2024年6月24日月曜日

2024年6月23日(日)明治安田J1リーグ第19節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス 〜コンサの負けパターンとは〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • ACLで決勝に進んだことで1チームだけ変則的な日程でリーグ戦を消化するマリノス。リーグ戦では4/10の第3節(延期分、7節の後に消化)でガンバを2-0で破って以降は、湘南、セレッソ、磐田、浦和、新潟、FC東京、柏、鹿島、町田相手に9試合を1勝4分4敗と厳しい状況に立たされています。
  • 過密日程はひと段落したものの、最終ラインの畠中、小池裕太、小池龍太、前線のエウベル、ナムテヒといった選手のコンディションが整わない状況が続いていますが、ただ一つ言えるのはチームのサイクルとしては下降線を辿っており、今のマリノスはJリーグで新潟と共にポジショナルなサッカーをリードしてきた、かつての姿ではなくなっていると見ていいでしょう。

  • 試合前日に「昨年のレギュラー13人がいない状況だ😔」と語った我らがミシャ。「昨年のレギュラー」という観点にまずかなり驚きでしたが、真面目に内訳を考えると移籍の1ソンユン、2ルーカス、3小柏、4駿汰、5金子、6福森、長期離脱の7高木、負傷が伝えられている8宮澤、9青木、10浅野、11菅、12スパチョーク、という感じで13人目は誰?と思っていたのですが荒野を指していたのか、それともゴニなのか。ソンユンや福森を「😔」に含めるのもどうかという気もしますが、しばらくはこうしたコメントにも慣れていく必要があるでしょう。


2.試合展開

隠れ軍師の存在匂わせ:

  • ソースとなる記事を見失ってしまったのですが、昨年夏に中心選手(宮澤、小林?)の進言があってプレス開始位置を下げたとするコンサ。コンディション調整がしやすく温度も湿度も適度なドームでのホームゲームということもあったのでしょうけど、この試合は久々に前線から相手GKまで追いかけるpressingが復活します。

  • これに対しマリノスは時間帯によって対応がやや変わっていたと思います。
  • 序盤は、右SBの松原のところが浮き気味だと早めに気がついて、松原から右インサイドハーフの天野へ。天野からヤンマテウスと宮市の両ウイングにそれぞれ展開が1度ずつ成功して、ヤンマテウスから2度ほどチャンスが生じます(ボックス内で仕掛けて倒されたのが1回と、右クロスを宮市がボレーシュート→菅野がビッグセーブ)。

  • これはコンサが↓の配置で、この日は組み合わせ上、右FWになる武蔵がCBとGKを二度追いするのでGKポープには左側からプレッシャーがかかる。そしてこの日特に気合いが入っていた感じの右WB近藤が、マリノスの左SB渡邊にかなり突っ込む(このマッチアップは渡邊がうまく処理できずロストからコンサボールになるのは何度かあった)ので、マリノスはピッチの左側で出口を探すことが難しい状況だったのはあると思います。
  • コンサにとって勿体無いというか不完全な感じがするのは、松原に対する菅の対応を徹底できなかったことで、武蔵や近藤が追い込んでもここが空いているとボールを奪うことは難しくなります。
  • ただ菅は何をしていたかというと、ヤンマテウスと中村桐耶のマッチアップをサポートするためにあまり高い位置を取りすぎず、いつでも戻れるように準備していたように見えました。
  • 冒頭にも書きましたが、マリノスのチャンスはヤンマテウスがオープンになったシチュエーションから多くが発生していました。コンサは少なくともマリノスの中で誰が危険な選手かは理解していたと思います。しかし対面が中村桐耶しかこの状況で選択肢がないこと、そしてその中村桐耶が、彼にしてはかなり自重気味ではあったと思いますが、試合を通じてヤンマテウスとの距離感がいまいちで、ヤンマテウスにつくのか岡村のカバーのためにヤンマテウスから離れるのかが不明瞭なことも多く、マリノスは右サイドに展開すれば簡単にウイングが前を向けるシチュエーションを作れていました。

  • 特に前半の途中から、マリノスはアンデルソンロペスが下がってポストプレー、前に出ていく役割はウイングのヤンマテウスと宮市、という役割分担が濃くなって、岡村と中村桐耶はそれぞれの対面の選手を見なくてはならないシチュエーションがより明確になります。
  • ここでも中村桐耶1人ではヤンマテウスを見ることは難しく、菅のサポートが必要で、それはチームとして織り込み済みならいいのですが、基本的には1v1で止める前提のチームになっているはずなので、全体最適が図られているかというと微妙だなと感じました。
  • なお宮市とヤンマテウスの比較では、宮市はよりスペースが必要なタイプで大外に張ってからスタートが多く、かつプレースピードが一定なのもあって、髙尾としては割と対処しやすいタイプだったとは思います。

  • これ以外もコンサはマリノスに対して守備での頑張りというか、全体的にプレスバックをして完全な1v1を作らせない意識は強かったと思います。
  • 特にマリノスがサイドチェンジをした時に、ファーサイドに必ずWBの近藤や菅がスペースを埋める、もしくは戻ってくるようにしていたので、マリノスとしてはサイドチェンジをするとボールサイドの密集から逃れてスペースができるように思えるけど、実際はコンサがマリノスのウイングを1v2の数的優位で守ることができる。かつそのウイングに対するサポートが、この速い展開だとマリノスのSBやインサイドハーフは追いつけないのもあって、サイドチェンジからの展開ではコンサは守り切ることができていたと思います。

  • 他には具体的なシチュエーションを整理して挙げるのは少し難しいのですけど、前線の武蔵や小林もセカンドボールや、自分の守っている”列”をマリノスが越えた際のプレスバックをいつも以上に頑張っていたと思います。それは戦術的にどうする、という意思疎通があったのか、よくいう”球際”の頑張りなのかは断言できないですが、チームとして全体最適を図っている感じがしないので後者なのかもしれません。

選手主導では全体最適に欠ける:

  • コンサがボールを持っている時の話をすると、髙尾のコメントにあるように、自陣でボールを保持した早い段階からロングフィードを使う、というのを意識していたようです。つまりいつもとそんなにやるとこは変わらないけど、いつもはボールをもう少し持ちたいけどできないから蹴っているとするなら、この日は最初からボールは捨てる思惑だったのかなと思います。

  • 実際にロングボールを蹴る機会は多かったと思います。よくいう「角度をつけたボールを蹴るのが有効」ということなのか、それとも単に中央でボールを持てないだけなのかはなんとも言い難いですが、左右のDFまたは低めのウイングバックが対角の選手またはスペースに蹴るいつものパターンを多用していました。
  • が、それは「マリノスの高めのDFの背後を取る」という攻撃だったと言えるのか。高いDFの背後を取るならロングボールはそのDF背後に蹴る発想になるけど、コンサは斜めに蹴ってファーサイドのWBのところにこぼれるのが多かったですし、そもそもDF背後を取りたいなら後方から50mのキックを蹴るだけではなくて、より短い距離でスルーパスを狙うとかそうしたプレーの方が効果的だったかもしれません。


  • コンサの枠内シュートや惜しい攻撃(枠内付近にシュートが飛んだもの)は相変わらず武蔵の潰れるプレーが多く、例えば前半の左から斜めのボールを武蔵がエドゥアルドと渡邊の間でバックヘッドで逸らして、背後からフリーの近藤がダイレクトシュート…なんかは展開で、武蔵が体を張ってかつボールを味方に活かしたことで、より軽量級の選手が前を向ける、というもの。
  • 結局ここでも、武蔵が背後を取るというより潰れ役にならないとコンサはシュートすらろくに撃てないのは相変わらずだったと思います。

  • もう一つ気になったのは、ロングボールを多用する割には、駒井が普段以上にボールに寄る、後方に下がってプレーすることが多かった点。
  • 駒井が長いフィードが得意という感じもしませんし、それによってどこかで相手のpressingのズレを生むとかそういう狙いもあまり感じませんし、結局ロングフィードを蹴るとそのいくつかは跳ね返されてピッチ中央に転がってくるけど、その際に誰も中央にいないことの問題点の方がフォーカスされていたと思います。

雑感

  • 先に述べたプレスバックを皆で頑張っていた点もそうなのですが、「ボールに寄ってボールタッチを増やす」、「たくさん走ってpressingやプレスバックを頑張る」といった、とにかくなんらかプレーに関与するという頻度主義?なのか、量的にこれまで以上に多くのものを出そうとするという姿勢は非常に感じました(これを選手主導で決めているとするなら、駒井が重視してそうな感覚だなと勝手に思っていて、チーム内における影響力を考慮しても”軍師”が選手にいるとするなら駒井じゃないかと勝手に予想します)。

  • ただその駒井のハンドでPKを献上したのは象徴的かもしれませんし、PK以外にもロングボールを蹴る戦術とチグハグ感があったのもそうですし、結局選手主導で決めるしても選手は全体を見てバランスよく最適解を考えるというのはどうしても難しく部分最適っぽくなりがちですし、そうした部分最適で解決できる程度の戦いならいいのですが、よそのチームには全体最適を図る監督なりコーチなりスカウティングの担当者なりが機能していると考えると、この方法で今後もやっていけるかは不透明だと言えるでしょう。

  • コンサの負けパターンというか、コンサの場合は相手に崩されて失点して負けるとかシュートが入らなくて負けるというより、まず相手を崩そうとしてコンサの側から大胆に動いてバランスを崩して失点する、というパターンの方が圧倒的に多い(杉谷拳士氏のYouTubeで馬場と中村桐耶が「DFが後ろに残っているとミシャは前に行け!と言う」と語っていたのは典型でしょうか)。
  • ですのでコンサの方が勝手に崩れなければ、とりあえずロースコアで試合時間を経過させて僅差の戦いに持ち込むこと自体はできると思いますし、そのために皆でプレスバックを頑張る、詳細は選手が適宜決めながらやる、というのは、監督は変えません!と宣言した現状では、一番マシな落とし所なのかもしれません。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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