。出場微妙と報じられていたイニエスタは結局欠場。他に、前節から大崎、三原、サンペール、小川を外し、リーグ戦初出場となる宮、橋本、初先発となる郷家、4試合ぶりスタメン復帰となる三田を起用している。
 その他プレビューはこちら


1.基本戦略と基本構造

1.1 互いの基本戦略

・札幌
 ポイントゲッター・アンデルソン ロペス(チームの15得点中7ゴール2アシスト、毎試合ドリブル成功率5割前後を記録している)の不在により、少ない人数で攻撃を完結させることは難しい。かといって攻撃に人数を割きすぎると消耗し、後半ウェリントンが投入された時に対処できない。一方神戸にはイニエスタがいない。
 よってボールを渡しても問題ない。前半は体力を温存し、ロースコアゲームに持ち込んだ上で後半勝負、と考えていただろう(ただ、イニエスタ欠場の情報をどの時点で入手したのかは不明。神戸のスタメンに予想外の選手が数人いたことでどのような影響があっただろうか)。

・神戸
 基本はこれまで同様にロンドで試合を支配する。ただ、4連敗(リージョで2戦、吉田監督で2戦)からの脱出のために、サンペール→三田の起用で守備のテコ入れ(プレビューに書いたが、ハーフスぺースの防護)、左利きのDF宮と橋本の起用でビルドアップの改善を図る。
 一方イニエスタ、ポドルスキを起用できないので、中央でボールを保持する時間はやや減らし、その分トランジションやダイレクトな展開を多めに。”看板”は降ろしていないが、コンテンツの性質は明らかに変わっている。

1.2 基本構造(神戸のボール保持時)


 札幌の振る舞いは、神戸陣営も筆者も予想しなかったリトリート守備。まず神戸にボールを持たせて自陣に撤退する。三田のコメントにもあるが、これまでの札幌の戦いを見ると、もっとボール非保持時にアグレッシブな振る舞いをすることを予想していたのだろう。
相手は3バックということもあり、スカウティングではもう少し前から来る想定でしたが、しっかりブロックを敷いてきたところが想定とは違うところでした。

 札幌はキックオフ直後から、1列目をハーフウェーライン付近に設定し、神戸の選手とボールがブロック内に入ってくると迎撃する態勢を作る。ブロックよりも前方でダンクレーや宮、GKキム スンギュがボールに関与するプレーは基本的に捨てていた。
 神戸はここまでの試合で、左に配置されている右利きのCB大崎からの左サイドへの展開がネックになっている。札幌も当然ここを狙ってくると予想するのが自然で、そのために左利きのCB宮、SBにも左利きの橋本を起用したのだと思うが、”肩透かし”の格好となった。
札幌は神戸にボールを持たせて自陣に撤退

 札幌は1-4-4-2、攻撃時にサイドに2人が登場する可能性のある神戸に対し、サイドで人をフリーにしたくなかったためこうした選択をしたと考えられる。札幌の守備の基準は下のように、シャドーが神戸のSB、WBが神戸のSHを意識している。この関係を常に作っているのではなく、ある程度、受け渡しながら対応しているが、例えばチャナティップは常に西の位置を確認できるポジショニングと体の向きを確保し、基本的にはこの関係の選手が”責任”を持っている。自陣ゴール前は、基本通り2トップに対して3枚で数的優位を確保。逆に、ダンクレーと宮(とキム スンギュ)に対しては武蔵1人ではどうしようもないので、基本的に放置する。
サイドで同数を確保してマンマーク基調の対応

 イニエスタやバルサの選手は試合の立ち上がりの15分間程度、ロンドでボールを動かしつつ相手の出方、対応の仕方などを情報収集するという。この試合の神戸も、スカウティングと異なる札幌の姿を見て、すぐに仕掛けるよりは情報収集に時間を費やしており、静かな立ち上がりとなった。
 象徴的なのは、12:50頃と15:00頃の神戸のゴールキック。前者では、札幌の1トップ2シャドーの3枚が高い位置でキム スンギュ、ダンクレー、宮を監視する構えを見せたため、キム スンギュは繋ぐのを諦めてロングフィード。しかし後者ではキム スンギュはショートパスで繋ぐことを選択する。約15分間という時間もそうだが、一通り様々なシチュエーションに直面しないと札幌の出方がわからなかった状況が示されている。

1.3 基本構造(札幌のボール保持時)


 札幌のボール保持は主に4-1-5。神戸の非保持時の形は4-4-2。神戸の守備はプレビューに示した通り、4バック+中盤センターの2枚で解決する傾向が強い。ただ、三田のコメントにある通り、
今日の相手は今までやってきたチームとは違って、ウイングを有効に使ってくるチーム。シャドーを中に絞らせておいてウイングを空けてそこからサイド攻撃をしてくる形が出来上がっているチーム
ミシャ式はウイングバックが攻撃の横幅を常に作り続ける。三田は「シャドーがウイングを空ける」と言っているが、逆説的にはウイングがシャドーを空ける関係にもあり、どちらもケアしなくてはならない。
 これを踏まえて神戸の両サイドは以下の役割を意識していた。
・古橋は少し前目の位置取りをし、配給役となる福森を監視。これは吉田監督が指揮を執っていた昨年9月の対戦で、郷家とポドルスキのサイドを入れ替えたことと同じやり方だった。
・郷家は大外のルーカスを監視。
福森とルーカスを監視

 この仕事が意識されていると、他の選手の役割や仕事も必然的に決まってくる。右サイドでは菅に対応できるのが西しかいない。反対サイドで、橋本はスペースを守ることにある程度は専念できるが、西はスペースを守るだけでなく(突貫小僧とか言われていた)菅からのクロス供給にも対処を求められる。西が大外を見ると、シャドーのチャナティップが浮きやすくなるので、三田が対応する。
必然と人を意識する対応になり、マッチアップも定まってくる

 札幌がこうした配置を突きつけていることで、神戸はスペース管理よりも人への対応を意識せざるを得ないシチュエーション下だと言える。

2.ロンドからの逸脱

2.1 巨大ロンドのフリーマン


 リージョの示した道筋の延長線上を吉田監督が目指しているとの前提で、ボール保持時の神戸の陣形を巨大なロンドに見立てると、この日の神戸の””フリーマン”は中盤の三田や山口、そしてボールを受けに下がってくる田中だった。
 山口と三田の配置については、通常このポジションの選手は右側に右利き、左側に左利きの選手を配することが多いが、この2人は逆。更に守備面を考えると、チャナティップのいるサイド(神戸から見て右)に山口を置いたほうが得策と言えるはず。これはそれぞれの利き足のサイドにボールを循環させることを意識した配置だったと思う。
想定されるロンドの外周とフリーマン

2.2 締め出されるフリーマン


しかしながら、ロンドの中で三田は深井、山口は宮澤の監視下に置かれている。イニエスタやポドルスキなら1人に監視されても自在にボールを循環させる能力があるが、本来そうした特別な選手の護衛役を担う三田と山口にその役割がシフトしている状況は無理がありそうだった。
 そして最初から決めていたのかわからないが、山口は次第にダンクレーと宮の間でプレーするようになり、フリーマンの位置取りではなくなる。中央には三田だけしかいなくなり、その三田も深井の監視によって自由に活動できない。
中央から締め出されたフリーマンは外周でしか活動できない

2.3 ロンドの外周からの前進


 一方、もう一人の”フリーマン”らしき選手、2トップの一角の田中は初期配置は右側ながらも、その役割は神戸のボール保持時にボールサイドに頻繁に降りてボールに関与する。これは左サイドで前進している時も同様だったが、DAZN中継では10分過ぎ頃に「吉田監督が田中に、右サイドにいてくれと指示している」とのリポートがあった。
 この事実と、右にSBの西、その前に古橋というキャスティングから考えると、神戸が狙っていたのは札幌の左サイド、福森と菅の間にギャップを生じさせて古橋が裏を取るパターンだったと思う。これも三田のコメント
3バックのサイドのところを積極的にFWがとって行こうと話していて、何回か出せた部分もあったんですが
とも整合する。
 ただ、やっていることはロンドでボールを動かして前進というより、ロンドの外周でプレーしている状態と言ってよい。外周でボールを動かすだけではロンドは成立しない。この攻撃の成否は古橋の突破やラストパスのクオリティにかかっている状況だった。何度か札幌にとっての不利なマッチアップ(古橋と福森)が発生し、前半、ビジャの最初のシュート2本はいずれも右サイドからのグラウンダーのクロスからだった(2本目は下に図示した、古橋-福森のマッチアップから古橋のクロスが成功、のシチュエーション)が、いずれもシュートミスに救われた。
ボールの循環よりもサイドでの一点集中突破狙い

 そして神戸の人の移動に対する札幌のマーク受け渡しが慣れてくると、裏のスペースも塞がってくる。そうなるとブロックの前で古橋が単独で突破するか、田中やビジャとの即興によるコンビネーションが成功しない限りは難しい状況になる。ロンドで札幌を動かしながら前進するよりも、自ら動くことで打開を図ることが多かった神戸だった。

3.縁の下の無邪気

3.1 ルーカスの背後を守る荒野


 「2.」の冒頭に書いたように、まず神戸にボールを持たせた札幌。神戸がボールを保持し、後方の枚数が少なくなる状況になれば、定石通り速攻を狙う。しかし頼りになるロペスが負傷離脱中なので、別の策を講じる必要がある。

 ロペスを欠く札幌の、ファストブレイクのキーになっていたのがルーカスと荒野の右サイドだった。神戸の攻撃が右サイドからが多かったので、同様のシチュエーションを例に説明する。ゴール前には、神戸の2トップと反対サイドのSH(この時は郷家)がおり、札幌は5バックがスライドして守っている。ルーカスは進藤の隣、ファーポストを守るが、中央に入ってくる郷家の監視は正直なところ結構ルーズ。神戸がファーへのクロスをあまり狙ってこなかったが、郷家がフリーになっている状態が何度かあった。
神戸が右から攻めている時の人の配置

 が、札幌が神戸の攻撃を守ってオンザボールの局面に変わる(ポジティブトランジション)と、独力でボールを運べるルーカスは一転して頼れる存在へと変貌する。ロペスが不在で、ベストイレブンを受賞したチャナティップのマークが依然として厳しい中で、札幌はルーカスにボールを集めることで縦に速い攻撃のパターンを確保していた。
 このポジティブトランジションで特徴的だったのが、ルーカスはポジトラ時に迷いなく前に飛び出していたのに対し、荒野はボール周辺の雲行き(cliate around the ball)を見て、下がってプレーする(ゴールから遠ざかる)時もあった。アンデルソン ロペスなら自分自身の存在が直接的に脅威になるので、ポジトラ時は基本的にゴールに突進していく。荒野の振る舞いはロペスとは異なり、ルーカスを活かすために下がることでボールをリンクさせたり、ルーカスにボールが届くまでその背後(厳密には斜め後ろ)を守り、ルーカスの攻撃参加のリスクヘッジとなっていた。
札幌のボール保持に変わると、荒野はルーカスが前に出るための”保険”として振る舞う

3.2 遅攻での振る舞い


 ファストブレイクを狙えない状況では札幌はボール保持からの遅攻に切り替える。先述のように神戸は福森に古橋を当てることを意識している。が、反対サイドでビジャの脇にいる進藤へのケアは福森のそれと比べるとルーズ。よって札幌は右サイドからの展開が起点になる。
福森が古橋に監視されているので進藤を起点に

 右サイドにボールを動かすと、神戸はボールサイドにスライドして守る。横幅4枚で守る神戸に対し、たびたびサイドチェンジが成功する。なおsofascoreのデータでは、ドリブル回数はルーカス10回、菅1回に対し、クロス本数はルーカス7本、菅6本と互角である。
オープンな反対サイドへフィード

 30分前後には三田によるチャナティップの監視が顕著になる。その反作用として中央が手薄になる神戸。1人で守る山口の周囲で、武蔵や荒野への縦パスが決まり、宮澤が中央で前を向いてボールを受けることが多くなる。
三田がチャナティップを監視すると中央が手薄に

4.後半の変化

4.1 神戸の攻撃サイドの変更と2トップの前残り


 後半も神戸にボールを持たせる札幌。対する神戸は前半とはボール保持の形を変える。後半立ち上がりから、神戸は山口が宮と橋本の間に落ちて3バックのような形でボールを保持する。あるいは山口と三田が縦関係とも言える。そして郷家と古橋が中央にかなり絞ったポジションをとる。特に古橋はまるで2トップ下のような振る舞いをする。
 恐らく狙いは、攻撃サイドを札幌のルーカスのいるサイドに変えるため。巨大ロンドで札幌を振り回すというより、ワンサイドで攻撃しようとの意図が感じられる。ただ、興味深かったのは中央突破による攻撃機会も増加したこと。これは宮澤の振る舞いに原因があり、山口が低い位置でボールに関与する振る舞いを始めると、宮澤は山口を見るためにポジションを上げる。結果中央は深井1人になり、深井の周囲で古橋や三田が受けやすくなる。後半最初の決定機は中央低い位置で受けた三田が深井を振り切りミドルシュート。
山口が降りると宮澤がついていくので中央が手薄に

 対する札幌のボール保持時は大きな変化はない。ただ、神戸の2トップが前に残ることが多くなり、神戸は撤退時に完全に4-4ブロックのみで対応する状況になる。神戸のブロックからの2トップの欠如は、札幌にとってのネガティブトランジションで優位に働く。札幌は一度ボールを握ると二次攻撃まで繋がりやすい状況。この時間帯に、札幌もルーカスのドリブル成功からビッグチャンスを迎えるがキム スンギュがブロック。

4.2 釣り人の罠


 上記のような展開を踏まえると、先制点は一見すると脈略のない形だった。60分(上記ルーカスの突破からのシュートの直後だった)、神戸は後半初めて右サイドを使う。この時も古橋はスタートは中央だったが、西が作った時間を利用して古橋はサイドに流れる。古橋が”定位置”に収まったことを確認すると、西は古橋に預けて菅を引き出し、福森と菅のチャネル間に一気にインナーラップ。スピードに乗った西が福森に裏街道でファウルを誘い、PKをビジャが決めて(殆ど右に蹴っているイメージがあり絶対右だろうと思って見ていた。ソンユンも読んでいたが反応が早すぎて逆に触れなかった。)神戸が先制。
釣り人・ニシダイゴくんが菅-福森のチャネル間に侵入

 冒頭「1.2」に書いたが、札幌は神戸の2トップに対しCB3人で受け渡しながら対応する。2トップに対する定石であるが、言い換えればここだけマークが決まっていない。福森の西への対応が遅れたのは、一つは西に対峙していたチャナティップに最初、対応を任せていたため。もう一つは古橋に渡った直後、FWの田中が視界に入り、田中を捕まえることを考慮したためだったと思う。
 三田のコメントの通り、神戸は札幌の3バックの脇を狙うことは意識していたようだが、後半、左サイド主体で攻めていたのは西のいる右サイドでの”死んだふり作戦”だったのかもしれない。いずれにせよ、西の巧さに札幌の左サイド金髪軍団は完全に手玉にとられた格好となってしまった。

5.交代選手が試合を決める

5.1 橋本のアクシデントと早坂の投入


 先制直後の63分、札幌のボール保持攻撃から、神戸はボールを側頭部で受けた橋本が続行不可能と判断され大崎と交代。CBが2人(渡部、大崎)メンバーに入っているが、この交代は完全に想定外だっただろう。右利きの左CBとして各チームに狙われ続けている大崎を、左SBとして起用せざるを得なくなってしまった。
 札幌は失点直後に用意していた早坂を同じタイミングで、荒野に変えて投入。交代直後、セットプレーが続いたので確認できたのは数分後だったが、早坂は右WB、ルーカスがシャドーに入っている。
66分~

5.2 スーパーゴールの妖精はロペスの左足から進藤の右足へ


 橋本と早坂の投入直後、コーナーキックで試合再開。神戸が跳ね返したボールをルーカスが拾って、ビジャからのファウルで再び右サイドからのフリーキック。特に説明は不要だが、進藤のオーバーヘッドキックでのスーパーゴールが炸裂して1-1の同点に。公式記録では得点は68分だったが、神戸がビジャのPKで先制したプレーの、実質的に直後と言っていいタイミングだった。

5.3 ハーフスペースへの侵入


 スコアが動いた後の展開で、先述の通り札幌の右サイドは早坂がWB、ルーカスがシャドーにシフトしたことが確認できた。神戸は大崎がそのまま左SB。チーム、個人いずれの振る舞いも観察していたが、大崎は橋本と同じような役割を担おうとしていて、ボール保持時には高い位置に進出していく。山口が宮との間に落ちる変化も相変わらずだった。しかし左CBとして試練の時を迎えている大崎が左SBに入ったところで、早坂相手に何かが起きる様子には見受けられなかった。

 札幌は落ち着かない神戸の左サイドに一発で回答を示す。74分、深井⇒進藤⇒早坂と渡り、ハーフスペースで宮澤が前を向いてドリブルを開始する。宮澤は田中を振り切り、ルーカスに一度預け、ルーカスのスルーパスで再びハーフスペース侵入を図る。宮のカバーリングによってフィニッシュは阻止されたが、サポートした早坂のクロスを武蔵がニアでダンクレーの前で触ってキム スンギュの逆を突きスコアは2-1に。
(2点目)宮澤のハーフスペース侵入

 プレビューでも書いたがここ数試合、神戸はハーフスペースを狙われて失点を重ねている。この試合、左は三田がチャナティップをマークして封殺、右は荒野とルーカスの関係がイマイチであまりチャンスを作れなかった(他には、ルーカスがサイドの高い位置で持ったら得意なタイミングで仕掛けていいことになっているのだろう)が、宮澤とルーカスが”同じ絵を描けている”様子を見ると、札幌もこの形は当然頭に入っていたのだろう。

6.終盤の展開

6.1 デュエルマスター・ウェリントン


 スコアが2‐1となった直後の76分に神戸はビジャ→ウェリントンに交代。続いて78分には田中→小川に交代。
78分~

 神戸の攻め筋はサイドからのクロス。ウェリントンの使い方は、投入後の6分間程度はサイドからのクロスに対するゴール前のターゲットだった。クロスを上げる役割は両サイドバック。と言いたいところだが、左の大崎にそれを期待するのは難しそうだった。早坂が前進守備で大崎の右足を切ると、それ以上何も起こらない状況だった。
 逆に神戸の右サイドは西と小川の縦関係が脅威となる。ピッチリポートによると、ウェリントン投入直後に、札幌は深井に「チャナティップの対応が遅れた時に、西を見るためにサイドに出ていい」と指示していたようだが、後に西への対処は菅の前進守備による解決に落ち着いた。一方、前進守備の菅の背後に小川が走り、大外からクロスを供給する、札幌にとり新たな悩み事が生じる。クロスの先には言うまでもなくウェリントンがいる。

 時間を使う札幌。交代カードは白井と岩崎。アディショナルタイムに突入するかしないかの時間で、ようやく神戸はウェリントンを使った前進を試みる。AT3分には競るだけでシュートチャンスを作る相変わらずの反則級の性能を披露するがク ソンユンがセーブ。
 AT4分には札幌が逆襲から白井はクロスを選択。これはいいとして、神戸がボールを回収すると岩崎や深井が単騎で突っ込み、かわされて各個撃破、日本-ベルギー戦を思わせる神戸のカウンターが発動するも郷家のシュートはク ソンユンの正面だった。

7.雑感


 進藤のゴールを20回くらい見ていたので記事更新が遅れてしまった。互いに複数の負傷者がおり、メンバー選択の制約がある中で、スタメン11人同士での時間帯以上に、交代選手が投入されて以降に明暗が分かれた感がある。
 恐らく2~3ヶ月はアンデルソン ロペスを欠いて戦うことになるが、1人で代替することが不可能なタレントであり複数の選手で何らか分担していくしかない。特にゴール前でのスーパーなクオリティは、ジェイの復帰以外には代案がなさそう(ロペスに舞い降りていたスーパーゴールの妖精が今後も進藤に乗り移ったままだとしたら別だが。そういえば2月~3月に荒野に乗り移っていた妖精はどこへ行ったのか…)。今後しばらくは失点しないことをより重視することが、勝ち点を積み重ねるには必要だと思われる。

用語集・この記事上での用語定義

・守備の基準

守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。

・ゾーン3:

ピッチを縦に3分割したとき、主語となるチームから見た、敵陣側の1/3のエリア。アタッキングサードも同じ意味。自陣側の1/3のエリアが「ゾーン1」、中間が「ゾーン2」。

・チャネル:

選手と選手の間。よく使われるのはCBとSBの間のチャネルなど、攻撃側が狙っていきたいスペースの説明に使われることが多い。

・トランジション:

ボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。

・ハーフスペース:

ピッチを5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。

・ビルドアップ:

オランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。

・ファストブレイク:

元は恐らくバスケットボール用語。速攻のこと。

・ブロック:

ボール非保持側のチームが、「4-4-2」、「4-4」、「5-3」などの配置で、選手が2列・3列になった状態で並び、相手に簡単に突破されないよう守備の体勢を整えている状態を「ブロックを作る」などと言う。

・マッチアップ:

敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。

・マンマーク:

ボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。

・リトリート:

撤退すること。平たく言えば後ろで守ること。

・ロンド:

円形や多角形の配置でパスを何度も繰り返し繋ぐプレーやその練習。語源は「rondo」だが、サッカー用語では(鳥かご)と訳されることが多い。

1 件のコメント:

  1. こんばんは。忙しすぎて全く試合を観戦できていないです。はい、にゃんむるです。
    逆転勝ち。素晴らしいですね。唯一観た進藤のゴール。素晴らしいですね('ω')ノ
    妖精が荒野にもその他の選手にも舞い降りるように、自分も祈っております。
    あ~試合観に行きてー。にゃんむるでした。またのー。

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