2019年8月8日木曜日

プレビュー:2019年8月10日(土)明治安田生命J1リーグ第22節 北海道コンサドーレ札幌vs浦和レッズ ~逃げ出さないこと信じぬくこと~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)

 長期離脱から復帰1ヶ月にして再び駒井が同じ箇所を故障し、離脱してしまった。浦和戦にかける想いは大きかっただろうし、チームとしても中盤センター、シャドーでの起用が考えられただけに影響は小さくない。小野はこの試合を最後にチームを離れることが決まった(FC琉球へ完全移籍)。恐らくベンチ入りし、試合展開にもよるが優先的に起用されるだろう。そしてアンデルソン ロペスは…神(not曽田さん)のみぞ知る、といったところか。

1.2 浦和

×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)※特になし
*(負傷等で出場微妙)DFマウリシオ(7/31鹿島戦での負傷)
MF柏木(5/21北京国安戦での負傷:右膝関節軟骨損傷、全体練習合流済)

IN(夏マーケットでの加入)MF関根(FCインゴルシュタット04から完全移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)DF茂木(愛媛FCへ期限付き移籍)
MF山田(湘南ベルマーレへ期限付き移籍)
FWアンドリュー ナバウト(メルボルン・ビクトリーへ完全移籍)

 2018シーズンと同じようなシチュエーションでチームを引きついた大槻組長。就任後、数試合はフラットに選手を見て、コンディションの良好な選手を優先的に起用していた印象だが、ここ数試合はコアとなる選手が再び定まってきた。負傷で前節欠場のマウリシオ、柏木は全体練習に合流しており、マウリシオは3バックの中央に返り咲きそうだ。シャドーと中盤センターの一角はそれぞれ、候補となる選手2人が五分五分の争いをしているように思える。

2.今季の対戦のおさらい


2019年3月2日(土)明治安田生命J1リーグ第2節 浦和レッズvs北海道コンサドーレ札幌 ~ベストイレブンの証明~

 リーグ戦の開幕2戦目。オリヴェイラ体制の浦和はプレシーズンから試していた、エヴェルトンアンカーの1-3-1-4-2、札幌はミシャ体制では初めてとなるチャナティップトップ下、2トップの1-3-4-1-2。ジェイをベンチスタートにし、武蔵をスタメン起用。
 浦和を徹底的に研究したであろう札幌の狙いが序盤からはまる。開始2分でゴールキックから、”ジェイロール”のアンロペのポストプレーに武蔵が抜け出して先制。その後は浦和に持たせ、中盤から後ろはほぼ純粋なマンマークで受け手を潰す守備からショートカウンター。武蔵が27分に2点目を奪う。1-5-3-2の陣形で守る浦和に対しては、トップ下・チャナティップが終始浮くポジションを取り続けビルドアップの出口を作り、プレスを空転させる。後半は引いて浦和の攻撃を受けながらオープンスペースにロペス、荒野らの突撃でカウンターパンチを繰り出し続けた札幌が2点のリードを守り切った。


3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌


青字が前節との更新・変更点。(今回は特に変えてない)
コンセプトより多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持(自陣)ビルドアップはミシャ式4-1-5から、高い位置に張るWBを出口と位置してサイドチェンジ等でボールを届ける。キム ミンテがスタメンに復帰して以降は後方の役割が固定気味で、宮澤がアンカー、深井が中央左。福森のフリーロールも自重気味。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。そうでなければ無理せずロングフィード。
ボール保持(敵陣)サイドアタック主体。押し込んでから仕掛けるのは右のルーカス。菅は極力シンプルにクロス供給に専念か、相手SBを押し込んで福森をフリーにする役割。ルーカスのアイソレーションを活かすためにチャナティップ、福森からのサイドチェンジを狙うが、チャナティップは消されがち。ルーカスはコーナーフラッグ付近で自由を与えられているが、福森はファーサイド狙いを徹底する。
ボール非保持(敵陣)相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。時間帯にもよるが、先制したらリトリートの傾向が強くなる。
ボール非保持(自陣)基本は1-5-2-3で、前3枚はポジティブトランジション用に残しておく。ゴール前からCBを動かさないことを重視。なるべくマンマーク関係を維持する。
ネガティブトランジション中盤2枚は即時奪回を目指す。ビルドアップが成功するとともにポジションと役割がCBからセントラルMFのそれになる。CBは2枚、時に1枚で相手のFWと同数。裏はGKク ソンユンの極端な前進守備で何とかさせようとの考えがここ数試合は強くなっている。
ポジティブトランジションシャドーが裏に飛び出しての速攻がファーストチョイス。
先制したらリトリートからの速攻狙いに切り替える。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任だが、ルーカスもたまに蹴る。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他メモ5バックの相手に対してはCBの攻撃参加(福森サイド)で基準をずらす。

3.2 浦和

分析対象は15節(vs鳥栖)、18節(vs仙台)、16節(vs鹿島)、21節(vs名古屋)。
コンセプト相手のブロックが整う前にショートカウンター等で強襲。
ボール保持(自陣)後方で保持しながら収まる選手(興梠ら)を探して中央でのポストプレー。右CBを浮く位置に配して楔役に。
ボール保持(敵陣)ポストプレーからの中央裏抜け。
ボール非保持(敵陣)マンマークで人を監視。前線3枚が限定させて中盤から後ろの選手は担当する相手選手を迎撃。ショートカウンターを狙う。
ボール非保持(自陣)まずゴール前の枚数確保。枚数が揃ったら人を捕まえる守備。”個人で責任を持つ”部分が大きい。
ネガティブトランジションマンマーク式のプレスで即時奪回を狙う。
ポジティブトランジション興梠や武藤に当てて速い攻撃を狙う。
セットプレー攻撃CKキッカーは武藤。
セットプレー守備CKではほぼ純粋なマンマーク。
その他メモ自陣では簡単にボールロストしないが、敵陣では「いい状態で守備に移る」ことを重視しているように見える。
膠着状態に陥るとサイドアタックを解禁。

4.想定されるゲームプラン

4.1 札幌のゲームプラン


 大槻監督の浦和にネガティブトランジションを狙い撃たれて敗れたのが昨年11月。狙われやすいネガトラの時間を最小限に留め、浦和にボールを持たせてリベンジを果たしたのが今年3月。となると普通は採りうる策は明白だが、小野のラストゲーム、お盆開催で多くの観衆が来ることetcを考慮すると本来志向するスタイルを信じて戦う、という選択も考えられなくもない。

4.2 浦和のゲームプラン


 札幌ドームへのカチコミということもあり、恐らくボールは捨て、トランジションから前線の個の能力を活かしたアタックで点を取るやり方だろう。11on11として捉えると抽象化されるが、3(進藤、ミンテ、福森⇒実際には守るのは深井)on3(興梠、武藤、長澤orファブリシオ)ならパワーバランスは浦和優勢。昨年11月の対戦と同じように、この点にフォーカスしてくるはず。

5.想定される試合展開とポイント

5.1 予想される出発点


 「4.」に書いたが端的に言うと札幌はどうするかわからない、浦和は札幌にボールを持たせたい。まったく参考にならないことが徐々に有名になってきたこのプレビューだが、「浦和が札幌にどうボールを持たせるか」くらいは考えておいても悪くないはずだ。

 筆者の予想は、浦和は「チャナティップ周辺以外は純粋なマンマーク」。昨年4月の対戦のように、札幌相手に純粋なマンマーク…ミシャ式は中盤の選手(主に深井)が最終ラインに下がるので、それに合わせて浦和の中盤(柴戸)も深井を捕まえて同数にするやり方もあるが、それは札幌の前線、ジェイやチャナティップ相手に完全に同数で対処することを意味する。
 特にチャナティップと岩波のマッチアップ。イマイチ殻を破り切れない岩波が、コンディションが万全なチャナティップを完封することは難しい。普通に考えればここがミスマッチになり、札幌がボールを収めたり、フィニッシュへと繋がる展開の始点になりかねない。だからチャナティップは岩波1人に任せるのではなく、柴戸と分担しながら守る。柴戸が中央に残るなら、前線は長澤が二正面作戦(この難しい役割はファブリシオではなく長澤だろう)で対処する。
浦和の守備対応(チャナティップには純粋なマンマークを敷かない)

 深井も福森もボールを運べる。無視できる選手ではない。そうなると一般には中央の選手を消す対応が優先される。福森がフリーになる。福森はこの状況を察知して持ち上がったり、前線に加わったりするだろうが、この後の選択が重要だ。浦和の前線3人と札幌の後方3人が同数。同数同士の局面は個々の能力による差が表れやすい。
 浦和はこの状態で福森からの展開(ゲームプランにもよるが、結構チャレンジ気味の選択が多い)を引っ掛けて、素早く前線に展開(興梠の収める能力が活きる)し、少ない枚数同士での勝負は必ず狙ってくるだろう。
長澤が二正面作戦になるならどちらかがフリーになる

 札幌はこの展開になったら、中央で局所的な数的優位状態を作るなどして一拍置いてから攻撃に移行したい。中央で時間を作れば、浦和はボールに更に寄ってくる。引き付けてからボールをリリースすれば、好調の白井も時間を得ることができて突破も活きる。浦和のシャドーが撤退する展開になれば速攻の脅威も薄れる(ラファエル シルバはもういない)。深井か福森、誰かがフリーになるとしたら、その選手のゲームコントロールがポイントだろう。
福森は中央で相手を引き付けてから展開したい

5.2 ジェイの周辺をどう守るか


 札幌でのミシャの基本的な考え方は、「地上戦によるビルドアップが得意なチーム」なら、それをさせないようにハイプレス、そうでもないチーム相手ならまぁボールを持たせてもいいよ、とする対応をとる。前者の具体例は川崎やマリノスなどだ。快適なドームでの試合、ジェイの先発起用など色々な要素を考慮しなくてはならないが、恐らく浦和に対しては、どちらかというと「そうでもないチーム」と分析していると予想する。
札幌が純粋なマンマークならジェイとのマッチアップは浦和にとって狙い目

 浦和のボール保持は上図のように、右CBがやや開き気味のポジションを取る。札幌のように1-5-2-3、前3枚で守るチーム相手にはこのポジショニングで基準をずらす。
 ただし、札幌の左シャドーはチャナティップ。この位置でのマーキングは得意だし、プレスバックしてブロックにも加わる体力がある。となると岩波よりも、浦和はジェイとマッチアップするマウリシオを起点にすると予想する。3バックと中央のMF2人で札幌の選手を引き付けて、前線のポストプレイヤーが顔を出すと楔を打ち込んでくる。またWBも浦和は引き気味に配する。菅と白井は恐らく対面の選手を捕まえるので、ここでも浦和の前3枚vs札幌の3バック、の構図は明確になるだろう。
 楔のボールが入ると、シンプルに少ない手数のうちに裏を狙う傾向が強い。裏を取れれば決定機、ダメでも比較的整った状態からネガティブトランジションでやり直せる。特に武藤は、引いて自分が受けてのターン、スペースに流れてからの仕掛けとも脅威になる。

5.3 その他、キーになりそうな選手


 札幌は福森。「5.1」に書いたように福森がボールを保持する機会はそれなりにあるはず。その時のプレーの選択が試合展開を決める。
 浦和は武藤。武藤が左で進藤とマッチアップなら、まだ札幌としては助かる。警戒すべきは、右で起用されて、福森や、膝に不安のある深井との地上戦を仕掛けてくるシチュエーション。3月の埼玉での対戦時は負傷欠場していたが、昨年11月の対戦でも手を焼いており、何かをやりそうな選手として真っ先に思い浮かぶ。

 基本的に組長浦和は、特に3バック相手なら「個で負けない」を前提に真っ向勝負で来る。デュエルから逃げ出さないこと、信じてやり続けることが両チームのベースとして重要で、戦術的なアイディアがそれにプラスアルファをもたらす一戦になりそうだ。

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