2019年5月25日土曜日

プレビュー:2019年5月25日(土)明治安田生命J1リーグ第13節 北海道コンサドーレ札幌vsガンバ大阪

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

・札幌:
 ×(欠場濃厚)…MF駒井、FWアンデルソン ロペス
 ▲(出場微妙)…なし
・ガンバ:
 ×(欠場濃厚)…GK谷、DF藤春、FW渡邉、FW中村
 ▲(出場微妙)…なし

 札幌はジェイが復帰見込み。即スタメンはないだろうがベンチ入りが期待される。ルヴァンカップでは中原と石川もメンバー入りし、徐々に戦力が揃ってきた。ジェイの復帰により攻撃のカードが増えるため、右シャドーに最初から金子を使う攻撃的なスタメンもなくはない。ただ5日間で3試合(大学の公式戦含む)をこなす過密日程であることから、恐らくこの試合も荒野か早坂だろう。
 ガンバは開幕当初こそ実績のあるメンバーがスタメンに名を連ねたが、2勝5敗と出遅れて迎えた8節の大分戦では3バックの3-4-2-1を採用し、アデミウソン、ファン ウィジョ、小野瀬をベンチスタートとする荒療治に出る。そして前節の大阪ダービーは開幕から最もメンバーをいじって挑んだ。3バックの右に入った高尾、左WB福田、中盤インサイドハーフの高江はいずれも初スタメン、アンカーに入った矢島も2試合目のスタメンだった。高江はアシスト、高尾は完封勝利と結果を残してもいる。
 予想は恐らく大分戦と同じく3バック、ただし前節ダービーでの勝利も踏まえ3-1-4-2。メンバーは、消化試合だった水曜日のルヴァンカップ(5/22、A松本戦)で温存されたメンバーが中心だろう。となると前節セレッソ戦のメンバーが主体だが、大分戦でもシャドーで先発し、ルヴァンカップでも出番がなかった藤本、左CBに本来適任であるキム ヨングォンの起用はあるかもしれないと予想する。


2.戦術面の一言メモ

2.1 札幌


 基本戦略:より多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。

 ボール保持:ビルドアップはミシャ式4-1-5。中央3枚がローテーションしながらオープンな選手から前進を図る。ハイプレスを受けるなどして後ろで詰まったら、武蔵かロペスへ躊躇なく放り込む。サイドアタックは右のルーカスの仕掛けが主体。

 ボール非保持:相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。ロペスを欠くここ3試合は、相手にボールを持たせてリトリートの傾向がより強まっている。

 攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):中盤2枚は即時奪回を目指すが、その位置取りは「中盤」ではなく最終ラインにいることが多い。要はCBの前進守備と同じなので、狩り切れるならいいが裏を取られるリスクも大いに抱えている。

 守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):2トップ気味で前残りしやすい武蔵とアンデルソン ロペスをまず使う。ロペスは背負ってのキープと仕掛け、武蔵はターゲット兼裏抜け担当。ロペスがいない状況では、チャナティップに預けることも。

 セットプレー攻撃:キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。そうでなければ無理せずロングフィード(武蔵やロペスのいる右へ)。
 セットプレー守備:コーナーキックではマンマーク基調。

2.2 ガンバ


 基本戦略:後半勝負。前半は相手の出方を見た上で、オープンな撃ち合い、トランジションゲームを避ける。相手が攻め疲れてから流動的な攻撃を解禁し、個人のクオリティで仕留める。

 ボール保持:4バックならSB、3バックならWBが横幅をとり、サイドからの前進が多い。ゾーン3に侵入するとボールサイドに2列目の選手が寄ってアイディアを発動させる。

 ボール非保持:基本的にはリトリートで体力温存。ゾーンディフェンス基調でボールと味方を基準にボールサイドにスライドして守る。ゾーン1、自陣ゴール前でも人を捕まえるよりもスライドを優先するのがJリーグでは珍しい。ただし縦の圧縮の意識は強いが、ボールへの圧力はそこまででもない。サイドに振られると2回目以降はスライドが追いつかないことも。

 攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):ゾーン3では即時奪回を狙う。ゾーン2では無理せずリトリート。

 守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):速攻を狙う場合は、ファン ウィジョを前線左側に残らせて単騎で突撃させる。

 セットプレー攻撃:キッカーは遠藤がいれば遠藤。ゴールキックはロングフィードが多いが。
 セットプレー守備:コーナーキックではゾーン基調。

3.予想される試合展開とポイント

3.1 ガンバのゲームプランと札幌の金髪3連星


 すっかり陳腐化しているが、いつぞやの指標である。ガンバはトラッキングデータやボール支配率をみると、札幌とほぼ同じ「平均的」グループにいる。
グルーピング

 ただ実態としては、ガンバは相手に合わせる戦い方をしてくることが多い。すなわち相手がボール保持に拘りのあるチームなら引く。相手が持たせるチームならガンバがボールを持つ展開になる。ここまでの12節で、清水、FC東京、広島相手にはボール支配率60%越え、逆にマリノス、大分相手には40%程度とかなりばらつきがある。
 前節はホームでの大阪ダービー、最もテンションが上がるシチュエーションで、序盤からガンバがボールを保持する展開になった。しかしガンバがセレッソの4バックに対し、3バックの配置的な優位性を活かしたビルドアップ等、効果的な前進を開始できたのは、前半25分頃のセレッソのディシプリンが微妙に乱れ始めてからの時間帯で、ガンバが仕掛けているという印象は感じられなかった。
 これらの状況から、札幌相手ならば、5トップによるアタックを警戒することもあり、アウェイのガンバはまず札幌にボールを持たせると予想する。

 ガンバが2トップの1-3-1-4-2なら以下のマッチアップが想定される。見ての通り、ガンバの中盤3枚の”脇”がポイントになる。前節セレッソはこの位置に人を配してガンバのブロックを揺さぶっていた。一方ガンバの3枚の振る舞いは、最優先タスクである中央封鎖の意識が強く、スライドは控えめ、”脇”には目を瞑っていた。
札幌ボール保持時の予想される配置と狙いたいスペース

 札幌は”脇”でプレーできそうな選手はいずれも左サイド。福森とチャナティップである。ここ数試合の傾向から、恐らくチャナティップが降りて、福森はサイドで高い位置を取ると予想する。サポーターの皆さんは見覚えがあると思うが、金髪3人が左サイドで旋回するようにポジションを変えるいつもの形。
 となるとガンバは「チャナティップどうすんの」に対する解が最初のポイントになる。マッチアップから考えると右CBの選手。高尾の先発が予想されるが、ここにはしつこい守備ができる選手を置きたい。
札幌の予想される左サイドでのポジションチェンジ

 もう一つは、福森の攻撃参加をどうするか。福森についていく選手を用意しないとサイドで高精度の砲台がフリーになる。この点から、3-1-4-2(守備時5-3-2)ではなく、札幌とミラー布陣になる3-4-2-1(守備時5-4-1)の採用も考えられる。その場合は恐らくアデミウソンを守備負担が低いサイドに下げて(もしくは最初から使わない手もある)、無理が効く選手が福森にずっとついていくような対応になるだろう。
ガンバは5-4-1での対抗も予想される

 札幌が左サイドから攻撃することの重要性はガンバのトランジション対策にもある。ファン ウィジョとアデミウソンは、いずれも左サイドでのプレーが得意。どちらか1枚が前線に残って札幌の攻撃失敗→カウンターを狙うなら、ガンバの左=札幌の右サイドに人を残しておきたい。進藤の仕事はファン ウィジョ対策になるだろう。

3.2 既視感のあるパターン


 キム ヨングォンがスタメンでないとすれば、ガンバは最終ラインとアンカーの計4人のビルドアップ部隊が全員右利き。このこともあり、ガンバのボール保持時の展開は右サイドが中心になりそうだ。もう一つ根拠を挙げると、中盤インサイドハーフでの出場が予想される倉田と高江のキャラクターで、倉田は足元でボールを受けるタイプ。高江はよりスペースに飛び出す。ガンバはWBが高く張り出さないので、前進したいなら、前に飛び出す高江がいるサイドの方がバランスが良いだろう。
ガンバボール保持時の予想配置

 右CBの高尾を起点とするパターンは2つ考えられる。一つはWBの小野瀬を経由しての前進、もう一つはハーフスペースへの縦パス。
 前者はよりセーフティな選択肢である。札幌は小野瀬に対し、日本代表の菅大輝選手というマッチアップが考えられるが、小野瀬が引いたポジションを取ると、菅大輝選手-福森の間のチャネルの管理が重要になる。あれ…どこかで見たような…第6節の大分戦でボコボコにされた構図とほとんど同じである。ここに高江が走る展開になると嫌な記憶が蘇る。
右CB高尾からの①WB経由での前進、②ハーフスペースに陣取る選手への縦パス

 もう一つは、札幌の中盤センター2人の脇にアデミウソンが顔を出しての縦パス。元U-23ブラジル代表というほどの怪物感は年々薄れてきたアデミウソンだが、バイタルエリアでボールが入ると危険なことには変わりない。中央で収まると、ガンバ得意の2列目が集合してのアタックにも発展する。札幌は左サイドで、何を優先するか、誰が誰を見るか、を明確にしておきたい。

用語集・この記事上での用語定義

・1列目:

守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。
攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。

・守備の基準:

守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。

・(ポジションの)スイッチ:

配置を入れ替えること。

・ゾーン3:

ピッチを縦に3分割したとき、主語となるチームから見た、敵陣側の1/3のエリア。アタッキングサードも同じ意味。自陣側の1/3のエリアが「ゾーン1」、中間が「ゾーン2」。

・チャネル:

選手と選手の間。よく使われるのはCBとSBの間のチャネルなど、攻撃側が狙っていきたいスペースの説明に使われることが多い。

・トランジション:

ボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。

・ハーフスペース:

ピッチを5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。

・マッチアップ:

敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。

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