2024年12月15日日曜日

北海道コンサドーレ札幌の2018-2024シーズン(3) 〜10試合+αで足跡を振り返る〜

3.ピッチに残された足跡

  • プレーについて細かく振り返ろうとしましたが既に大半のことには言及しているので、この7シーズンの中で説明に適している10試合をピックアップして振り返ります。と思いましたが、10試合では留まらなかったので多めにピックアップしています。

3.1 2018シーズン

リーグ戦第2節(vsセレッソ大阪、△3-3)


  • 新監督就任2試合目でまだどうなるかドキドキワクワクという状況でしたが、結果的にはこの時に見せたプレースタイル…長いボールを多用してリスク回避をし、センターラインにパワーのある選手(宮澤、深井、ミンテ、ソンユン)が跳ね返してゲームを作る。相手ゴール前でもジェイ・都倉(サブの印象ですが19試合に先発出場している)のパワーを突破口とする…という前監督のスタイルを踏襲したものがその後、7年間にわたって繰り広げられることとなりました。
  • これは一応、伏線があり、このシーズンのキャンプではGKとCBで自陣ゴール前からボールを運ぶことにトライしていたようですが、キャンプ中のトレーニングマッチでそのGKやDFのミスから立て続けに失点してJ2のジェフに0-4で完敗、ということがあって、そこから路線変更というか「無理なら繋がずに蹴って良い」とする指針になったようです。リーグ戦が開幕して、広島相手に開幕戦を落としたのもあって、この考え方はより強固になったということも考えられます。
  • またこの頃は中盤センターに宮澤と深井が起用されていて、この2人のいずれかがDFの間に下がれば繋ぐ、繋ぐ気がないなら下がらない、という調節弁でもあり、特に序盤戦は「下がらない」選択が多かったと記憶しています。

  • 前監督のために用意されたスカッドを引き継いで、整理できていない状況ですのでので初年度としては別におかしいことではないのですが、問題は2年目以降にスカッドの整理が進んでもあまり変化が見られず、前線に蹴るチームのままだったということです。

リーグ戦25節(vsヴィッセル神戸、⚪︎3-1)


  • ミシャコンサは美しいチームだったとする思い出と共に心地よい眠りにつきたいならこの試合を何度も見返すことがおすすめです。
  • ポドルスキが左ウイングで先発(試合中盤に退場)した神戸の前線守備は非常にルーズで、そこを突破してしまえば横幅を4枚で対応する神戸のDFに対し面白いようにサイドチェンジが決まり簡単にDFが崩壊します。7シーズンを通じてこういう相手ならミシャコンサの得意な要素を発揮できましたし、毎年こういう対応をしてくるチームが未だに1つか2つあることはJリーグ7不思議の1つにノミネートされてもよいでしょう。

リーグ戦26節(vs川崎フロンターレ、⚫︎0-7)


  • 中断期間の9月6日未明に北海道胆振東部地震が発生します。私もたまたま帰省していたので覚えていますが、札幌でも地区によっては7日の夜頃まで停電が続き、リーグ戦の中断期間だったコンサは調整不足の状況で川崎に向かったというゲームでした。
  • 一方でこのスコアは、調整不足の中でこの年リーグを連覇することになる川崎とアウェイで対峙する…という最悪のシチュエーションだったからと言い訳に逃げてしまうと、この7年間のサイクルに対する解像度が下がります。
  • コンディション以前にコンサはボールを持っている際のポジショニングが整理されておらずうまく敵陣にボールを運べないため、そこからのミスで簡単にボールロストから失点を重ねてしまいます。

  • この試合後は、①キム ミンテが干される、②駒井がウイング以外の役割に移行、というサイクルの中でもかなり大きな戦術的なターニングポイントがありました。
  • ミンテはビルドアップにおけるミスの責任を取らされた形で(後に定位置を奪い返す→干され を2ど繰り返します)、確かにコンサでのミンテはポジショニングやボディアングルに改善の余地ありで、なかなかそこが改善されなかったのがミシャの信頼を完全に得られなかった要因ではあるのですが、22シーズンに岡村の台頭まではミンテの控えが宮澤しかいないという歪な編成(しかも岡村が登場するとミンテを放出する)で、コンサはしばらく「ミンテではボールを運べない」→「宮澤だとスピードや対人守備に課題」とする、特に重要なポジションでボトルネックの無限ループが繰り広げられます。
  • 駒井はこのシーズンの開幕からウインガーとしてプレーしていました。この大敗くらいから今、我々が知っている駒井らしさ…下がってボールに積極的に関与するが、本来いるべきポジションや役割を放棄する…が顔を出すようになり、それは右ワイドでの起用でも同じで、以後駒井はウインガーとして仕掛けるよりも、ビルドアップの出口になる振る舞いのプライオリティが高まります。
  • この18シーズンの残りのゲームにおいては「とりあえず駒井にボールが渡る」が、ボールを落ち着かせる観点で意味のあるものになっていたと記憶していますが、故障で駒井がほぼ全休した19シーズンを経て、20シーズンから中央で起用されるようになると、「下がって受ける駒井」の別の影響が軽視できなくなっていきます。

3.2 2019シーズン

  • 武蔵、アンデルソンロペス、ルーカスフェルナンデス、白井、岩崎、中野、といった選手が加入し人件費に大型投資を行ったシーズン。
  • 特に前線に、三好の代役としてアンデルソンロペス、都倉の代役として武蔵が選択されましたが、2人ともこの頃は味方を活かしたりスペースを作るというよりは、味方が作ってくれたスペースに突っ込むプレーが得意な選手であったため(今は2人ともセンターFWとしてプレースタイルを変え円熟味を感じさせます)、コンサは地上戦での高速カウンターという強力な武器を得ます。
  • そして宮澤のDF起用と駒井の故障もあり、前年15試合スタメンだった荒野が26試合でスタメンと台頭します。この頃(大怪我前)の荒野は走力に長けており、速い展開(ボールが前後に行ったり来たりする試合展開)では宮澤や深井とは別の部分で存在感を発揮し始めます。

リーグ戦第2節(vs浦和レッズ、⚪︎2-0)

  • アンカー(エヴェルトン)を置く浦和に対しコンサはチャナティップがトップ下の1-3-4-1-2。コンサのマンツーマン守備で浦和を嵌めてカウンターから2点を奪って完勝でしたが、そもそも3バックでコンサの2トップ相手に数的有利下でも何もできない浦和の側により大きな問題があったと振り返ることもできます。
  • (たいして上手くもないのに)ボールを持とうとしてくれるチーム相手、アウェイで、かつ先制点を奪えればカウンター狙いに専念できて当たり前ですが非常に楽な展開で、コンサが上位のクラブに勝つ時はだいたいこのパターン。
  • 1点目はアンデルソンロペスの見事なポストプレーとアシストから。しかしアンロペがこうした器用なプレーを見せるのはこの当時は大変稀で、序盤戦の大爆発と怪我から復帰した後は相手DFに向かってひたすら無謀なドリブルを繰り返してロストをするだけの選手に成り下がり、彼の覚醒にはあと1年ほどを要します。この試合はジェイが不在、前線の枚数も少なく、浦和相手にカウンターでスペースがありアンロペが自由に動きやすいということがかなりプラスに作用したのでしょう。
  • そしてアンロペが右シャドーとしてフィットしなかったため武蔵がその役割に収まりますが、武蔵もまた右シャドーとしてのプレー(三好がやっているような)は難しいので、コンサは左シャドー(チャナティップ)と2トップ(ジェイ・武蔵)のような変則的な左右非対称布陣が定着し、中盤でボールを受けて展開するという役割が唯一できるチャナティップへの依存度は大きくなったと思います。


リーグ戦第9節(vs横浜F・マリノス、⚪︎3-0)
  • コンサのホームでしたがF・マリノスはボールを保持しようとアグレッシブにプレーしますし、コンサはカウンター主体で良しとするので浦和戦と同じ展開になりますし、またもコンサは2トップということでアンデルソンロペスが輝きを放ちます。

ルヴァンカップ決勝(vs川崎フロンターレ、△3-3)
  • 深井のドラマティックなゴールなど美しい思い出として永遠に記憶されるゲームだと思いますが、戦術的には18-19シーズンの典型というか、チームの限界を示す非常に貴重なサンプルとなったゲームでもあります。
  • 開始早々にGKからのbuild-upから菅の見事なゴールで先制しますが、以後は80分ほど防戦一方でした。川崎のようなワイドに強力な選手がいるチームに対し、コンサは1-5-4-1で守るシャドーの武蔵とチャナティップも下がってサイド2人〜場合によっては3人で対応を試みますが、こうして引いて耐えているだけではジリ貧になります(武蔵やチャナティップ、前線で1人孤立するジェイくらいの能力があればカウンターからワンチャン作れますし、実際そういう場面もありましたが)。
  • この試合でチームのリミットがわかった以上、やり方を変えることは必須で、その点では2020シーズンからのスタイル変更には一定の理解を示しますし、遡ってもコンサの歴史上で前線高い位置からボールを奪いに行くチームは存在しなかったので、この点がミシャ体制の7年間での最大の成果というか最も評価する点ではあります。
  • しかしプレスの開始位置が高かろうと低かろうと、守り方としては極めてシンプルに人を捕まえるマンツーマンしかできないという問題もあり、そこはクラブとして甘く見ていたとする振り返りになるでしょうか。

3.3 2020シーズン

  • この7シーズンを通して見たときに大きな転換点となったシーズンでした。「トータルフットボール」「オールコートマンツーマン」「アタランタのようなスタイル」といったキャッチーでメディアウケが良いものの中身がよくわからない言葉が氾濫しますが、ピッチ上ではコンサはたくさん走って人を捕まえているだけ、というのは早期にバレ始めており景気の良い言葉とは裏腹に低パフォーマンスが続きます。
  • そして10試合勝ちなしでミシャが進退伺を表明し、これは本気ではなかったかもしれませんが弱気な発言が飛び出します。クラブはこの状況で監督を全面的にサポートすると表明し、野々村社長は「後は決めるだけ」という謎の擁護ワードを使ったり、2020シーズンは戦術浸透に当てているので結果は度外視、という異例のバックアップ体制を敷きます。

リーグ戦第26節(vs川崎フロンターレ、⚪︎2-0)

  • 当時リーグ戦で12連勝のJ1記録を更新していたこの試合も、やはりパターンはコンサのこれまでの勝ちパターン(上位喰いパターン)と全く同じで、ボールを持ってくれる割にはボールを運べない川崎相手に荒野・駒井・チャナティップの前線でのマンツーマンがハマったもの。
  • それだけだと特筆するゲームではないのですが、金子の右ワイドでの逆足起用が決定的になったゲームということでピックアップしています。金子は15節(vsセレッソ、9月9日)から右ワイドで起用されておりこの試合が初めてではないですが、セレッソ戦はルーカスが負傷欠場という事情があり、ルーカスを左に回してでも金子を右で使うとする方針が定まったのはここから。
  • ただこの頃の金子は右足クロスのオプションもなく、左足でも強引なドリブルに頼っていて左足インスイングでのラストパスも見られず、彼が手のつけられないレベルに到達したのは23シーズンになってから。21シーズンは7ゴールを挙げていますが、これはシャドー起用だったりオープン展開からのカウンターで突っ込んだりしたものから生まれていて、改めてですがこの川崎戦でコンサというチームや金子が何かを掴んだわけでもなく、以後再びチームは停滞を続けます。


3.4 2021シーズン

  • 野々村社長の言葉を信じるなら、2020シーズンを使って戦術が浸透し、このシーズンで勝負をかけるという位置付けでしたが、結果は特に触れる必要がないでしょう。
  • 戦術的には引き続きトータルフットボールという名の極端なマンツーマン対応を続けており、このやり方を採用するなら1v1で勝てるかが重要になります。
  • よって資金的に上位のクラブ(コンサが1v1で勝てない選手がいる)相手に分が悪くなり、下位のクラブを叩いて順位を維持する傾向がこの21-23シーズンは顕著でした。21シーズンは4クラブ降格というシーズンでしたが、獲得した勝ち点51のうち、降格した横浜FC、仙台、大分、徳島相手に8試合で6勝2分で勝ち点20を稼いでいます。

  • このシーズン前半にアンデルソンロペスが14試合で12ゴールと爆発し、中国の武漢足球倶楽部へと引き抜かれますが、アンロペが覚醒し前線でボールを収める、守備で1stDFとなる、ボックス内ファーサイドでボールを待てる…といったマルチなFWに変貌したことも非常に大きいトピックなので試合をピックアップしようかと思いましたが面倒なのでやめちゃいました。ごめんね。
  • ただアンロペが覚醒したというかプレースタイルが明らかに変わったのは前のシーズンの13節(8/29、vs名古屋)でありこのシーズンではないこと、またこの背景にはミシャの指導も影響していたという本人の証言があったことを記録用に残しておきます。

リーグ戦第1節(vs横浜FC、⚪︎5-1)

  • 開幕戦で横浜FC相手にゴールラッシュを披露し期待が高まりますが、相手がこの年のJ1で最下位に沈むチームだとは後に判明します。
  • 戦術的には「トータルフットボール革命後」のチームはこの時点でほぼ完成系というか、言い換えればこれ以上は伸びしろがない状態でした。マンツーマン、各ポジションで完全に同数で捕まえると、この頃は特にJリーグのチームはほぼ全チームが長いボールを蹴ってきて、それをDFが跳ね返すして回収というもの。
  • ですので「DFが跳ね返す」が特に重要で、18、20シーズンと干されていたキム ミンテがしれっと開幕スタメンに返り咲いているのもこのためでしょう。しかし「ボールを持つのか持たないのか問題、そもそもそれが上手くいかないのは本当にミンテのせいなのか?問題」が再発してミンテは干され、宮澤のDF起用でこのシーズンは乗り切ることとなります。
  • ↓の金子のゴールは開始4分という速い時間帯でコンサの速攻が決まっていますが、これも横浜FCの放り込みをDFが跳ね返して拾ったところから。跳ね返されるだけでこれだけ崩れているのは、かなり相手にも問題があるでしょう。


3.5 2022シーズン

  • 21シーズン途中にアンデルソンロペス、21シーズンオフにチャナティップとジェイを失い、その後任が緊急補強のガブリエルシャビエルに興梠と、スカッドのシュリンク傾向が明確になっていきます。ただ興梠やシャビエルといった手が加わっていた前線はまだマシで、宮澤CBで乗り切ろうとしていた最終ラインに岡村の台頭がなければ大惨事になっていたでしょう。もっとも岡村をザスパから見つけてきたのはフロントのファインプレーでもありますが。

リーグ戦第7節(vs鳥栖、⚫︎0-5)

  • 0-5で負けた試合をピックアップするのは別にイヤミでもなんでもないのですが、まず20シーズン以降のコンサで重要なトピックとしては、「3バック(3DF)前提で編成またはスタメンを組んでいるので、相手が2トップの時にも同数でマンマーク対応を続けるなら枚数調節が必要で、それを毎回宮澤か、高嶺が起用されるようになってからは高嶺がやっていた」という点が挙げられます。
  • そして相手が2トップならコンサは2バックになって、その2バックとは岡村と下がってきた高嶺、本来サイドのDFである田中駿汰と福森は前に上がって相手の中盤の選手をマークする…といった変則的な、奇妙な布陣でプレーすることに最適化されていました。
  • 前向きに考えると、おそらくミシャとしては純粋なDFをなるべく起用したくないというか、高嶺にせよ岡村にせよ常に後ろに2人余っている必要はないでしょ、ということで、高嶺のような本来MFの選手をCBとして運用して枚数調節をしやすくしているのかなと思いますが、高嶺の移籍理由として「中盤の選手として勝負して評価され、ヨーロッパに行きたい」みたいな話があったかと思いますし、結局は最終ラインでいかに対人で相手のFWに勝てるかが同数での対応においては重要なので、そこは本来DFの選手を起用するオプションを持っていてもよかったかなと思いますし、そのツケを24シーズンに少しは払うことになったかもしれません。
  • なおアタランタは3バックが基本形で、相手が2トップなら(コンサのように)中盤の選手が下がるのではなくて、3バックの左右どちらかが残って、どちらかが前に出ていくという運用であることが多いと思います。

  • この「相手の配置次第で高嶺が適正位置・役割で使われず無理やりCBをやらされる問題」と似ているのが小柏。前線が興梠、シャビエル、小柏で、相手が4バック(2CB)だとコンサも2トップで相手に対応することになりますが、興梠とシャビエルが2トップなら小柏は弾き出されててインサイドハーフになります。ただ高嶺は後ろでの対応が多いのに対し、小柏はチャンスの際には前線に進出できますし、彼にはそれだけの走力があること、また実は2列目の方が向いている?こともあり、あまり問題になっていなかったかもしれませんが。


リーグ戦第20節(vsFC東京、⚫︎0-3)

  • ↑の鳥栖戦とは対照的に、この試合はマンツーマンでの対応自体はやりやすい相手のシステム。しかしFC東京の問題児レアンドロが「偽の9番」(ゼロトップ)で起用され、コンサはその仕組みを使われてボコられます。
  • レアンドロが引いて岡村を釣り出せば、広大なスペースでコンサとFC東京で2v2。かつコンサはそのうちの1人が福森ということでスピード勝負では圧倒的に不利なシチュエーションからわざわざ勝負し、PK2本を献上します。
  • 21年の一時期、とあるフリーのサッカーライターが「札幌の強度は最強!」と謳ってサポーターを高揚させていましたが、その時期もコンサが勝っていたかは別にして、22シーズン前線がシャビエルや興梠に入れ替わったこともあってコンサの前線守備の強度はもう純粋なマンツーマンでは相当厳しいものになっていました。
  • ですのでDFの能力の問題だけではなくて、戦術的により高度なチューニングが必要だったと思いますが、これ以降、聖域というか絶対的な存在だった福森のプレータイムを減らし、便利屋と化していた高嶺や、菅をDF起用する(参照)対応がとられます。
  • 福森と競えるDFとして中村桐耶にクラブが期待していたのは自明ですが、その中村が伸び悩み代役が見つからない誤算は24シーズンにも大きく影響したことは言うまでもありません。

リーグ戦第24節(vs湘南、⚪︎5-1)

  • 23-24シーズンの直近3試合は湘南に勝てていませんが、それ以前は湘南を得意というか相性が良いチームで、このシーズンも夏に大量得点で湘南をボコって以後やや持ち直すことに成功しています。
  • これは明確な理由があって、湘南は23年夏にミンテが加入するまではDFが大岩、舘、大野、杉岡…などあまりCBとしてはパワーがない選手が揃っており、コンサはそこに放り込んで、駒井のようなパワーのある選手が体を当てるだけで簡単に湘南陣内でプレーできていたためです。
  • すでにジェイが引退していてもコンサが前線へのロングボールを多用することは顕著で、これは21シーズンだと徳島なども同様にDFにパワーがないチームで有効だったのですが、ミンテが来てから湘南に勝てなくなったのは非常にわかりやすい結果かと思います。


3.6 2023シーズン

  • またも前線のスタメン級だったシャビエル、興梠が退団し選手の入れ替えが生じます。
  • フロントが期待していたのは、前のシーズン後半に加入し救世主となったキムゴンヒ(頑なに登録名をゴニ にしない)とヴィッセル神戸から加入のコバ兄こと小林。
  • キャンプでもこの2人と小柏を前線で組ませていたようですが、開幕戦でゴニ+小林のコンビだと速攻を仕掛けるにはスピード不足を露呈し、既に当時の時期コンサは1トップ+2シャドーによる前線のコンビプレーみたいなものも形骸化していたのでこの鈍足ユニットを使う理由がなくなります。
  • そして見た目の割に意外とゴニはパワー不足というか、コンサはこれまで都倉を筆頭にジェイ、駒井(あの駒井です)…といった前線で身体を張ってルーズな放り込みをマイボールにしてくれるパワフルな選手に頼ってきましたが、ゴニはそこまで無理がきく選手ではないことも判明し、前線で走り回る守備が得意でもないということで前線のキーマンを探さなくてはならない状況でシーズン序盤を戦います。

リーグ戦第10節(vs横浜FC、⚪︎4-1)
  • またも横浜FC(もしくは湘南)というか、センターラインに強度がないチームを放り込み主体のシンプルなスタイルでボコってコンサは立ち直ります。
  • 先述の通りゴニ・コバ兄のユニットが「なんか違うな…」となってコンサは前線の柱、特に体を張って放り込みをマイボールにしてくれる選手が不在の状態で、この試合で初めて小柏と、新加入の浅野の2トップが採用されます。
  • 前線がこの2人だとパワー不足がより顕著になるかと思いきや、まずこのシーズンのJ1でコンサのFWが誰だろうと放り込んでるだけで勝手に崩壊するチームがいくつかあり、また浅野はハンジフリックキラーとして有名な兄のようなタイプかと思いきや、ボールを持った時により力を発揮する選手だと判明し前線の救世主となります。足元で受けるだけではなく、DFを背負っても一定以上のクオリティを発揮しボールをキープしたりファウルを誘って陣地回復をしてくれる貴重な存在でした。
  • 小柏が前線の軸、もしくは最も重要な選手と考えていた方もいるかと思いますが、私の印象では小柏はほとんどボールを持たないところでの仕事が多く、まずボールを持って相手DFと対峙して何らかDF剥がしたりして決定機を作っているのは浅野。小柏は浅野の存在にかなり助けられている印象でした。

 


リーグ戦第16節(vs柏、⚪︎5-4)
  • 5ゴールでご満悦のミシャの姿を今も記憶している方も少なくないでしょうか(das ist sapporo ご満悦のミシャが忘れられません。それにクラブが乗っかるのもどうかと思いますが、基本そういうノリで運営しているのがコンサというクラブなのでしょう)。
  • この試合も浅野・小柏の2トップが、オープンな撃ち合いを挑んでくれた柏に対してぶっ刺さっていましたが、ここでは金子について書いておきます。
  • 前のシーズンまではシャドーかウイングバックかで定まっていなかった金子が、浅野の前線起用と共にウイングバックで定着し、ここから金子の快進撃と共にコンサは浅野、小柏、金子の3人でオープンな展開からの速攻が売りのチームになっていきます。
  • 金子のこのシーズンの開眼は、右サイドで右足を使ってプレーできるようになった点。すなわち縦突破から右足のクロスでシュートチャンスを創出できる選手になったことで、左足のカットインだけを警戒していればよい選手だったのが、金子を止めるために多くのチームが2人のDFを投じることになります。

 

 

 

  • 個人的には素晴らしい監督のもと、組織的で特定の選手に頼らないチームができると期待していたので、「コンサは低予算だから〜」、「選手が移籍したから〜」、との弁明に終始する姿勢に大変失望し続けてきた7年間ですが、23年夏にコンサを去った金子は1人で勝ち点5〜10くらいは持っていたのではないかと思います。
  • なおクロアチア方面に強いライターの方が、ディナモ移籍当初の金子について「戦術理解に乏しく戦えない」と書いていましたが、なんもわかってないなこいつと思っていました。戦術理解はともかく金子ほどフィジカルに優れた選手はJリーグでは稀で、こうした相手ゴール前がクオリティも優れているだけでなく、自陣DFラインまで下がって対面の選手をマーキングするというウイングバックの非常にタフな仕事も金子は頑張れる選手で、特に後任の近藤がこの役割で当初苦しんだことを考えると金子の穴は非常に大きかったのは事実でしょう。

  • そして金子が去った後半戦は17試合で3勝、浅野も4ゴール、小柏も1ゴールとペースを落とし、build-upに問題を抱えるコンサにとってドリブルで勝手に相手ゴールに突っ込んでくれる金子の重要性がより際立った結果かと思います。


3.7 2024シーズン

リーグ戦第16節(vs神戸、⚫︎1-6)

  • 先に書きましたがマンツーマンでの対応においては相手との1v1の局面でどれだけ負けないかが重要になりますし、また「マンツーマン」の程度にもよるのですが、コンサの場合は特にその純度が高いマンツーマンのやり方なので対人に強い選手をなるべく揃えたいところ。
  • ですので本来は「お金がない…クオリティのある選手を集められない…」とするチームにはアンマッチなやり方なのですが、なぜか知りませんが監督がミシャという縛りでコンサは戦わなくてはならないので手の施しようがない状況でもありました(その後、パク ミンギュのような選手が加入して一応手の施しようはあるんだなと判明します)。
  • 2020シーズンにこうしたやり方になってから、コンサは鹿島のような対人に強い選手が揃うチームとの部が悪くなったのはこうした話で容易に説明がつくのですが、神戸も2020-24年の5年間でコンサが全く勝ててないチーム。
  • 特に大迫が21年に加入し、神戸のスタイルも変容してからは、大迫が岡村を背負った状態でのマッチアップがこのカードの度に繰り広げられますが、Jリーグでは別格のFWに対して岡村1人では対処が難しくこの優位性を神戸が使う形で毎試合有利に試合を進めており、逆の視点では岡村1人にMVPクラスの選手の対応を投げてしまうコンサの無策さが露呈されています。

  • この試合の6失点はいずれも示唆に富んだものでありそれぞれ振り返る価値がありますが、トピックとしてはこの試合の出来を見て、最終ライン右の髙尾を信じられなくなったことも大きいものでした。
  • 後半戦に髙尾、岡村、パクミンギュ、大﨑と揃ったことで快進撃を披露しますが、コンディション不良もあったとはいえ髙尾がスケープゴートのような形になってシーズン前半戦で以降ほとんど起用されず、結果的にここで落とした多くの勝ち点が響き泣きをみることになりました。

リーグ戦第34節(vs名古屋、⚪︎2-0)
  • 「攻撃的で魅力的なサッカーに転換しないと未来はない」(野々村前社長・談)としてミシャを招聘し異例の7年間を任せたサイクルは、最終的にはこの名古屋や湘南といったチームに対してもボールを捨てて守りを固めるということに帰結しました。
  • ただそのボールを捨てて名古屋に持たせる選択をしたこのゲームがシーズンでベスト、かはわかりませんし個人の主観ですが、相手にほぼ決定機を作らせず完勝に近いゲームだったといえます。このスタイルならば別の監督、別の体制、別のお金の使い方で良い気がしますが、まぁ勝てばよかろうということで。

リーグ戦第37節(vs広島、⚫︎1-5)
  • このシーズン僅差で優勝を逃した広島ですが、コンサとはほぼ全てにおいて質が違うチームでした。優秀監督にスキッベ監督が選ばれるのも納得でした。かつて「コンサの強度は最強」と言っていた方がこの広島を見てどう評されるかは興味深いところです(いや興味ないけど)。
  • お互い1-3-4-2-1のシステムを採用したこともあり特に差異が明確に観測できたゲームでした。広島もヨーロッパの感覚でいうとボールを捨てているところはあるのですが、その場合も次のフェーズ(相手ボールになる)に素早く切り替えてシームレスにプレーします。よく「連動性」と言いますが日本ではパスが繋がっていると連動性があると評されますが、広島を見ていると各局面の繋がりだったり、各選手がプレーの意図を共有していることが本来「連動性があるチーム」と賞賛されるべきなのではないかと思います。
  • 一方のコンサはとにかく武蔵のような前線で無理が効く選手にボールを押し付けて、武蔵の頑張りが結実すれば他の選手も個々で頑張って何かを生み出そうとする感じで、都度都度考えてプレーしていると言い換えられるでしょうか。広島のようなpressingをサボらないチーム相手にピッチ上で考える時間は多くありません。ミスから失点もしましたがそのことについて選手を責めるものではないと思います。

※あとは選手短評を書いてこの企画を終わります。

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