2019年10月4日金曜日

プレビュー:2019年10月4日(金)明治安田生命J1リーグ第28節 ガンバ大阪vs北海道コンサドーレ札幌 ~宮本さんへ まだ間に合います~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 北海道コンサドーレ札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)

 出場停止明けのジェイ、武蔵が戻り、今シーズンの主要なメンバーが並ぶ布陣に戻るはずだ。中盤の左は前節先発の深井から再び荒野、アンデルソン ロペスはチャナティップらを欠くルヴァンカップに向けて温存か。

1.2 ガンバ大阪


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)※特になし
*(負傷等で出場微妙)DF菅沼(右足負傷?)

IN(夏マーケットでの加入)MFマルケル スサエタ(アスレティック・ビルバオから完全移籍)
MF井手口(リーズ・ユナイテッドから完全移籍)
MF鈴木(川崎フロンターレから期限付き移籍)
FWパトリック(サンフレッチェ広島から期限付き移籍)
FW宇佐美(アウクスブルクから完全移籍)
FW高木(レノファ山口FCから完全移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)DF米倉(JEFユナイテッド千葉へ期限付き移籍)
DFオ ジェソク(FC東京へ完全移籍)
MF田中(大分トリニータへ完全移籍)
MF今野(ジュビロ磐田へ完全移籍)
MF高(レノファ山口FCへ育成型期限付き移籍)
MF食野(マンチェスター・シティへ完全移籍)
MF藤本(京都サンガF.C.へ期限付き移籍)
FWファン ウィジョ(FCジロンダン・ボルドーへ完全移籍)
FW中村(FCトウウェンテへ期限付き移籍)

 5月の前回対戦時は3バックだったが、公式戦ここ4試合は4バック。そのうちルヴァンカップではリーグ戦首位のFC東京をアウェイゴールで上回ったが、前節はアウェイの大阪ダービーで完敗を喫している。16位の鳥栖とは勝ち点差3。
 ミシャチームに対しては3バック(守備時5バック)に戻してくると考えるのが妥当だ。”3連戦の初戦”で試しておくことで、続くルヴァンカップの2試合でも使えるか目処が立つ。16位の鳥栖とは勝ち点差3で、今週は非公開練習だったことも考えると、何らか動いてくるだろう。
 ただ、遠藤、宇佐美、井手口といったメンバーに簡単に見切りをつけるとは考えにくい。特に中盤センターは、遠藤と矢島の入れ替えはありだとしても、井手口に代わる選手はいない。逆に選択肢が比較的豊富な2列目は、ダービーで初先発し孤軍奮闘していたスサエタがどこかのポジションに収まるだろう。トップはターゲットになれるパトリックを予想する。

2.今期の対戦のおさらい

2019年5月25日(土)明治安田生命J1リーグ第13節 北海道コンサドーレ札幌vsガンバ大阪 ~いいとこどりの難しさ~

 ガンバは1-3-1-4-2のシステムでアンカーに矢島、右インサイドハーフに高江、右DFに高尾、左WBに福田と(ガンバ的には)フレッシュなメンバーが並んだ。札幌は矢島対策でチャナティップをトップ下、武蔵とルーカス(ジェイは負傷明けでベンチスタート、アンロペは負傷離脱中)の2トップに近い布陣で中盤の枚数を合わせる。
 ガンバは2トップ(アデミウソン、ファン ウィジョ)の突破力を活かすため自陣に引いてのロングカウンター狙い。札幌はガンバによってサイドにボールを誘導されながらも攻め急がずに左右にボールを振りチャンスを待つ。ミシャは「札幌に来てからのベストゲームの一つ」というが、ボール保持による試合のコントロールはできても5バックのガンバを崩せるクオリティには欠けた。ラスト15分でジェイ投入も実らず、膠着状態で引き分け。


3.戦術面の一言メモ

3.1 北海道コンサドーレ札幌

※全面的に見直し。
コンセプト5トップで攻めて5バックで守る。相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持(自陣)1-4-1-5や1-5-0-5の形からサイドのDFが持ち上がってシャドーやトップに縦パスを狙う。
ボール保持(敵陣)引いて受けるチャナティップに預けての打開。フィニッシュは右の白井の仕掛けから。
ボール非保持(敵陣)「ボールを取り上げたいチーム」との対戦を除いてはハーフウェーライン付近まで撤退。
ボール非保持(自陣)1-5-2-3でセットしてマンマーク基調で守る。最終ラインはなるべくスライドせず5枚を残しておく。
ネガティブトランジション前線の3選手はなるべく下がらず即時奪回に切り替え。後ろはすぐに戻って人を捕まえる。
ポジティブトランジション自陣で奪った時はトップ(ジェイ、アンデルソン ロペス)、シャドーのチャナティップを探して預けて速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドのターゲット狙いが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他memo同数で守る3バック相手なら対人に強い1トップ2シャドーがターゲットで質的優位を活かす。ギャップのできやすい4バック相手ならWBへのサイドチェンジを狙う傾向が強い。

3.2 ガンバ大阪


コンセプト中央に人を集めてコンビネーションでの打開を図る。
ボール保持(自陣)後ろ方向への中盤選手のポジション移動で後方に人を増やしてボール保持。中央で受ける選手への縦パス。圧力を受けるとシンプルにパトリックにフィードで回避もあるが、基本は人を動かす(中央に集める)ためにボールを保持したい。
ボール保持(敵陣)中央に人を集めてのコンビネーション発動。または、必ず「右利きのカットイン役」がいるので左からの仕掛け。
ボール非保持(敵陣)ここ4試合は1-4-4-2。それ以前は3バックの1-3-1-4-2。最終ラインは中程度の高さで極端には引かないが、基本的に待ちの守備。前線からのプレスはあっても散発的。相手が1列目を越えたところで井手口のアタック(オリジナルポジションからかなり動く)が目立つ。
ボール非保持(自陣)2列目はブロック形成よりも、早いタイミングで動いて侵入してきた選手を捕まえる。よってスペースができやすく、最終ラインも連動して速めに捕まえる意識が強い。
ネガティブトランジション中央で失ったらまずは即時奪回を狙うが、そこまで強度は強くない。
ポジティブトランジション前残りの2トップとの呼吸が合えば速攻を狙う。無理なら作り直し。
セットプレー攻撃キッカーは宇佐美、遠藤。
セットプレー守備コーナーキックではゾーン主体の守備。
その他memoこのメンバーなら、基本的には動きの量よりもボールを持った時の質で勝負している(あまり走りたくなさそう)。

4.想定されるゲームプラン

4.1 北海道コンサドーレ札幌


 捨てていい試合はないが、どちらかというとカップ戦の方に”気持ちのプライオリティ”はあるかもしれない(気持ちはあるが、主力を3~4人抜かれてしまう)。何か秘策があるなら、”2戦目”以降にとっておくだろう。いつも通り、5トップで攻めて5トップで守るサッカーで臨むが、不要な消耗は避けたいとも思っているはずだ。

4.2 ガンバ大阪


 とりあえず5バックにはするとして、ガンバのメンバーではハイプレスは難しい。よって、引きたいというより現実的にはまず引くしかない。

5.想定される試合展開とポイント

5.1 邪悪な荒野


 正直なところガンバが[1-3-4-2-1]採用だとしたら、あまり書くことがない。ミシャチームvs相手がミラーの[1-3-4-2-1]は幾度となく見てきた構図だ。
 それでも一応整理しておくと、5バック同士で膠着しそうな時の札幌の突破口は左サイド。チャナティップが引いて福森が前に出ていくパターンだ。
ミラーの[1-3-4-2-1]相手には左サイドで人を動かすことが多い

 ガンバのメンバーをあてはめて考えると、ポイントになりそうなのはまず井手口とチャナティップのマッチアップ。少なくとも2年前までは、別名無邪気じゃない荒野こと井手口は「人に食いつかせたら日本一」。今はこの2人のパワーバランスはどうか。ベストイレブンのチャナティップは井手口相手でも十分にやれるだろう。

 この2人のデュエルの勝敗と関係なく、確実に言えることは、井手口は本来の持ち場…中盤の底をかなり離れる振る舞いをこの試合でも見せるはずだ。守備範囲が広く対人に自信がある井手口は射程距離内の選手、またはボールに寄っていく傾向が強い。チャナティップのように、離れていく選手は知らんぷりせず確実に迎撃に出ていくだろう。このスペースを札幌は狙えるか。
引いて受けるチャナティップから始まる ガンバは恐らく井手口が付く

 恐らく5バックのチーム相手への常套手段となっている、ジェイへの放り込みはこの試合でもビルドアップの手段として積極的に使っていくはず。ジェイが収めたボールを、チャナティップ以外の選手がサポートしたい。武蔵を2トップ気味にするか、内側でプレーできる中野を左サイドで起用するのも理屈の上では有効そうだ。

 反対サイドのシャドー周辺のマッチアップについて。武蔵を遠藤が守るのは無理。となると、CBのキム ヨングォンは常に前への意識を強めに求められる。金が前に出て潰せるならいいが、例えば武蔵がジェイとのコンビネーションで入れ替わって金の背後に飛び出せばビッグチャンス。
CB金が前に出て守るしかない


 なので本来札幌相手にはあまり前に出て守らない方がいい。5月の対戦は、こうした理由もあってボールを持たない時は引いていたガンバだったが、恐らくこのメンバーでは引いても守れない。札幌は左右どちらかで必ずスペースを享受するだろう。

5.2 泳がせる選択肢もあり


 本来は、非公開練習でシステムを変えてくるとなるとその挙動は予想しづらい。しかしガンバの主力メンバーが出るとしたら、その選手特性から、何をしてくるかはある程度予想がつくところがある。
 前線の選手は基本的にボールサイドに寄ってくる。右なら右、中央なら中央で、かなり被ったポジションを取っていることもある。例えば倉田は左サイドに流れて仕掛けるが、オーバーラップしてくる藤春はすぐ背面を走っている。そうしたポジショニングには無頓着というか、複数選手が近い距離を取って個人技爆発orコンビネーション発動待ちなのがいつものパターンだ。
 ビルドアップは右サイドの方がやりやすそうで、となると右サイドには下のように人が寄ってくることが予想される。但し遠藤が完全に関与しない状態になることは多くなく、図では示せていないがフリーマンとしてピッチを漂う展開になるだろう。
ガンバ右サイドで展開するとして札幌も人を捕まえるがスサエタ-福森はどうなるか

 注目はスサエタ。大阪ダービーでは早々に2点のビハインドを負う厳しい展開の中、初めは味方に「サイドに振ってセレッソのブロックを動かせ」と指示していた。が、それが上手くいかないとなると自身が中央からサイドに飛び出したり、引いてボールキープから高尾のオーバーラップを促したり、倉田や宇佐美のように中央に入ってミドルシュートを狙ったり(⇒これが一番ガンバらしいプレーだ。アジャストしようとしているのかもしれない)、多岐にわたる仕事をこなしていた。
 スサエタが右シャドーで出場するなら、対面に、妙なタイミングで攻撃参加する少しお腹が出ているDFがいることには開始直後に気付くだろう。その時、スサエタは福森の背後を狙うのか、それとも泳がせておいて、他の選手に仕留めさせるのか。初戦は沈黙しているのか。いずれにせよ、意図を持って札幌を操ろうとしてくるだろう。

用語集・この記事内での用語定義


1列目守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。
質的優位局所的にマッチアップしている選手同士の力関係が、いずれかの選手の方が優位な状態。攻撃側の選手(の、ある部分)が守備側の選手(の、攻撃側に対応する部分)を力関係で上回っている時は、その選手にボールが入るだけでチャンスや得点機会になることもあるので、そうしたシチュエーションの説明に使われることが多い。「優位」は相対的な話だが、野々村社長がよく言う「クオリティがある」はこれに近いと思ってよい。
ex.ゴール前でファーサイドにクロスボールが入った時に、クロスに合わせる攻撃側がジェイで、守備側は背が低く競り合いに弱い選手なら「(攻撃側:ジェイの)高さの質的優位」になる。
→「ミスマッチ」も参照。
守備の基準守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。
数的優位局所的にマッチアップが合っておらず、いずれかのチームの方が人数が多い状態。守備側が「1人で2人を見る」状況は負担が大きいのでチャンスになりやすい。ただし人の人数や数的関係だけで説明できないシチュエーションも多分にあるので注意。
チャネル選手と選手の間。よく使われるのはCBとSBの間のチャネルなど、攻撃側が狙っていきたいスペースの説明に使われることが多い。
トランジションボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。
偽SBサイドバックでありながら、その古典的な役割(サイドに位置取りし、攻守ともにサイドでプレーする)にとどまらない役割を担うSB。具体的には中央に位置取りし、中盤の選手として振る舞い、攻撃の組み立てや被カウンター時の中央での守備等に関与する。
ハーフスペースピッチを縦に5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。
ビルドアップオランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。
ビルドアップの出口後方からパスを繋いで行うビルドアップに対し、相手は簡単に前進させないようハイプレス等で抵抗する。
この時、ハイプレスを最初から最後まで行うとリスキー(後ろで守る選手がいなくなる)ので、ハイプレスは人数やエリアを限定して行われることが多いが、ビルドアップを行っているチームが、ハイプレスを突破してボールを落ち着かせる状態を作れる場所や選手を「ビルドアップの出口」と言っている。
ブロックボール非保持側のチームが、「4-4-2」、「4-4」、「5-3」などの配置で、選手が2列・3列になった状態で並び、相手に簡単に突破されないよう守備の体勢を整えている状態を「ブロックを作る」などと言う。
マッチアップ敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。
マンマークボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。
対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。
ミスマッチ「足が速い選手と遅い選手」など、マッチアップしている選手同士の関係が互角に近い状態とはいえないこと。

1 件のコメント: