2019年11月22日金曜日

プレビュー:2019年11月23日(土)明治安田生命J1リーグ第32節 北海道コンサドーレ札幌vsジュビロ磐田 ~哲学は根付くか~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌



×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)

 武蔵、進藤、菅、チャナティップ、ク ソンユンの5人が代表帰り。これまででは考えられない状況だ。菅は日曜日、武蔵は火曜日、チャナティップは金曜日と火曜日のゲームにスタメン出場している。10月のセレッソ大阪戦でソンユンを休ませた選択を考えると、チャナティップのベンチスタートもありうるだろう。

1.2 磐田


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)※特になし
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DFファビオ(フリートランスファーでの加入)
DF秋山(名古屋グランパスから期限付き移籍)
MFエベリシオ(レッドスター・ベオグラードから完全移籍)
MF今野(ガンバ大阪から完全移籍)
FWルキアン(チョンブリFCから完全移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)DFエレン(双方合意の上契約解除後、アンタリアスポルへ移籍)
DF石田(レノファ山口FCへ期限付き移籍)
MF中村(横浜FCへ完全移籍)
FWロドリゲス(ディナモ・キエフへ完全移籍)
FW小川(水戸ホーリーホックへ育成型期限付き移籍)

 16位の湘南とは勝ち点差6。負傷中の川又と山田の復帰は好材料だが、前者は前線の軸になっているルキアンとどう使い分けるか。ミシャチーム相手に、サイドに計算のできる選手を置きたいとの考えがあるなら、山田はそちらでの起用があるかもしれない。

2.今期の対戦のおさらい

2019年4月28日(日)明治安田生命J1リーグ第9節 ジュビロ磐田vs北海道コンサドーレ札幌 ~祭りの後始末~

 攻守ともに”色々と”遅く、ゆったりとした磐田に対し、開始6分でアンデルソン ロペスのスーパーゴールが炸裂して札幌が先制。前半はゴール前から人が減る(ボールを受けに下がってくる)磐田は殆ど脅威がなく札幌が終始優勢。ATにCKから進藤のヘッドで追加点。
 後半、磐田は負傷明けの川又を投入して福森サイドを狙う。札幌は絶好調のアンロペの負傷退場もあり1-5-3-2気味の布陣で引いてカウンターを狙うも、起点ができた磐田が後半は盛り返す。川又も負傷で退いてしまうが、ガス欠の福森狙いは継続される。アダイウトンの得点で1点差とするも時間が足りず札幌の勝利。

2019年6月19日(水)YBCルヴァンカップ プレーオフステージ第1戦 ジュビロ磐田vs北海道コンサドーレ札幌 ~嘘を嘘と見抜こう~


3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌

※変更なし
コンセプト5トップで攻めて5バックで守る。相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持
(自陣)
1-4-1-5や1-5-0-5の形からサイドのDFが持ち上がってシャドーやトップに縦パスを狙う。
ボール保持
(敵陣)
引いて受けるチャナティップに預けての打開。フィニッシュは右の白井の仕掛けから。
ボール非保持
(敵陣)
「ボールを取り上げたいチーム」との対戦を除いてはハーフウェーライン付近まで撤退。
ボール非保持
(自陣)
1-5-2-3でセットしてマンマーク基調で守る。最終ラインはなるべくスライドせず5枚を残しておく。
ネガティブ
トランジション
前線の3選手はなるべく下がらず即時奪回に切り替え。後ろはすぐに戻って人を捕まえる。
ポジティブ
トランジション
自陣で奪った時はトップ(ジェイ、アンデルソン ロペス)、シャドーのチャナティップを探して預けて速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドのターゲット狙いが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他memo同数で守る3バック相手なら対人に強い1トップ2シャドーがターゲットで質的優位を活かす。ギャップのできやすい4バック相手ならWBへのサイドチェンジを狙う傾向が強い。

3.2 磐田


 分析対象は29節(鳥栖戦)、31節(FC東京戦)。
コンセプトポジションを守り、ゲームをコントロールしてから仕掛ける。
ボール保持
(自陣)
基本的には菱形ビルドアップ(GK-CB-CB-CMF)で相手の1列目に対して勝負し、相手の1列目-2列目間でのスペースと時間の獲得を狙う。シチュエーションによっては(「豪雨」の「鳥栖相手」など)ルキアンへのロングフィードでシンプルな選択も。
ボール保持
(敵陣)
ポジションを整えて(時間をかけて)からの、サイドからの崩しが多い。2列目は中央に絞って大外はSBが使うが、渋滞を避けるために頻繁に移動(中→外)する。
ボール非保持
(敵陣)
1-4-4-2でミドルゾーンでセットして中央封鎖でサイドに迂回させせる。基本はあまり無理をせず自陣ゴール前で守る。
ボール非保持
(自陣)
ゴール前では人を捕まえる。CBはスライドせずサイドはMFがサポート。
ネガティブ
トランジション
攻撃はサイドからのクロスで終わる傾向が強い。CMFの2人は中央に配しておき、選手個々の判断で即時奪回/撤退を選択。
ポジティブ
トランジション
まずルキアンに当てて2列目が飛び出す形での速攻の形があり、比較的優先度も高い。
セットプレー攻撃キッカーは山本など。ファーに大井、ルキアンら高さのある選手を置くことが多い。
セットプレー守備CKではマンマーク主体。
その他memo特定の選手を活かすというよりはコレクティブに殴る。


4.想定される試合展開とポイント

4.1 フベロ・フビロのアプローチ


 監督就任会見でJubiloを「フビロ」と発音していたフベロ監督。バルセロナ出身で、監督の名前もFernando Juberoだし当たり前なのだがちょっと面白いなと思ってしまった。
 そんなフベロ監督就任後の磐田の変化は、目につくところではシステムを3バックから4バックの[1-4-4-2]に変更。GKにゲームキャプテンも任されていたカミンスキーから八田。左SBには中盤の控え扱いだったベテランの宮崎を起用、前線には2018シーズンまでリーグ戦出場ゼロだった藤川を抜擢し、川又の離脱が長引いていたトップにはルキアンがキーマンになっている。

 そんなフベロ監督が磐田で何をしたいのか。Numberの記事で、徳島ヴォルティスの田向選手がリカルド・ロドリゲス監督のサッカーについて説明していたが基本的な考え方は同じだ。
”敵を引きつけることで、そこから生まれるスペースを突きます”

 図に示すと以下(めんどくさいので図は札幌の[1-5-2-3]守備想定だが、基本的な仕組みはどこ相手でも同じ)。
 ボールを保持している時、磐田のGKとCBは必ずこのような位置関係になる。FC東京の永井のような選手を相手にした時は別にして、通常この3人の周囲には相手選手がいないのでボールを自由に持てるし、顔を上げてプレーできる。ミスが起きたりする余地は殆どない。彼らは「時間やスペースというリソースを得ている(貯金がある)」シチュエーションだと言える。

 反対に前線は逆で、札幌のDFにマークされており、仮にパスを受けてもキープしたり、反転して前を向いたり、スルーパスを通したりと精度の高いプレーをすることは後方の選手よりも難しくなる。「時間やスペースというリソースを得ていない(貯金がない)」シチュエーションだ。
 だから、得点することや、相手にとり脅威となるプレーをするには、前線の選手にいかにスペースを与えるかが重要になる。
後方の選手は「時間と空間の貯金」がある

 その前線の選手にスペースを与えるための方法が、DFの田向選手が言うところの「敵を引きつける」。モウリーニョ率いるインテルがバルセロナ戦のセカンドレグで、2点のリードを守り切るために90分間守り倒す選択をしたことがあったが、そのようなレアケースを除けばサッカーは点取りゲームなので、相手選手はボールのあるところに、ある程度寄ってくる。
 特に下図のような、DFやGKがボールを持っているシチュエーションは、相手(札幌)にとってはリスクが低い(うまくいかなくてもすぐに失点に繋がったりはしない)、逆に磐田はミスをすれば失点に直結するので、「敵を引きつけやすいシチュエーション」。

 札幌のジェイや武蔵が磐田のDFに対して寄せてくる、パスコースを切るなどすると、磐田のDFとGK八田はそれまで得ていたスペースを失い、考えたり判断をする時間も失う。それまでの貯金を失うシチューションだ。
 逆に、ジェイや武蔵が「引きつけられた」ことで磐田は例えば、中盤の上原や山本が新たに時間や空間を得る。「貯金」が前へと引き継がれることになる
後方の選手が寄せられるとスペースの貯金を失うが中盤の選手はスペースを得る

 先ほどまでと比較すると、時間と空間を得ている選手はGKやDFから、よりゴールに近いMFに移る。要は、自由にプレーできる選手が相手ゴールに近づいている。
 上図だとまだ相手ゴールには遠いが、同じ要領でMFも札幌の選手を引きつけて前線の選手にパス。そうすると、相手ゴールに近い位置にいる選手が、スペースを得ている状態でボールを持てる。これは決定的なパスやシュートの精度の向上に寄与する。この状態を作ることまでが監督の仕事だ。

 このプレーをチームとして遂行するために必要な要素がいくつかある。例えば、ジェイが寄せてきてもGKはアバウトに蹴るのではなくフリーの味方を探してパスを繋げる能力が必要になる。アバウトに蹴ると、「貯金」を引き継げないためだ。そのためにGKはカミンスキー(クラシカルな選手で、ボールを持っている時はあまり期待できない)から八田。
 そしてGKとCB2人からパスを受け、「貯金」を引き継ぎ、更にその「貯金」を前線へとつなげていくために、左SBには左利きの選手が欲しい。相手を引きつけるためには広がってプレーすると効果的だ。左利きなら、左足にボールを置けるのでピッチを目一杯広く使い、相手をサイドに引き付けやすい。だから宮崎だ(オフの補強ポイントの1つだろう)。
SBに順足の選手を置くと貯金を繋ぎやすくなる

 フベロ監督が何故こうしたプレーにこだわるのか。合理的な理由を挙げると、磐田にはスーパーな点取り屋がいないためだ。前線に、相手に密着マークされていても得点を決められるようなスーパーなFWがいれば、「引き付けてパス」しなくてもさっさとその選手にボールを預けた方が早い。但し、そうした選手は給料が高かったり、年齢詐称していたりする。降格圏のチームにはなかなか得られるタレントではない。

 もう1つ、徳島ヴォルティスもそうだが、何故こうしたチームがJリーグではあまり結果を残せないのか。これは筆者の個人的な見解だが、Jリーグには、
前後分断で食いつかずに引きこもると決め込むチームには通用しない

 こんな感じで、”前”と”後ろ”で完全に分割して運用するチームが一定するいるためだと思っている。
 前の3人(2人のチームもある)は3人だけでボールをハントする。だから引き付けるのは容易だ。反対に後ろの6~8人ほどは簡単に前に出ない。だから中央にはスペースができるし、DFからMFまでは「貯金」を引き継げる。が、ゴール前までは貯金を引き継ぐことが難しい。そしてミスを誘って前の2~3人で、緑のチームは少ない人数でカウンター。現在首位のFC東京は、システムは[1-4-4-2]だが、このパターン(永井&ディエゴ オリヴェイラを前に残す)を得意としている。

4.2 貯金をどこまで維持できるか


 前置きが長くなったが試合展開について。
 先に示した図と同様のシチュエーション、磐田はGKからの「貯金」をまず確実に確保したい。札幌の最終ラインは高さがあるので、シンプルな放り込みでは難しいだろう。
 「貯金」を活用する、2列目の藤川と松本が、サイドで使うのか、中央で使うのかはポイントだ。サイドだと下図のように、SBが札幌のWBを引き付けてからリリースすることで裏を取る展開までは到達できそう。が、シンプルなクロスで札幌のDFにアダイウトンとルキアンの2トップが勝てるか。どちらかというと、中央のギャップで受けられた方が札幌としては困る展開だ。
 鳥栖戦、FC東京戦を見ると、フィニッシュはサイドからのハイクロスが多い磐田。後方に大型選手が多い札幌はクロスには強い(GKが菅野なら話は変わる)。
SBまでは貯金を維持できそうな磐田

 対する札幌。まず磐田に対して守備の開始位置をどこに設定するか。基本的には”失うものがないゲーム”なので、高い位置から守備をしそうだが、守備開始位置を下げてコンパクトな陣形で迎撃する方が磐田は嫌なはず。「貯金」を繋ぎにくくなるし、武蔵、チャナティップが関与するカウンターも前にスペースがあるほうが発動しやすい。磐田は大井と藤田のベテランコンビで対抗しなくてはならなくなる。
自陣まで引いて迎撃の方が磐田は困る

 札幌のサイドアタックに対しては、磐田はSHを最終ラインに下げて4+1で守ると予想される。札幌は磐田のサイドの運用(両サイドとも下がるのか、どちらか片方だけなのか)を見極めてから仕掛けられるといい。
 特に、札幌の左、磐田の右サイドの松本が下がりすぎると、福森とチャナティップの周囲の密度が下がる。だからルーカスに対して、左サイドの選手を下げた方がいいはず。ただ、名古屋戦のフィッカデンティ監督の対応も見ていると思うので、全く同じような対応は考えにくい。
サイドが下がって守るなら磐田は右ではなく左の方がいい

 磐田はルキアンの相方(アダイウトンが先発と予想する)の役割がキーかもしれない。一つは、中盤の選手がプレスバックしたスペースを埋めること。もう一つは、札幌最終ラインの背後(できれば福森)を強襲すること。速さと献身性が求められるので、山田よりもアダイウトンだろうか。そして、福森と対峙する右サイドに配置することが、まずはスタートになりそうだ。

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