0.プレビュー
スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF駒井善成、深井一希、宮澤裕樹、菅大輝、三好康児、チャナティップ、FW都倉賢。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF兵藤慎剛、早坂良太、荒野拓馬、FWヘイス、宮吉拓実。前節浦和戦を欠場した駒井がスタメンに復帰。他のメンバーは変えず、中3日での厚別開幕戦を戦う。ヘイスが再びベンチに入ったのは、雨の厚別でボールを収められる選手が必要、との判断だったのかもしれない。
横浜F・マリノスのスターティングメンバーは4-1-2-3、GK飯倉大樹、DF松原健、中澤佑二、金井貢史、山中亮輔、MF扇原貴宏、大津祐樹、天野純、FW仲川輝人、ユン イルロク、ウーゴ ヴィエイラ。サブメンバーはGK杉本大地、DFミロシュ デゲネク、MF中町公祐、吉尾海夏、山田康太、FW遠藤渓太、伊藤翔。一部選手の反乱?もあって不完全燃焼気味だったエリク・モンバエルツのサイクルを引き継いだアンジェ・ポステコグルー体制だが、リーグ戦9試合で2勝3分4敗の勝ち点9、失点は15、直近3試合で計9失点(vs広島1-3、vs神戸1-2、vs湘南4-4)という状況。前節まで9試合フル出場を続けていたデゲネクに変えて左のCBに金井。この他、5試合連続出場していたオリヴィエ ブマルも負傷欠場で、右ウイングに仲川。
1.一つ目のゲームプラン
札幌のこの試合のゲームプランについては、試合後、ペトロビッチがインタビューで以下のように述べている。
--今日の試合について。今日の試合は難しくなると思っていました。相手は非常に危険なパスサッカーをするチームですし、実際に難しい試合になりました。(前節・)浦和戦が終わってから翌日の練習後に残っている選手たちとこの試合へのプランに向けて話し合いました。理由は横浜(FM)が特別な戦い方をするチームだからです。そうした話し合いの中で二つのバリエーションを用意することにしました。今日の後半のやり方で90分を通して戦うのは難しいと私は思っています。試合前のプランでは0-0で後半に勝負をかけようと思っていました。ですが、後半は勝負に出なければいけなくなり、前からプレッシャーを掛けにいきました。1対1で対峙する場面が増えましたが、その中で逆転できたのは狙いどおりでした。
結果的に前半0-0、という目論見は崩れたが、前半は抑えて後半勝負と考えていたことは試合運びからも見てとれた。まず札幌の前半のゲームプランを意識した上でピッチ上で起きていたことを振り返っていく。
1.1 攻撃時の配置的な優位性
先のコメントからも、ミシャはマリノスを難しい対戦相手だとして捉えていたことが伺えるが、この考え方は守備において特に表れていた。
マリノスがボールを保持している時の初期配置は以下の通り。5-2-3の札幌に対して、マリノスはボールを安定的に保持するために札幌1列目よりも1枚多い枚数…最終ラインに4枚を残した状態からスタートする。
初期配置 |
そして4人のDFと3人のMFは、札幌の1列目3枚に対して配置的な優位性を確保できるポジションをとり続ける。
札幌の3枚の右を守る三好の周囲の状況を例にとり説明すると、左CBの金井が三好の正面、左SBの山中が三好から見て右側のタッチライン付近に張っている。山中は初期ポジションで、金井からの斜めのパスで札幌の1列目を外してボールを受けられるポジションを狙う(①)。三好がこの松原へのパスを警戒してタッチライン寄りに位置取りをすると、正面方向のレーンが空き、金井→天野のコースが空いてしまう。
同じ状況は、都倉に対する中澤・金井・喜田、チャナティップに対する松原・金井・大津・喜田、の配置でも用意されており、後方のどのポジションでも札幌の選手に二択、三択を突き付け、札幌の返しの手を見て、オープンになった選手を使って(後だしジャンケンのように)ボールを前進させていく。
ボールホルダー周辺で配置的な優位性を維持しながら前進していく |
この「オープンになった選手を使って(後だしジャンケンのように)ボールを前進させていく」ためにはプレースピードがポイントの一つで、時間をかけると札幌の選手に捕まり、配置的な優位性が活きなくなってしまう。よって配置的優位性が確保されるまで、ボールを動かしながらポジションを調整し、機を見て縦パスを入れて所謂「攻撃のスイッチを入れる」。かつてバルセロナが「横パスバックパスばかりでつまらない」と言われた時期があったが、これも同じような理由で、メッシを除けば、仕掛けていいシチュエーションがシステマチックに決まっているがゆえに、(一部の日本人には)全然仕掛けなくてつまらない、と感じられたのだと思う。
1.2 左右で異なる役割分担
札幌はこれに対して特徴的な配置と役割分担をして対抗する。
まず、チャナティップと三好の配置と役割は、チャナティップがSBの松原にほぼ固定的に対応し、ここでギャップを作らないようにする。一方で三好は、金井をけん制しながらも主な役割としてはハーフスペースの入り口を塞ぎ、山中とは離れたポジションにいる。そして都倉は、中澤を監視しつつもより優先度が高い仕事は、アンカーの喜田へのコースを切るポジションに立つことだった。
左はチャナティップがマンマーク、右は三好が中間ポジションで待つ |
1.3 チャナティップのストリートスタイル
序盤はマリノスが何度か最終ラインから中盤でボールを循環させ、札幌のこの守備の形を見極めたうえで攻撃に移っていく。
まずマリノスから見た右サイドでは、先に述べたように松原にチャナティップ、と関係性が明確になっていて、松原に渡ると、チャナティップの守備に連動して菅が仲川、宮澤が大津、深井が扇原、都倉が中澤、と捕まえ、ボールに近い選手のパスコースをすべて消す。しっかり人を捕まえていれば、ボールホルダーと対峙する選手が1on1でやられない限りは次の展開を封じることができる。そしてタイ人のチャナティップは攻守両面で対人プレーを得意としており、今シーズンであれば第4節長崎戦の先制点をアシストした局面が典型だが、一人でボールを奪う守備ができる選手である。恐らくこの特徴を踏まえて、札幌はチャナティップにはマンマークで相手に付かせることを考え、左サイドではこうした人を見る守備を用意していたのだと考えられる。
マリノスの四角形に人を割り合てる |
1.4 前残りを許される三好のクオリティ
期待通り、チャナティップが松原からボールを奪取するところから、札幌のカウンターが始まる局面が前半3度ほどあった。この時、マリノスは中央にCB2枚しか残っておらず、またビルドアップの際にペナルティエリア幅に開いているので札幌がボールを奪った瞬間は下の図のように裏に走る都倉を捕まえきれていない。ミシャの「特別な戦い方をするチーム」というコメントは、マリノスのクオリティの高さだけを言及しているのではなく、こうした明確な狙いどころがあるということも含めた認識だったと思われる。
この状況では札幌は裏を狙うなり、マリノスの守備が整わないうちに攻め切ることがファーストチョイスになる。この時、裏に走る都倉とセットで運用されていたのが、中央に進出してくる三好。後述するが、三好はチャナティップと異なり相手のSB(山中)に付いていくことは基本的になく、山中が攻撃参加しても中盤に残っている。その理由はカウンター時に中央で起点として働くためであり、都倉が裏を狙って中澤と金井を後退させたタイミングで同時に中央に入ってくる。
マリノスは逆襲を受けると当然、複数の選手で三好を囲んでくる。三好はプレッシャーを受けつつも、裏に走る選手(基本的には都倉。時に駒井)へのスルーパスを幾度か狙うが、この展開はマリノスは当然予期していて、飯倉が裏狙いに備えて高いポジションを取り続ける。
札幌の右サイドはどうなっていたかというと、三好に与えられた役割の関係上、マリノスは初期状態で左SBの山中、CBの中澤と金井が基本的にオープンになっている。この対応をマリノスが確認すると、必然と攻撃はオープンな山中のいる左サイドに向いていくことになる。
山中がボールを受けると、札幌はWBの駒井を前に出して対応させる。また駒井が前に出て、最終ラインがスライドし、進藤がサイドに張るユン イルロクに対応するという具合にこのサイドではゾーンディフェンスを採用していた。が、初期ポジションの関係で、駒井が最終ラインから出ていくとどうしても山中と距離が開いてしまい、時間と空間が山中には与えられる。同様に、進藤がユンを捕まえるのも2秒程度かかる。こうした構図もマリノスは頭に入っていて、開始直後からこのサイドでは山中→ユンのラインで縦に運ぶことがファーストチョイスとされていて、序盤3分頃には早速、天野(SBの位置に落ちていた)からの縦パスを受けたユン インロクが、プレースピードをそのまま落とさずクロスまで持ち込み、ウーゴ ヴィエイラへのクロスでフィニッシュの形を作っている。
20分ほどが経過すると、札幌はこのパターンには徐々にアジャストしていくが、それは駒井と進藤がとにかく速くスライドするということに尽きる。ゾーンで守っているというが、三好をほぼ守備免除気味に運用しているので、結果的には駒井と進藤の役割はほぼほぼ決まったものになる。
ユン インロクへの監視が厳しくなると、山中は天野に預けて大外を追い越す動きを見せる。ユン インロクに進藤が付いているので、山中には駒井が気合でプレスバックするか、キム ミンテが中央を離れてカバーすることで対応しなくてはならない。札幌としてはキム ミンテは中央からあまり動かしたくないのだが、他に対応できる選手がいない場合はミンテを動かすしかない。ゴール前は福森と絞ってきた菅しか残らない状況で、マリノスはウーゴ ヴィエイラだけでなく大津や仲川も送り込んでくる。この状況を守り切るために、宮澤と深井がプレスバックすると、札幌は(三好と都倉以外は)自陣ゴール前にほぼ釘付けになる。
30分過ぎからはマリノスの右サイドで、松原の攻撃参加も解禁される。右サイドもかみ合わせは異なるが、松原-チャナティップのマッチアップを打開するために松原が追い越すと、札幌は誰が付いていくか、菅が仲川を離していいのか不明瞭になる。こうした状況でマリノスの先制点は、大外を抜け出した松原のクロスから得たコーナーキックが発端となって生まれた。
中央のスペースで三好がカウンターの起点に |
マリノスは逆襲を受けると当然、複数の選手で三好を囲んでくる。三好はプレッシャーを受けつつも、裏に走る選手(基本的には都倉。時に駒井)へのスルーパスを幾度か狙うが、この展開はマリノスは当然予期していて、飯倉が裏狙いに備えて高いポジションを取り続ける。
2.マンマークを振り切るオーバーラップ
2.1 イメージはゾーン守備だけどほぼマンマーク
札幌の右サイドはどうなっていたかというと、三好に与えられた役割の関係上、マリノスは初期状態で左SBの山中、CBの中澤と金井が基本的にオープンになっている。この対応をマリノスが確認すると、必然と攻撃はオープンな山中のいる左サイドに向いていくことになる。
山中がボールを受けると、札幌はWBの駒井を前に出して対応させる。また駒井が前に出て、最終ラインがスライドし、進藤がサイドに張るユン イルロクに対応するという具合にこのサイドではゾーンディフェンスを採用していた。が、初期ポジションの関係で、駒井が最終ラインから出ていくとどうしても山中と距離が開いてしまい、時間と空間が山中には与えられる。同様に、進藤がユンを捕まえるのも2秒程度かかる。こうした構図もマリノスは頭に入っていて、開始直後からこのサイドでは山中→ユンのラインで縦に運ぶことがファーストチョイスとされていて、序盤3分頃には早速、天野(SBの位置に落ちていた)からの縦パスを受けたユン インロクが、プレースピードをそのまま落とさずクロスまで持ち込み、ウーゴ ヴィエイラへのクロスでフィニッシュの形を作っている。
山中は縦がファーストチョイスで、天野はその次 |
2.2 両SBのオーバーラップ
20分ほどが経過すると、札幌はこのパターンには徐々にアジャストしていくが、それは駒井と進藤がとにかく速くスライドするということに尽きる。ゾーンで守っているというが、三好をほぼ守備免除気味に運用しているので、結果的には駒井と進藤の役割はほぼほぼ決まったものになる。
山中のオーバーラップ |
ユン インロクへの監視が厳しくなると、山中は天野に預けて大外を追い越す動きを見せる。ユン インロクに進藤が付いているので、山中には駒井が気合でプレスバックするか、キム ミンテが中央を離れてカバーすることで対応しなくてはならない。札幌としてはキム ミンテは中央からあまり動かしたくないのだが、他に対応できる選手がいない場合はミンテを動かすしかない。ゴール前は福森と絞ってきた菅しか残らない状況で、マリノスはウーゴ ヴィエイラだけでなく大津や仲川も送り込んでくる。この状況を守り切るために、宮澤と深井がプレスバックすると、札幌は(三好と都倉以外は)自陣ゴール前にほぼ釘付けになる。
キム ミンテが引っ張られる |
30分過ぎからはマリノスの右サイドで、松原の攻撃参加も解禁される。右サイドもかみ合わせは異なるが、松原-チャナティップのマッチアップを打開するために松原が追い越すと、札幌は誰が付いていくか、菅が仲川を離していいのか不明瞭になる。こうした状況でマリノスの先制点は、大外を抜け出した松原のクロスから得たコーナーキックが発端となって生まれた。
3.無風地帯に嵐を
3.1 混沌化させるための「二つ目のプラン」
後半開始直後、ミシャのハーフタイムコメントとして「もっと走ろう」との旨のコメントが紹介されたが、ハーフタイム明けに明らかになった札幌の「二つ目のゲームプラン」は下のように前線からマンマークでプレスを仕掛けるものだった。チャナティップと三好は両CB、駒井と菅が両SBを見るマッチアップに変更する。
枚数を合わせて4バックを強襲 |
これによりマリノスは受け手を封じられると、飯倉を使ってやり直そうとする。すると都倉が飯倉に寄せ、扇原は深井か宮澤が見ることで、やり直しをする時間と空間を奪う。受け手が全て潰されると飯倉は諦めて前線に蹴ることになり、ゲーム全体としてロングボールが多くなると無秩序な展開へと変貌していく。
飯倉を使って落ち着かせようとするも都倉で妨害 |
まずカオス展開に持ち込んで様子を見よう、との考え方だったかもしれないが、49分、福森のクロスを収めた都倉の切り返しから右足シュートで札幌が追いつく。ミシャに駆け寄る都倉が、喜びもほどほどにミシャに何かを確認していたが、「あっさり追いついたけどこのまま前プレを継続でいいのか?」といった内容だったと予想する。
3.2 カオス展開の継続と終焉
一方でマリノスは同点になった後、前線守備の圧力を弱めるが、これが更に札幌の攻勢を強めることになる。マリノスの守備は、最前線に大津とウーゴ ヴィエイラを配し、この2枚でキムミンテと深井に数的同数で守備を行う。またユン インロクと中川が対面の進藤と福森を見る形になっていたが、大津とウーゴが後半はキム ミンテと深井に対し、前半ほどの圧力を持って守備を行わなくなる。
DAZN中継で紹介された情報で、この週にマリノスの選手が選手がポステゴグルー監督に対し、「状況を見てラインを下げて戦うことも許容すべきでは」と進言したとの情報があったが、後半頭からマリノスはそのような共通理解を持っていたのかはわからない。ただ、ハーフタイムコメントでポステゴグルーの「入りの10分が重要」と語っていたことからは、後半頭からペースを落とすことは想像しにくいが。
札幌最終ラインがボールを持てるようになると5トップを4バックに突きつける |
ともかく前線の圧力が弱まったマリノスは、一転して札幌の5トップによる裏狙いの脅威に晒されることになる。後方でボールを保持する時間を得た札幌は、WBが高い位置を取る時間が増えていくとともに、マリノスがミシャ式に対して特段の対策を取らない限りは、アンカーポジションで宮澤も徐々に浮くようになっていく。
マンマークに手こずるマリノスのロングボールが増えたことで始まったカオス展開は66分、札幌のカウンターは三好が止められ、攻守が切り替わったところで菅が松原にスライディングでチャレンジしてボール奪取、そのままクロスまで持ち込み、オーバーラップしていた進藤のダイビングヘッドで逆転という絵に描いたようなカオス展開からの得点で終わりを告げる。フィニッシュは素晴らしいものだったが、背後を誰も守っていない状態での菅のタックルは失敗していれば大ピンチを招きかねないシチュエーションだった。
逆転直後から札幌は数的同数で行っていた前線守備をやめ、更に札幌は荒野が交代を用意し、71分、三好との交代で投入される。これにより自ら引き起こしたカオス展開を終わらせ、ゲームをクローズさせていく意図があったのだと思うが、寧ろここから再びマリノスが札幌陣内にボールを運んでいく局面が増えていくことになる。
荒野がシャドーに入った(マリノスも大津→中町、仲川→遠藤の交代が同時間帯にあった)後の時間帯、札幌はその前の時間帯のマリノスのように、「1列目は高い位置にいるけど、プレッシャーをかけられない」という状況に陥っていた。それは都倉とチャナティップの疲労による運動量低下の影響があったと思うが、前線だけでなく中盤の深井と宮澤、最終ラインの選手たちも守備対象の選手のムーブに付いていくことが難しくなる。
↓の図は74分頃、中町と遠藤の投入直後に、金井の1本のパスで直接ウーゴ ヴィエイラに通された局面を図示しているが、守備対象に厳しく当たることができない札幌の守備は完全に間延びした状態になっている。
79分に札幌は深井→兵藤、マリノスは80分に扇原→伊藤。マリノスが2トップに移行すると、前線からの守備がズレまくってキム ミンテや進藤が度々サイドに出張しての対応を強いられていた札幌は、CBが中央を守るタスクを優先しなくてはならなくなるので、前線からの守備を行うことが困難になり、低い位置に5バックを固定する四方田式守備にシフトする。ラスト10分ほどは低い位置で札幌のファイルコミットも増え、天野のセットプレーが札幌ゴールを脅かすが、ク ソンユンのビッグセーブもあり札幌が逃げ切りに成功した。
連戦の影響もあり、両チームとも途中スローダウンする展開は必然だったと思われる。後半に勝負どころを絞って奇襲をかけた札幌が短時間で狙い通りに2得点を奪った一方、マリノスは勝負どころが不明瞭な印象を受けた。ボールを保持する時間が多くても、飯倉の仕事の多さに代表されるように最終ライン背後はクリティカルな攻撃を断続的に受け続けていて、またスローダウンしたときの極端な圧力の減退も要改善という印象だった(ヨーロッパの監督が近年こぞって食事改革に乗り出し、ターンオーバー等も併用して走れるチーム作りに取り組む理由がよくわかる)。
(記事タイトル詐欺のつもりはないが、)戦術的にはポジショナルプレーvsミシャスタイルというより、ポジショニングで優位性を創出しようとする相手に対して部分的なマンマークで対抗したのがポイントだった(更に言うと、札幌ミシャは去年までのミシャとは別人だとの認識が個人的に更に強まった試合でもあった)。ちょうど、中盤の深井と宮澤がその境目となっていて、人を見ながらもポジションを守ることを放棄せずに振る舞うという意味でこのチームの生命線になっている。
4.専守防衛へ
逆転直後から札幌は数的同数で行っていた前線守備をやめ、更に札幌は荒野が交代を用意し、71分、三好との交代で投入される。これにより自ら引き起こしたカオス展開を終わらせ、ゲームをクローズさせていく意図があったのだと思うが、寧ろここから再びマリノスが札幌陣内にボールを運んでいく局面が増えていくことになる。
荒野がシャドーに入った(マリノスも大津→中町、仲川→遠藤の交代が同時間帯にあった)後の時間帯、札幌はその前の時間帯のマリノスのように、「1列目は高い位置にいるけど、プレッシャーをかけられない」という状況に陥っていた。それは都倉とチャナティップの疲労による運動量低下の影響があったと思うが、前線だけでなく中盤の深井と宮澤、最終ラインの選手たちも守備対象の選手のムーブに付いていくことが難しくなる。
↓の図は74分頃、中町と遠藤の投入直後に、金井の1本のパスで直接ウーゴ ヴィエイラに通された局面を図示しているが、守備対象に厳しく当たることができない札幌の守備は完全に間延びした状態になっている。
荒野以外は動けないため受け手を捕まえられなくなる |
79分に札幌は深井→兵藤、マリノスは80分に扇原→伊藤。マリノスが2トップに移行すると、前線からの守備がズレまくってキム ミンテや進藤が度々サイドに出張しての対応を強いられていた札幌は、CBが中央を守るタスクを優先しなくてはならなくなるので、前線からの守備を行うことが困難になり、低い位置に5バックを固定する四方田式守備にシフトする。ラスト10分ほどは低い位置で札幌のファイルコミットも増え、天野のセットプレーが札幌ゴールを脅かすが、ク ソンユンのビッグセーブもあり札幌が逃げ切りに成功した。
80分~ |
5.雑感
連戦の影響もあり、両チームとも途中スローダウンする展開は必然だったと思われる。後半に勝負どころを絞って奇襲をかけた札幌が短時間で狙い通りに2得点を奪った一方、マリノスは勝負どころが不明瞭な印象を受けた。ボールを保持する時間が多くても、飯倉の仕事の多さに代表されるように最終ライン背後はクリティカルな攻撃を断続的に受け続けていて、またスローダウンしたときの極端な圧力の減退も要改善という印象だった(ヨーロッパの監督が近年こぞって食事改革に乗り出し、ターンオーバー等も併用して走れるチーム作りに取り組む理由がよくわかる)。
(記事タイトル詐欺のつもりはないが、)戦術的にはポジショナルプレーvsミシャスタイルというより、ポジショニングで優位性を創出しようとする相手に対して部分的なマンマークで対抗したのがポイントだった(更に言うと、札幌ミシャは去年までのミシャとは別人だとの認識が個人的に更に強まった試合でもあった)。ちょうど、中盤の深井と宮澤がその境目となっていて、人を見ながらもポジションを守ることを放棄せずに振る舞うという意味でこのチームの生命線になっている。
いつも楽しみにしています。新聞などで4バックにしたと書かれていましたが、見直してもよくわかりませんでした。どういう狙いがあったのでしょうか⁇後半マリノスのサイドの崩しにやられなくなったとは感じましたが。
返信削除コメント&閲覧ありがとうございます。確か道新の記事でしたよね。詳細は書かれていませんでしたが、恐らく守備時に三好があまり関わらなくて、駒井が1列上がってSBを見るやり方を4バックと表現したのだと思います。
削除記事中に書きましたが、狙いは三好を前に残しておいて1発仕留めたいというか、カウンターの脅威を与えたかったのだと思います。
後半はそれをやめて、守備はいつも通りの5-4にしてサイドも枚数を合わせたのと、両WBがマリノスのWBをしっかり見ていたのでマークずれは起きていなかったと思います。
同じような戦術でありながらここまでのシーズンの結果は明暗が分かれている。でも、選手個々の能力はマリノスの方が同じか上ということになるのでしょうか。宮澤&深井のコンビは人もスペースも見られるので貴重ですが、その意味においては三好もドリブル、パス、シュートと何でもできるタイプとして貴重です。本来はチャナティップもそうなれるんでしょうが守備のタスクが多くて攻撃にまで回すことはできなかったんでしょうね。
返信削除食事改善というと千葉のエスナイデルが思い浮かびますが、千葉も極端なハイライン戦術でGKもフィールドプレイヤーという考え方になっています。そうなると息抜きや頭を休ませる時間帯はなるべく減らしたい。でも、現実には今年の超過密日程を乗り越えるには無理があった。日本に長くいてJリーグの経験値があった分だけ幸運が舞い込んだと言うことでしょうか。
それにしてもソンユンに防がれた後の試合でさらにエグいコースのFKをブチこんだ天野は怖ぇわ…。
本来ポジショナルプレーって攻撃だけでなく守備時も優位なポジションを取ろう、という考え方だと思うのですが、マリノスはポジションはいいとして人選がちょっと難しいという印象はあります。具体には、SBとアンカーにもう少し対人能力というか迅速に潰しができる選手が必要じゃないかと感じます。
削除逆に毎年ネガトラが問題になっていたミシャが宮澤や深井を使うことでここまで補っているのは凄く興味深い事象ですね。