2019年11月8日金曜日

プレビュー:2019年11月9日(土)明治安田生命J1リーグ第31節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~勇気とバランス~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)


 マリノス相手に、2018シーズンから数えて6度目の4バック(ボール保持時はいつもの[1-4-1-5]に可変)採用が予想される。といっても、4バック(⇔5トップ変形)に対応できる選手が揃っているわけでもなく、メンバー選択の幅はいつもより狭まる。恐らくこの11人で決まりだろう。

1.2 マリノス


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF渡辺(左足関節骨軟骨骨折)
FWエジガル ジュニオ(左足関節骨折)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)GK中林(サンフレッチェ広島から期限付き移籍)
DF伊藤(水戸ホーリーホックから完全移籍)
MFマテウス(名古屋グランパスから期限付き移籍)
MF渡辺(東京ヴェルディ1969から完全移籍)
MF泉澤(MKS Pogoń Szczecinから完全移籍)
FWエリキ(SEパウメイラスから期限付き移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)GK飯倉(ヴィッセル神戸へ完全移籍)
GK原田(SC相模原へ育成型期限付き移籍)
MF三好(期限付き移籍契約を解除して川崎フロンターレへ復帰)
MF山田(名古屋グランパスへ期限付き移籍)
MF天野(KSCロケレン・オースト=フランデレンへ期限付き移籍)
MFイッペイ シノヅカ(大宮アルディージャへ完全移籍)

 シーズン中に何度かマイナーチェンジを繰り返した末、今の形は扇原と喜田が中央に並び、ウイングが開く[1-4-2-1-3]に近い形。エジガルが負傷し、夏のマーケットで恐らく幾つか選択肢がある(お金もなくはないし、ネットワークも持っているはずなので)中でのエリキをチョイスには、そのチームスタイルが現れている。
 メンバーは恐らく湘南戦で負傷した仲川がスタメンに復帰するだろう。変えてくるとしたら、4月の札幌ドームでの対戦で手を焼いたルーカス フェルナンデスの対面となる左SBだが、普通に考えれば、高野の長期離脱中にスタメンを守ってきたティーラトンか。

2.今期の対戦のおさらい

2019年3月6日(水)YBCルヴァンカップ グループステージ第1節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~制約下での布石~

 シーズンで最初の「控えメンバーを試せる公式戦」。札幌はキム ミンテ、白井、ジェイ、マリノスは扇原、パク イルギュ、ティーラトンがこの時は控え扱いで、三好は日程の関係でスタメン起用。
 序盤、札幌は3バックでほぼ純粋なマンマークディフェンスで対抗する。マリノスは開いたウイングを起点に札幌のCB両端の選手の脇を強襲。こりゃあかんということで札幌は20分過ぎから4バックにし、後方にスペース管理の概念を採り入れる。49分にカウンター気味の展開からジェイの得点で先制するも、次第に運動量が落ちてからはマンマーク守備が通用せずマリノスペース。三好の同点ゴールは完全に置いていかれての得点だった。

2019年4月20日(土)明治安田生命J1リーグ第8節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~Homecoming Day~

 今度は札幌はスタートから4バック。マリノスはエジガル ジュニオが欠場で、三好のゼロトップという驚きの布陣。
 試合の主役は”本職”で起用してもらったルーカス フェルナンデスと、前にスペースがある展開なら滅法強いアンデルソン ロペス。開始3分でアンロペのロングドリブルから先制、福森のスーパーFKで札幌が早々と2点を奪うと、[1-4-4-2]の中央密集で守ってから常に高い位置で待っているルーカスを使ったカウンターを繰り出し、札幌はマリノスにカウンターの脅威を突きつけることに成功する。
 マリノスはこの時はウイングが中央に絞って裏抜けを狙うスタイル。幅をとらずに中央に入ってくる挙動は札幌にとっては捕まえやすかった。

2019年5月8日(水)YBCルヴァンカップ グループステージ第5節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~忘れ去られし才能~

 再び控えメンバー中心の一戦。共にキープレイヤーを欠くが、そのダメージが大きかったのはチャナティップの代役に岩崎を起用した札幌。チャナティップに預けて5バック(この日は4バックだったが)→5トップの可変時間を稼ぐいつものパターンが成立せず、福森もいないので右で張るウイング(ルーカスではなく中野)を効果的に使えない。
 控え中心でも前線には遠藤、大津、李が並ぶマリノスは、中央偏重をやや是正し、ウイングが拡げてのハーフスペース狙いの攻撃から先制。札幌は後半チャナティップ、ルーカスを投入してポジティブトランジションの迫力は出るも、殴り合いからマリノスが連続得点し0-4の大差のゲームとなった。

3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌

※変更なし
コンセプト5トップで攻めて5バックで守る。相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持
(自陣)
1-4-1-5や1-5-0-5の形からサイドのDFが持ち上がってシャドーやトップに縦パスを狙う。
ボール保持
(敵陣)
引いて受けるチャナティップに預けての打開。フィニッシュは右の白井の仕掛けから。
ボール非保持
(敵陣)
「ボールを取り上げたいチーム」との対戦を除いてはハーフウェーライン付近まで撤退。
ボール非保持
(自陣)
1-5-2-3でセットしてマンマーク基調で守る。最終ラインはなるべくスライドせず5枚を残しておく。
ネガティブ
トランジション
前線の3選手はなるべく下がらず即時奪回に切り替え。後ろはすぐに戻って人を捕まえる。
ポジティブ
トランジション
自陣で奪った時はトップ(ジェイ、アンデルソン ロペス)、シャドーのチャナティップを探して預けて速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドのターゲット狙いが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他memo同数で守る3バック相手なら対人に強い1トップ2シャドーがターゲットで質的優位を活かす。ギャップのできやすい4バック相手ならWBへのサイドチェンジを狙う傾向が強い。

3.2 マリノス


コンセプト相手を敵陣に押し込み、即時奪回の”サイクル”を回して攻撃を続ける。
ボール保持
(自陣)
縦幅を目一杯使う。2CBと2MFが被らないポジションを取って中央でボール保持→ウイングに供給までがワンセット。マンマークで消されたら3トップへロングフィード。
ボール保持
(敵陣)
ウイングは幅を取り、対面の選手に縦を意識させ、SBやMFがインナーラップ。
ボール非保持
(敵陣)
(機会は多くないが)セット守備は[1-4-2-1-3]気味の布陣からハイプレスに移行。
ボール非保持
(自陣)
(機会は多くないが)ボールサイドにスライドするゾーン基調の守備。CBもスライドしてクロスを上げられる前にサイドで狩り切る。
ネガティブ
トランジション
相手ボールホルダーを速攻でケアしながら+2人でコースを切り、追い込む。
ポジティブ
トランジション
ウイングの前にスペースがあれば速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはマルコス ジュニオール、マテウス。クロスはインスイング。
セットプレー守備CK守備はゾーン主体。
その他memo相手がポゼッションらしいポゼッションをしている展開は稀。局面の大半はボール保持かトランジション。

4.想定される互いのゲームプラン

・本来はどちらも「相手を見るよりもいつもの姿であり続ける」チーム。そんなミシャが毎回4バックで臨む、アンジェマリノスへのリスペクトはかなりのものだ。2018シーズンの日産スタジアムでの対戦もそうだったが、ボールを保持するチームに対するミシャの考え方は「プレッシングで圧殺してボールを取り上げる」。それも難しいと判断しての今年4月の対戦は、札幌の(それまでよりも守備開始位置を下げた)ミドルゾーンからの守備がはまった格好だった。恐らく今回もこの点は踏襲されるだろう。

・マリノスは札幌のカウンター対策、4月の対戦で活躍したルーカスが位置する、札幌の右、マリノスの左サイドでの攻防は対策が必要だろう。但し、マテウス-ティーラトンのコンビで進藤に2on1を突きつける(そのままではいられないのでルーカスは下がるはず)ことが札幌相手に一番効果的なはず。ルーカスを押し込んでしまえば、札幌の4バック採用のメリットは1つ消える。マリノスはアグレッシブに先手を取りに行きたいところ。


5.想定される試合展開とポイント

5.1 同じ策が通用しなさそうな理由


 少なくとも最初はマリノスがボールを持つ展開になるはず。
 対する札幌の狙いは、4月の対戦時のチャナティップの先制ゴールと同じく、中央を固め、サイドの選手をマンマークで監視してからマリノスのDFが孤立した状態を狙うだろう。

札幌のイメージする中央切り~人を捕まえる守備

 が、問題は、①マリノスのウイング(マテウスと仲川)はサイドに開いてプレーするので、菅と進藤はかなりサイドに引っ張られ、この2人と札幌のCB2人の間には常時スペースを空けた状態でマリノスの攻撃を受け続けることが予想される点。
 もう一つは、②札幌は枚数をなるべく合わせたくて普段の形ではなく[1-4-4-2]で挑むとしても、マリノスはそれを見て形を変えてくることが極めて容易に予想される点。ここ2試合は湘南、鳥栖共に守備時は[1-4-4-2]だったが、マリノスは下のような、[1-3-3-1-3]とも言うべき形で返り討ちにしている。
想定されるマリノスの変形と札幌守備に予想されるスペース

 この変形により、[1-4-4-2]で守る相手が捕捉しづらい状況を作ってから、
マリノスの攻撃パターン(ウイングが横幅を作ってDFの間を狙う)

 突破力のあるウイングにボールを預けるまでが「ビルドアップ」。崩しのフェーズでは、ウイングのマテウスと仲川に主役が移る。マリノスはシーズン中に何度かマイナーチェンジをしている印象があるが、今の崩しのパターンは、札幌との今年の対戦でいうと3月のルヴァンカップでの対戦時に近い。バスケでいうところのローポスト制圧攻撃だ。(なおマイナーチェンジをすることは必要だと思う。Jリーグだと選手の組み合わせや入れ替えによって目先を変えることには限界があるので、シーズン後半には対策されてしまう)。

 特にマテウスは、サイドの狭いスペースでも強引に仕掛けることができる。”抜ける”ではなく”仕掛けられる”であり、負けることもあるがとにかく仕掛けることが重要だ。仕掛けによって、相手のDFはサイドを意識するし、また左利きのマテウスは左サイドで必ず縦に行くので、相手の最終ラインを押し下げる効果が期待できるからだ。
 どのようなシチュエーションであっても、マテウスにボールが入った時、足に不安を抱える進藤とのマッチアップは非常に重要になる。

5.2 どこまで展開を予測・準備できるか


 こうなった時に札幌はどうすべきか。
 ポイントは、原則(なるべく枚数を合わせる)を維持し、守備の安定を図りつつ、カウンターを狙う時のことを考えてその威力を削がないようにすること。となると考えられるのは、
(予想)マリノスが[1-3-3-1-3]になるなら札幌も2トップから2トップへ

 札幌も前3枚にし、その「+1」はチャナティップではなくルーカス。サイドで前を向いたときに1人で攻撃機会を作れるルーカスは高い位置に置いておきたい。
 この時、元々のマーク対象のティーラトンは完全に放棄することになる。こうなると、元々のマーク関係、ひいては守備時の役割が曖昧になり、オープンな展開になることも予想される。ただ札幌としては、5バックで撤退しないならこのような策しかないだろう。

 マリノスの変形に対して一応、他の策もある。
全員で下がる策もあるがミシャ自身の言葉を裏切ることになる

 ルーカスを最終ラインにまで下げるいつもの5バックだ。これなら、ルーカスにはマテウス、進藤はその内側を守れるので、マリノスが使いたいスペースを塞げる。
 しかしこの状態は、ミシャが嫌う「同数で守る事や背後を取られる事を怖がっている」状態。4バックの採用理由はまさにこれで、相手が3トップなら5人もDFはいらないからだ。

 この試合にタイトルがかかっているわけでもないし、どこかの社長が「何が何でも残留しろ」とも言っていない。ので、5バックの採用は考えずらい。となるとこの線は薄い。

5.3 両サイドの性質


 札幌がボールを奪ってからの展開について。これはシチュエーションを簡単に類型化できないので説明が難しいところがあるが、あくまで一例として「右から仲川が突っ込んできて札幌がストップした状態」から考える。
 図で表すとこうだ。
(仮定)マリノスの右サイド攻撃が失敗して札幌のポジトラ

 札幌が狙いたいのはこの展開。やはりティーラトンが高い位置を取る限り、こちらもルーカスをなるべく前に張らせておくとそれだけお釣りがくる。
 マリノスのネガトラは、かつての「パスの受け手制圧型」のゲーゲンプレスからこれもややマイナーチェンジをして、1人がボールホルダーを切り、2人目はパスコースを切る(つまり、そこまで強く人に当たらない)対応に変わっている。最終ラインは基本的にはリトリート優先。下図のシチュエーションなら、喜田と扇原で一次的な対応をするが、4バックは喜田に連動するのではなく戻って4枚で組み直す。チャナティップが喜田を剥がせれば札幌の期待は一気に膨らむことになる。
左で奪えるとトランジションから札幌得意のパターンに持ち込みやすそう

 こう考えると、マリノスは札幌のルーカスのカウンターを回避する意味合いでも、マテウスのサイドから攻めた方が良さそうだ。札幌の得意とする展開は、速攻遅攻共に福森・チャナティップの左→ルーカス・アンロペの右なので、札幌が左から攻撃を始めるシチュエーションは避けられるなら避けた方がいい

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