1.ゲームの戦略的論点とポイント
スターティングメンバー:
- 新潟はここまで5勝7分け8敗で勝ち点22の16位。マリノス、町田から勝ち点3を獲得しているのが光ります。リーグ戦直近3試合は鹿島、川崎、広島と簡単ではないチーム相手にいずれも引き分けで状態も悪くなさそうと見ていいでしょう。
- メンバーはカップ戦の際に負傷したと見られるGK小島のところは阿部が起用されており、ベテランが支えていたCBには東洋大学4年生の左利きDF稲村がスタメンデビューの前節に続いて起用されています。
- 他、中盤センターの宮本、左ウイングの太田、トップで出番が増えていた長倉といった選手を欠いており、どこかの”いいサッカーをしているけど負傷者続出で勝ち点が増えないチーム”と同じくらい離脱者は多いようです。
- と、いうのはどうでもいいんだけど、奥村は中盤センターとトップ下兼務でこの日は後者。中盤センターにはベテランの島田が入って、左サイドでここ6試合スタメン起用されいてた谷口がセンターFWに回っています。
- コンサは岡村が出場停止。前節欠場の小林がスタメン復帰で、トップは前節奮闘していた長谷川に、大森を組ませて武蔵をベンチスタートとしました。
2.試合展開
ラッシュの理由:
- 序盤は、開始15分で新潟が5回ほどコンサのペナルティエリア内でプレーする展開。これらはいずれもパターンが異なっていて、うち1回はセットプレーから谷口のヘディングシュートが枠内(菅野が横っ飛びでセーブ)、1回は松田の右足シュートが右ポストを叩くという決定機でしたが、全体としては新潟は左サイドからの攻撃でコンサ相手に序盤の主導権を握っていたと思います。
- まずマンツーマンでくるコンサのようなチームに対し、新潟はどこにスペースを作って誰にボールを当てていくかが明確になっていました。
- 新潟がコンサと違ってボールを持っている時に簡単に追い込まれないのは、なるべくサイドにボールを動かさないようにしているのもあるのですが、この試合でも、GK阿部やDF稲村からのフィードはサイドではなく中央を狙うようにしていました。
- いつも通りシンプルなマンツーマンのコンサは、試合を通じて馬場の奥村に対する対応が傑出していたと思います。
- 新潟はコンサのように身体のどこかにボールを当てるような雑なパスをすることは稀ですし、奥村も体格差のある馬場に対して身体でボールを隠してキープしようとしてこのマッチアップは肉弾戦が頻発していましたが、馬場は後半になってもノーファウルでマイボールにするよう努めていました。
- 一方で中央で他に起きていた事象を挙げると、一つは①駒井が後ろの仕事を頑張りすぎると、対面の秋山or島田に対する圧力をかけづらくなる。もう一つは②小見は割とフリーマンっぽく動くので髙尾はどこまでついていくか少し迷っていたのと、左サイドではコンサのマークのずれが生じやすくなっていた、と言えると思います。
- 先に挙げた5回の新潟のボックス内侵入は、言及しなかった残り3回は、奥村とポジションチェンジしてフリーになった小見がハーフスペースで縦パスを受けてターン成功したものと、秋山と奥村が1度ずつ(小見が空けた)左サイドで長い距離を走って背後をとったものでした。
さすがに見過ごせなくなってきたかな:
- 15分過ぎくらいから徐々にコンサがボールを持つようになって、新潟が序盤のようにコンサゴールに迫る機会は減っていきます。まずこれはコンサのマンツーマンでの対応がある程度は成果を出していたというか、基本的にはマンツーマンでの関係性自体は成立しているので、新潟の前線の選手がボールを託されて毎回キープするというのが難しかったから、ということで説明はできるでしょうか。
- コンサがボールを持っている時は、試合序盤から駒井が下がってくるのは全てのプレー機会において一貫していて、ここ2試合と同様に駒井の信念なのか?彼がボールをまず握るところから始めるのだということはよくわかりました。
- ただこの駒井と家泉の、GK菅野も数に入れて3v2のシチュエーションでの新潟の1列目の奥村と谷口を前にした時のユニットとしてのボールキャリー能力は絶望的でした。
- 15分くらいにコンサのこの3人が横パスを計7〜8回くらい繰り返して、その前後では家泉がconducciónで持ち出そうとして撤収したり、駒井が菅野や近くの選手に指差しをして何か指示したりをしていて、なんか横パスしてるだけなんだけどごちゃごちゃしてるな…と思って見ていましたが、事実として言えるのは、
- 駒井と家泉は新潟の2トップ脇からボールを運ぶ能力に乏しい
- チームとして新潟の2トップをどう超えるかの共通理解がない(まず共通理解をピッチで描こうとしていてごちゃごちゃしている)
- 仮に新潟の2トップを超えた後どうプレーするかの共通理解がない
- こんな感じでしょうか。例えば駒井は見た感じ、ボールを持っても菅野に戻すことが多く、この日はロングパスもほとんど使わなかったのですが、反面味方にジェスチャーで指示するほどなんらか確固たるプレーのイメージがあるのでしょう。
- 状況的に、駒井のイメージでは菅野のキック(アンカーの馬場へのパスや、SBへの浮き玉)をもっと使って欲しい、という感じなのでしょうけど、菅野からするとアンカーへのパスは新潟FWの間を通す必要があるから菅野と家泉で新潟のFWを引き離すようなプレーをして欲しいとなるし、SBへの浮き玉は髙尾や中村桐耶がある程度スペースを享受している状況じゃないと新潟のサイドハーフの選手に引っかかってしまいます。
- この辺の、菅野1人では解決できない問題を解決しないままピッチに立ってキックオフの笛が鳴っているので、そりゃボール運べないよな、という感じでしょうか。
- そしてFC東京戦に続いてコンサのイメージは、アンカーが馬場で駒井と小林がインサイドハーフというか、少なくとも小林はシャドーで前に張るのではなくて、アンカーの馬場の近くに終始ポジショニングしていました。
- ただこれも、小林がボールを持つためにインサイドハーフの位置からもさらに下がってきて、完全にコンサは前4人(菅、長谷川、大森、宏武)と後ろの6人が分断していて、前4人にどうやってボールを届けるのか誰もわからない状況に陥っていたと思います。
- 状況からの推察で根拠は弱いのですが、小林(と、FC東京戦での田中克幸)については、まずシャドーの位置まで上がらないということに意味があるのではないかと推察しています。
- つまりコンサがボールを失った時に、小林をシャドーとして前に置いているとカウンターに対して最大でも5枚、場合によってはDFが攻撃参加しているなどであれば、4枚とか3枚とかで対処することになるので、枚数確保によってバランスを取ることに意味があったのではないかと思います。
- ともかくコンサはボールを運べないということで、詰まるとトップの大森にボールを押し付けることが多いのですが、大森が中央で一旦キープしようとしてもサポートがなく、サイドに一旦展開してからクロス、が大半で、この日のクロスはほぼ全て新潟のDFが触って不発に終わっていたと思います。
- そして長谷川は、FC東京戦での大奮闘が祟ったのかアクシデントで38分に武蔵と交代。この日もシャドーというかは2トップの一角として前に張っていたのですが、FC東京戦のようにマイボール時にスペースに流れて自らターゲットとなることは殆どなく、大森との役割整理は微妙なように見えました。
噴出したディティールの欠如:
- スポナビ集計ではコンサの枠内シュートは2本ですが、これは後半開始早々に小林と駒井がペナルティエリア外から続けて放った長めのシュートを指しているようです。
- 相変わらず新潟の”列”を超える術を持たないコンサは、大森が潰れて武蔵や駒井が拾って突撃、を頑張っていました。
- ただ武蔵なのですが、大森が入って日頃の潰れ役から解放されてどうか、と期待していたところですが、結果的には不発に終わります。
- 52分の新潟の決勝点は、家泉の縦パス→武蔵のパスを堀米がカットしての新潟のカウンターから。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) June 29, 2024
カットインから右足一閃!
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アルビレックスがカウンターから先制
最後は谷口海斗が違いを見せゴラッソ🙌#札幌新潟
🏆明治安田J1リーグ第21節
🆚札幌×新潟
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- このプレーはちょっと違うかもしれないのですが、武蔵について一つ言えるのは、後ろからパスを受けて反転して…というシチュエーションで180°ターンになっているのが多いのが気になります。
- おそらくポストプレーのように相手DFをブロックするために、相手に背中を向けた状態でボールを待っていることが多いのでしょうけど、相手がぴったり付いていなくて受けたらターンできる状況を想定しているなら半身で待っている方が良い。この失点の際は家泉のパスが左足に来たというのもあるのですが、待ち方は半身担っていないしターンの向きも逆の方が良かったかもしれません。
- もっともこれは味方のパスの出し方や角度(コンサは前に蹴って拾うというプレーが多いからか、角度をつけて斜めに出すよりも、角度がない縦パスが多い)にもよるので、受け手だけの問題ではありません。
- ただ試合を通じて感じたのは、せっかく大森と併用で武蔵はシャドーの役割として振る舞えるはずなのに、そのメリットを活かしきれないプレーに終始していた(武蔵もDFを背負って受けて強引に反転して突進するが、180°ターンだと視界確保に時間がかかりプレーの判断も悪くなる)と思います。
雑感
- 率直にあまり褒めたりポジティブに考えるところが見当たらない試合でした。
- ここ2試合、マリノスとFC東京相手にある程度バランスを調整して(中盤の選手やDFの攻撃参加の自重?)、いずれも0-1というスコア的には善戦だったのかもしれませんけど、ホームで新潟相手という勝ち点3が欲しいシチュエーションにおいては、オープンな展開じゃないと敵陣に侵入できない、ペナルティエリア内でシュートに持ち込めない、というこのチームの現状が如実に現れていたと思います。
- 新潟という(おそらく)予算的に最小クラスながら、リーグでもっとも整ったチームと試合をする機会はもしかすると暫くないかもしれません。その意味ではこの試合は、コンサが(今期をなんとか乗り越えたとしても)抜本的に変わらないと問題を翌年に持ち越すだけ、ということに気づくことができる最後のチャンスだったかもしれません。まぁ毎週試合を見てもなんとも思わないから現状があるのでしょうけども…それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
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