2018年11月14日水曜日

2018年11月10日(土)14:00 明治安田生命J1リーグ第32節 北海道コンサドーレ札幌vs浦和レッズ ~周回遅れの冒険~

0.プレビュー

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、宮澤裕樹、福森晃斗、MF早坂良太、荒野拓馬、兵藤慎剛、菅大輝、三好康児、チャナティップ、FW都倉賢。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF田中雄大、キム ミンテ、石川直樹、MF稲本潤一、白井康介、FW宮吉拓実。ジェイは累積警告4枚で出場停止。浦和から期限付き移籍中の駒井は契約条項により出場不可。奇しくも、この2人を欠いて浦和戦に臨むというシチュエーションは今年4月の浦和ホームでの試合と同じ。当時は駒井不在の影響は右サイドの人選に悩むこととなったが、半年が経過した今は中央でのクオリティ不足が懸念される。深井と小野は前日の各メディアによるメンバー予想にも入っていなかったが、この記事を書いている時点でも詳細は不明である。
 浦和レッズのスターティングメンバーは3-1-4-2、GK西川周作、DF岩波拓也、マウリシオ、槙野智章、MF阿部勇樹、橋岡大樹、長澤和輝、柏木陽介、宇賀神友弥、FW武藤雄樹、興梠慎三。サブメンバーはGK榎本哲也、DF茂木力也、MF武富孝介、マルティノス、柴戸海、菊池大介、FWアンドリュー ナバウト、李忠成。大槻毅暫定監督から引き継いだオズワルド・オリヴェイラ体制でも3バックは維持され、当初は3-4-2-1が主体だったがここ数試合は青木をアンカーに置いた3-1-4-2が定着している。その青木を故障で欠いた前節は阿部がアンカーに入り、この試合でも続けて起用されている。


1.準備の差


 前回、埼玉スタジアムでの対戦では大槻暫定監督の指揮のもと、札幌に対してマンマーク基調の守備を展開した浦和。スコアこそ0-0だったが、ミラー布陣で札幌の全てのフィールドプレイヤーにマンマーク気味に人を配することで時間と空間を均等に奪うことで試合を優位に進めた。
 この試合でも、浦和は札幌の特徴を踏まえた対策を更に高い練度で繰り出してきた。一方の札幌は、「いつものやり方」でこのビッグゲームに入ったが、残念ながらこの時点で試合の大勢は決まってしまったと言える。

1.1 荒野の軽すぎる判断


 試合開始4分ほどの札幌ボールのゴールキックでのリスタートの場面。浦和が用意してきた札幌対策が明らかになる。
 ク ソンユンがボールをセットすると、札幌はいつものように4-1-5ないし5-0-5の形を作る。その違いは、荒野がとるポジションによって定義されるが、いずれにせよ札幌は中央低い位置の3枚(宮澤、荒野、兵藤)がボールの運び役となることは不変である。浦和はこの3人を封じるため、興梠と李の2トップに加え、守備時は柏木を一列上げ、前に3枚を並べる形で札幌の3選手に数的同数で守備を行う姿勢を見せる。
 武藤と柏木は、基本的には対面の兵藤と宮澤にボールが供給されると当たりに行く準備をしているが、その背後の福森と進藤に、兵藤や宮澤を飛ばす形でク ソンユンからフィードが届けられた時にWBを挟んで追い込むことができるような中間ポジションを取っている(もっとも、ソンユンがこうしたフィードを蹴ることはほぼない)。
開始直後の浦和のハイプレス

 前半、札幌がボールを保持している時の攻防はほぼ全てこの形から始まっていた。そしてこの時、札幌側にとって大きな問題点が、アンカーポジションに入っていた荒野が何の考えもなしに(筆者にはそのように見えた、極めてチープな決断・判断だった)、ポジションを下げて、わざわざ興梠の守備範囲内に入っていくようなポジションをとり続けていたことだった。
 ミシャチームは本来4-1-5、中盤に1人だけ人を残しておく形がオリジナルだが、荒野がこの「1」のポジションを取っていれば、下のように興梠に対して荒野自身とク ソンユンで2on1…二択を迫ることができる。特に興梠はFWとして前に置いておきたい狙いを考えると、興梠が中盤まで下がって荒野についてこれば、それだけで浦和の攻撃力を削ぐことができる(ビルドアップは、とりあえずソンユンが蹴っ飛ばしておけばいい)。
 しかし荒野が自分からポジションを下げて、ソンユンと共に興梠の守備範囲内に収まってしまったことで、ソンユンは誰にもパスが出せない、そして札幌は、ボールの預けどころが全くない…言い換えれば、札幌はピッチ上のどの位置でも浦和の選手の圧力を感じ続ける状況に自ら陥ってしまった。
荒野がアンカーポジションにいれば興梠に二択を迫れた(が、自ら興梠に捕まりに行ってしまった)

1.2 時間と空間と視界なき世界

1.2.1 困難さを自ら証明する荒野の判断


 一般に1on1関係が強くなると、マッチアップしている選手間の(野々村社長の言うところの)”クオリティ”が如実に表れるとされる。浦和相手にわざわざ1on1で対処しなくてはならない状況をつくるとどうなるか。先の、自ら難しい状況を招き入れることとなった荒野自身がその困難さを証明することになる。
 6分の浦和の先制点は、札幌のスローインから。宮澤はボールを受けるとそのまま中央侵入を試みる(この宮澤が中央を割ろうと試みた動きは、本来荒野がアンカーポジションで担わなくてはならないという意味では、宮澤の判断は全く無謀ではなかったと思う)。浦和が中央を固めているのを見て、宮澤は荒野にバックパス。荒野に渡ると、興梠がその前を切るように寄せてくる。この時、荒野を助けるためにチャナティップと三好が落ちてくるほか、「4-1-5」でも「5-0-5」でも攻撃時は兵藤が後ろで待っている。
 興梠に寄せられ、顔を上げ、首を振る時間を奪われた荒野はこれらの選手が見えず、イージーな(それでいて荒野がよく使う)中央へのパスに逃げるが、これを読んでいた槙野にカットされ、浦和のボール保持へと移行するトランジションが生じる。
4-1-5で攻撃している時に捕まった荒野が不用意にボールを手放すと…

1.2.2 浦和が突きつけた現実という名のカウンター(浦和の3トップに対する札幌の守備者は…)


 槙野がカットしたボールを柏木が収め、中央に飛び出した長澤に渡ると、武藤と興梠は一気に前へ。この時、札幌は後方には荒野と兵藤だけ。イレギュラーな展開で、宮澤が中央にいないことはともかくとして、本来ゴール前を守るべき福森と進藤は、ゴールからはるか遠くの位置に置き去りにされている。ただでさえ、武藤や興梠を90分間1on1で完封できるDFが札幌に存在するか微妙なところだが、DFどころか兵藤と荒野がCBとして対応しなければいけない状況に、札幌としては陥ってしまったし、浦和は電光石火のカウンターによってこの状況を作り出した。最後は武藤のプッシュアウェイによって、兵藤は置き去りにされ先制点を献上することになる。
「CB兵藤」が武藤や興梠に対応しなくてはならない

 試合開始から浦和が札幌のボール保持時に5-2-3で守備をしていたのは、札幌に数的同数守備を仕掛けることと共に、札幌がボールを保持している(=進藤や福森がゴール前からいなくなり、兵藤や荒野がCBの位置にいる)状況で、前線に興梠、武藤、柏木の3枚を残しておいてカウンターを仕掛けるため。
 前に残す枚数を増やせば、それだけカウンターの脅威は増すが、当然後方は手薄になる。しかし、札幌の5トップに対しての浦和の5バックの力関係ならば、5バックを残した数的同数の守備で多くの状況に対処できる。

1.3 浦和ボール保持時の札幌の準備不足


 浦和はボール保持時に、阿部がアンカーの3-1の形で前進を試みる。「プレビュー」で触れたように、浦和はここ数試合青木をアンカーに配した3-1-4-2を採用しており、この形で試合に入ることは容易に予想できたはずだが、札幌は驚くほど効果的な対策を打てなかった。
 札幌は5-2-3で守備をセットする。この「5」は浦和のWBと前線の選手(武藤と興梠が変則的な2トップ+柏木が1.5列目)をケアする役割が明確になっている。また、前線の1トップ2シャドーで浦和の3バックに数的同数で守備をしたいという考え方だったと思うが、浦和はピッチの縦幅を広く使ってボールを保持し、都倉、三好、チャナティップに対してどこまでついてくるか?という判断をまず迫る。試合序盤で体力が余っており、ビハインドの状況ということで札幌の3人は少し回された程度では戦意を失わなかったが、これに阿部が加わると、準備不足が一気に露呈することとなった。

 阿部は都倉の背後を基本とし、札幌の1列目の間に顔を出して、浦和の3バックからのパスコースを作ったと思えば、3バックが寄せられて厳しい状況になると最終ラインに落ちて4バック化するなど、都倉やチャナティップの視界から、ちらついたり消えたりするように動く。札幌の3枚は、阿部へのコース切りか、ボールホルダーへの圧力かの意思疎通が図れておらず、終始中途半端な対応をし続けており、浦和のビルドアップに制限をかけることができない。また、浦和は”保険”として西川が控えている。詰まった時は西川に渡してロングフィードでリセットする選択肢は依然として健在である。
阿部がちらつくので3on3関係で守れない

 阿部に対して、荒野か兵藤がマンマークで対応するのは一つのソリューションとして札幌の選手、スタッフの中には用意された策の一つだったと思う。荒野や兵藤にそれができなかったのは、
兵藤と荒野の脇を起点にボールが収まる

 岩波やマウリシオから、兵藤と荒野の脇に下がってくる興梠や武藤への楔のパスが撃ち込まれるため、持ち場を離れて阿部を捕まえることを優先して良いのか判断が難しかったためだと思われる。しかし結果的には、阿部への対応が不明瞭なため、前線の選手は浦和の3人のDFへの対応を明瞭にできず、縦パスが通りやすい状況になってしまった。

2.反撃の狼煙

2.1 ゾーン2での浦和の対応


 個のクオリティで勝る浦和は、札幌の各選手に基本的に同数の選手を配したマンマークで対応する。ゾーン3(浦和から見て、札幌ゴールに一番近いゾーン)では1.1の通り、興梠、武藤、柏木を前に配した5-2-3でセットしていたが、ゾーン2(ピッチ中央付近)では5-4-1ないし5-2-3でセットする。この時、柏木と武藤は進藤と福森を守備基準とするため、荒野と兵藤は長澤と阿部で見ることになる。ミシャ式4-1-5もしくは5-0-5の適用により中盤から最終ラインに落ちる兵藤を、長澤が捕まえることでこのポジションでの数的同数を維持する(荒野は放置気味で、阿部は中盤センターからなるべく動かない)。
札幌に対する浦和のマッチアップ

 「数的同数で守る」ということは、言い換えれば各ポジション、各選手において突き詰めると1on1で対面の選手に対応できることが必要になる。もしそれが不可能な選手がチームに1人いると、その選手が担当しているマッチアップを起点にされてしまう。
 上の図で言うと、浦和の5バックは札幌の5トップに対して、相対的に見て明らかに弱いと言えるポジションはない。中盤から前も同様である。厳密には、興梠と宮澤(元々前線の選手である)のマッチアップなどは浦和側から見て盤石とは言えないかもしれない。しかしDFの宮澤は、札幌ボールの時に極端にリスクを冒すプレーは敢行しにくいし、またその回数も限られてくる。そのため興梠による1on1での対応を基本とする戦い方が成立する。

2.2 三好のクオリティ爆発

2.2.1 下がって間合いを図る


 浦和の守備が、各ポジションにおいて1on1で守り切れることが前提になっているなら、逆説的には札幌に1on1で勝てる選手がいれば、その前提は徐々に崩れていくことになる。現在の札幌のスカッドにおいてその担当、というか期待は、前線の3選手…都倉(普段はジェイ)、三好、チャナティップに向けられる。
 開始10分ほどで、三好とチャナティップは浦和の基本的な対応…札幌5トップにマンマークなので、チャナティップには岩波、三好には槙野がついてくることを確認したようだった。10分以降、両選手はプレーエリアを更に低い位置、時にハーフウェーライン付近まで下がってボールを受けようとする。チームに対しては、ボールの収めどころをもたらすとともに、自分の相手をする選手がどこまでついてくるのかを確認する。
長澤が兵藤についてくると、下がり目にシャドーが活動するスペースができる

 「確認」の結果は、槙野と岩波はあくまでDF~MF間での迎撃守備を基本としており、ミドルゾーンでは、「任せられる場合は」MFの選手に対応を任せることになっていた。
 といっても、先述のように数的同数のマンマークに近い守備を基調としていると、長澤はポジションを上げて兵藤を見ており中盤にいない。阿部は荒野を捕まえないので中央にいるが、後は福森を見ながらの対応となる武藤、進藤を牽制しながらの対応となる柏木。この3選手で、中盤に落ちてくる三好とチャナティップを見ることになる。

2.2.2 浦和の札幌左(チャナティップ)へのケアと手薄になる右サイド


 三好とチャナティップ、より先に浦和のマーカーとの「間合い」を自分のものとしたのは三好の方だったと思う。ここまで7ゴールのチャナティップと1ゴールの三好。そのチャナティップがいる左サイドは札幌のボール保持攻撃のストロングポイントであり、浦和も当然ここからの展開を警戒していたはずである。
 チャナティップにボールが入ると、浦和は岩波1人にその対応を任せるのではなく、余っていた阿部と、サポートに向かえる位置取りをしていた武藤が加わって簡単に前を向かせない。
札幌左サイドには複数で囲い込む対応を準備していたが、右も同時に見ることは不可能

 しかし阿部1人でチャナティップと、三好両方をケアすることは不可能。浦和は札幌の左サイドアタックに対してはこうした1on1以上の人数をかけた対応ができるが、三好の右サイドでは同じ対応ができない。チャナティップと共に三好が下がってくると、槙野がミドルゾーンまで引っ張られての対応を強いられることになる。

2.2.3 前提が崩れる時


 25分の札幌の同点ゴールは、三好が1on1で槙野に勝利したことが決定機の創出につながった。荒野が左サイドからボールを持ち上がる。長澤が兵藤をマークしているので、荒野の担当は阿部である。そうした人同士の関係性に加え、スペースを守る観点でもこのエリアは阿部がまず対応しなくてはならない。左サイドには阿部のほか、橋岡、プレスバックする長澤、チャナティップを担当する岩波がいるが、右サイドはオープンになっている。
左で運んでから手薄になっていた右へ

 兵藤を経由してサイドが変えられ、三好にボールが渡る。三好がセンターサークルの斜め右ほどでボールを受けと、槙野が飛び出して対応する。三好はゴールに背を向け、槙野を背負った状態であり優位な姿勢とは言えないが、ボール周辺の空間は三好に分がある状況だった。前を向けるだけのスペースと槙野との距離がある。ゴール前、狭いスペースであれば日本代表の槙野に分がありそうなマッチアップだが、三好の敏捷性が活きる状況であれば話は変わってくる。
 三好が槙野を剥がすと、浦和は周囲の選手(阿部、マウリシオ、柏木、長澤など)がそのカバーリングのためボール周辺に寄ってくる。この状況(1on1で負けた選手をカバーする)が発生すると、浦和の守備における前提が崩れる。カバーリングに回る選手は、元々のマーカーを手放さなくてはならない。その手放された選手は別の選手が引き継ぐが、そうすると誰かがフリーになってしまう。
 この状況では大外の菅だった。三好が阿部もかわしてフリーの菅に渡ったところで、この試合初めて(かつ、恐らく札幌の前半唯一の)WBからのクロス供給が実現する。菅は対面の橋岡とマッチアップし続けており、橋岡に1on1で勝たないとクロスを供給できない。だがこの時のように橋岡がより重要なエリアで、より重要な仕事に追われる状況なら、菅は橋岡に勝たなくても仕事ができる。
三好が槙野に勝つと、浦和の数的同数守備の前提が崩れ、フリーの選手ができる

 最後に、3-4-2-1のシャドーが三好、チャナティップのように下がってボールに触るタイプだと、ゴール前の枚数は手薄になる。クロスが入る局面で中央に入れるWBが欲しいところだが、なかなかしっくりくる人材がいない。進藤の攻撃参加は、そのリスクはともかく、この課題を補完することにおいては重要なポイントとなっている。

3.小休止で再び浦和ペースに


 追いかける状況からスコアがイーブンとなり、戦いやすくなったはずの札幌。しかし、そこからの10分間は浦和が札幌陣内に侵入する時間が増え、進藤の同点ゴールから丁度10分後に武藤の2点目となる得点で再びリードを許すことになる。

 浦和が札幌陣内に侵入する時間が増えた理由は主に2点で、1つは①後方でのボール保持に浦和左サイドで柏木も加わるようになり、三好が下がりがちになってしまった点。柏木と槙野で2on1の状況になると、三好1人が追いかけてプレーを限定させることは難しくなるため、三好は無理に追わずリトリートするようになる。それにより、浦和は左サイドで殆ど制限されることなく自由に前進することができる。
三好1人で対処できない(サポートもいない)ので、下がらざるを得ない

 もう一つは、一つ目と関連する話でもあるが、②前で圧力がかからなくなると、最終ラインは前で守ることができなくなる点。浦和は最終ラインでフリーの選手が前線のFWや、仕掛けられるウイングバックに1本で供給できる能力を持っている。それらの選手に渡れば、札幌のゴール前がたちまち主戦場となるため、札幌はどうしてもDFを5枚ゴール前に並べることを優先してしまう。
前で圧力がかからないと後ろはズルズル下がる

 35分の浦和の追加点は、宇賀神の突破から生まれたが、この時も札幌は5バックがゴール前に残っていた(ラインはペナルティエリア内に設定されていた)が、宇賀神に対応したのは早坂1人で他の4人は「いるだけ」、最後のクロスに宮澤が反応した以外はボールに殆ど関与できずに終わっている。

4.後半の展開


 後半開始から、札幌は兵藤を下げてキム ミンテを投入する。点を取るためには多少のリスクがあっても無理が効く選手…DFとしてはパワーもスピードもあり、縦に運ぶこともできるミンテの潜在能力に期待したいというところだったと思う。
 浦和は地味に、柏木と武藤の配置を入れ替える(その後、再び元の位置関係に戻っていた)。
46分~

4.1 45分後の回答


 試合頭から浦和のアンカー阿部に対する対応が全くもって不明瞭だった札幌。後半に入り、ようやくそのソリューションが披露される。チャナティップをトップ下気味に置き、阿部を見させるようにし、前線は都倉と三好の2枚で1人少ないが気合で何とかする。浦和はDF3枚に加え、西川もボール保持に関与するので実質4on2。都倉と三好には、相当のガッツが必要になるが、これにより中盤と最終ラインは1人多い状態で、人を残しつつ対面の選手に厳しく当たれるようになる。
チャナティップが阿部をケアし、都倉と三好で追いかけまわす

4.2 チャナティップのカウンター


 チャナティップが中央に配されると、守備だけでなく攻撃の性質も変化する。札幌が浦和の攻撃を凌ぎ切ると、トランジション後の展開において、”トップ下”チャナティップはサイドではなく中央でアクションを開始する。よりボールを受けやすく、視界も確保できる位置でプレーできることから、チャナティップのドリブルから始まるカウンターが、後半の札幌のオプションの一つとして新たに加わることになる。

 チャナティップにマークされることになる阿部について言及すると、後半立ち上がりは、そのマンマーク関係を利用しようとしたのか、本来の持ち場から大きく離れて前線にポジショニングする状況もしばしあった。それはチャナティップがマンマークでついてくるなら、そのポジションを下げよう(=浦和ゴールから遠ざけよう)という考え方もあったのかもしれないが、チャナティップがそれについていかなければ、カウンター時にフリー、もっともこの2選手が近い位置にいても、初速がずば抜けているチャナティップのドリブルを阿部が止めることは難しかった。
トップ下のチャナティップが前残り気味でカウンターを仕掛ける

 更に札幌のボール保持時の展開で、トップ下・チャナティップを阿部が見ることになると、中盤は荒野、宮澤(ビハインドということで、通常のミシャ式4-1-5よりも上げれるだけポジションを上げていく)とチャナティップに対し、阿部と長澤の2枚対応となり、札幌はこの試合初めて、中盤より前のポジションでフリーマンを得る。
 一方で前線は「2トップ」都倉と三好がゴール前で中央寄りのポジションを取るので、ゴール前に人が密集しやや渋滞気味になる。この「中→中」での強引な打開は何度か図られるが、浦和のゴールをこじ開けるには至らない。
チャナティップがトップ下として扱われると中央で数的優位だがゴール前は渋滞気味に


4.3 中央封鎖に打つ手なし


 67分、札幌は早坂→白井に交代。73分、浦和は阿部→柴戸に交代。
 中央に、スライドしつつ右も左も守れる柴戸が入ると、札幌は一気に中央でボールが入らなくなる。
73分~

 試合開始当初、阿部が担っていた三好とチャナティップを両方見るというタスクを柴戸が引き継ぐ。特に三好に対しては、距離を取って飛び込まない対応で、長澤や柏木がカバーカバーする時間を作る。チャナティップに対してはより密着して守り、ボールを入れさせない。これを続けることで、札幌は外しか攻め手がなくなってしまう。
柴戸が左右にスライドし中央を封鎖する

 ベンチに攻撃の駒が白井と宮吉しかいない札幌。中央を封鎖されるとサイドに打開できる選手が欲しいが、白井の配置を変えるくらいしか打つ手はない。最後は放り込むだけに終始し、1点が遠いまま試合終了となった。

5.雑感


 無防備になっている隙を速攻で仕留めるという、ミシャチーム攻略のお手本のような1点目と、四方田監督時代からの課題であるボール狩りの問題を発端とした2点目。今後アジアに出ていくにはこれらへの対策を標準装備としないと、ミシャとの「冒険」はより上位のチームから周回遅れのままで終わってしまう。
 もっとも(元々起用できない駒井はともかく)、マンマーク中心で対応してくるチーム相手には、ジェイのような強烈な個の有無が試合展開に大きな影響を及ぼす。ジェイに放り込んでおけば何とかなってしまうというのも先々を考えるとどうかと思うが、(野々村社長の言う通り)ステージを上げるためにはそちらの充実も不可欠なことは確かである。

4 件のコメント:

  1. 宮澤の偽センターバックは面白いですね。パスコースを切りながらボールホルダーにプレッシャーをかけるカバーシャドウが無効化できる。来年は荒野と宮澤がポジションを入れ替え続けるかも。

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    1. 宮澤は本当にいい選手になりましたね。荒野は…実は3バックの右か左が一番はまるんじゃないのかと最近少し思ってます。

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  2.  こんにちは にゃんむるです。
    7年ぶりに風邪をひいてしまいました。現在絶不調です。
     以前にも書いたかもしれませんが、荒野は何処かにレンタル出して少し自分で考える事を多くさせないとイカンと思ってます。じゃないと、ここ止まり感満載なんだよなー。年齢的にどうかと言う人いるかもしれませんが、フィジカルあるし選手寿命長そうだからどうにかなるでしょ。
     あと文中にありましたが、シャドーが下がってもらうタイプだと、クロス上がった時のゴール前の駒が足りなくなる話は私も同意見ですね。以前からかなりの不満な部分の一つです。まあ、完璧なチームなんて存在しないから我慢はしてますけど、こぼれ球にボランチのミドルシュートが全然ないのと同じくらい大きい不満ですね。
     そんな感じ。風邪治して最終戦に備えないと・・・。 んでわ にゃんむるでした。またのー。

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    1. 今更ですが体調は大丈夫でしょうか?この日の厚別は後半から一気に冷えましたね。
      ミシャは浦和でも毎年マイナーチェンジしてるので、今後更に若い選手を入れて、攻守ともに重心を押し上げる戦いをしたいのではと予想します。ただチャナの個性は活かしたチーム作りになるでしょう。

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