1.予想スターティングメンバー
予想スターティングメンバー |
・札幌:
×(欠場濃厚)…MF駒井、MF中原、FWアンデルソン ロペス、FWジェイ
▲(出場微妙)…なし
・東京:
×(欠場濃厚)…なし
▲(出場微妙)…DFチャン ヒョンス
チャナティップは練習に完全合流が可能な状態で、試合前々日に東京に乗り込んだメンバーに含まれているとのこと。後述するが、この試合も恐らく相手にボールを持たせるので、システムは1-3-4-2-1だろう(ボール非保持時にハイプレスを仕掛けないなら、1-3-2-4-2や1-4-4-2にして局面で枚数を合わせる必要性は薄いため)。右シャドーはまずは守備重視、ボール保持時はルーカスや武蔵を活かすプレーが求められるが、2節前の神戸戦と同じく荒野の起用を予想する。
東京は、左SBで開幕からスタメンを確保しているのは小川。リーグ戦9節からは太田が起用され、小川は右に回り、前節11節は初めてメンバー外だった(理由はよくわからない)。ルーカス フェルナンデスとのマッチアップを考えると、小川を配した方が守備面では効果的だと考えられる。CBのチャン ヒョンスは首痛で前節の磐田戦を欠場。回復が思わしくなければ代役は同じく渡辺だろう。
2.戦術面の一言メモ
(以下、札幌の黒字は前節のプレビューと同じ。青字が変更点)。
2.1 札幌
基本戦略:より多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持:ビルドアップはミシャ式4-1-5。中央3枚がローテーションしながらオープンな選手から前進を図る。ハイプレスを受けるなどして後ろで詰まったら、シンプルに武蔵かロペスへ。躊躇なく放り込む。サイドアタックは右のルーカスの仕掛けが主体。
ボール非保持:相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。ロペスを欠くここ2試合は、相手にボールを持たせてリトリートの傾向がより強まっている。
攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):中盤2枚は即時奪回を目指すが、その位置取りは「中盤」ではなく最終ラインにいることが多い。要はCBの前進守備と同じなので、狩り切れるならいいが裏を取られるリスクも大いに抱えている。
守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):2トップ気味で前残りしやすい武蔵とアンデルソン ロペスをまず使う。ロペスは背負ってのキープと仕掛け、武蔵はターゲット兼裏抜け担当。
セットプレー攻撃:キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。そうでなければ無理せずロングフィード(武蔵やロペスのいる右へ)。
セットプレー守備:コーナーキックではマンマーク基調。
2.2 東京
基本戦略:2トップの推進力を活かしたカウンター狙い。
ボール保持:左サイドからの前進が多い。2トップは常に裏抜けを狙う。左SBや中央に絞ってくる久保からの裏へのスルーパス。
ボール非保持:CBは空中戦に強く、GKの林もサイズがあり、ハイクロスや放り込みへの耐性がある。「CBを中央から動かさないこと」、「2トップを前残りでカウンターの余力を十分に残しておくこと」から逆算して守備を設計する。最終的には、DFがポジションを守った状態でクロスを上げさせるのはOK。そのための時間を2列目の献身により稼いでいるように見える。
具体的には、4-4-2というより4-4ブロックで中央に密集してセット、2トップは前残り。中央を切り、ミドルゾーンでSHが相手のSBをチェックするとともに、相手のSHをSBが捕まえて簡単にサイドで前進させないようにする。ボールと反対サイドは捨てる。簡単に相手のSHまで運ばれることを防ぐ(ハーフスペースをセンターのMFがカバーする時間を稼ぐ)。
攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):簡単に前進させないため、失った後の数秒間はボールホルダーへの圧力は確保する。その間にブロックの枚数を確保。
守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):前残りの2トップが中心。永井が裏抜け、ディエゴ オリヴェイラがより引いた位置で待ち、ディエゴに預けることが多い。特徴は、永井は左サイドに頻繁に流れる。この位置取りはチームとしての約束事になっており、ディエゴに預けられない場合も左の永井の前のスペースに蹴るとファストブレイクが成立しやすい。
セットプレー攻撃:キッカーは久保、小川か太田。ゴールキックはポジショナルなビルドアップと、ダイレクトなビルドアップが半々程度。
セットプレー守備:コーナーキックではマンマークにゾーンを併用。
2.3 東京の攻守の設計
2.3.1 FWのためのスペースを作る
日本人で3本の指に入る快足FW永井、2018年にJ1で2番目に多いドリブル成功数を記録したディエゴ オリヴェイラの2トップを擁する東京の攻撃は、この2トップの能力を活かしたファストブレイクが中心。攻守両面で2トップの能力を活かす設計が感じられる。
東京の2トップは前方にオープンなスペースがあると活きる。活用できるスペースを最大化する、まず相手にボールを持たせて自陣に引く。
2トップの前方にスペースを作るため、ボールを持たせて自陣に引く |
2.3.2 DFとGKのキャラクターからの逆算
守備は4-4-2でセットするが、2トップの仕事は、ボールを回収した後に即座にカウンターに転じ、準備が整わない相手DFを強襲すること。よって、永井とディエゴ(特にディエゴ)はあまり守備に加わらず、ハーフウェーライン付近で前残りしていることが多い。永井は状況を見てディエゴの1枚後方で相手の中盤の選手をケアすることもあり、その場合は4-4-1-1に近い形にもなるが、2列目の守備には加わらない。
GKの林とCBの2人はサイズがあり、特にハイクロスに強い。一方でSB、特に右の室屋はあまり高さがない。そのためCBはゴール前から動かせない。CBの脇を固めるように中央に密集して計8枚でブロックを作るが、
GKとCBが中央にいる状態ならクロスには強さを発揮 |
札幌のような、ピッチをワイドに使い、かつアウトサイドから仕掛けることができる選手を擁するチーム相手には、中央に密集しているだけでは守り切れず、サイドアタックをケアする必要がある。この時にSBがワイドに出ると、CBは中央から動かない(スライドしない)のでハーフスペースが空きやすい。
4バックでワイドに攻めるチームに対応するとハーフスペースの防備がポイントになる |
ハーフスペースは中盤センターの選手が埋める。
すると相手は、大外もハーフスペースも防がれるとサイドを変えようとする。この時、東京の2トップは先述の通りあまり守備に関与しないので、中央はFWとMFの間が空きやすくなっている。
CBを動かさないためハーフスペースはMFが埋めるが、逆サイドに振られると… |
2.3.3 ハードワークの限界点を越える前の守備での仕掛け
サイドを変えられると、また同じようにハーフスペースを防護しながら、大外で幅をとる選手をケアする必要があるが、先ほどの相手の右サイドの攻撃と同じように中盤センターの選手がハーフスペースを守ろうとすると、中央から誰もいなくなってしまう(髙萩は中央に戻ってくるが、ボールよりも速く動けないし何度は繰り返せない)。
そのためサイドハーフの選手(図では久保)がプレスバックして大外を守ることが多いが、これを何回も繰り返すと久保や東のような、攻撃で運用したい選手が疲労し、また相手ゴールからかなり遠い位置でプレーしなくてはならなくなる。
逆サイドに振られると同じような対応を続けることが徐々に困難になる |
こうなる(中央を固めていても、何度もサイドを変えられる)とジリ貧に陥る。だから、その前に守備で仕掛ける。相手のサイドで幅を取る選手にボールを供給する選手を見極め、縦を切るように距離を詰める。受け手にもSBが寄せ、距離を詰めて簡単にコントロールさせないようにする。守備で何度も連続、連動してアクションを行うのは負担が大きいので、振り回されないように、最初にサイドにボールが入るタイミングで中央を捨てて潰しに行く。
中央密集だがサイドを支配される前に速めに潰す意識がある |
それでも全般に、東京の2列目は仕事が多い。中盤中央の2人は70分以降運動量が落ち、オープンになりやすい傾向もある。
2.3.4 ファストブレイクに備えたFWの位置取り
DFとMFがアクションを開始している時、2トップ、特に永井は左寄りのポジションに移動し、その爆発的なスピードを発揮させるタイミングを虎視眈々と狙っている。この理由は、一つは相手のCBは中央を守っているので、サイドからアクションを開始すると、DFライン背後のスペースで捕まりにくいため。もう一つは、位置取りをチームとして決めておくことで、トランジションの際のアクションをパターン化できる(奪ったら左前方に蹴る、が決まっていれば判断の必要がなくなり、その分負荷が減る)ためだと考えられる。
左サイドは永井が走るので、左SHの東のポジティブトランジション時の負荷は減る。また、久保は左寄りに動く永井とディエゴを使うため、中央方向に寄ってくる。
3.予想される試合展開とポイント
3.1 我慢比べ
東京は、ボールを持たない方が都合がいいチーム。2018シーズンのデータだが、ボール支配率を高い方からソートした10試合で3分7敗。逆に支配率40%を割った6試合は4勝2分。2018シーズンの後半戦は、相手にボールを持たされる試合が多くなったことが失速につながったとも見れる。
2018シーズンの前半戦/後半戦の対戦相手別ボール支配率 |
逆に札幌は、ボールを持てれば勝ち、持てなければ負け、とは言えないが、基本的には本来ボールを持ちたいと考えているチーム。しかしアンデルソン ロペスを欠くここ2試合はいずれもボールを持たせる戦い方を選択している(松本戦は前半は抑え目で、後半は勝負に出た)。
恐らく序盤は静かな展開になるだろう。札幌は”習性”を抑えた試合運びができるか。スコアレスで折り返せば、ホームの東京が勝ち点3を狙って前に出てくることが想定される。東京のフィニッシャーはディエゴ、久保、永井。永井がピッチ上にいる70分を凌げれば、失点のリスクは幾分か低下する。
ただし、両チームとも良質なキッカーがいる。昨年8月の対戦ではセットプレー(CKからチャン ヒョンスの得点)から試合が動いている。キッカーは互角、高さは東京がやや優位という印象である。
3.2 福森への対応
札幌のボール保持攻撃は福森を起点にしたい。単に福森個人のクオリティだけが理由ではなく、構造的に左サイドから攻めた方が東京は困るはず。
福森には3つの選択肢がある状況が予想される。同じサイドの菅、ハーフスペースのチャナティップ、そして中央の宮澤。ここで、多くのチームはチャナティップにマンマーク気味に対応する。東京はゾーン基調だが、恐らく橋本はかなりチャナティップを意識して動くことになるだろう。
そうなると、室屋がサイドの菅に対応した時に橋本が室屋の背後を守ることは不可能。よって、室屋が菅に強く出られないと、菅のクロス爆撃が見られるかもしれない。
ただ札幌が本当に使いたいのは、よりクオリティのある、右のルーカス。右で張るルーカスが勝負するために望ましい形を作るには、左サイドで初め展開し、東京の守備を左に寄せてからサイドチェンジしたい。サイドチェンジは、久保が福森にタイトに付くなら、チャナティップか宮澤経由。宮澤は永井しか対応できない。永井があまり宮澤の対応に追われる状況になると、ファストブレイクの脅威を削ぐことができるので札幌としては好都合。
札幌左サイドで福森が持つと複数の択を突きつけられる |
まとめると、札幌の視点では、福森が(久保に消されず)左サイドで起点になれれば、以下のように東京が望ましくない構図を迫れると予想する。
・菅とチャナティップの二択で、どちらかをフリーするか、ハーフスペースを放置するか、の三択を迫れる。
→恐らく東京は一番安牌な菅を捨てると予想する。
・永井が宮澤に対応して前残りをやめるか、宮澤を放置して福森→宮澤→ルーカスのルート開通を見ているか、の二択を迫れる。
→永井が下がって宮澤をケアすると予想する。
札幌戦ではどのチームも福森対策で、右サイドの守備をテコ入れして臨んでくることが多い。札幌ボール保持時の展開は、久保が福森にどれだけやれるか(格的には「福森が久保くんさんにどれだけ通用するか」かもしれないが、、、)で決まるのではないか。
もう一つ、左サイドからの組み立てが機能するなら、進藤は後方に残しておく運用ができる。永井が走る展開になるなら、永井にはキム ミンテを突っ込ませるのではなく、まず進藤を当ててミンテは中央に残しておく方が、札幌としては精神衛生上よろしいはずである。
左サイドから前進できるなら進藤はネガトラ対応に専念できる |
3.3 菅ちゃんさんvs久保くんさん
札幌も東京にボールを持たせるだろう、という予想が当たれば、札幌が自陣で5-4-1のブロックで東京を迎撃する局面も何度かみられるはず。札幌はシャドーが下がって東京のSBを監視、CBは放置することになるだろう。
東京は遅攻では森重の左サイドから突破口を探ることが多い。森重や髙萩がボールを動かして、裏に走る永井に放り込んだりというアクションは度々繰り出している。
札幌が引くと東京は左から打開を図るはず |
ただ、東京の遅攻で一番警戒しなくてはならないのは、密集地帯でも前を向け、2トップへのラストパスもミドルシュートも持っている17歳の久保。福森がディエゴ オリヴェイラへの対応で忙しくなるなら、バイタルエリアの番人・深井と、菅の絞っての対応が重要になる。
用語集・この記事上での用語定義
・1列目:
守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。
攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。
・守備の基準
守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。
0 件のコメント:
コメントを投稿