2018年9月25日火曜日

2018年9月23日(日)19:00 明治安田生命J1リーグ第27節 北海道コンサドーレ札幌vs鹿島アントラーズ ~筋肉を取って冗長性を捨ててみた~

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0.1 スターティングメンバー

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、石川直樹、福森晃斗、MF白井康介、宮澤裕樹、深井一希、菅大輝、都倉賢、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK菅野孝憲、DFキム ミンテ、MF兵藤慎剛、早坂良太、荒野拓馬、小野伸二、三好康児。駒井はこの週後半から全体練習に合流しており、スタメン復帰を予想するメディアもあったがメンバー外(つい先日、駒井よりも3割ほど重い怪我をした筆者の感覚では今週復帰だとしたら早すぎるとの印象だったので、妥当な選択となった)。
 前節悪夢の7失点負けから8日。何かを変えてくることは予想でき、筆者は三好のスタメン復帰、トップにジェイ起用を予想したが、ミシャの決断はジェイ・都倉のツインタワーでのスタート。前節は明らかにコンディションが悪い中で前線起用の荒野が全開で走り回る空元気戦法だったが、コンディションが整ったこの試合は合理的に、攻めの姿勢に戻したい、そう考えるとジェイのスタメン起用は予想できたが、好調の都倉も簡単に外したくないとの考えかもしれない。そしてキム ミンテに変えて石川。前節の記事でも書いたように、大量失点の責任はミンテにはないと考えているが、これまでのプレーぶりも踏まえての"合わせ技"で、一度外すことを考えたのだろうか。
 鹿島アントラーズのスターティングメンバーは4-4-2、GKクォン スンテ、DF西大伍、チョン スンヒョン、犬飼智也、山本脩斗、MF永木亮太、レオ シルバ、遠藤康、安西幸輝、FW土居聖真、鈴木優磨。サブメンバーはGK曽ケ端準、DF内田篤人、町田浩樹、MF三竿健斗、安部裕葵、FW金森健志、セルジーニョ。AFCチャンピオンズリーグでは日本勢で唯一勝ち残っており、9/18(火)に行われた準々決勝2ndレグでもアレシャンドレ パトを擁する天津権健に完勝し、クラブ史上最高となる準決勝進出を果たした。
 Jリーグではここまで26節時点で勝ち点39の7位という状況から、ACLで起用されている選手がどちらかというとフルメンバーだと考えられる。昌子、伊東、レアンドロ、中村が負傷離脱中、夏に植田がサークル・ブルッヘに、金崎がサガン鳥栖に去ったが、シーズン当初からターンオーバーを継続してきた成果か、ここにきて選手層の厚さが際立っている。特にここ最近は、夏にサントスから加入したセルジーニョ、金崎と入れ替わりで鳥栖から加入したチョン スンヒョン、そしてJリーグとACLにフル回転する三竿健斗といった選手達の存在感が増している。

0.2 前回のおさらい(鹿島の伝統)


 以前にも書いた通り、鹿島は伝統的に人への強さが特徴のチームであり、特にその守備は人を捕まえ、局面でのデュエルに勝つことが大きな部分を占める設計になっている。前回3月の鹿島での対戦では、比較的高い位置から札幌の選手を捕まえていた鹿島。しかしミシャ式4-1-5の札幌に対しては、4-4-2で守備を行うと、マッチアップが噛み合わないエリアでマーク関係が不明瞭になる。
前回のおさらい①:札幌4-1-5と鹿島4-4-2のかみ合わせ

 その不明瞭さの解決を選手個々の判断に任せておくと、基本的にはボールに近い選手から捕まえていこうとしても、鹿島の選手の間にポジショニングされたりすると、必ずオープンになってしまう選手が現れて、危険なエリアでオープンにしてしまう。
前回のおさらい②:近い人を捕まえるだけでは破綻してしまう

 この時は結局は後半途中から5バックに変えることで、マッチアップを合わせて解決を図っている。
前回のおさらい③:5バックに変えると人を捕まえやすくなる

0.3 前々回のおさらい(鹿島の強さ)


 今から1年前を回想する。柏、FC東京相手に2試合連続の2ゴールと、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったジェイ・都倉のツインタワーが札幌ドームで当時首位の鹿島に挑む。この時鹿島は、1トップ2シャドーに”擬態”しつつゴール前に侵入してくる大型FW2人に対し、SB山本が中央に絞ってゴール前、ペナルティエリア幅での守備を強固にする。生粋のウインガーを起用していないヨモ将札幌に対して、サイドは多少後手に回ろうとも中央を固めていればそう問題はないという判断。更に中央CBには、半年後ロシアワールドカップのメンバーに選ばれる昌子と植田がジェイを中央で迎撃し、多少ミドルゾーンで後手に回っても、ゴール前だけは譲らない。ラスト6試合で8ゴールと爆発したジェイが唯一完封されたのが鹿島だった。
前々回のおさらい:都倉・ジェイへの放り込みでは鹿島最終ラインを割れず

2018年9月17日月曜日

2018年9月15日(土)19:00 明治安田生命J1リーグ第26節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌 ~ダイナモの停止とブラックアウト~

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0.1 スターティングメンバー


スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF早坂良太、宮澤裕樹、深井一希、菅大輝、荒野拓馬、チャナティップ、FW都倉賢。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF兵藤慎剛、白井康介、小野伸二、FW宮吉拓実、ジェイ。川崎から期限付き移籍中の三好は契約条項により出場停止。前節右太もも痛で欠場のジェイはベンチスタート。前節前半で左手を痛めて交代した駒井は手首の骨折が判明、遠征に帯同していない。主力選手の欠場以上に、国際Aマッチデーウィーク中の9/6未明に発生した北海道胆振東部地震の影響で、前節神戸戦後の9/2-9/7は結果的に6日間のオフとなったことが懸念材料である。
 川崎フロンターレのスターティングメンバーは4-2-3-1、GKチョン ソンリョン、DFエウシーニョ、奈良竜樹、谷口彰悟、車屋紳太郎、MF大島僚太、エドゥアルド ネット、家長昭博、中村憲剛、阿部浩之、FW小林悠。サブメンバーはGK安藤駿介、DF登里享平、舞行龍ジェームズ、MF長谷川竜也、鈴木雄斗、田中碧、FW知念慶。奈良は8/1の第19節浦和戦以来7試合ぶりのスタメン復帰。その間谷口の相方となるCBを務めていたのは車屋、左SBは登里が務めていた。森保新監督の初陣となるはずだった札幌ドームでのチリ戦(9/7)、3-0で勝利したコスタリカ戦(9/11)を戦うA代表のメンバーに車屋、大島、守田、小林が招集され、小林はスタメン出場、車屋と守田は途中出場しているが、守田は故障を抱えて帰ってきておりこの試合はメンバー外。逆に代表選前の故障で招集を辞退した大島は間に合い、スタメンに名を連ねた。

0.2 川崎に対する二つの選択肢


 川崎はリーグ有数のボールポゼッション・遅攻型のスタイル。遅攻型のチームに対する主な対抗策として、ゴール前に人を並べてプレーするスペースを消す(モウリーニョ風に言うと「バスを停める」)やり方が一つ、もう一つはビルドアップの段階から圧力をかけてボールを取り上げることで、そもそも狙い通りのボールポゼッションをさせないという考え方がある。
 札幌の、直近の川崎との対戦2試合を振り返ると、昨年8月の等々力での対戦では前者…ペナルティエリアの幅に5人のDFを並べて守ることで接戦に持ち込んだ。今年7月の厚別での対戦では後者…ある時間帯までは、前線の高い位置から守備を敢行して川崎に簡単に札幌陣内に侵入させないという戦い方を採っていた。
 7月の試合で札幌が前から守備をした理由は、ミシャの言うところでは、「高さで分があるために蹴らせて札幌のDFと川崎のFWが競る展開に持ち込みたかった」。しかし実際には、札幌の目論見はジェイの守備能力の問題だったり、中村憲剛や大島のコメントにあるような試合中の修正・対応能力の高さによって札幌のハイプレスは機能不全となってしまった。
「相手は人に来る守備だったので、スペースは空いていた。そこに顔を出してくれる前線の選手がいたら、そこにボールをつけること。」(大島)「相手はマンツーマンで来ていたので、当てて入っていく動きがポイントになっていた。」

0.3 どこまで人を投入してよいものか


 川崎はの攻撃の特徴は端的に言うと、自陣ビルドアップ~ミドルゾーンにおいてボール周辺にどんどん人を増やし、強引にマークが外れた状態を作り出してボールを前に運ぶ。それは時に、「増えた」分の選手が頻繁に被ったポジションを取っていて、秩序的というより無秩序、感覚的にも見える。秩序だっているとしても、無秩序寄りの秩序というか。このやり方がうまくいっているのは、戦術としての整備もあるのだろうが、それ以上に選手間でのコミュニケーション(かつてジュニーニョが憲剛に「常に俺を見ろ」と言っていたように)によるところが大きいと思う。
 この「どんどん人が増える(=局面に人を追加投入する)」が札幌にとっては厄介で、何故なら札幌は伝統的に人を基準とする守備しかできない(スペース管理の概念を一定期間、継続的に導入していたのは三浦俊也氏のみではないか)上、5バックをゴール前になるべく残しておきたいという志向があるため。家長や中村は、後方のGKやCBのところで人が不足していると察知すると、自身が下がることで局面に人を増やすが、これに札幌のマーカー(例えば家長はかみ合わせ上、福森と頻繁にマッチアップする)が家長にどこまでもついていくことは、最優先で守るべきゴール前を放棄することになりかねないので難しくなってしまう。

2018年9月14日金曜日

2018年8月19日(日)13:00 明治安田生命J1リーグ第23節 北海道コンサドーレ札幌vsFC東京 ~プランBは身を助く~

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スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF駒井善成、荒野拓馬、深井一希、菅大輝、都倉賢、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF菊地直哉、MF稲本潤一、白井康介、早坂良太、FW内村圭宏、宮吉拓実。前節途中交代した石川はベンチ外で、菅がスタメンに復帰。宮澤は左足首痛で欠場。菊地は今シーズン初のメンバー入り。2月のキャンプ期間中に左膝外側半月板損傷を負い、手術後リハビリを続けていたが、7月から全体練習に合流していた。
 FC東京のスターティングメンバーは4-4-2、GK林彰洋、DF室屋成、チャン ヒョンス、森重真人、太田宏介、MF東慶悟、米本拓司、髙萩洋次郎、大森晃太郎、FWディエゴ オリヴェイラ、永井謙佑。サブメンバーはGK大久保択生、DF小川諒也、丹羽大輝、MF品田愛斗、FWリンス、富樫敬真、前田遼一。橋本は右ハムストリングス筋挫傷で離脱中。梶山は7/16に新潟に期限付き移籍、丸山は7/4に名古屋に完全移籍、久保建英は8/16に横浜F・マリノスに期限付き移籍でそれぞれチームを去った。岡崎はアジア大会を戦うU-21日本代表に選出され離脱中。中断期間明けの6試合は3勝3敗とややペースが落ちてきた。7/5に甲府から期限付き移籍で加入したリンスはこのうち5試合に途中出場し、2試合で決勝点を挙げるなど切り札となっている。

2018年9月2日日曜日

2018年9月1日(土)14:00 明治安田生命J1リーグ第25節 北海道コンサドーレ札幌vsヴィッセル神戸 ~札幌のイニエスタ~

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0.1 スターティングメンバー


スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF早坂良太、宮澤裕樹、深井一希、菅大輝、駒井善成、チャナティップ、FW都倉賢。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF白井康介、荒野拓馬、小野伸二、FW内村圭宏、宮吉拓実。ジェイは右太もも痛で欠場(金曜日の練習を回避していた)。前節累積警告4枚で出場停止だったチャナティップ、8/15の第22節ガンバ大阪戦で負傷した石川が復帰し、選手配置もいつもの形に戻してきた。
 ヴィッセル神戸のスターティングメンバーは4-1-2-3、GKキム スンギュ、DF三原雅俊、大崎玲央、渡部博文、アフメド ヤセル、MF三田啓貴、藤田直之、アンドレス イニエスタ、FW郷家友太、長沢駿、ルーカス ポドルスキ。サブメンバーはGK前川黛也、DF那須大亮、ティーラトン、藤谷壮、MF大槻周平、FWウェリントン、田中順也。数試合の実験を経て、イニエスタは定位置の左インサイドハーフ、ポドルスキは右ウイングという形で落ち着きつつあったがこの日はやや異なる形だった。夏のマーケットで最終ラインに大崎とアフメド ヤセル、前線に古橋亨梧と長沢というスタメンクラスの選手を加えた一方で、チョン ウヨンはカタール(アル・サッド)へ移籍。外国人枠の割を食うと思われたウェリントン及び「ウェリボール」も健在である。

0.2 積み残された問題点


 前回神戸ホームでの対戦では、ポドルスキを欠く神戸は序盤からウェリントンへのロングフィードを多用し、札幌最終ラインにとっては分の悪い肉弾戦に持ち込まれた格好となった。
 「ウェリボール」対策として、ボールの受け手(ウェリントン)を潰すことが難しいならば、①ターゲットが競った後の対応(セカンドボールの処理)に注力する、②そもそもターゲットに簡単に蹴らせないようボールの供給役にプレッシャーをかける、といった対策が考えられるが、①については、神戸は縦幅を使うことで札幌のセカンドボール回収が困難な状況に追い込んだ。
対ウェリボールの問題点①(縦に引き伸ばされセカンドボール回収が困難)

 そして②については、守備時5-2-3⇔5-4-1の陣形で戦う札幌は基本的に前線守備に3枚しか割かないことが多い。状況によっては中盤センターの深井・宮澤のいずれかを前線に投入することもあるが、それでも最大で計4枚となり、↓の図のように神戸がふぃーりどプレイヤー5人以上でビルドアップを行うと、人を意識した守備では必ずカバーしきれない選手ができてしまう。結果、ボールの出所も抑えられない、ウェリントンも抑えられない、セカンドボールも拾えないということが同時多発的に発生した末の完敗だった。
対ウェリボールの問題点②(札幌の「人を意識した守備」では4バックでのボール保持に対して分が悪い)

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