2019年4月19日金曜日

プレビュー:2019年4月20日(土)明治安田生命J1リーグ第8節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

・札幌:
 ×(欠場濃厚)…DF石川、MF駒井、MF中原 
 ▲(出場微妙)…MF小野、MF荒野、FWジェイ 
・横浜:
 ×(欠場濃厚)…GKパク イルギュ、DF高野、FW李、FWエジガル ジュニオ
  ▲(出場微妙)…なし


 札幌は4バックで予想フォーメーション図を示した。
 理由は3つあり、1つはこれまでのポステコグルーのマリノスとの対戦ではミシャは必ず4バック的な要素を取り入れている(後述)。今回も試合開始から4枚かはわからないが、90分の中で何らか仕掛けてくることが十分に考えられる。
 2つ目は、上記理由に加えて2019シーズンは4バック向きだと思われる選手が増えたため。具体的にはルーカス フェルナンデス。アンデルソン ロペスもそうだと言えるかもしれない。ただ、ルーカスは中野とどちらが起用されるか五分五分だろう。
 3つ目の理由は、素人が予想するなら多少大胆な予想にしたほうが楽しいからである。もっとも、4バックだろうと3バックだろうと攻守で形を変えることになるので、大した意味は持たない数字の羅列と言ってしまえばそれまでだが。

 メンバーに関しては、荒野とジェイの回復具合が注目される。前節を欠場した荒野は火曜日にイベント(トークショー)に出演していたが、その様子を見る限りは早期に復帰できそう。ジェイは「もうすぐ戻る」と自ら発信してから3週間目になる。

 マリノスは恐らく前節(H名古屋:1-1)と同じメンバー。前節は交代枠も1枠(81分に遠藤→扇原)しか使っていない。それでも総走行距離は120kmを超えている。


2.戦術面の一言メモ

(以下、札幌の黒字は前節のプレビューと同じ。青字が変更点)。

2.1 札幌


 ボール保持:ビルドアップはミシャ式5-0-5ベースだが、福森が偽SBのような形をとることもある(実態はフリーマンだが)。中央3枚(宮澤・深井・荒野)がローテーションしながらオープンな選手から前進を図る。展開はロングフィード主体。崩しは閉塞すると大外の仕掛けによる。右のルーカスがファーストチョイスになりつつある。
 これとは別に、ハイプレスを受けるなどして後ろで詰まったら、シンプルに武蔵かロペスへ。躊躇なく放り込む。

 ボール非保持:ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。よって、5バックを前提としながらも、まず各ポジションで枚数を合わせる傾向が強く、特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。
→マリノス相手だと、2CB+アンカーで計3枚なので、(4バック予想にしているものの)札幌が5バックだとすると2トップ+トップ下の形が予想される。
 セット守備時は最終ラインの高さはやや低めで、1本で裏を取られることは少ない。ただ、ボールを保持することが得意なチーム(川崎、マリノス、名古屋etc)相手だとハイプレスを選択する傾向がある。

 攻撃→守備の切り替え:中盤2枚は即時奪回を目指すが、その位置取りは「中盤」ではなく最終ラインにいることが多い。要はCBの前進守備と同じなので、狩り切れるならいいが裏を取られるリスクも大いに抱えている。

 守備→攻撃の切り替え:2トップ気味で前残りしやすい武蔵とアンデルソン ロペスをまず使う。ロペスは背負ってのキープと仕掛け、武蔵はターゲット兼裏抜け担当。

 セットプレー守備:マンマーク基調。
札幌ボール保持時の予想マッチアップ

2.2 マリノス


 ボール保持:ビルドアップは2CB+アンカー、場合によってはGKやインサイドハーフも使い、相手の1列目に対して数的優位を確保し突破する。ミドルゾーン以降に侵入すると、数的優位性や配置的優位性よりもビルドアップで作った時間を消費する前にスペースに突っ込んでいく(人をスペースに走らせボールを送り込む)傾向が強い。2018シーズンはアウトサイドからの突破を図る印象だったが、2019シーズンはハーフスペースで仕掛けているように見える。

 ボール非保持:1-4-1-2-3の陣形でとにかくハイプレス。1列目の3枚でコースを限定させ、インサイドハーフの2枚が連動する。そこを突破されたらアンカー喜田が気合のカバーリング。この間最終ラインはハーフウェーラインまで押し上げ、その裏はGKに任せる。大分戦(第4節)は試合開始から60分過ぎ頃までプレスの圧力が落ちなかった。
 ハイプレス(もとい、喜田のフィルター)が突破されると、自陣ペナルティエリア付近まで全員でリトリートし、4-4-2または4-1-4-1でブロックを組んで守るが、この状態が多くなることは想定していない。

 攻撃→守備の切り替え:失った後は即時奪回を目指しプレッシング開始。このこともあり、ボール保持時に仕掛けるエリアをピッチ中央付近にしているように思える。

 守備→攻撃の切り替え:スペースが空いており、かつ前線にアタッカーが余っている(FWとウイングが残っている)ならすぐに縦パスを入れ、速攻を展開する。

 セットプレー守備:ゾーンとマンマークの併用。

 J1の18チームについて、平均走行距離とボール支配率を軸にとり散布図を作ると以下になる。マリノスはボール支配率で2位、走行距離でトップ。
平均走行距離とボール支配率

 これを平均走行距離からスプリントに置き換える。マリノスのスプリント本数は平均211本と、湘南(192本)を引き離してダントツのトップ。単にボールを保持するだけでなく、速攻やネガティブトランジションで非常によく走れており状態が良いことがデータでも示唆させている。ただ、そもそもトランジションの回数が多く、バルサ化を進める神戸(リージョいなくなっちゃったけど)や、川崎と比べると、走りの量が非常に多いという事実は、同じスタイルで上を行くというより、根本的に別のスタイルとして分類した方が適切だろう。
 それっぽくグルーピングしてみると、おおまかなチームスタイルごとに分けられる。鳥栖や仙台は本来もう少しチャートの右側にシフトしたいだろう。
平均スプリント本数とボール支配率


ボール支配率データはFootball lab平均走行距離データ、スプリント本数データはJリーグ公式サイトより。

3.予想される試合のポイント

3.1 どこかで、何らか4バックに?


 札幌ミシャvsポステコグルーの対戦はこの試合で4度目で、札幌は過去に何らか4バック的な要素を取り入れている。
1度目(2018シーズン前半のリーグ戦):右WB駒井をやや高めに配置し、右CB進藤が早めにサイドのカバーに出る変則4バック気味で守る。
2度目(2018シーズン後半のリーグ戦):守備時4バック⇔攻撃時4-1-5に可変システムを採用も機能せず後半頭から3バックに切り替え。
3度目(2019シーズン3月のルヴァンカップ):試合途中から左WBを下げた4バックに切り替え。

 マリノスのボール保持時のマッチアップについて、札幌が3バックの場合と4バックの場合を比較すると、4バックで中盤4枚とした方が、マリノスの中央に出現する選手(三好、天野、松原、広瀬)を捕まえやすいだろう(各選手の移動を考慮したとしても)。
 上記、2度目の対戦時には、4バックの採用理由として、「レギュラーのDF(福森)を出場停止で欠いたこともあるが、3トップの相手にDF5枚も必要ない」とする旨の説明がされたが、これは言い換えると最終ラインの枚数をなるべく少なくし、その分を中盤~前線に回すことで相手のビルドアップを阻害したいという考え方になる。
 ただ、この時は札幌の2トップ(ジェイと三好だった)によるマリノスのビルドアップ部隊への対応が不十分で、GKを含めた4on2の状況からたびたび前進を許してしまった。ロペスと武蔵なら、よりアグレッシブな守備が期待できるが、採用されたとしてどこまで機能するだろうか。
マリノスボール保持時の予想マッチアップ(札幌4バック時)

 一方、CBを3人起用する3バックor5バックの場合も、やり方次第では中盤~前線の枚数を多くすることは可能である。この場合のメリットは、チアゴ、畠中、喜田に同数で守備を行えること。
マリノスボール保持時の予想マッチアップ(札幌3バック時)

 下図は、WBの菅と中野が通常よりもかなり前目で守り、マリノスのSBを捕まえる場合。ただ、松原と広瀬は所謂”偽SB”として中央でプレーすることが多い。これに札幌がWBを当てると、オリジナルポジションから、かなり人が動かされることになる。また、最終ラインは3on3の数的同数で守れるか。札幌のDFの守備力とマリノスのアタックスピードを考慮すると、リスキーな選択だろう。

最初から採用されることは恐らくないが、5バックで完全に撤退することも可能性の一つ。完全に撤退した方が、マリノスのGK+DF+アンカーの計4枚でのビルドアップによる前線へのスペースと時間の創出余地を小さくすることができる。
 「恐らくない」と考える理由は、消極的なスタンスであるため。どこが「冒険コンサドーレ」だと言われてしまっても文句は言えまい。前節セレッソに敗れて4連敗だったら、これが採用される可能性はより大きかったと思うが。
マリノスボール保持時の予想マッチアップ(札幌5バック時)

3.2 高速化展開についていけない選手はベンチスタートが無難か?


 札幌が自陣にドン引きしない想定で試合展開を考えると、マリノスの自陣でのビルドアップ~攻撃のフィニッシュに至るまでのボールの動かし方はほぼ決まっている。

 ビルドアップはCB2人とアンカー(喜田)+GKの4人で菱形を作り、オープンな選手(基本的にCBのどちらかになる)がボールを運ぶ。どちらのCBがボールを運んだかによって攻撃のサイドが決まる。ここで相手の1列目を引きつけることで間延びさせ、中盤~前線の選手が前を向いてプレーするためのスペースを創出する。
 1stディフェンスを突破すると、基本的にサイドチェンジはせず片側のサイドでフィニッシュまでもっていく傾向にある。ミドルゾーンではサイドバックか、インサイドハーフがサイドで起点を作り、ビルドアップで作った”時間の貯金”を活かして前を向き、また自身も時間を消費せず素早く前線の3トップにボールを展開する。

 3トップのポジショニングと走り方が、前のシーズンとの最大の変化だと感じる。2018シーズンは、両ウイングはサイドに開き、攻撃の横幅を作ることが推奨されていたが、2019シーズンは横幅を作らずに相手の4バックのチャネル(DFの間)に走る。5バックの大分戦では、マリノスのウイングは大外を守るWBではなく、左右のCB(岩田と福森)と勝負するような位置取りをしていた。
 つまりサイドを経由せず中央突破を狙うので、ゴールに最短距離で迫る。中央を狙うと相手の守備に引っかかりやすいが、それは織り込み済みで、仮にボールを回収されてもすぐにカウンタープレスを発動させてボールを奪い返し、波状攻撃を仕掛ける。
マリノスのボール保持のイメージ

 マリノスは相手の1列目を突破してからがとにかく速い。縦に速い展開を多用し、敵陣ゴール前では、多少精度を欠いてでもスピードを落とさず前進できる場合は仕掛けることが許容されている。
 所謂”ためを作る”ことは殆どしないので、非常に攻守が目まぐるしく切り替わる展開が予想される。札幌は攻撃⇔守備の切り替えに難がある選手の起用は試合を難しくする恐れがある。と言っても現実的には福森は外せない。この点で、ルーカスは中野に代替されると予想する。

3.3 ハイプレスの突破手段は?


 2019マリノスはボール非保持時に常に即時奪回を狙ってくる。バルセロナでのグアルディオラは「5秒ルール」(6秒と言う人もいる)を掲げ、ボールを失った後の5秒間はカウンタープレス、5秒で奪い返せなければ撤退守備に切り替えていたが、マリノスは7~8秒ほどプレスを続ける場合もあり、即時奪回に相当な執念を見せる(逆説的には、ゴール前での守備に自信がないとも言えるだろう)。
 札幌はハイプレスの突破手段を用意しておかないと”詰む”。マリノスの1列目は3人で、恐らく札幌の選手間に立ち、
札幌ボール保持時に予想されるハイプレス

 ボールが供給されるとすぐにボールホルダーにプレスに来る。同時に近くの選手へのパスコースが消されるので、誰にボールを逃がすか、決めておかないとここで失って非常に危険な状況を招きかねない。
 恐らく札幌にはロジカルな回避手段が、GKク ソンユンからの放り込み以外にない。しかし単純な放り込みならば簡単に跳ね返されてしまうことが予想され、武蔵とロペスにとっては、またしても我慢の時間が長くなるだろう。
ソンユンが蹴ってやり過ごす時間が続きそう

用語集・この記事上での用語定義

・1列目:

守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。
攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。

・カウンタープレス:

敵陣で相手にボールを奪われた時に、すぐさま相手にプレスをかけてボールを奪い返しシ、そのままショートカウンターに転じるやり方。

・チャネル:

選手と選手の間。よく使われるのはCBとSBの間のチャネルなど、攻撃側が狙っていきたいスペースの説明に使われることが多い。

・トランジション:

ボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。

・偽SB:

サイドバックでありながら、その古典的な役割(サイドに位置取りし、攻守ともにサイドでプレーする)にとどまらない役割を担うSB。具体的には中央に位置取りし、中盤の選手として振る舞い、攻撃の組み立てや被カウンター時の中央での守備等に関与する。

・ハーフスペース:

ピッチを5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。

・ビルドアップ:

オランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。

・マッチアップ:

敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。

・マンマーク:

ボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。

1 件のコメント:

  1. こんにちは、にゃんむるです。
    チーム毎の傾向が分かるデータの掲載はありがたいですね(^_^)
    試合は攻守の切り替えが早い展開になりそうとな・・・。うーん・・・。
    仕事で疲れて頭回らんwww
    とりあえずチャナと三好がイチャイチャしてるの見られればOKだな。スペースはかなりあるはず。FW陣に期待する。
    ホームだし勝って下さいねー。仕事しながら応援してるぞい。
    そんな感じ。にゃんむるでした。またのー('ω')ノ 眠いわ。

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