1.ゲームの戦略的論点とポイント
近年のご様子は…:
- リーグ戦では内村圭宏が伝説を作った2016年11月12日以来の対戦。ただカップ戦では昨年8月に天皇杯で、お互いターンオーバー気味でしたが対戦しておりジェフが品田のフリーキックを守り切って勝利しています。印象としては、ミシャみたいにやることがわかりきっていると小林慶行監督体制の強みが出る、といったところでしょうか。
- ジェフは23年の売り上げは25億円前後。wikipediaには更に遡った時期での収支が表に乗ってますが、2007-2008に「その他収入」…要するに阿部勇樹など主力選手を売った時期に一時的に売り上げが増えた以外は一貫して25億円前後〜30億円を超えないくらいの収支で推移しています。このあたりの財務コントロール?はめちゃくちゃ効いてるなという印象です。
- 一方でジェフが最初にJ2に足を踏み入れた頃はJ3もなく、予算5億円程度のチームもまだあったと思うのですが、今の時代に予算25億円というとJ2でもパワープレーができる規模ではなくなっている。また仮にJ1に戻れたとして、かつてのジェフのポジションに返り咲くには予算規模として50億円くらい必要になっているので、一貫して25億円前後というのは見事にインフレに飲み込まれているとも言えるかもしれません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%95%E3%83%A6%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89%E5%B8%82%E5%8E%9F%E3%83%BB%E5%8D%83%E8%91%89
- あとは詳しい事情はわからないですが、かつて阿部や佐藤兄弟、村井…を輩出した下部組織が近年元気がない気がしますが、これは関東の人工重心というか、多摩地域周辺〜横浜くらいのクラブが10-15年で台頭して、関東の子どもからすると蘇我まで通うのはちょっと遠いとか京葉線で寝過ごしてしまうとかそういう問題はあるかもしれません。
スターティングメンバー:
- そんなジェフですが25シーズンはいわき、富山、山形相手に開幕3連勝と絶好のスタートを切っています。山形相手だと相手がボールを持ってくれる展開になるのでジェフの得意な展開というか、スペースを消して椿のスピードでカウンター、という強みは活きる印象でした。
- メンバーは前節からGKをスアレス→鈴木涼大に戻したのみ。昨年のメンバーからはエース小森とCB佐々木が退団して迎えたシーズンですが、後者は鳥海の復帰で(左に回る鈴木大輔の負荷は大きくなりそうですが)計算が立つとして、前線の奮起が上位進出にはキーとなりそうです。
- その点では、開幕後に加入し今節からベンチ入りしたカルリーニョスの存在を考慮しても、やはりボール非保持のフェーズをベースに試合をコントロールしていくスタイルでいくのかなと予想します。
- 3連敗でホームに帰ってきたコンサは、引き続きメンバー入れ替えというか試行錯誤をすることが示唆されていましたが、CBに大﨑→家泉、前線は長谷川、木戸、中島→スパチョーク、出間、バカヨコに総取っ替えしてきました。サブはメンバー外となった大﨑のところに宮澤。白井はこの週から全体練習に合流したとのことです。
2.試合展開
アクシデントの裏に潜むインシデント:
- 開始3分、ジェフの右SB高橋が右からアーリークロス。GKとDFの間のボールに勇気を持って飛び出したコンサのGK菅野と、ジェフのFW林が接触し、菅野は脳震盪による特別枠が適用される交代でピッチを後にします。
- ショッキングな絵が流れましたが、実はこのプレー(高橋のクロス)の前に起きていた現象が、この試合において非常に再現性のある現象というか構図でした。
- 序盤コンサは菅野→小次郎の交代前後を問わず、ジェフの状況を問わずロングボールを多用します。
- 気になったのは、菅野は交代前に短時間で2回くらいフィードを蹴っていたのですが、いずれもターゲットと思われるバカヨコには合っておらず、ジェフが続けて拾うことができ、そこから素早く展開して狙っていたであろう形に繋げていたのですが、まずロングボールを前線の選手に当てて誰が拾うのかが不明瞭でした。
- 出間はバカヨコに並ぶようなポジショニングで、落としを拾う感じには見えなかったですし、高嶺と馬場がそうするならもっと押し上げている状態で前に蹴る必要があったと思います。コンサのロングフィードは前の選手が準備しているところにではなく、いきなり蹴っている感じでしたし、かつキックの精度もイマイチでした。
- ジェフはセンターラインがCB鈴木、鳥海はまずまず実績もある選手ですが、試合が進むとバカヨコ相手にかなり苦戦していましたし、その前を守るのはサイズ的にあまりない田口と横山。ですので中央での放り込みはコンサにとって有効なオプションだったとは思いますがちょっとクオリティが足りない感じでした。
- 他にも要因はあるのですが、とりあえず前提としてコンサはこの試合「押し上げられていない」「前の選手へのフィードがあまり丁寧でない」というのを頭に入れて、展開を振り返ってください。
- この3分のプレーでは、コンサの近藤のスローインがバカヨコに収まらず、ジェフのCB鈴木が回収して素早く前方にパス。これをジェフの20石川が馬場と競り合って(「潰れて」)、流れたボールをもう1人のFW林がキープして椿にパスでポストプレー成功、そこから右に展開して…となるのですが、私が↑で再現性があったと指摘したのはこの、ジェフのFWが降りてきて(下がって)高嶺や馬場の周辺で収める。下がってくるFWとは対照的にサイドハーフの右:田中和樹と左:椿がゴール方向に向かってスピードアップするという動き。
- とにかくピッチ中央、高嶺と馬場のところにジェフのFWは降りてきて、コンサはこの2人のポストプレーを潰せなかったことが前半たびたびゴールを脅かされた直接的な要因でした。
ポストプレーからの展開は毎回同じ:
- ↑の菅野が怪我した時のプレーはバカヨコへの放り込みからでしたが、11分のジェフの先制点はコンサがジェフのゴール前でプレーして、コンサがやや押し込んでいた状態から、ジェフがクリアして押し上げ→コンサも家泉がクリアするがジェフSB日高に渡ってからのトランジションという形。
完璧カウンター!ポストプレー引きつけた浮き玉パス、完璧なタイングでの抜け出しからゴール💫
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) March 9, 2025
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第4節
🆚 札幌vs千葉
🔢 0-1
⌚️ 11分
⚽️ 田中 和樹(千葉)#Jリーグ pic.twitter.com/Py3nt50scT
- ジェフは押し込まれていたので、SHはSBの近くまで一時的に下がる、FWもペナルティエリア外くらいまで撤退してから押し上げるという状況。一時的には、理想的な陣形や配置ではなかったのですけど、押し上げて陣形を復元してから、FW林に渡った瞬間にSHの選手と、ポストプレーからのパスを受けた横山は完全に次のプレーを描けていて、林は横山からのリターンで迷わずターンしてスルーパス。
- こうして直前のシチュエーションは微妙に違うんですけど、ジェフとしては狙いは明確でこの形になったら必ず狙っていこうと決めていたのでしょう。
コンサ視点で頻発していた現象は…①:
- 一方でコンサとしては、繰り返しですがシチュエーションが違うので、コンサが目を向けるべき事象はそれぞれのシチュエーションで微妙に異なります。
- 最初のケースではロングボールを使うタイミングと精度、その際の押し上げ。
- 失点につながった2回目のケースでは、誰がというよりもコンサの選手は全体的にボール保持→非保持の切り替えが遅かったかなと感じます。ただ家泉のクリアを左足で足元にコントロールしてクイックに縦パスを通した日高の技術は光っていましたし、日高に寄せていた初スタメンの出間(寄せていたが最後やや緩めてしまった?)としては、そこで完璧な縦パスに繋がるとは予想していなかったかもしれません。
- 最後、絞っていた田中宏武の前にジェフの田中利樹が飛び出してきてGK小次郎との1v1を制しますが、コンサの選手の切り替えの遅さを見ているとむしろ、直前のプレーでウイングの位置まで上がっていた宏武はよく戻っていましたし、そもそもボールを持っている時にあれだけの「流動性」を許容しているならば、WBがここ(CBの隣)を毎回カバーするのは不可能なのではないかと思います。
- ボール保持の際にコンサのDFが低い位置からスタートして、十分にジェフの前線の選手を引きつけない状態で放り込むのは前半の20分くらいまでは何度か見られました。意図としてはリスク回避なのでしょうけど、全体的にチームの練度が低い状態なので裏目に出た形になるでしょうか。
コンサ視点で頻発していた現象は…②:
- この「押し上げできてないのに簡単に蹴る」に加えてコンサの傷口を広げることとなったのが、「ジェフのDFに対して高い位置でどうやってpressingを行うのかが未整理だった」ことだと感じます。
- ジェフはボールを持っている時にあまりポジション移動がなく、基本的には定位置ベースからスタート。
- ジェフは左:日高、右:高橋の両SBが自陣低い位置のタッチライン付近で積極的にボールを引き取ることで、中央でコンサのプレッシャーを受けやすいCBをサポートします。特に日高の柔らかいキックは1点目の場面以外でも非常に印象に残りました(もうちょいサイズがあればというのが惜しい選手ですね)。
- ジェフが毎回SBを経由するのでこのシチュエーションも”再現性”がかなりある方でした。
- この際に、コンサは日高にはシャドーの出間と近藤が寄せてくるのですが、近藤は最初最終ラインからスタートして(椿を警戒していて)そこから前に出て、コンサのDFラインはボールサイドにスライド、となるのですけど、結果的には日高はこの試合何度も縦パスを成功させていますし、高橋も17分の場面などで同じように、前にボールを運ぶことに成功してシュートチャンスを作っています。
- ですのでコンサはどう動くというルールというか約束事はあるのですけど、それが結局ジェフのどういうプレーを阻害してどういうシチュエーションに持ってきたいのか…SBのところでがっつり追い込んで奪うのか、SBに不十分な形で蹴らせてセカンドボールを拾うのか…という想定や設計は全くダメだったと言わざるをえません。
- 俯瞰視点で見ている感想としては、近藤を前に出して対応するなら、ここでも、もっとDFラインを高い位置に置く必要があるし、DFを高い位置に設定するなら背後をケアするためにGKが注意しておく必要もあるし、そもそもイージーに蹴らせないように前線の選手はSBにボールが渡ったところで全力で寄せる。そしてSBがバックパスとかでやり直せないようにそのコースを切る(バカヨコの役割)、横パスも馬場や高嶺が横山や田口にもっと強烈に寄せて牽制する…
- というくらいは、ざっと私が思いつくくらいでは挙げられるのですけど、コンサは出間がそこそこ頑張って日高に寄せてはいたものの、その他は全然ゆるゆるで全体としてはジェフに全然プレッシャーがかかってなくて、ジェフはあまり苦労せずコンサの前線守備を回避できていたと思います。
- 出間の反対側のスパチョークのところは、高橋への寄せ方は出間よりももっとルーズな印象で、ジェフのプレースタイルのおかげでこのサイドはそんなに問題にならなかったかもしれませんが、ちょっとこのやり方だとスパチョークのシャドー起用は最低水準を下回っているということになるかもしれません。
- (後述しますが)20分以降はコンサがジェフの仕組みに気づいた?かで、サイドから放り込みを増やしたこともあって押し込みますが、ジェフボールの時のコンサの整理されていなさは相変わらずでした。
- 32分のジェフの追加点は↑で挙げられた要素の総集編のようなもので、①出し手となるSBにプレッシャーがかからない、②押し上げられない、圧縮できないので中央の広大なスペースを高嶺と馬場の2人だけで見なくてはならない。最終ラインに5人並べて用心していましたが、フリーの選手から1発で5人を越えるパスを通され無力化されてしまいました。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) March 9, 2025
🏆 明治安田J2リーグ 第4節
🆚 札幌vs千葉
🔢 0-2
⌚️ 32分
⚽️ 椿 直起(千葉)#Jリーグ pic.twitter.com/NQ5lo8pcGV
ジェフもまだまだ1合目:
- いきなり数字の話をするのですが、
🕕FULL TIME🕕
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) March 9, 2025
本日も応援いただき、誠にありがとうございました。大勢のホームサポーターの想いに応えることができず、大変悔しいですが、切り替えて次節に臨みます。
🏆明治安田J2リーグ 第4節#北海道コンサドーレ札幌 1-3 #ジェフユナイテッド千葉#consadole #コンサドーレ#DAZN… pic.twitter.com/YcSef0jn8S
🟥本日のスタッツリーダー⬛️
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) March 9, 2025
シュート数: #家泉怜依
パス成功数: #高嶺朋樹
ドリブル数: #田中宏武
チャンスクリエイト: #スパチョーク
タックル数: #髙尾瑠
こぼれ球奪取: #田中宏武#consadole #コンサドーレ pic.twitter.com/k7GcUNb7SF
🟥本日のスタッツリーダー⬛️
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) March 9, 2025
シュート数: #家泉怜依
パス成功数: #高嶺朋樹
ドリブル数: #田中宏武
チャンスクリエイト: #スパチョーク
タックル数: #髙尾瑠
こぼれ球奪取: #田中宏武#consadole #コンサドーレ pic.twitter.com/k7GcUNb7SF
🟥本日のスタッツリーダー⬛️
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) March 9, 2025
シュート数: #家泉怜依
パス成功数: #高嶺朋樹
ドリブル数: #田中宏武
チャンスクリエイト: #スパチョーク
タックル数: #髙尾瑠
こぼれ球奪取: #田中宏武#consadole #コンサドーレ pic.twitter.com/k7GcUNb7SF
本日のスタッツリーダー
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) February 16, 2025
シュート数: #木戸柊摩
パス成功数: #大﨑玲央
ドリブル数: #近藤友喜
チャンスクリエイト: #田中宏武
タックル数: #木戸柊摩
こぼれ球奪取: #大﨑玲央
【2025明治安田J2リーグ 第1節】
大分トリニータ vs 北海道コンサドーレ札幌#consadole #コンサドーレ pic.twitter.com/JomWnLg5Y1
- シュート数は全体としては多かったですし、個人では田中宏武のドリブル数:14というかなり多めの数字が出ています(他の試合と比較してください)。
- これだけでも前のコンサの監督なら「攻撃的なサッカーを見せられた」みたいに胸を張ると思うのですが、岩政監督はそうした”文化”を変えるミッションを担っているので同じ振る舞いはできないのもわかります。
- …という話はどうでもいいのですが、ワイドの選手にこれだけドリブルを許していると(集計の基準とかは謎ですけど)、ジェフの守り方や全体としての戦い方も結構課題があったということの裏付けになるかなと思います。
- コンサがボールを持っている時は、ジェフは1-4-4-2でセットして、高さはミドルというかそんなに高い位置にはブロックはなく、またジェフのFWは家泉には寄せますが、GK小次郎にはほぼ寄せなかったので、基本的には後ろの枚数確保というか、ゴール前をしっかり守ることを(本来当たり前なんだけど)念頭に置いていたと思います。
- ただ序盤は田中利樹と椿が前に出てくると、コンサの左右のDF:髙尾と中村桐耶は自信を持って前を向けず、簡単に味方にパスする爆弾ゲーム状態になってしまいましたし、家泉もどうようでした。
- ジェフは↓のように、SBが絞ってコンサのシャドーを見るというかハーフスペースを埋めるので、コンサのWBは構造的には最初は空いていることになる。このことにコンサのDFや後ろの選手が気づいたのは20分を過ぎてからだったと思います。
- 最初のセットした段階で”捨てている”コンサのWBにボールが渡ると、ジェフはSHが長い距離を走ってサイドでSBを支援します。DFはそんなに強烈にスライドはせず、コンサのFW(バカヨコ)のマークとスペースを埋めることの両立を目指している感じでした。
- ですのでSB-CB間のスペース、岩政監督の言うところの「チャネル」は結構空く構造になりますし、そこを田口と横山が頑張って埋めることになるのですが、ちょっとこの2人だと走力的に不安な感じはしました。
- そして撤退する際はFWも下がって10人で1-4-4-2気味にブロックを作り直します。
- ですのでジェフのこの対応については、「自陣で守る際に枚数をかけることになるが、そもそも捨てている選手(vsコンサではコンサの両WB)にボールを届けること自体はジェイはあまり制限をかけておらず難しくないので、コンサが特定の選手にボールを渡すことでジェフは長い距離を走って自陣に戻ることを何度も繰り返し強いられる構造になっていて、ジェフの前の4人の選手は大変だな」との印象を抱きました。
- その上、ボールを握ってからの狙いはFWのポストプレーからの、SHのスピードを活かした速攻なので、ジェフの前線や中盤の選手にはかなりの走力が求められるはずです。実際問題、まだまだ構築中(だと思う)なコンサがWBにボールを渡すだけで、すでにジェフは走力的に追いついていない感じがしましたし、これだと夏場のゲームなんかだとちょっと持たないのではないか、とは思いました。
- 頑張って走っても走力的に足りない感じのジェフに対し、コンサがワンタッチプレー”等々”で、サイドでクイックにボールを動かすとジェフの対応は更に追いつかなくなりますが、それはスパチョークがいる左サイドの方が右サイドよりも幾分かはうまくできていた印象です。この点はディフェンスでの印象と逆で、ディフェンスで頑張っていた出間は近藤とのユニットであまり驚異になれなかったかもしれません。
あまちゃんの存在感:
- そしてコンサのWB、特に左の田中宏武に何らかボールが渡るようになって、コンサがジェフのペナルティエリア周辺でボールを持った状態が何度かできるようになると、コンサは(長年の習性なのか知りませんが)とりあえず背の高いFWにサイドから頭を狙って放り込むというオプションがあることを誇示するようなプレーをします。
- 例によって相手を崩しているわけではなく、とりあえず最後に放り込んでいる感はあるのですが、コンサのFWバカヨコが左クロスに対してファーサイド、ジェフの左CB鈴木と左SB日高の間で待つと、サイズのない日高にはバカヨコを任せられないので、鈴木はバカヨコに体を当てに行く。
- しかしバカヨコがスタンディングの状態で競り合っているだけで鈴木はパワー的にバカヨコの相手はきつそうで、コンサがここに放り込むと、バカヨコが簡単にヘディングシュートに持ち込むまでには至らないにしても、鈴木や鳥海、日高がクリアするのも簡単ではなく、クリアできないジェフはコンサの波状攻撃に自陣ペナルティエリア付近で晒されることになります。
- 38分にはコンサが家泉→ボックス内に上がった中村桐耶への放り込み、そのセカンドボールを拾って左の田中宏武からファーのバカヨコへのクロス。文字通りのパワープレーでゴールをこじ開けます。
今シーズンチーム初ゴール!
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) March 9, 2025
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第4節
🆚 札幌vs千葉
🔢 1-2
⌚️ 38分
⚽️ スパチョーク(札幌)#Jリーグ pic.twitter.com/kdq0Dhi5IF
相手を考慮する必要はあるが、嫌なことばかりではなかったのでは?:
- そしておそらく40分過ぎにジェフの横山が傷んで試合が止まった時に指示があったのだと思いますが、43分の場面からジェフはブロックを1-5-4-1に変更します。
- ジェフは田中利樹が田中宏武に、高橋がスパチョークにマンツーマンに近い対応になりますが、よりマンツーマン色が濃くなったことで、スパチョークがゴールから離れると高橋がそれについていってコンサが狙いたい「ポケット」が空くことがより顕著になったと思います。
- ジェフが5バックになっていない時もそうでしたが、スパチョークがスペースを作って他の選手がそこに入ってくる、もしくはスパチョーク自身が入ってくる…というのは、コンサのDFのところで安定してボールを保持さえできていれば、左サイドではそこそこうまくいっていたと思います(前監督が「試合を支配していた」と言っていた時よりも今日の方がよほど中身は伴っていた)。
- ただしあくまでジェフがあまりコンサのDFにプレッシャーをかけることを重視しないチームだから、というのは割引く必要があるでしょう。
- そしてジェフが前の人数を削って、コンサは後ろに枚数が必要なくなると、髙尾や馬場が高い位置を取るようになって、特に馬場の攻撃参加はこの前半終了間際以降、後半に入っても目立っていました。ボックス付近に入ってミドルシュートを多分3本打っていて、そんなにイメージはなかったのですが悪くないキックだったものもありました。
- こうして近藤やバカヨコがマークされたら、馬場のような比較的マークの薄い他の選手が打開する、そのためには適宜ポジションを入れ替えたり移動したりして都度最適だと思われるポジションを取る。そのためには判断力や戦術理解が必要…、というのは少なくとも原則論では間違っていないと思いますし、SNSなどを見ているとそういう(たくさん動く)プレーは多くの好んでいたのではないでしょうか。結局は結果しか皆、興味がないということが示されているのかもしれませんが。
- ジェフとしては5バックにしても、結局バカヨコに競り勝てる選手がいないのもあって、この策は即効性はなかったというか、コンサが押し込んで波状攻撃を仕掛ける構図を変えることは難しかったですし、あれだけ何度も仕掛けられるといつしか決壊しそう、コンサとしてはまた強引にこじ開けられそうな雰囲気はありました。
- またその波状攻撃の際にセットプレーも何度かありましたが、セットプレーの際もジェフは高さ不足やパワー不足を感じました。
- ジェフは180センチ以上の選手が鳥海と鈴木、高橋のみで、日高や横山は170センチそこそこかそれ未満。コンサもそんなに大きいイメージはなかったですがバカヨコ、家泉、中村桐耶が185センチ以上、髙尾と馬場も180センチあり、近藤も空中戦が得意ということで、マッチアップしてみると、ジェフは安定してクリアできそうな選手(鳥海、鈴木)がバカヨコや家泉と競り合うので精一杯で、他の選手が頭でクリアすることになるとあまり飛距離が出ず、セカンドボールを拾ってコンサのターンが続きジェフが耐える展開になりました。
ターニングポイントだったか:
- HT明けにジェフは何らか手を打つかと予想しましたが、意外にも?4バックの1-4-4-2に戻してきました。
- 考え方としてはどうせボックス内でバカヨコを抑えるのが難しいいので、前からプレッシャーをかけて簡単にコンサの選手をボックス内に侵入させないことを優先したのかと推察します。
- 後半早々に家泉→近藤への浮き玉パスをカットしようとした日高が失敗して、近藤が抜け出してグラウンダークロス…は非常に惜しい場面でした(スパチョークがファーに詰めてくれれば…)。ジェフが4バックにするとサイドに張る選手に寄せ切るのが難しくなる典型的な例で、こうしたリスクはある程度ジェフとしては許容だったかと思います。
- 似たプレーで56分に日高の背後を近藤が突きますが、ボックス内でなんとか鈴木がドリブルを突いてCKに逃れます。
- 両チームとも前半にピッチ上で起こっていたことは認識していたと思います(特に岩政監督はAirPodsを装備していますが、おそらく分析担当が客席から見て随時情報提供しているので)。
- ジェフとしてはコンサがやはりSBに対して寄せが甘いので、落ち着いてそこを使えばボールを動かせるということを再確認したのか、後半は再び前半の立ち上がりのようにジェフがボールを持って何度か前進に成功します。55分には椿の突破から、高橋がボックス内で強烈なシュートを放ちますがGK小次郎がセーブ。
- 57分にコンサは出間→荒野。そのままシャドーに入りますが、選手特性的にこの状況で荒野がシャドーをやると、(割といい意味で)馬場とスパチョークの中間くらいのキャラクターになっていて、シャドーのスペースを空ける、スペースに自らが走る、ゴール前の枚数確保、下がって受ける、失ったら戻る、前でのpressingに参加…と、少なくとも量的には出間よりも多くを担っていました。
- 60分くらいでジェフは体力的にかなりキツそうな様相を呈してきます。ワイドを変えるのかな?と予想しましたが最初のカードは66分に横山→安井。
- (安井もそんなに大きくはないけど)センターラインに体を張れてカバーができる選手を増やすのは理にかなっていましたし、コンサがボールを持った時に安井は特定の役割というよりは、色々な選手に寄せられるように中間ポジションを取ってから長い距離を走って、ジェフの他の選手が高い位置でコンサのDFを捕まえられる状態にしながら、外されたら安井がカバーして後方でブロックを作る時間を稼ぐ…という印象を受けました。
- 続いてジェフは70分に林、田口→呉屋、品田。コンサは72分に馬場→ゴニ。前提として両チームともスタートから出ている選手の疲労の色が濃い中で、品田はゆったりとボールを持って(キープして)味方を助けていましたが、1度足を滑らせて自陣ボックス付近で失って…というところもありました(鈴木のカバーリングで難を逃れます)。
- ターニングポイントかな?と思ったのはゴニ投入後のコンサの振る舞いで、おそらくバカヨコがシャドーのイメージになって、バカヨコが割と広範に動くようになる。その後、中島、長谷川、宮澤が投入されても中島と長谷川がシャドーでコンサは1-3-4-2-1のイメージだったと思うのですが、
- より2トップに近い形にして、ジェフがマンツーマンで対応してくるならCBの間にも”ポケット”を作って狙うようなプレーをしてもよかったと思いました。当初就任直後のインタビューで2トップにしてそういう形をしたいと言っていたはずなのですが、試したけど2トップは効果的にならなそう、ということでしょうか。
- 最後は呉屋の、なんとなく既視感のあるゴールが決まってジェフがダメ押しの3点目。
ダメ押しの3点目!!
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) March 9, 2025
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第4節
🆚 札幌vs千葉
🔢 1-3
⌚️ 90+2分
⚽️ 呉屋 大翔(千葉)#Jリーグ pic.twitter.com/Wg96ETWLlS
雑感
- 文字通り雑感として色々書いていきます。
- 大分、熊本、山口、ジェフと4試合を消化して、この中では大分とジェフが平均ポジションが低く、いわば「守備的な」チーム、相手にボールを持たせるチームかと感じました。そうしたジェフの対応によるところも大いにありますが、4試合目にして部分的にではありますが、割と狙いとするようなプレー(敵陣で特定のポジショニングやユニットに限定せず臨機応変に色々な選手が主にサイドで顔を出す)を発揮できていたと感じます。
- 意図するプレーをある程度は見せられたとして、じゃあそれが意味のあるものなのか?というと、個人的にはこの「流動性」を掲げるのはわからなくもないところです。途中にも書きましたが、近藤やFW、シャドーの選手がそれぞれ得意な形を止められて終わり、ではなくて、他の選手のマークが甘いならその選手がより積極的に振る舞う、相手の脅威となるプレー選択をする…というのは原則論として間違ってないかなと思います。この試合だと馬場が何本かシュートを放ちましたが、いずれもいいアクションでしたし1本くらい枠に飛んでいればまた違った印象、結果だったかもしれません。その意味では、馬場や高嶺のポジションに入る選手、また髙尾や中村桐耶のところの選手が数字をどれだけ残せるか、プレーが向上するかは、今の試みを続けるならこのチームの将来を左右することになるでしょう。
- ジェフについては、山口や熊本同様に「よく走るチーム」だなとの印象です。それぞれ「走り」の内容は違うのですが、近年毎年「過去最大級の猛暑」と報じられる夏を迎えるとどんなパフォーマンスになるかは難しいところかもしれません。またジェフの場合はセンターラインがそこまで強くない印象でしたので、磐田や長崎と比べるとちょっと落ちるかな、と低み(20位)から推察しております。
- コンサのいいところというか今後に向けての期待は書いたので、良くないところについても触れます。まずは、やはりDFがギリギリまでボールを保持してかつ中央に展開しないと相手を崩すのは難しいとするなら、それは大﨑→家泉じゃ根本解決にならないのは私は予想していましたが…ジェフが撤退することが多かったのでまだマシだったかもしれませんが、山口のようにより効果的に守ってくるチーム相手だと更に困っていたかもしれません。もっとも家泉も負傷してしまったなら、次節秋田では更に選択肢がなくなることになりますが…ただ、17分に1回だけ家泉のconducciónからサイドチェンジが決まったプレーはありました。この時も家泉のボールタッチがデカくなって一度ロスト仕掛けましたが、とにかくチャンスをもらったらチャレンジは続けて欲しいです。
- そしてまたも縦パス1本でサクッと背後を取られて失点しましました(なお山口戦の失点も縦パスからでしたが、ラジオで三上GMが「2点ともカウンターで…」と語っていたのはちょっと意味がわからなかったです)。1-5-2-3でブロックを作るんだけどサイドのところでうまくハマらなくて剥がされる…これは2016年に四方田監督のチームが頻繁に陥っていたパターンとほぼほぼ同じで、四方田監督は結局自陣に5人のDFを貼り付ける、GKにすごい選手を使う、オープンなカウンターとセットプレーで点を取る…でJ2を制したわけですが、このコンサがマンツーマンしかできない問題は長年続いているわけで何とか岩政監督には解決策を見出して欲しいところです。こっちの方が、ボールを持っている時よりも難易度は高いかもしれません。
2016年11月12日(土)13:00 明治安田生命J2リーグ第41節 ジェフユナイテッド千葉vs北海道コンサドーレ札幌 ~拠りどころとなった強烈な個~https://t.co/QQZUpM9pxG pic.twitter.com/SQyxoO5B0j
— AB (@british_yakan) November 14, 2016
余談・日本のチームで4バックを採用するとどうなるか:
- 以下はこの試合と関係ないので、雑記の雑記です。
- 3連敗の後「4バックではダメなのか?」という質問が複数ありました。
これも常に書いてるけど、システム論とか以前に何をするか?どうプレーするか?を考えましょうか。
— AB (@british_yakan) March 3, 2025
・相手とこちらがどういう状態を作り出したいか
・相手ゴール前でどういうプレーが効果的か
・自陣ゴール前で…
(残り336字)#querie_british_yakanhttps://t.co/3A6Rfknjcf
- 頭に入れておきたいのは、今や冨安のような選手は10代で海を渡るJリーグの日本人選手で、CBでプレーできつつボールを運んだり相手のpressingを回避するのが得意な選手を確保するのは非常に難しい。
- リカルドロドリゲス監督が徳島と、現在率いている柏で3バックベースのシステムを採用しているのも、おそらくCBを2人揃えられないので、SBタイプの選手を最後方においてボールを運んだり、pressingを回避する役割をシェアしているが、そのSBタイプの選手を使うなら撤退して守る際の守備強度が問題になるので、そこは5バックで対応するということで3バック(5バック)という考え方なのでしょう。これと近い考え方は、コンサのチーム事情にもあてはまります。髙尾やパクミンギュ、中村桐耶を中央の頭数に入れるなら(というかそういう編成だし…)3バック(5バック)しか難しいでしょう。
- 逆に言えば、日本のチームで特に資金力がないチームほど、そうした能力のあるCBタイプの選手を2人揃えることが難しいので、4バックベースのシステムを採用している場合はボール保持にあまり拘らず、ブロックを作って守ることに重きを置いているチームが多いと感じます。J2でいうと対戦したジェフや山口、仙台はいずれもこのタイプですし、セレッソを率いていた小菊監督のチームも割とそれに近いかもしれません。J1だと伝統的な鹿島のスタイルもそうですし、神戸も割とそっち寄りでしょうか。
- 4連敗ということで流石に色々言われても仕方ないという気もしますが、まだシーズンの4/38であり1合目、もしかすると4合目くらいで勝負は決しているかもしれませんが…それでも4試合目にして褒められるところは見つかりましたし、逆にジェフもまだ1合目でしかないので夏にはどのような順位表になっているかはまだわからないでしょう。
- 個人的には今、1合目にいますが多少の光は見えたと思います。その光は本物なのか、近所のパチ屋のものなのか、佐野慈紀投手が近所で投げているだけなのかわかりませんが。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
0 件のコメント:
コメントを投稿