2017年11月6日月曜日

2017年10月29日(日)16:00 明治安田生命J1リーグ第31節 北海道コンサドーレ札幌vs鹿島アントラーズ ~特化型チームの挑戦~

0.プレビュー

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF菊地直哉、横山知伸、福森晃斗、MF早坂良太、荒野拓馬、宮澤裕樹、石川直樹、FW都倉賢、チャナティップ、ジェイ。サブメンバーはGK金山隼樹、DF河合竜二、MF兵藤慎剛、稲本潤一、小野伸二、FW金園英学、菅大輝。兵藤がサブに復帰した以外は前節と同じメンバー。この試合に勝ち、16位・サンフレッチェ広島が敗れると3試合を残してJ1残留が決まる。
 鹿島アントラーズのスターティングメンバーは4-4-2、GK曽ケ端準、DF西大伍、植田直道、昌子源、山本脩斗、MFレオ シルバ、三竿雄斗、遠藤康、レアンドロ、FW金崎夢生、土居聖真。サブメンバーはGKクォン スンテ、DFブエノ、伊東幸敏、MF中村充孝、安部裕葵、小笠原満男、FW鈴木優磨。水曜日に天皇杯準々決勝の神戸戦を120分間(&PK)を戦い、中3日で臨むアウェイゲーム。天皇杯に先発したメンバーから7人を入れ替え、永木とペドロ ジュニオール(故障との報道)は帯同外、クォン スンテ、ブエノ、伊東、小笠原、鈴木がベンチスタート。2位川崎とは、この試合の段階で勝ち点差は2。


1.前半

1.1 ストロングポイントは通用するか

1)使いどころを考えよう


 前回、6月の鹿島での対戦時は開始2分の山本脩斗の得点を皮切りに、前半30分までで3ゴールが生まれて勝負は決した。この試合が典型だが、鹿島相手に先行を許すと、鹿島は撤退してブロックを組んでカウンター狙いに徹するので、ブロックを崩す手段に乏しい札幌のようなチームにとっては攻略が難しくなる。よって、札幌としては前回のように開始早々の失点は避けたい(当たり前だが)。
 ただ、失点しないようにといって撤退していれば守れるものでもないのがサッカーであり、今の札幌の現実である。先述の山本の得点もまた、今シーズンの札幌がずっと直面している課題だと思うが、ゴール前を固めることと、ボールに対して圧力をかけることの両立が必要で、それができないチームは、何らか別の手段を講じることも考えなくてはならない。

 そうした考えもよぎる中でとられた「別の手段」の一環が、この試合、序盤(開始15分ほど)に札幌が仕掛けていたロングボール戦術だったのだと思う。ボールを回収すると、シンプルに前線の都倉とジェイに当てるのだが、この時、競り合うポイントとして、都倉もジェイも鹿島のCB…昌子と植田の周辺を避けていた。
 鹿島は攻撃の組み立て時、SBの西と山本が張り出してサイドでのパス経路を確保する。西は所謂アラバロールというか、中央に入り込んで相手のFW脇のエリアを利用する形に変わることもあるが、スタートポジションは基本的にサイド。そして2列目のMFが中央に絞る形が鹿島の基本形で、最終ラインはCB2枚だけにしておけないので、ボランチの2枚は後方に重心を置いたポジションを取ることが多い。
 この時、札幌がボールを回収すると、鹿島のSBの背後が空きやすくなっているので、ここが狙いどころの一つ。もう一つは、ボランチのレオシルバと三竿健斗のところ。両者とも180センチ程のサイズはあるが、昌子植田よりはマシ、ジェイなら勝てるとの考えだったと思う。前回は都倉とジュリーニョのコンビが昌子と植田に地上戦、空中戦共に完敗だったが、前線がそれなりに持ちこたえてくれなければ、単なるボール放棄で終わってしまう。
 どちらかというと、都倉やジェイがサイドに流れるのがファーストチョイスで、このボランチ周辺はセカンドチョイスだった。
奪った後はシンプルに当てる

2)攻防一体の狙い


 ロングボールを蹴ることの狙いは2つあり、1つはボールを前進させ、攻撃機会を作ること。もう1つは、最終ラインを押し上げて鹿島を自陣に閉じ込め、札幌ゴールから遠ざけることにあったと思う。
 横山を中心とした札幌の3バックは、身体的な速さという点ではイマイチだが、ここ数試合、再び横山が河合に代わって3バックの中央に入った試合では、裏を突かれるリスクがありながらも最終ラインを高く保とうとの姿勢がみられる。それによって、中盤がコンパクトになり、また陣形を押し上げてFWに当てた後のセカンドボールを拾いやすくなり、ジェイや都倉に当てるプレーが効果的になりつつある。
 また、ペドロ ジュニオールがいない鹿島は、ロングカウンターの脅威が相対的に下がっていて、ある程度裏にスペースを与えても、永井謙佑のようなFWと対峙した時ほどの脅威はないとの考えもあったと思われる。28分に横山のミスから土居にボールを掻っ攫われて独走しかけたが、数メートル後方から戻ってきた荒野に追いつかれていたが、結果的にはこの選択の正しさが立証されることともなった。

3)波状攻撃


 序盤、札幌のロングボールからの波状攻撃が何度か機能していたのは、特に鹿島のSB裏、左の山本の背後に速い段階でボールを放り込むことで鹿島のボランチを動かすことに成功していたことが大きかったと思う。
 先述のように、鹿島はCB2枚とボランチ2枚をネガトラ要員で残しているが、この計4枚がカバーしていないサイドに、3トップ気味の札幌は都倉やチャナティップを素早く送り込むことができるので、アバウトなボールを蹴って都倉を走らせる。都倉がサイドに流れると、山本がポジションを上げている状態では、鹿島はCBの昌子やボランチの三竿が都倉を見ることになる。なるべく昌子は中央から動かしたくないので、主にこの役割は三竿。そして、ハーフスペース(ペナルティエリア角付近)にはレオシルバ、という構図になる。
 このように鹿島のボランチ2枚が動くので、中央には札幌が荒野(+宮澤…機を見て前線に飛び出したり留まったり)に対し、鹿島はセカンドボールを拾える選手がゼロ、となる。ジェイや都倉を狙ったクロスが成功しなくとも、そのセカンドボールを拾えているので、二次攻撃に繋がることや、被カウンターのリスクを低減させることができる。
ボランチを動かせているのでセカンドボールを拾える

4)2人だけではないエアバトラー


 鹿島は、序盤の札幌のメインターゲットはジェイではなく都倉だと気付くと、山本による都倉への監視を強め、攻守における山本の役割は守備的なものにシフトしていく。都倉に放り込まれることが想定される局面では、山本は殆ど都倉にマンマークに近い形でついていき、またそのための準備として、攻撃時の基本ポジションも低い位置になる。
 ここで山本が都倉にマンマーク気味に付いていたのがミソで、中央でのターゲットとしての役割もある都倉はずっとサイドにとどまるわけではない(むしろ中央にいたい)。その動きに山本もついていくので、早坂が攻撃参加してくる右サイドの封鎖に、鹿島はもう1枚必要になる。
 この"もう1枚"は、三竿でありレアンドロだった。レアンドロが下がってくると、更に逆襲が難しくなる鹿島。札幌としては、得点は奪えなくとも脅威となる選手をク ソンユンの守るゴールから遠ざけられるので悪くない状況だった。
都倉は昌子だけでなく山本も使って監視する

 鹿島がもう一つ徹底していたと思うのが、札幌がゴール前にクロスを上げることが予期される状況での対峙するDFの対応で、突破は殆どないだろうと考えているかの如く、徹底してクロスをカットする対応をさせていた。早坂や都倉、石川が鹿島のDFと対峙した状態では、殆どゴール前に放り込めなくなる。となると札幌の砲台は、いつも通り後方からギャップを突いて攻撃参加してくる福森に限定された。
 そして、ゴール前に放り込まれる前にカット、とはいかず、必ずゴール前での空中戦に晒されてしまうコーナーキックでは、GK曽ヶ端の前進守備で対抗していた。

5)人についてくる鹿島


 札幌のロングボール攻勢は鹿島を撤退させることにかけては一定の効果があった。撤退したときの鹿島の守備は、一言でいうと、人につく意識が強い。
 札幌の攻撃時の布陣に対する鹿島の守備の相関を図で表すと下のようになるが、特に重要なのは、札幌がCB3枚+荒野でボールを運ぼうとすると、鹿島は2トップに加えてレアンドロか遠藤が前に出てチェックするが、早坂のケアも担っているレアンドロはともかく、遠藤が前進して福森がケアする動きも徹底されておらず、福森が持ち上がれる状況がしばしば生じていた。
人につく意識が強い

 加えて、札幌は下がってくるシャドーのチャナティップと、荒野に舵取りを任せてポジションを上げる宮澤が中盤に顔を出すことが多いので、レオ シルバと三竿との人数関係が2on2になる。この状態から、チャナティップは囮となって斜めに走り、レオシルバを引っ張ると、レオ シルバが簡単についてくるので、鹿島の中盤は思いの他、簡単に空き、福森からジェイへの縦パスのコースができる。(チャナティップは基本的に囮なのだが、西が石川を意識して高めのポジションを取るので、チャナティップ自体も結構裏抜けが成功する)
人についてくるので案外あっさりとスペースを放棄する

1.2 勇気の前進

1)教訓を踏まえたマッチアップと矛盾


 札幌のラッシュを耐えた鹿島が、攻撃の時間を徐々に確保し始めたのは15分頃からだった。
 先述のようにSBを上げて中央にCBとボランチの計4枚を残して鹿島が攻撃の形に移ると、札幌はまず5-4-1のブロックで撤退する。ワントップのジェイは、仕事が非常に限定的で、むしろ攻撃のために力をためていることが"仕事"とも言うべき挙動だった。2列目の4枚は、都倉とチャナティップはそれぞれ鹿島のサイドバックをケアする。鹿島のSBに札幌のWBを当てると、以前の記事で書いたように最終ラインのマークずれが起こりやすいので、その対策にもなっている。ボランチの荒野と宮澤は、ジェイの周囲で鹿島の選手がボールを持った時にアタックする。最終ラインは、中央の3枚で金崎と土居の2枚を見る…となると、鹿島の2列目の遠藤とレアンドロが中央に絞ってきたときはどうする?ということになる。
ジェイの脇のエリアはMFが前進してケアするがバイタルが空いてしまう

2)必要不可欠だった圧縮と前進


 間で受ける遠藤やレアンドロに対する札幌の答えは、CBの菊地や横山による前進守備と迎撃だった。先述のように菊地・横山・福森の3枚で主に土居と金崎を見ているが、レアンドロや遠藤が間で受けようとすると、近い選手はFWを捨てて楔のパスを潰しに行く。
 これ自体は5バックのチームとして普遍的な対応なのだが、札幌の場合は通常、最終ラインを低く設定して守るため、押し上げができておらず、DF~MF間が空いてしまうので、間で受ける選手にDFがアタックできない場合が多かった。最終ラインが低い理由は一概には言えないが、チームコンセプトとしては、ラインを上げて守りたいとずっと考えてきたのだとしたら、その一因はこれまで札幌の最終ラインの重鎮だった河合にもあるのかもしれない。
 横山は前々節、柏のクリスティアーノにぶっちぎられたのを見ても、身体的な速さは恐らくリーグのDFでも下から数えたほうが早いほうだと思われる。ただそれでも横山がラインを高く保つのは、相手に対し中盤のスペースを与えないことの戦略的な重要性をわかっているため。CBの迎撃による間受け封じと、最終ラインを高く保つことはセットであって、一見危なっかしいがハイラインで守れる横山の起用は、鹿島に中盤を使わせないためには不可欠だったと言える。
ラインを高めに保ち間受けには迎撃で対抗

1.3 バイタルエリア攻防戦

1)土居の間受け


 札幌が最終ラインを押し上げ、中盤を圧縮してコンパクトな陣形で守るならば、最終ラインの裏は空いている。鹿島は当然それに気付き、金崎が執拗に裏に抜ける動きを繰り返し、横山や福森に揺さぶりをかける。
 足は遅いが、まずまずのカバーリング能力を見せている横山と菊地。前々節・前節に対戦した柏やFC東京は、裏へのシンプルかつ長いボールが中心だったが、鹿島は別の問題があった。
 鹿島にあって柏やFC東京にない要素の一つが、間で受けようとする土居。金崎が最前線で札幌の最終ラインと駆け引きをしてラインを下げると、バイタルエリアには土居がターンするスペースが生まれる。レアンドロや遠藤がどちらかというと、ポストプレイヤーを使って前を向いたり、スペースに飛び出していくタイプであるのに対し、土居はより小回りが利き、狭いスペースでも前を向ける。土居に簡単に前を向かせてしまうと裏に抜ける金崎や遠藤にスルーパスが飛んでくるので、札幌としてはバイタルを簡単に放棄したくない。よって、裏抜けと土居、両方を封じるには、「DFラインも下げる、MFも下げる」という籠城戦法以外に有効策がとれなくなってしまう。
土居を閉じ込めるにはMFが下がって籠城しかない

2)陣地回復が難しくなる 


 土居にバイタルエリアを使わせたくないがゆえに、札幌のMF4枚が撤退を余儀なくされると、最前線はジェイ1枚のみ。これは5-4-1のジレンマというか、構造的に仕方がないのだが、ジェイ1枚に対して鹿島は植田と昌子が対応するので、札幌は攻め込まれた状態から、ボールを奪った後にジェイにボールを当てても、攻撃に転じることが極めて難しくなる。
 ジェイがダメなら、他の手段…具体的には都倉やチャナティップに何とかしてもらう必要がある。もはやお馴染みとなった、都倉の右サイドタッチライン際の突破か、チャナティップの同様のプレーという、個の力を発揮してもらうことで何とか逆襲の機会を作ろうとする。チャナティップは、1on1でのドリブル突破ができない、しないという意見があるが、このように前にスペースがある状態でボールを運べるだけでも非常に重要な存在になっている(どちらかというと、あまり足が速くないのでシュートまでもって行けないのがやや物足りない)。

3)なおも消えぬ裏抜けの脅威


 4枚のMFを下げることで中盤を閉めたい札幌だが、あまり下がりすぎると、今度は鹿島のCBやボランチがボールを保持している時にプレッシャーがかかりにくくなる。前半の30分頃から、札幌はかなりラインを下げて守っていて、裏のスペースはかなり狭い状態になっていたが、それでも金崎にピンポイントで合わせられると即失点、となりかねないので、鹿島が裏にパスを出せるエリアでは必ずボールをケアしなくてはならない。この仕事は主に宮澤と荒野の仕事で、バイタルエリア(宮澤と荒野の後方)を守るだけでなく、その前方もケアしなくてはならないという、非常に神経を使う状態になっていた。

4)中央がダメなら無理せずサイドから


 30分以降、札幌が完全に引いた状態では、鹿島は無理やり中央を使おうとしなかった。金崎か土居のどちらかは、必ずタッチライン際まで開いて受けることで札幌のブロックを拡げてから、突破や裏抜けを狙う。
 土居と金崎、それぞれがサイドに開く形があったが、特に背負える、前を向ける、突破できると多様な能力を持つ金崎がサイドに開いた形がより厄介で、金崎の場合は半端なマークなら振り切って強引に突破してしまうので、札幌としても金崎がサイドにいるのは囮だと割り切って中央を固めているだけでは対応しきれない。
サイドに開いてブロックを拡げる

2.後半

2.1 最終ラインの弱点と息を吹き返した兵藤のゴール


 前半何とか持ちこたえていた札幌だが、後半最初のプレーで鹿島に先制を許してしまった。最終的には左サイドのクロスから、この日、再三強引な突破を見せていた金崎にボールが入ったところで、クリアしきれなかったところを三竿が押し込んで鹿島が先制。
 気になったのは、後半キックオフから鹿島がボールを回収し、札幌陣内に左右から計4回のクロスを上げているが、札幌が明確にクリアできたのは1回しかない。菊地や福森のヘディングでのクリアは距離が短く、セカンドボールを鹿島に拾われて波状攻撃に繋げられている。以前も菊地?キム ミンテ?のクリアが小さいと感じた失点シーンがあったような気がするが、この辺は、古典的な、強さを売りとするDF(札幌でいえば増川のような)を置いていない最終ラインの弱点であり、鹿島はこの情報を持っていたのかもしれない。

 先制された後の展開は、予想通り、鹿島がボールを回し始め、札幌が食いついて回収しようとした背後をカウンターで突く展開。厳しい状況から息を吹き返したのは得意のセットプレーであり、59分に投入された兵藤の個人技だった。60分、左サイドのCKから、福森のキックは跳ね返されるが、ボールを予期していた兵藤がダイレクトでミドルシュート。前進守備のGK曽ヶ端は切り替えができておらず、ポストに当たって吸い込まれるのを見送るしかなかった。

2.2 下がっても消しきれなかったスペース

1)下がらざるを得ない


 同点に追いついた後の時間帯は、再び鹿島が攻め込む機会が多くなる。鹿島が札幌に対して勝っていたのは、逆襲の際の出足の鋭さで、序盤やや飛ばし気味の札幌と、無理をしなかった鹿島という違いもあったと思われる。
 この時間帯(60分頃?)、NHKの中継では、四方田監督が「下がるな!」と指示を飛ばしていたとの情報があった。監督の想定では、最終ラインを高く保ちDF~MF間のスペース(バイタルエリア)を消すとともに、入ってくるボールを潰すことを優先したのだと思う。しかし、技術と力強さを兼ね備える金崎が貪欲に裏を狙ってくることで、札幌の最終ラインは必然と裏を意識してしまう。
 結果、最終ラインが下がってしまうと、やはり中盤が下がってスペースを埋めることしかできなくなる。そして相変わらずボールの出所をケアする仕事も失われていないので、苦しい時間帯に荒野と宮澤は大忙しのままだった。どうすべきだったかというと、例えばアンカーに稲本を入れて中盤の枚数を増やす(前線を2トップにする)か、前線にジェイではなく守備ができる選手を置く(例えば都倉をトップにして、シャドーに兵藤)という考え方もあったかと思うが、そうした策はとられなかった。

2)消しきれなかったバイタルエリアのスペース


 70分、鹿島のカウンターから勝ち越し点が生まれた。カウンターでの金崎の独走は阻止した札幌だが、二次攻撃に移った鹿島は、ボランチの兵藤を動かしてレオ シルバが縦パスを入れる。枚数を揃えていた札幌だが、ここを潰しきることができず、侵入してきた山本からのスルーパスで金崎が抜け出してファーに流し込んだ。
 この時、鹿島はボランチ脇にレアンドロを立たせておいて、レアンドロは菊地も見ていたはずだが、レオ シルバから出てくるタイミングで山本が中央に侵入してくると、この動きは予期していなかったのか、距離を詰めることができなかった。前半からずっと狙っていたスペースだと思うが、札幌の足が止まりかけたところで狙い通りのプレーができるのは流石ではある。

2.3 4バック化は裏目


 札幌は83分、菊地に変えて小野を投入し、久々の4バック、攻撃の枚数を増やした布陣にシフト。しかし、札幌のCBが3枚から2枚になり、2トップと同数になったところを鹿島は見逃さない。横山と石川にボールが渡った時に、鹿島は2トップによる圧力を強める。これに対して、札幌はボランチを落として基準点をずらすといった臨機応変なアクションをとらないので、この数的同数守備がハマる形となり、札幌は攻撃に転じるどころか前にボールを運ぶことすらできなくなってしまった。
 結果、最終ラインでギャップを作れず、ボールの前進ができないので、唯一オープンなGKのソンユンに戻しての放り込み等、確実性のない方法を取らざるを得なくなってしまった。ロングボールはやはり鹿島に分があるので、鹿島が跳ね返し、マイボールにしたら、後は時間を使うだけ。小野を投入したこの形は、ボールを握れる状況で、得意な形、狙っている形が発動する時は何らか期待感は持てるが、まずボールを奪い返さないといけない展開になると厳しい。

3.雑感


 高さとセットプレー、マンマーク守備…といった特化型のチームになることで、J1で15位以上になるというミッションクリアに向けて邁進しつつある札幌。個人的な印象としては、CBに強い選手を配している鹿島は、シンプルに言って札幌からすると相性が悪いというのが一つ。チームとしては、ロングボール戦術や、横山を中心とした前進守備など、打てる手はほぼ打ち切ったと思うが、金崎の打開力や中央を守り切る力など、局面での個人能力の差が勝敗を分けた。

2 件のコメント:

  1. 端的に言うと納得の負け、といったところでしょうか。選手個々の能力とかチームとしての規律とか挙げていけばキリがないですが・・・。
    高さでアタックとなると抉ってからクロスを上げればというのは思いつくんですが、四方田監督の守備重視の指向からして選手個人の能力というよりもアウェイで簡単にサイドを破られたトラウマがあるが故にWBが長い距離を走って出てくることはしない、裏のスペースを空けるリスクは負わないだろうと見切っていたのかなと思っています。
    だからサイドでの封鎖とCBの肉弾戦の二段構えであれば大ケガはしない、都倉が右サイドに流れることはできてもそこから独力での突破は基本できないといった具合に一見もうちょいと思えるような場面でも鹿島には余裕があったのかな、と。
     
    来季、四方田監督は今の3-4-2-1でいくのかはちょっと興味がありますが、CBのスカッドを考えると非現実的と思った方がいいんでしょうねぇ・・・。

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    1. >フラッ太さん
      アウェイでもそうでしたが、鹿島は簡単な放り込みにはかなり耐性があるんですよね。守備は5-4-1でサイドに2枚置いて一定の解決をみましたが、やはりツインタワーが勝てないとジリ貧感はありました。
      来年は…4バックのオプションもあったほうがいいとは思いますが恐らく後ろ3枚でしょうね。ジュリーニョやチャナティップを活かすなら4バックしかない気もするんですが、後ろの編成が劇的にグレードアップしない限りはこのままなんじゃないかと思います。

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