2024年12月17日火曜日

北海道コンサドーレ札幌の2018-2024シーズン(4) 〜選手雑感その1〜

4.選手雑感

最後に24シーズンにプレーした選手の雑感を書いて今回の企画を終わります。まずはFW/攻撃的MFなど。

数字はFOOTBALL LABを参照。あまりプレーを見ていない選手は言及なし。


4.1 FW

7 鈴木 武蔵

32試合出場(2,489分、うち先発29)、6ゴール、1アシスト

  • サポーターの多くは2019シーズンのようなゴールラッシュを期待していたのでしょう。23節までノーゴールと苦しんだ武蔵にはキャプテンの荒野、三上GMと共に多くのサポーターから最大級のヘイトが向けられ完全にスケープゴートと化してしまいました。
  • チーム編成的にはFC東京へと移籍した小柏の代替で、「小柏がいればもっとコンサは勝てている」とする意見もありましたが、その小柏も23シーズンは6ゴール6アシストと、めちゃくちゃ点を取りまくっていたわけではないので個人的にはこの見解には首を傾げるところではありますが。

  • 武蔵としては3年半ぶりの古巣復帰でしたが以前とは環境は様変わりしていました。2019シーズンは、ジェイがセンターFWとして相手CBを背負い、その脇でシャドーの武蔵がCBの監視から逃れ浮いた構図を作ってくれる。かつスペースに走ればチャナティップのラストパスが飛んでくる。この特徴が異なる三人が噛み合い武蔵はフィニッシャーに専念することができていました。

  • 2024シーズンはジェイのようなセンターFWがいない、コンサはDFからクリーンに前線にボールを運ぶこともできない、ということで、まず武蔵は相手CBを背負ってなんらかマイボールのシチュエーションを作らなければならず、つまりジェイの仕事をしなくてはならない。
  • そしてシャドーにはスパチョーク、青木、浅野、小林、駒井といった選手がいますが、チャナティップのようにボールを運んでラストパスが出せそうな選手、となると、ギリ浅野が該当するかどうかという状況で、その浅野も右WBを兼任だったり故障で万全ではなかったりしたので、特にカウンターの場面で武蔵が自らボールを運んで相手ゴールに突っ込んでいく役割も背負わされることになります。
  • つまり武蔵1人でジェイとチャナティップと、かつての武蔵の仕事で、計三人分を任されていたようなもので、私にはコンサのサポーターはこれ以上武蔵に何を求めるのか?とただただ気の毒でなりませんでしたし、後半戦にFWの選手が複数加入しても武蔵を外すことができないのはこうした事情によるものです。

  • 異様に多くの仕事を押し付けられるという点では、武蔵の比較対象は小柏よりも2017シーズンの都倉かもしれません。その都倉は30試合9ゴール5アシストでコンサを残留に導きましたが、それは武蔵と都倉の差というよりは監督やそのチームづくりの差ではないでしょうか。


9 ジョルディ サンチェス

7試合出場(149分、先発0)、0ゴール、0アシスト

  • ジョルディの獲得に動いたと思われる時期から、三上GMの口から唐突に飛び出した言葉が「二度追いができるFW」。
  • 二度だろうと三度だろうとFWがGKを追いかけてくれるならそれ自体は悪いことではないですが、FW1人で走り回ってもできることには限りがありますし、pressingからボール奪取、速攻に転じるというプレーを想定しているならFWはGKまで追いかけていくというよりはパスコースをいかに制限できるかの方が私は重要だと思いますが、コンサはもっとシンプルな守備なので1人で2人分走れるのが大事、と考えたのは理解できなくもありません。

  • そして7月に来日したジョルディは確かに「二度追いができるFW」でした。YouTubeで彼の名前を検索バーに入れると出てくるゴール集でもGKからボールを掻っ攫ってゴール、があったのでそれを見ていた可能性もありますが。
  • ただジョルディはGKまでも追いかけるだけの走力やガッツはいいとして、それ以外はJ1の基準だと特筆するものがなく、武蔵、アマドゥよりも下の序列と判断されたのは納得がいきます。

  • 紅白戦では主にサブ組のセンターFW、ではなく右か左のシャドーに入って、前を向いたら果敢に突破を仕掛けていて、「デカくて意外と動ける」という印象で、その意外性はもしかするとどこかのチームに一矢報いることができるのでは?とは思っていましたが、あまりチャンスも与えられず。
  • 余談ですがスポーツ報知・砂田記者のレポートで「メンバー外の外国籍選手が小競り合い…」とありますがおそらくジョルディが関与しているのではないかと思います。アマドゥの加入後は完全にサブ組のFWの立場ですらなくなって、私が練習見学をした際もかなりフラストレーションを抱えている様子でした。


20 アマドゥ バカヨコ

6試合出場(93分、先発0)、1ゴール、0アシスト

  • まず、先の砂田記者や日刊スポーツ保坂記者の記事などでは、ミシャの言葉を引用して、

 

「私は常に大事にしていることは、これまでともに戦ってきた選手と戦うスタンスということ。戦争に行くのに部隊を編成するなら、ともに戦ってきた人と戦う。信頼のある人と戦うという思いが強い」
  • 要するに「ミシャのサッカーに馴染むには時間がかかるから新加入選手の起用には消極的だった」とする総括がされていますが、個人的にはこれはミシャの言葉を真に受けすぎかと感じます。なぜならパクミンギュや大﨑は加入後すぐに起用されていましたし、バカヨコもベンチスタートでしたが数試合は起用されている。彼はその後出番を失いますが、これはカンやジョルディと共にシンプルに実力不足、プレーやパフォーマンスに原因があると考えるべきです。

  • 一方で砂田記者の記事では、三上GMはじめコンサのフロントと監督との間では深刻なコミュニケーション不全の状況にあったことが示唆されています。
コーチ陣に新たに人材を加えて体制を強化することも検討されたが、話し合いの末、現状維持を約束。その上で「ミシャにはもっと意見していってほしい」と求めた。
  • フロントとしては、補強に動くにあたって監督からヒントが欲しかったが得られなかったということ思いますが、そんなノーヒントの状況で?契約にこぎつけたバカヨコは三上GM曰く「(ジョルディと比べると)よりカウンターで活きるタイプのFW」。

  • しかし実戦での彼のプレーを見ると、おそらく三上GMが考える「ショートカウンター、ロングカウンター」…オープンな展開で直線的にゴールに突っ込んでサポーターを沸かせるタイプの選手には到底見えず、このアマドゥの獲得に関しては一体何を見てそう判断したのか?と大きな疑問が残ります。

  • 8月にフクアリでジェフに敗れた天皇杯と、9月の三ツ沢でもルヴァンカップで見たアマドゥは、オープンな局面で突っ込むだけのような選手ではなく、前線でコンビを組む小林や白井に都度フリーになれるポジショニングを細かく指示していたりと、自分が相手CBを引きつけることで味方をフリーにさせることができる戦術眼を備える賢い選手、というのが私の印象です。少なくとも好き勝手動くジョルディや駒井と比べると、アマドゥの方がFWとしての役割は理解していると思います。
  • そして試合前練習では決まって右60°くらいの角度からファーのサイドネットに流し込む鋭いシュートを連発していて、当時武蔵のシュートが槍玉に上がっていたこともあって毎回ゴール裏に陣取るサポーターから拍手やどよめきが起こっていました。宮の沢ではヘディングシュートを熱心に練習していましたが、長い距離を走るよりもこちらの方が得意なのではないでしょうか。
  • が、そのカップ戦でアマドゥは決定機を何度も逸して株は急降下。最終的にはリーグ戦の、万博でのガンバ戦で途中出場でリードを守れなかったことの戦犯として完全に干されてしまうこととなりました。


  • 改めてですが、アマドゥは「(ジョルディと比べると)よりカウンターで活きるタイプのFW」という触れ込みでしたが、実際は味方と連携してお互いに活かし活かされる選手に見えますし、戦術を理解しようとする意欲は感じられました。
  • そんなアマドゥが何故フィットしきれなかったのか。これは一つはJリーグに対するフィット感の問題でもあるでしょう。
  • コンサだけではなくJリーグはビルドアップやゲームのコントロールを軽視するというか、FWやウインガーが前線で待っていてもあまりいい形でボールを受けられることが少ないので、アマドゥのように待つタイプのFWよりも、もっと自ら動いてボールを引き取る(そして自らゴールに突っ込んでいく)タイプの選手の方が評価されますし数字も残している。コンサもそういうチームの例に漏れず、アマドゥがいくら前線で待ってもゴールを届けられないのが問題だったかと思います。

  • そしてもう一つ、コンサというチームの二面性というか本音建前を使い分ける?みたいなところもアマドゥには大変だったと思います。
  • コンサはトレーニングではいつも決まった1-4-1-5の配置になって、どうやってボールを動かしてシュートを撃つか、みたいなのを(まともなDFを置かずに緩めのシチュエーション下ではありますが)確認している。アマドゥもそこに控え組のセンターFWとして参加しており、こうしたトレーニングでのコンサは「丁寧にパスを繋いでbuild-upしてセンターFWにシュートを撃たせるチーム」に錯覚する。
  • しかし実戦になるとそうした丁寧かつクリーンな展開になることはほぼなく、コンサは後ろから前にボールを蹴っ飛ばして武蔵が必死に体を張るとか、ボールが行ったり来たりして近藤がトップスピードで突っ込んでいく、みたいな大味な試合に毎回なるので、トレーニングでアマドゥにインプットされているシチュエーションとは全く異なります。

  • 翌シーズンは新監督の指揮下で指導し、こうした雑なサッカーがどの程度残存するかはまだわかりませんが、アマドゥが本領発揮するにはこうした部分への適応が不可欠で、夏加入だとそのための時間やサポートが足りなかったという印象です。よって当たりとかハズレとか論じるのはまだ保留としておきます。


23 大森 慎吾

8試合出場(342分、うち先発3)、0ゴール、0アシスト

  • キャンプ期間中のトレーニングマッチで得点を量産していたとの報道で、武蔵の負傷もあり順調なら開幕スタメンだったでしょう。しかし大森も負傷に悩まされ離脱と復帰を繰り返し、プレー以前に選手として計算しづらいと見られてしまったかもしれません。
  • この2シーズンでプレーを見られた機会はまだ数回程度なのですが、印象としては大学では背負える、前を向ける、裏抜けできる、自分で持って仕掛けられる…一通りなんでもできるセンターFWだったのかもしれません。ただJ1ではそうはいかず、加えてコンサの場合は武蔵もそうですが、FWが潰れ役となって他の選手に前を向かせる役割の負担が大きすぎてまずそこでなんとか折り合いをつけないと自分の得意なプレーもできないかなと感じます。
  • その意味では25シーズンからの監督交代がポジティブに作用する可能性はあると見ていますが、本人がコンサでのプレーにどこまで可能性を感じているかにもよりますし、また監督交代のタイミングがもう少し早ければなと思うところはあります。


70 白井 陽斗

10試合出場(203分、うち先発2)、1ゴール、0アシスト

  • FC琉球で18試合10ゴールと開眼した快足FW。獲得時の三上GMの説明では「J3での活躍を見て翌シーズンの戦力として注目していたが、補強資金を得たので前倒しで獲得に動いた」とする説明でした。
  • コンサでは当初紅白戦でサブ組のウイングバックをやっていて、かつて白井康介を「エヒメ」、菅野を「カシワ」と呼んでいた監督に名前を認識されていたか不明ですが、アマドゥとジョルディが振るわなかったこともあり最終盤には貴重なFW(シャドー)として存在感を高めます。
  • プレースタイルとしては技術よりもフィジカルで勝負するタイプで、シャドーで起用された場合も、DFの間でターンして前を向くというよりは、背後に抜けたり自ら体を張ったりするタイプ。J1どころかJ2でもほぼ実績がないため2025シーズンもまだ未知数ですが、古巣ガンバから奪ったJ1初ゴールのように、ハードワークしつつゴール前でキレを維持できれば面白い存在になるかもしれません。ただ投資対象としては、ワイドにもう少し適性のある選手だったら尚良し、と最後に書いておきます。


4.2 シャドー/攻撃的MF

11 青木 亮太

30試合出場(2,279分、うち先発26)、6ゴール、2アシスト

  • シーズン開始当初は、キャンプでコンディション調整が万全でなかったこともありましたが、前線の左シャドーでは駒井とスパチョーク、左WBでは菅とポジションを争っており、位置付けとしてはあくまでスタメンとサブの当落線上だったはずです。
  • しかし中村桐耶の不振で菅が左DFにシフトし、左WBが他に目立った選手がいない編成ということもあってスタメンに定着すると、福森というボール保持局面において絶対的な存在を失って迷走し自信を失うチームにおいて、積極的に(かつ、過剰ではない程度に)ボールを引き受ける役割を担って徐々に存在感を高めていき、選手からもピッチ上で頼られる存在となっていたと思います。
  • しかし5/19の柏戦で負傷したことで16-21節を欠場し、この間チームは全敗。この頃はかなり体が切れていた印象で、負傷する直前も左サイドで柏のDFを翻弄し、駒井の同点ゴールに繋がるクロスボールを供給していたりもしたので、この離脱はかなりの痛手でした。

  • 夏以降 #日本一諦めの悪いクラブ を自称し始めた頃は左サイドの問題に目処がついてくることとなり、そのタイミングで負傷から復帰しますが、そこからは左サイドではなく中央でボールを引き取る役割を担うようになりここからは完全にキープレイヤー。夏場は「青木と大﨑のチーム」という印象でした(最終盤は近藤のチームかな)。
  • 前線の選手としても重要な場面で持ち前のクオリティを発揮し、3連勝が懸かった川崎戦での先制ゴールと武蔵へのアシストはこのシーズンのハイライトだったでしょう。

  • このシーズンの働きを見ると、シャドーよりも適性は更に下がってインサイドハーフかもしれません。シャドーだとゴール前でより得点力やFW的なプレーが必要で、青木は菅野が「シュートは代表級に上手い」と評したようですが、持ち味が発揮されるのはゴールに近い位置よりも少し離れたレンジであるため。そう考えると同じくインサイドハーフかシャドーが適性の駒井と被り気味で、駒井との契約にも関わってくる案件かもしれません。


14 駒井 善成

36試合出場(3,181分、全て先発)6ゴール、1アシスト
  • 開幕時のスカッド的には前線の枚数が多めでしたので、中盤センターで主に計算されているのかと思いましたが、出場記録を参照すると結果的には前線起用の方がやや多めでした。
  • プレーに関しては既に書き尽くした感があるので特に今改めて書きたいことはありませんし、良くも悪くもというかこれまでに見せてくれた駒井で、傑出したハードワーカーでありルーズボールやセカンドボールに反応しマイボールにする能力が特に秀逸。
  • 中盤センターとして出場した時などに後方で組み立てをする役割や、相手のFWをマーキングするプレーについては、もうこれ以上触れないこととします。
  • 前線の選手としては、6ゴール(うち5ゴールが後半戦)はまずまずですが、攻撃面全般においてはゴール前でワンタッチで合わせるプレーが多く、特に右サイドがシーズン前半戦に安定しなかったこともあり、崩しの役割を担うことはこのシーズンはかなり減ったと感じますし、それがアシスト1という数字にも幾分か表れているでしょうか。

  • 今回クラブから契約非更新のため契約満了での退団が決まりました。号泣する菅とは対照的に「まぁそうかもな」みたいな態度が印象的でしたが、京都、浦和と渡り歩いたベテランであるのでクラブの状況(経営面以外も)には菅以上に理解があるのかもしれません。
  • 個人的には今回クラブが監督交代、新しいサイクルを進めるにあたって中心選手をまるっと残すよりは、何人か入れ替えが必要かと思っており、かつ駒井がその対象になるのはクラブにとってそう悪い話でもないかなと思います。
  • 責任感やコミットメントが強い選手でロッカールームのリーダーというのは頼りになる反面、必要以上にグループ内での影響力が大きくなることもあって、新監督のもとで刷新を進めるにあたり障壁となってしまう場合もあるためです。
  • またシャドーは比較的確保が用意なポジションで、システムによってはシャドーがそもそも存在しない場合もあります。中盤センターとして見た時も戦術にもよりますが必須とは言い切れないので、ミシャサイクルの中心選手ではありますが、ありがとうとお別れを言ういいタイミングだったのではないでしょうか。

16 長谷川 竜也

22試合出場(628分、うち先発4)0ゴール、1アシスト

  • 川崎フロンターレの初優勝に貢献したドリブラー/ウインガー。…という看板はだいぶ前に下ろしており、個人的には横浜FCでの22シーズンも追っていたので把握はしていたのですが、駒井と青木を足して割ったようなインサイドハーフまたはシャドータイプの選手にモデルチェンジしていました。
  • 三上GMのコメントでは「途中出場でアウトサイドから仕掛ける役割に期待している」みたいな話があった気がしますが、ドリブルで仕掛けるよりも小さいモーションで鋭く曲がり落ちるクロスボールがコンサの他の選手にはない武器で、この点では劣勢時や相手が守りを固めている際にワイドよりもシャドーの切り札という位置付けになっていたと思います。
  • 負傷者が続出していた(宮澤、荒野、スパチョーク、青木、浅野…)19-21節には3試合連続で前線の一角で先発しており、この際は駒井のような前線のハードワーカーとして印象的な奮闘を見せます。このユニットはむしろ武蔵よりも長谷川の方が体を張って潰れ役になり、武蔵がフィニッシャーや仕掛ける役割という分担になっていて、巻き返しを期す後半戦でも期待していたのですが、この21節新潟戦ではハードワークが祟ったのか負傷により途中交代。そこから出場機会が減少し、新加入選手の存在もあり後半戦はフェードアウトとなってしましました。
  • 駒井が退団することもあり、25シーズンも前線のどこかでバックアッパーとして戦力になってくれそうですが、まずはコンディションを整えてほしいところです。

18 浅野 雄也

22試合出場(1,634分、うち先発19)4ゴール、1アシスト
  • 2023シーズンのチームトップスコアラーであり大和ハウスプレミストドームMVP。金子の移籍後は右ワイドでも1stチョイスと、間違いなく攻撃面のキープレイヤーとしてシーズンを迎えましたが、まず近藤が加入して右サイドの問題は解決したかに思えたのがsの近藤がフィットするまでに時間がかかったのもあり、開幕から数試合は浅野の右サイドが前のシーズンに続いて試されます。
  • そこがようやく落ち着いて前線で起用されてから(8節〜14節)の7試合で3ゴールを挙げており、チームも多少負けが減り、前半戦の裏天王山となったホームでの磐田戦でも見事な決勝ゴールでチームを救います。

 

  • 流石浅野、と思わせてくれましたがこの試合で負傷離脱。ここからまたチームは大﨑(ら)の加入まで連敗爆進を爆進します。
  • build-upというか相手ゴールまでボールを運ぶプレーが武蔵へのロングボール頼みで壊滅的なコンサにおいて、シュートレンジが長めでミドルシュートのオプションがある浅野と青木は貴重な存在でしたが揃って離脱してしまったのは非常に痛かったです。
  • そこから夏場の23節に復帰しましたが、26節に再び離脱。そして最終盤になって合流し35節(vsセレッソ)で途中出場を果たしますが、コンディションが万全ではないのかこれまでに見せてくれた頼もしい浅野の姿ではなく、勝ち点差4に泣いたチームにとって最後はややブレーキとなってしまった印象でした。
  • 序盤戦ではピッチに立っていれば少ないチャンスでクオリティを発揮してくれたので、夏場の離脱はクラブとしても誤算だったかなと思います。新監督体制下では、ワイドもできるということでどのようなシステムでも必ずスタメン候補かと思いますが、その多才さゆえに契約状況によっては他のクラブから誘いがあるかもしれません。

19 スパチョーク

19試合出場(1,398分、うち先発17)2ゴール、5アシスト

  • 典型的なシャドーもしくはルーズFWというスタイルで、ゴール前以外での局面にはあまり関与しませんしカウンターの際に1人で突進できるような力強さもないですが、とにかくゴール前の局面での落ち着き、フィニッシュの際に無駄な力が入らず常にルックアップして視界を確保し、脱力した状態でプレーできる能力はこのシーズンも健在でした。23シーズンの先発10試合で7ゴールというのも非常に優秀ですが、「決める役割の人」としては一定のラインで常に結果を残しています。
  • こうして選手を並べるとこのシーズンは特にシャドータイプの選手が前線に多く、彼らに前を向かせて得意なプレーをしてもらうには、前線で体を張って潰れ役となる選手が重要であると改めて感じますし、build-upが壊滅的なコンサにおいてはシャドー(味方にお膳立てをしてもらい前を向いた時に力を発揮する選手)を過剰に抱えすぎに思えます。
  • そしてそんなに馬車馬のように走っていたりフィジカル的に負荷が大きい仕事をしている印象はないのですが、スパチョークも故障が多く、この辺りは戦術面だけでなくコンディショニング等での課題はチームとしての共通事項でしょう。

99 小林 祐希

19試合出場(855分、うち先発10)0ゴール、0アシスト

  • 出場機会のほぼ全てが、負傷者が多かった開幕直後と夏場であり、残念ながら構想外の手前くらいの位置付けにされてしまった感があります。
  • 2シーズンでの退団となりましたが、ある時監督に起用されない理由を直接聞いたところ「足が遅いから」と言われたとのことですが(確かデジっちだったかな)、これは監督の言い分としてはそういう選手を戦術的に求めている・好むのは明らかでしたので、まず23シーズンの前線の目玉補強として小林を選んだフロントと監督の間のコミュニケーション不足のようなものの象徴になってしまったのは非常に気の毒でした。
  • 24シーズンも、前のシーズン以上に小林の頭の上をロングボールが行き来するようなサッカーでしたので特に状況は好転せず。加入時の期待の割には2シーズンともチームとの戦術的な親和性がかなり低い印象でした。


4.3 アウトサイド

4 菅 大輝

34試合出場(2,763分、うち先発32試合)、1ゴール、1アシスト
  • 昨年J1最年少でリーグ戦200試合出場を飾ったアカデミーから生え抜きの選手が、クラブ側の意向で契約非更新という異例の結末を迎えました。
  • 改めて出場記録を見ても、本来フリートランスファーで放出される選手ではないのですが、このシーズンも先発32試合のうち10試合がDF起用と、まずチーム事情(福森の放出と中村桐耶の不安定さ)に振り回されていたとも言えます。

  • 一方で2017年から8シーズンにわたって出場機会をクラブから優先的に与えられてきたものの、菅のプレースタイルは長年特に変化がなく、ワイドの選手としてはウインガーとして1v1を仕掛けてクロスボールでアシストが得意でもなく、SBとして後方で組み立てに参加しボールを運べるわけでもない。
  • つまり、アップダウンしながら、前が空いたら弾丸シュート、背後を取られそうになったら全力スプリント、右からのクロスにファーで合わせる…といった3バック系のシステムでウイングバックにしか存在しない役割の、よく言えば専門家、悪く言えばプレーの幅があまり広くないということで、最年少200試合出場という勲章に見合った評価がどこのチームでも得られるか?というと、このタイプの選手は評価や好みがかなり分かれるのではないかと思います。
  • 特にサイドバックとしてボールを運ぶ役割は、途中加入のパクミンギュと並ぶと差は歴然で、左サイドで何度かユニットを組みましたが、パクが丁寧にキープして運んだボールを菅がワンタッチで簡単にはたいて相手ボールにしてしまうようなプレーを見ると、菅はなんというか雰囲気でプレーしているという印象を受けます。
  • また金子が右、ルーカスが左、彼らが去って浅野が左…と変化があった時期に、逆足ウイングを重視するなら菅も右サイドに挑戦してもよかったかなと思います。左サイドで1v1で相手をぶち抜く突破はちょっと難しそうなので、右サイドの方がボールを持ちやすいし自慢の左足も活かしやすい。そうした挑戦があまり見られなかったのは残念でした。

  • そう考えると今回の退団に関し三上GMが「総合的な判断」と言及したのは、案外語弊がないのかもしれません。
  • 選手の給料や人件費が具体的にいくらなのかは知りません(年俸を書いているサイトがありますが一切公開されていないので当然ガセですよ。あれを信じている人は闇バイト予備軍だと自覚してください。このブログの読者は大丈夫だと思いますが)が、新監督が4バック系のシステムを採用するなら、基本的にウイングバック的な仕事しかできない選手は使いづらいですし、それが実績のある選手ならお金の使い方としてはあまりよろしくない、選手のキャリア的にもこれからピークを迎える年齢でフィットするチームに行った方が良い、などと、コンサのフロントもなんとなく考えての判断かもしれません。まぁ妄想ですけどね。

30 田中 宏武

8試合出場(491分、うち先発6試合)、0ゴール、0アシスト

  • 大卒2年間で公式戦出場は藤枝での8試合の他はほぼなしと、背水の陣くらいの立場からのスタートだったかと思いますが、「なんとか喰らいついた」という印象のシーズンでした。
  • シーズン序盤に負傷者続出により4節町田戦で先発のチャンスを得ます。個人的にはこの時は「可もなく不可もなく」くらいの印象でしたが、右サイドは金子というモンスターが一種の”基準”であるためかここで合格点は得られず、再び出番が回ってくるのは近藤不在の16節、前の試合で大敗(vsヴェルディ)により左サイドにテコ入れを行った18節。
  • この18節京都線での左サイドでの起用は、右サイドで起用された他の試合よりも一番出来が良かったように思えますが、その後も出番は近藤不在時の右サイドのみ。
  • ただこの間、高卒新人の原とベンチ入りの枠を争っており、短い時間の途中出場のカードとしては原の方が評価されてもいたので、この点で腐らずよく「喰らいついた」との印象になっています。
  • 新監督体制下では、サイドアタッカーは金子や菅のようなモンスター的な身体能力や走力を要求されないだろうとの予想で、また近藤の残留が決まりということで左サイドでなんとか存在感を見せたいところです。カットインからのフィニッシュ(クロスボール)の精度向上が欲しいところで、それでも青木がライバルになるかもしれませんが。


33 近藤 友喜

29試合出場(2,214分、うち先発6試合)、5ゴール、3アシスト

  • 3アシストに加えPKを2つ獲得(vs福岡、鳥栖、他カップ戦のvs富山)しています。
  • シーズン序盤戦で見た時は最終的にここまで絶対的な存在になるとは思っていませんでした。前半戦で得点に絡んだのは2試合でいずれもセットプレーでのヘディングシュート。
  • 後半戦、ホームでの福岡戦(26節)でPKを獲得しましたが、この試合くらいからオープンな局面で自重せずトップスピードで突っ込んでいくプレースタイルになり、基本的に放り込みとかオープンな展開でしかチャンスを作りにくいコンサというチームをようやく理解した感があります。
  • それまではおそらく近藤もアマドゥと一緒で、コンサというチームの本音建前なのか二面性で戸惑っていた印象で、建前を真に受けると、サイドアタッカーは常に仕掛けるというよりはチャンスをじっと待ってから確度が高い時に勝負するという振る舞いが正しい、と考えていたのかもしれません。
  • そんな中で6月に日大の先輩・金子がコンサを訪問して近藤に闘魂注入がされたというか、「もっと仕掛けろよ」みたいなことを言ったらしいですが、その効果なのか後半戦はとにかく縦に行く選択を貫き、数字がついてきます。

  • その右サイドでの縦突破が得意というスタイルはシーズン序盤にあまりミシャも買っていないのか、左サイドでの起用も試されましたがこれも理解できなくはない話で、右利きの選手が右サイドで縦突破しか選択肢がないとサイドで追い込まれやすいため、近年はウイングは逆足配置を好むチームが増えています。
  • ただ覚醒した近藤のスピードはそうした追い込まれやすいみたいな通説すら覆せるだけのクオリティがあり、ほぼ8〜9割縦突破でも緩急をつけるだけでDFはストップが難しい、という状況でした。
  • シーズンを通じて見るとJリーグでトップのサイドアタッカーかというとまだ微妙ですが、終盤戦の最高風速だと明らかにJ2でプレーするには余ってしまうクオリティでした。25シーズンは残留が決まったとの報道がありますが、速さ以外のプレーの幅を広げる良い機会になるかもしれません。


35 原 康介

12試合出場(258分、うち先発1試合)、2ゴール、0アシスト

  • シーズン序盤戦は負傷者続出により途中出場のカードとしてベンチ入りを果たし、4節町田戦ではチーム初ゴールを挙げるなど、序盤戦は原のことを考えているときだけがコンサを応援する楽しみだった人もいるかもしれません。
  • ただその後選手が揃ってきてからは出場機会を失っており、その意味では今回あまり言及する必要がないかもしれませんが可能な限りで感想を書いておきます。

  • 高卒1年目で12試合出場、2ゴールと悪くない1年目のシーズンだったと見れるかもしれませんが、個人的には原がJ1で主力として出るような選手になれるかはまだ不透明と感じます。2ゴールは実力というよりは「持ってるな」という印象ですし、サイドアタッカーとして見ても相手を剥がすとかクロスボールでフィニッシュといったスキルが通用しているとは言い難い。
  • 何より(高卒1年目なので当たり前ですが)ワイドの選手としては走力の向上が不可欠で、新監督体制下でどうなるかはわかりませんが、ワイドの選手が広範に渡って走ることを求められるようなタスクになれば2年目でも出場機会が増えない…という事態も十分に予想できます。本人は「近藤のような決定的な選手にならないと」と言っていたようですが、まずは近藤に近づくためにもそうしたフィジカル的な部分の向上が見られるかを今後注視していきたいところです。


70 フランシス カン

(リーグ戦出場なし)

  • 「少なくともこのシーズンは秘密兵器で終わりそうだな」というのが8月にトレーニングで見た際の感想でした。プレー云々以前に紅白戦にも入らずピッチ隅で若手選手とロンド組、日大との練習試合でもスタメンではなく後半途中から登場、という状況で、お腹が痛いとか何かコンディション不良なのか?と思わせるほど。
  • その後、彼のプレーを確認できたのは、その日大戦の20分ほど?と、天皇杯で30分程度ですので正直なところ偉そうに雑感をかけるほどの材料に満たないかもしれません。
  • それを承知で書くと、まず公称162cmという小兵の彼ですがパワー不足、馬力不足の不安は的中した印象です。前半戦は近藤がイマイチで浅野が右WBに入っていたので、浅野を前で使うために獲得したのだと思いますが、左利きの右WBとして見ると前任者は金子。
  • 金子はドリブル突破だけでなく、コンサの広くピッチを使うプレースタイル(マンマーク主体で守ってピッチ横幅を目一杯使って攻撃し、間延びした状態でカウンターを繰り返す)においてもフィジカル的に傑出しており、90分フル出場しても終盤までアップダウンを繰り返していましたが、まずカンはそうした走力がなくカンをウイングバックで使うとマンツーマンで守って相手SBに圧力をかけるのは無理だし、日大戦を見た感じだとワイドの対面の選手がオーバーラップした際にそのままずっとついていく…みたいな対応も不慣れでそれだけで簡単に穴になってしまいそうに見えました。
  • ですのでまずコンサのワイドの選手は走力をベースにしたハードワークが必須であるのはわかりきっているはずなのに、このカンのような選手をWBとして獲得した件は直近10年におけるのワースト補強(ワースト選手ではなく補強)に数えられるのではないでしょうか。

  • そんなカンですが、おそらく翌シーズンも契約が残っていると思いますが、ミシャにはワイドではなくシャドーとしてカウントされ、磐田での遠征メンバーに入ったのは率直に以外でした。ワイドとして見ると、大外から仕掛けた際にDFの頭を超える強いクロスボールを蹴れるか?も不透明というか不安要素なので、新監督体制ではワイドというよりシャドーで生きる道を探すことになるでしょうか。

※次回でこの企画終わり予定です。

0 件のコメント:

コメントを投稿