2019年6月28日金曜日

プレビュー:2019年6月30日(日)明治安田生命J1リーグ第17節 ベガルタ仙台vs北海道コンサドーレ札幌 ~泣く子も黙る3トップ?~

1.予想スターティングメンバ―

予想スターティングメンバー

1.1 札幌

×(非帯同、欠場確定)MF金子(ユニバーシアード日本代表招集)
MF高嶺(ユニバーシアード日本代表招集)
×(負傷等で欠場濃厚)MF中野(6/1広島戦での左ヒラメ筋肉離れ)
*(負傷等で出場微妙)MF宮澤(5/25ガンバ戦での右膝軟骨損傷)
MFチャナティップ(6/22鳥栖戦での負傷)

 左サイドは日本代表・菅が森保監督の下、地球の反対側でベンチに座り続ける素晴らしい経験をしてチームに戻ってきた。休養も十分なので、南米仕込みの活躍を期待したいところだ。また今週24日に駒井、福森が全体練習に完全合流しており、出場に支障がなさそうなコンディションにまで回復してきた。
 一方、チャナティップは鳥栖戦での途中交代(恐らく筋肉系のトラブルだろう)の影響で欠場が見込まれる。選手特性的に、チャナティップの穴にそのままフィットする代役はいない。今週、主力組の中盤セントラルMFに入って練習したと伝えられている駒井が、唯一、近い役割を担えそうだが病み上がりで過大な期待はできない。ルヴァンカップでもメンバー入りしなかったので即スタメンはないだろう。
 チャナティップ欠場により、欠ける役割を考えると、シャドーに1人はMFタイプの選手を起用したほうが良いかもしれない。候補としてルーカスを挙げている。ただ、チームのパワーバランス的な部分を考えると、ロペスはそろそろスタメンに復帰してもおかしくない。よって武蔵・ジェイとの重量級3トップを予想するが、泣く子も黙りそうだが選手特性が被り気味な3トップがどう作用するか。

1.2 仙台

×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)GK関(5/13FC東京戦:下顎骨骨折…全治3ヶ月)
DF金正也(5/18磐田戦:左大腿直筋肉離れ…全治6週間)
FWジャーメイン(6/5手術:左足舟状骨疲労骨折・左足足関節内遊離体…全治3ヶ月)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

 第8節まで1勝1分6敗と苦しんだ。4バックの1-4-4-2に変更した第9節以降は5勝3敗と巻き返し、ここ3試合は名古屋、松本、FC東京に3連勝と調子を取り戻しており、更にホーム・ユアスタでは直近公式戦8試合で7勝1分と無類の強さを誇る。
 メンバーはGKはシント・トロイデン移籍が濃厚と報じられるシュミット。両サイドバックは不動。CBは平岡が軸で、ここ3試合は恐らく相手の強力なFW対策等もあり、シマオ マテが重用され、結果を出している。セントラルMFはプレーメーカーの松下と守備的な選手との組み合わせ。左MFは前節決勝ゴールの関口、右は吉尾か。前線は空中戦のターゲットとなる長沢が欠かせない。ハモン ロペスは3連勝中はスタメン起用されておらず、前節もジョーカー起用で結果を残した。水曜日のルヴァンカップにも先発しているので、恐らくこの試合もベンチスタートだろう。

※この記事は各メディアによる予想スタメン発表後に更新される可能性があります。


2.戦術面の一言メモ

2.1 札幌

青字が前節との更新・変更点。
コンセプトより多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持(自陣)ビルドアップはミシャ式4-1-5から、高い位置に張るWBを出口と位置してサイドチェンジ等でボールを届ける。キム ミンテがスタメンに復帰して以降は後方の役割が固定気味で、宮澤がアンカー、深井が中央左。福森のフリーロールも自重気味。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。そうでなければ無理せずロングフィード。
ボール保持(敵陣)サイドアタック主体。押し込んでから仕掛けるのは右のルーカス。菅は極力シンプルにクロス供給に専念か、相手SBを押し込んで福森をフリーにする役割。ルーカスのアイソレーションを活かすためにチャナティップ、福森からのサイドチェンジを狙うが、チャナティップは消されがち。
ルーカスはコーナーフラッグ付近で自由を与えられているが、福森はファーサイド狙いを徹底する。
ボール非保持(敵陣)相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。
ボール非保持(自陣)基本は5-2-3で、前3枚はポジティブトランジション用に残しておく。ゴール前からCBを動かさないことを重視。なるべくマンマーク関係を維持する。
ネガティブトランジション中盤2枚は即時奪回を目指す。ビルドアップが成功するとともにポジションと役割がCBからセントラルMFのそれになる。CBは2枚、時に1枚で相手のFWと同数。裏はGKク ソンユンの極端な前進守備で何とかさせようとの考えがここ数試合は強くなっている。
ポジティブトランジションシャドーが裏に飛び出しての速攻がファーストチョイス。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。

2.2 仙台

コンセプトトランジションの攻防を制し、決定機につなげる。
ボール保持(自陣)配置は1-4-2-2-2。前線のターゲットへのロングボールで前進し、中央に密集するMFがセカンドボール回収。
ボール保持(敵陣)中央の松下の縦パス、または右サイドからの展開が主体。
中央は長沢がピン止めして2列目MFが飛び出す。
右サイドは石原が流れてスペーシング、蜂須賀のパスから右SHがSB-CBチャネル侵入。
ボール非保持(敵陣)1-4-4-2のミドルブロックでセット。試合序盤は撤退守備が多い。2トップの脇は、右は右SHが前進守備、左は2トップのスライドで守る。左SHは最終ラインに下がって大外をカバー。
試合後半は人を捕まえるハイプレスも見せるが、全般に人意識の傾向が強く、守備開始位置が高いとオープンな展開になりがち。
ボール非保持(自陣)ゴール前では5バック気味にシフトして人を捕まえる。中央3枚はオリジナルポジションからあまり動かない(=右SHは前残り気味)。
ネガティブトランジション即時奪回の意識が強い。1-4-2-2-2で攻撃し、前線に人数をかける(予防的ポジションはCB2人しか用意されない)ためか、中央エリアでプレスバックでの対応が多い。2トップの切り替えが迅速。CBはまず相手FWへの楔のパスを潰す。
ポジティブトランジション自陣撤退からのトランジションは、右肩上がりの陣形を利用して右SHに展開からの速攻を狙う。中央でのトランジションの場合は両サイドバックがサイドのスペースを突く。
セットプレー攻撃キッカーは左足は永戸。CKは左右とも永戸から。
セットプレー守備CKではほぼ純粋なゾーン守備。GKの前に1人(松下)、ゴールエリア付近に5+3人で2列を組む。


3.想定されるゲームプラン

3.1 札幌


 いつも通り「最大人数で攻撃して最大人数で守る」。但し、アウェイでの試合、トランジションからの展開に強い仙台相手ということで、下手に攻めるよりも、ある程度ボールを持たせてカウンターを狙う展開は用意しているはず。理想は「先行し、引いてカウンター」だろう。

3.2 仙台


 ここ数試合と同様、前半はコンパクトなブロックで守り、トランジション・セカンドボール奪取から速い攻撃を狙う。後半はオープンな展開から、ハモン ロペスの投入で仕留めると予想する。なお札幌が前節対戦した鳥栖も1-4-4-2だが、仙台のそれは、より人への意識が強い。札幌のフリーの選手を作らせないよう、積極的に陣形を崩して守る。耐える戦いを念頭に置いて望んでくるだろう。

4.想定される試合展開とポイント

4.1 仙台のコンセプト


 シーズン途中に2016シーズン以来の4バックに戻した仙台。これまでの戦いぶりを見ていると、「トランジションの改善」にその理由が潜んでいるように思える。
 3バックのシステムでプレーしていた2017-2018シーズンにかけての仙台は、相手がどのような形であっても5レーンに選手を配してのアタックを志向していた。今のチームは、人を中央に配する傾向が強い。その目的は、中央での局面的なデュエルを制してボールをゲインし、自陣からの前進や、敵陣でのフィニッシュに繋げるプレーを狙っていくことにあるとみられる。中央に人を厚く配することで、トランジションの局面で関われる選手を増やして相手を上回ろうとする振る舞いが感じられる。

 例えば、自陣からのビルドアップ時の陣形は1-4-2-2-2。サイドは両SBが幅をとり、SHは中央に絞る。前進のパターンとしてはSB経由で前進を図るものもあるが、ターゲットの長沢に当ててセカンドボールを狙うパターンも頻繁にみられる。この時に中央に絞っているSH、2人のセントラルMFをセカンドボール争奪戦に投じると、シンプルに数で上回りやすい。
(仙台のコンセプト)ダイレクトなビルドアップから中央でセカンドボール争奪戦を制する

 サイドバックの役割は、仕掛けも担うが、中央で獲得したボールの”避難先”としての性質が強い。サイドバックが常に上がりっぱなしでガンガン仕掛けるスタイルだと負担が大きそうだ。その辺は中央と使い分けることでエネルギー管理が感じられる。なお、クロスは左右共にファーサイドに蹴ることが多く、一発で合わせるというよりもDFの視界リセットからの二次攻撃を狙っているように思える。

4.2 速さは十分だが精度はあるか(仙台ボール保持時の展開)


 敵陣でボールをゲインした後の攻撃の中心は松下。特にシュートに直結する縦パスは、その供給源が殆ど松下のように見える。中央で最短距離で攻撃するか、サイドを迂回するかの判断は松下が握っている。富田または椎橋との役割分担はわかりやすいので、単純にマッチアップする選手の対人守備能力が試される。
松下から攻撃が始まる

 先に示したように、今の仙台はトランジションがポイントになっている。最短距離で縦に展開して攻める場合を例にとると、縦パスが下のようなシチュエーションでカットされてトランジションが発生したとする。この時、前線のFWと2列目の選手は非常に近い距離感でプレーするので、ボール周辺に密集している場合が多い(石原は裏抜けでスペースメイキングをするので、あまりボールに寄らない)。
縦パスに2列目MFが反応して中央コンビネーション発動を狙う

 トランジションから相手が攻撃しようとすると、仙台はFWと2列目の切り替えが速く、ボールホルダーにすぐに圧力をかける。特に2列目の選手のプレスバックが多いのが特徴で、中央で展開されている限りはかなりの頑張りを見せる。
 また、ここ数試合はCBにシマオ マテが起用されているが、シマオは自陣に撤退しての守備だけでなく、トランジション時にもアグレッシブな対応を見せる。このようなシチュエーションなら、FWの選手(ジェイ)に入ったボールを前進守備で潰すことを得意としている。
トランジションが発生すると即時奪回プレス発動

 札幌はチャナティップがいない、前線を武蔵、ロペス、ジェイで組む前提で考えると、恐らく守備は1-5-2-3でセット。武蔵、ロペスと蜂須賀、永戸が牽制し合う状況が予想される。シマオはジェイで精いっぱいと考えると、武蔵が走る状況は仙台にとって脅威になることは間違いない。焦点は、チャナティップがいない中でいかに精度のあるボールを供給できるか。出し手はロペスか、中央から荒野か。(毎試合書いている気もするが)仙台のMF陣に包囲されそうな荒野の振る舞いはポイントになりそう。ただし松下は左右にとらわれず、というか右でプレーすることも少なくない。

4.3 チャナティップロールの行方


 札幌ボール保持時のキーマンはアンデルソン ロペスと予想する。というのは、チャナティップが担っている役割(ボールを収めてサイドチェンジ)を代替できるのは、シャドーの候補者のうち能力的にロペスしかいない。駒井が万全なら右か左に入れるが、チャナティップのようなDFを背負うだけのクオリティはない。
 ロペスとルーカスがいる札幌右サイドの攻防が、少なからずポイントになりそうだ。ここで、仙台の特徴的な守り方を頭に入れて展開を考える。撤退して守る時の仙台は、1-4-4-2でブロックをセットし、左右非対称な対応をする。右サイドはSHが2トップの脇をカバー。一方左SHは、SBの外側を見る決まり事になっていて、特に3バック⇔5バック変換系のチーム相手では、最初からSBの隣にいるなどかなり警戒を強めている。左SHがいなくなる関係もあり、2トップは左にスライドして守る傾向が強い。
仙台の1-4-4-2守備の動き

 仙台のこの狙いは、どちらかのサイドに誘導して狩るというより、右SHを前に残しておいてカウンター(ポジティブトランジション)で有効活用したいという意図を感じる。また自陣ゴール前では、長身のGKシュミットを擁するので、滞空時間のあるクロスには耐性がある。

 この傾向から、仙台の左SHで先発が予想される関口は、恐らくルーカスの監視に労力を割くことになるはず。そうなると気になるのがルーカスの隣でプレーするシャドー、アンデルソン ロペスへの仙台の対応。関口が最終ラインに下がると、仙台のMFの残り3人は左にスライドするでもなくそのままオリジナルポジションにステイする傾向がある。そうなればロペスへのパスコースは閉じられない。容易にボールが入れば、アンロペの突進を永戸や平岡が止めなくてはならない。
 現実的には仙台がアンロペにボールを入れ放題にするとは思えないので、ここは2列目のスライドを徹底する、FWを1列下げるなど、何らか策を売ってくるだろう。
いつもどおり大外を左がケアするとロペスが解放される

 クロス爆撃の際は、シマオ マテを無力化したい。左クロスならシマオはニアを守る。シマオを越えれば、ファーサイドは永戸と関口でミスマッチを狙えるし、DFではな関口のクロス対応は何度か怪しい場面を招いている。シュミットの存在を考慮すると、菅に(よりキックの質が高い)福森が加勢する必要がありそうだが、その場合は背後(仙台のSHが狙う)が気になるところ(ないものねだりだが、相手DFを横切る方向にドリブルができ、逆足クロスでファーを狙える中野がいれば仙台には脅威になっただろう)。
 逆に右サイドなら、ルーカスが関口に仕掛けて速いクロスで勝負。左に比べるとこちらの方がリスクが小さそうだ。そう考えると、仙台としては札幌の右・仙台の左サイドの攻防にはあまり持ち込みたくない。関口が下がる、いつものやり方とは違う対応が必要になるかもしれない。
左クロスに福森が加勢すると背後は仙台SHの狙いどころに

用語集・この記事上での用語定義

1列目守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。
守備の基準守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。
デュエルボール保持者とそれを守る選手との1対1の攻防。地上戦、空中戦、守備技術、スピード、駆け引きetcあらゆる要素を含む。
トランジションボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。
ビルドアップオランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。
ビルドアップの出口後方からパスを繋いで行うビルドアップに対し、相手は簡単に前進させないようハイプレス等で抵抗する。
この時、ハイプレスを最初から最後まで行うとリスキー(後ろで守る選手がいなくなる)ので、ハイプレスは人数やエリアを限定して行われることが多いが、ビルドアップを行っているチームが、ハイプレスを突破してボールを落ち着かせる状態を作れる場所や選手を「ビルドアップの出口」と言っている。
プレスバックFWやMFの選手が自陣に戻りながら、ボールを持った相手選手に対し、味方と挟み込むなどしてプレッシャーをかけること。
マンマークボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。
対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。

2 件のコメント:

  1. 今日のは仙台の話と札幌の話が混ざっていてちょっと難しいです

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    1. 片方の視点だけだと文句言われますw わかりやすいようにもう少し整理します。

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