2019年5月31日金曜日

プレビュー:2019年6月1日(土)明治安田生命J1リーグ第14節 北海道コンサドーレ札幌vsサンフレッチェ広島

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

・札幌:
 ×(非帯同、欠場確定)…FW岩崎(U22日本代表招集)
 ×(負傷等で欠場濃厚)…MF駒井、FWアンデルソン ロペス(6/22鳥栖戦で復帰見込)
 ▲(負傷等で出場微妙)…MF宮澤(5/25ガンバ戦での足の負傷)
・広島:
 ×(非帯同、欠場確定)…MF東(U20日本代表招集)
 ×(負傷等で欠場濃厚)…なし
 ▲(負傷等で出場微妙)…なし

 札幌は宮澤が、前節試合中の負傷の影響により水曜日時点で全体練習に合流していない。代役は順当にいけば荒野だろう。
 広島は右シャドーが流動的だが、前節1ゴール1アシストと結果を残した森島のスタメン起用、渡はジョーカーとしての運用を予想する。最終ラインはここ2戦先発している荒木が入ると高さが補強されるが、アンデルソン ロペス抜きの札幌相手、チャナティップとのマッチアップを考えると、右に野上、中央に吉野ではないか。
 リーグ戦日程とバッティングする代表招集に応じたのは、札幌が岩崎と菅、広島は東に加え、CONMEBOLコパアメリカブラジル2019に大迫と松本が参加。菅大輝も含め、この3選手は少なくとも第15・第16節は欠場する。菅は左WBに中野や白井、大迫は林、松本は稲垣がバックアップで控えているため招集を容認したのだろう。



2.戦術面の一言メモ

2.1 札幌


 基本戦略:より多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。

 ボール保持:ビルドアップはミシャ式4-1-5から、高い位置に張るWBを出口と位置付けてサイドチェンジ等でボールを届ける。キム ミンテがスタメンに復帰して以降は後方の役割が固定気味で、宮澤がアンカー、深井が中央左。福森のフリーロールも自重気味。

 ボール非保持:相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。ロペスを欠くここ数試合は、相手にボールを持たせてリトリートの傾向がより強まっている。

 攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):中盤2枚は即時奪回を目指すが、その位置取りは「中盤」ではなく最終ラインにいることが多い。要はCBの前進守備と同じなので、狩り切れるならいいが裏を取られるリスクも大いに抱えている。

 守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):ゲームプラン次第。ロペスを欠くここ数試合はあまりオープンな展開を好まない。相手のネガトラの方針にもよるが、前半は急がないことが多い。後半、オープンになってからはチャナティップ(オープン展開で前残りしていれば速攻の起点になりやすい)からの速攻が増える傾向。

 セットプレー攻撃:キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。そうでなければ無理せずロングフィード(武蔵やロペスのいる右へ)。
 セットプレー守備:コーナーキックではマンマーク基調。

2.2 広島


 基本戦略:リトリート、相手にボールを持たせての省エネ戦法から頃合いを見てギアを上げる。

 ボール保持:ミシャ式4-1-5のような形でボール保持するが、あまりウイングは高く張らず、またワイドな展開もない。右はシャドー起点のハーフスペース攻略、左は柏がアイソレーションから単騎突撃。

 ボール非保持:試合の入りは5-4-1でリトリート、自陣で中央を固める。相手の出方を見てシャドーを上げてプレス開始位置を高める機会をうかがう。

 攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):リトリート主体。

 守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):ドウグラスヴィエイラがトップなら速攻の優先度は高くない。後半、渡やパトリックを投入すると、縦に速い展開への意識が強くなる。

 セットプレー攻撃:キッカーは森島、川辺等。ゴールキックはロングフィード主体。
 セットプレー守備:コーナーキックではマンマーク+ニアにストーン2。

3.想定される試合展開とポイント

3.1 広島のゲームプランと試合展開


 派手なガッツポーズやインタビューでのパッション溢れる言葉とは裏腹に、落ち着いたゲーム展開を好む城福監督。特に2019シーズンは就任1年目の昨シーズン以上にその傾向が強くなっている。
 2018シーズン、広島のトップスコアラーはパトリック(20点)、次いでティーラシン(6点)、柏(4点)。アシストは柴崎(主に右サイドハーフでの起用、9アシスト)がトップ。2019シーズンはここまで柴崎、柏、ドウグラスヴィエイラが3得点でトップスコアラーとなっている。パトリックの序列が下がり、ドウグラスヴィエイラが重用されていることはそのスタイルの変化を象徴している。
 パトリックの特徴はその運動能力にあり、ゴール前の肉弾戦と、コーナーフラッグ方向に走るプレーに強みがある。ドウグラスヴィエイラはより、ボールを収めるプレーに長ける。札幌の関係者で言うと、前者は都倉、後者はヘイスのようなスタイル。奪ってから縦に速い展開を志向するなら前者だが、後者はボールを収め、試合を落ち着かせてくれる。
 そしてボールを保持していない時は自陣に下がってリトリート。この傾向は2018シーズンから大きく変わらない。1トップのみを前に残して9人ブロックで守る。ボール回収後は、先述のドウグラスヴィエイラの能力を活かしてスローな展開に持ち込むだろう。広大なサッカー村には、1人で敵陣に攻め込んだりシュートを枠に飛ばしたり得点できる選手も時に存在するが、大抵そうした選手は何らか”キズ”(給料水準が滅茶苦茶高い、味方や相手に暴力を振るう、年齢詐称している、時間にルーズ、天皇杯をサボるetc)がある。ドウグラスヴィエイラにはそうしたキズはない。

 よって札幌がボールを持つ展開が基本だろう。広島は後半に攻撃的なカードを切って攻勢に出てくるはず。札幌はジェイのコンディションは徐々に上向くだろうが、後半オープンな展開になると広島に利がありそうだ。かといって、前半広島が引いてくる状況で攻め切ることも容易ではない。いずれにせよ、勝負どころの見極めが重要になるだろう。

3.2 広島の左右非対称アタック


 データを見ると、広島は
・ボールを持たない
・走行距離は多い
・ドリブルが少ない
・攻撃は左サイド偏重
といった傾向がある。これも踏まえて広島のボール保持時の設計と、札幌の対応も含めた展開を予想する。

 広島は中盤センターの1枚(松本)が下がって4バック状の布陣でボールを保持する。これだけ見ると決別したはずのミシャ(森保でも可)式に回帰したか?と思うが、広島はウイングバックのポジションが低い。ミシャはたとえ9人で戦う事態になっても高い位置にウイングを張らせる、”サイドの制空権”は譲らない。
 加えて広島は、その大外サイドプレーヤーへのサイドチェンジをあまりしない。DF(中央の吉野、松本)が一度、攻撃のサイドを決めるとそのサイドからの展開でフィニッシュまで完結を目指す傾向にある。
 そしてシャドーはシャドーストライカーというより、より低い位置でプレーする攻撃的MF。札幌ではチャナティップもそれに近いが、広島は両シャドーともチャナティップのようなポジショニングでプレーする(渡は選手特性としてはストライカーだが、そうした2列目的な振る舞いにも挑戦している)。

 選手特性も踏まえ、左右両サイドで設計が異なっている。右は大外にサロモンソン、ハーフスペースのシャドー(森島の先発が予想される)が起点だが、川辺もシャドーとポジションを入れ替えて前線に進出する。最終ラインの野上と合わせて、3~4人で近い距離を保ってポジションを入れ替えながら、シャドーが引いてDFを引き付けた裏に誰かが抜け出すタイミングを狙っている。
 一方、左サイドは柏のアイソレーション。右とは対照的に、単騎で突っ込むことが許容されている。柏は右利きで、右足に持ち替えてのクロスか、中央方向に切れ込んでのフィニッシュ(クロス、シュート、スルーパスetc)が基本。なので、「柏の右側」はなるべくスペースを空けておく。
右は選手が寄りポジションチェンジ、左は柏をアイソレーション

 札幌は右サイドにルーカスが起用されるなら、柏とのサイドは1on1での斬り合いが予想されるが、ルーカスは恐らくシャドーだろう。となると、柏とのマッチアップは中野。中野はポジショニングで柏を押し込みつつも、不要なボールロストは避ける堅実なプレーを期待したい。となると、誰かが仕掛ける必要がある。

3.3 きれいなアンロペを欠く前線に求められるソリューション


 札幌はひそかにリーグ戦ここ3試合無得点。古巣・広島相手に”きれいなアンロペちゃん”を披露したいところだったが負傷で不在、ジェイもまだコンディションは万全ではなさそうで、福森の魔法が発動しなければ先発メンバーでなんとかする術を考えたい。
 キーマンは右シャドーに入ることが予想されるルーカス フェルナンデス。ルヴァンカップの湘南戦では左シャドーでチャナティップロールを担当し1ゴールと結果を残したが、右シャドーで起用されたガンバ戦では窮屈そうなプレーに終始した。
 ルーカスは右足でのフィニッシュに持ち込みたい。となると狙いどころは広島のWB-CBの間のチャネル。広島は最終ラインはマンマーク基調なので、中野が大外で張ればスペースはできるだろう。ミシャ就任後、右シャドーに右利きの選手を配して機能したのは駒井だけ。ルーカスもロペスとは別のイメージでのプレーが求められるだろう。どうしてもロペスと同じ役割を右シャドーに求めるなら、恐らく金子しか適任者がいない。
ルーカスは中央よりも外側のレーンで活動させた方が得策だろう

 ルーカスと中野を使った右サイドからの崩しを仕込んでおくなら、もう1人ゴール前の枚数が必要になる。日本代表・菅大輝選手ならワイドストライカーとしてその役割を担える。予想されるスタメンのラインナップから考えると、左右でそうした役割分担で割り切ることも手だろう。

用語集・この記事上での用語定義

・1列目:

守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。
攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。

・チャネル:

選手と選手の間。よく使われるのはCBとSBの間のチャネルなど、攻撃側が狙っていきたいスペースの説明に使われることが多い。

・トランジション:

ボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。

・ハーフスペース:

ピッチを5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。

・マッチアップ:

敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。

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