スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスタメンは3-4-1-2、GKク・ソンユン、DF菊地、増川、福森、MF石井、深井、上里、堀米、荒野、FW都倉、ヘイス。サブメンバーはGK金山、DF上原、櫛引、MF河合、前貴之、FW内村、ジュリーニョ。都倉が累積警告による出場停止明けで復帰。進藤は今週の練習で右太ももの痛みを訴えて別メニュー調整していたようで、代役として新加入の菊地直哉がデビュー。ここ2試合スタメンの前寛之は膝を痛めて前日の練習を休み、深井の相方は上里。股関節痛で別メニュー調整が続いていた小野は7/6から全体練習に合流していたがベンチ入りせず。前線は前節1ゴール1アシストの荒野が引き続きスタメンで、ジュリーニョと内村が今季初めてサブに並んでいる。
セレッソ大阪のスタメンは4-2-3-1、GKキム・ジンヒョン、DF松田、田中、山下、丸橋、MF山口、山村、清原、ソウザ、杉本、FWリカルド サントス。サブメンバーはGK丹野、DF藤本、MF関口、丸岡、FW田代、玉田、澤上。6月末にハノーファーから復帰し、前節7/3のロアッソ熊本戦に先発した山口蛍が引き続きスタメンで出場。2列目のレギュラーだったブルーノ メネゲウは熊本戦の後、中国超級リーグの長春亜泰に移籍が確定。柿谷は6/8の長崎戦で全治4週間の負傷を負った影響により欠場。前節は山村とソウザのダブルボランチだったが、この試合はソウザがトップ下、山村がスタメン復帰。故障者等が出たことにより清原や関口、丸岡といった、これまで塩漬けにされてきた戦力を活用する状況になってきた模様である。
0.前半戦の対戦を振り返る+α
札幌ドームで4/23に開催された第9節の対戦では、札幌が終盤に途中出場の稲本が挙げた得点を守りきり1-0で勝利。この試合まで無敗だったセレッソに土をつけたこの試合が、振り返れば前半戦のターニングポイントだったと言えるかもしれない。札幌は続く徳島、金沢戦に勝利して首位に浮上。前半戦を3敗で乗り切り首位で後半戦を迎える。セレッソは続く京都のほか、山口、讃岐戦を落とすなどこの試合を境にポイントを少しずつ落としていく。それでも前半戦はラスト5試合を5連勝で締め、2位で折り返しているのは流石である。
札幌、セレッソ共に故障者などを除くと、第9節のスタメンがほぼ、その後の試合でも採用されているメンバー。ただ札幌は菊地、セレッソは山口蛍の加入という上積みがあり、加えてセレッソは柿谷とブルーノ メネゲウの離脱で空席となった2列目に入る清原は好調を維持している。
第9節の試合展開を端的に評すと、セレッソは前線も最終ラインも個人能力は高いが、攻守ともに組織・チーム戦術としては未整備な印象。対する札幌はFWが攻めた後のトランジション等に問題があり、前半から互いに間延びして殴り合うも決定打を欠いた展開となる。耐え続けた札幌が稲本の一撃で接戦をものにすることができたが、どちらに転んでもおかしくない試合だった。
セレッソは、攻撃では崩しの部分を個人の即興やアイディアに依存している。そのため技術もアイディアもJ2では抜けている柿谷のコンディションは試合を大きく左右すると思われる。守備は一応4-4-2でセットするが、FWの役割が整理されていないこと等の問題を抱えていて、戦術的にはJ2でも中程度といった印象を受ける。それでも第21節まで失点20(リーグ6位)と数字上は大きく破綻していないのは、対戦相手が警戒し、ゲームの主導権を握れるだけの前線のタレントと、DF山下(札幌戦では都倉に昨年も今年も完勝している)、GKキム・ジンヒョンといった選手の"個"の力によるところが大きい。
1.前半
1.1 兄>弟(高精度フィード)
試合序盤から、ホームのセレッソ、アウェイの札幌ともに後方からパスを繋いでいくことは避け、DFもしくはGKからのロングボールを蹴り合う展開となる。
セレッソのキム ジンヒョンから開始するプレー、ゴールキックやGKがボールを保持している時のマッチアップは以下の図のような形になっていて、後方にCBの2人に加えてボランチの山口と山村、最大4名が中央にポジショニングする。札幌は前の3人が高い位置をとり、可能ならばここで前節の横浜FC戦のようにハメてボールを奪いたいとの意図がある。もっとも、セレッソは後ろ4枚で何かシステマチックにボールを動かせるというわけではないのだが、それでも4人いるので必ず1人は空いてしまいハメることは難しい。
それ以上に札幌にとって問題となるのが、セレッソのGK、キム ジンヒョンが高精度のロングフィードを持っていて、下の図のように札幌の3枚が中央でハメようとするとマッチアップ上サイドでSBの丸橋や松田が浮く。そしてその浮いているところにキム ジンヒョンは一発でパスを通すことができるので、札幌1列目の守備を無力化して中盤まで一気にボールを運ばれてしまう。
札幌は前3人での前プレを仕掛けたいが枚数的に難しい 前3人が中央に寄るとサイドバックを見れなくなる GKから空いている選手に一発で通せるロングフィード |
1.2 前回対戦の復習
1)外⇒中のボール運び
札幌の最前線の守備を回避してからセレッソが狙っていた形は、高い位置に押し上げたサイドバックから、中に絞った2列目の選手に斜めのパスを当てていく形。前回対戦でもセレッソは同様の形で札幌の2ボランチ脇のスペースを使おうと試みており、想定内といえば想定内であるが、序盤の札幌はこの形にうまく対応できない場面が目立った。特に右サイドバックの松田を起点として札幌の左サイドから仕掛けていて、堀米や福森はこの対応に追われる時間が多くなっていった。
この時札幌は3トップが中央を見ているので、セレッソのサイドバックに対応するのは、5バック化している最終ラインから前に突っ込んでくるウイングバックの石井と堀米しかいない。セレッソの両サイドバックは、石井や堀米が距離を詰めてくるまで時間を得られるので、ここからボランチ脇にポジショニングする清原や杉本に通すことはたやすい。
もしくは、中央にいる4枚のうち前でプレーするボランチの選手、主に山口が持った時に札幌の前3枚がうまくコースを切れていないと、山口や山村はそれを見逃さずに縦パスを入れるだけのクオリティは持っている。序盤の札幌は、セレッソの後方部隊に対してどのようにアプローチしていいかわからず後手に回るという点では16節の千葉戦と似た状況に陥っていたともいえる。
サイドバックが上がりサイドハーフは中に絞る 対面のウイングバックが出てくる前に斜めのパス または、中央が空けばボランチから直接縦パスが出る |
寄せが甘いと山口は簡単に前を向いて縦パスが出せる |
2)外⇒中⇒外でのサイド突破
またサイドバックにボールを届けてからのパターンとしては、サイドハーフが中絞りから再びサイドに流れてウイングバックの裏を使うというパターンもある。これにより札幌のストッパーとセレッソのサイドハーフで1vs1、中央は4バック化した札幌のDFのうち3枚しかいないという形を作ることができるが、右サイドでこのパターンを仕掛けると、後述する通り福森の食いつき癖により不用意に飛び出した福森が裏を取るサイドハーフに対応できず、カバーリングのため中央の増川がさらに釣りだされるという状況も起こっていた。
SBにつけてからのパターン②:札幌WBの背後にSHを走らせる 特に右サイド(札幌の左:福森サイド)を狙っていた印象 |
事例:7:17 松田の清原への縦パスから清原と福森が1vs1の状況 松田がオーバーラップ、クロスにソウザが後方から飛び込む決定機 最終ラインに4枚しかおらず枚数が足りていない (菊地と石井がスライドすべきだが、しても大外が空いてしまう) |
1.3 やはり我慢できない福森
開始早々、3:02頃~の局面で札幌はいきなり左サイドを突破されている。これは上記の形でサイドから斜めのパスが入り、ボランチ脇を使われたところで、前節の記事でも指摘したが福森はこのボランチ脇で受けられるプレーを非常に嫌がり、明らかにDFのテリトリーではないゾーンまで飛び出して潰そうとする傾向がある。このプレーのように、ウイングバックが前に出て札幌の最終ラインが4バック化している状態で福森が飛び出すと最終ラインは3枚しか残っていない状態になる。
事例:CB田中から右SB松田へのパスが通る 札幌は3トップが中央を切るポジショニング |
松田に渡ると堀米が最後方から一気に出てくるが 距離が長いので松田に時間を与えてしまう ヘイスは中央を意識していたので 松田に渡った時に十分距離を詰められていない |
清原に渡った時には、サイドに寄せてきたボランチ脇(手前側)が大きく空き 福森が食いつくと裏も空く |
結果、福森が出たことで生じたサイドのスペースにソウザ→山村と繋がれて、山村からクロスを上げられている。
ソウザから福森の背後のスペースを駆けあがる山村へ |
1.4 前後の繋ぎ役
立ち上がりからセレッソは行けると判断した時にボールをどんどん縦に入れてくるので、試合はプレースピードが速く、ボールが落ち着かないアップテンポな、悪い言えばやや一本調子な展開となる。柿谷を欠くセレッソの選手が敵陣でボールを持つと高頻度で探していたのは、トップ下に入るソウザであった。本来ボランチの選手ということで、大熊監督のトップ下起用の意図は前線に飛び出したりするプレーかと予想していたが、ソウザは札幌守備のライン間で受けて捌いたり、セレッソのビルドアップが詰まりかけたところでサポートしたりと縦横無尽に幅広く動いてボールに触り、リンクマンとしての役割を果たしていた。
MF-DFのライン間や低い位置に降りて攻撃をリンクさせる |
1.5 マークされる福森と、菊地が示す"J1標準"
1)福森を空けないセレッソ
序盤から飛ばしてくるセレッソに対して札幌は何をしていたかというと、まず最後方からのビルドアップ時に普段と異なるシチュエーションに直面している。それはこれまで札幌のビルドアップで主要な役割を果たしてきた福森を消すために、セレッソが福森へのパスコースを寸断する守り方をしてきたことで、具体的には増川が持った際に、増川から見て福森へのコースを切るようにリカルド サントスが追い込みをする。増川が右利きで、体の右側でボールを扱うこともありセレッソのこのプレーは基本的にうまくいき、札幌は福森からの展開を阻害されてしまう。
2)菊池が示すJ1標準
では増川から託された菊地がどうしていたかというと、菊地に渡ると高い位置で構えているセレッソの左SH、杉本が出てくる。ここで足元に自信のないDFや、パスコースが作れないDF(櫛引など)であれば簡単に前方に蹴ってボールをイーブンにしてしまうところだが、菊地はサイドのスペースを使ってドリブルで杉本を回避しつつ、近くの石井やボランチの選手にボールを繋ぐというビルドアッププレーができている。菊地には福森のような突出したロングキックはないが、多少のプレッシャーならばものともしない運ぶドリブルの技術と正確なパスを兼ね備えていて、これまでの札幌のDFでは(福森を除いて)存在しなかったビルドアップ能力を持った選手だと感じさせる。
おそらく連携面などはまだまだ(練習に2、3日しか参加していない)にもかかわらずこれだけの能力を示したことで、これまで左の福森に偏ってきたビルドアップも右に入る菊地を使った右からの展開が多くなることが予想される。
セレッソはSHを高い位置でセットし、増川→福森の展開を阻害して右に誘導 菊地に杉本が寄せてくるが、スペースにドリブルで運びつつ回避できる |
プレスを受けていて、近くの味方へのコースが消されている状況でも 慌てることなく繋ぐ能力がある |
1.6 左を意識させてからの石井の攻撃参加
札幌のボール保持時にセレッソのSHが高い位置をとっているということは、その背後~最終ラインの間のスペースが空き気味になる。そのため、この位置にポジショニングする都倉やヘイスにボールを入れることさえできれば、多少精度を欠いたりトラップが乱れたりしても、セレッソの選手が寄せてくるまでに時間を得ることができる。札幌で後方からFWにパスを通せる選手といえば、この試合では高い位置からプレッシャーを受けていたもののやはり第一人者は福森で、都倉が左サイドでこのスペースにいることに気付いた福森は、試合途中から何度かここへの縦パスを狙っていた。右サイドでは、ヘイスにこうしたボールが入ることはあまりなかった。
そして下の図のように福森→都倉への、やや強引なパスが成功すると、セレッソは中盤からFWが前がかりになっていてまたボールサイドに寄っているため、応対できる選手は最終ラインの4枚しかいない。そのため札幌から見て右サイドにスペースがあいており、ここも受けてから時間的余裕のある状況で都倉が石井を使うことができる。
強引に縦に通すとFWは時間を得られる 前がかりのセレッソは後方にスペースを与えており石井が駆け上がる |
19:20頃に迎えた札幌の決定機…石井の右クロスにヘイスが左足で合わせた局面を見ても、やはりセレッソは札幌の左サイド:堀米に福森が後方支援してクロスの砲台が2人になることを反対側のサイドよりも警戒していたようである。この時は深井のインターセプトから始まった攻撃で、深井と上里が両方左サイドにいるので福森は登場しないが、それでも札幌左サイドでの展開に対し、サイドの選手2人と両ボランチが引っ張られていて、結果右の石井はヘイスからのパスがずれても余裕をもってクロスを上げることができている。
競り合ったボールが中央にこぼれてヘイスが拾い、 右の石井に展開 セレッソは人数をかけていて中央~逆サイドが手薄 |
石井からヘイスへのクロス:左足で合わせるもキムジンヒョンがファインセーブ 下がって捌いて(一度消えて)からピンポイントでゴール前に入ってくるヘイスの能力 |
そのほか、この日は左のボランチに上里が入ったことも、結果的に左サイドで溜めを作ることになり、セレッソが札幌の左サイドに寄りやすくなり、反対サイドの石井が比較的オープンになりやすい状況でもあったことや、常に逆サイドを視界に入れてサイドチェンジを狙っているヘイスの存在も大きい。
1.7 「伸びたうどん状態」リバイバル
30分を過ぎたころになると、札幌ドームでの前回対戦のように両チームが間延びし、オープンな展開になってくる。原因としては、まずセレッソは先述のように、最終ラインから長いボールを中心に展開する札幌のボールの出どころを抑えたいので、FW+トップ下に加え両サイドハーフが高い位置をとるが、そこから組織的に追い込んだりということがないので、ただ高い位置で待ち構えているような状態になる。
少しずつ札幌の前線に精度を持ったボールが入るようになるが、この時札幌は都倉を左、ヘイスを右、更には荒野をトップ下で固定しており、ジュリーニョがスタメンの試合のような流動性を封印していた。これはおそらくポジションを固定することで、守備面の役割…特に荒野が中央を担当するという点を明確化する狙いが大きかったと考えられる。実際、札幌の前線の守備は先述のように、セレッソの中央4枚に対してやや辻褄が合わなくなっている部分もみられたが、そこを荒野がボランチと最終ラインの両方を追いかけまわすことで何とか破たんせずに済んでいた。また攻撃面では、都倉を左に置くことで、セレッソの右CB、田中裕介と競らせ、競り合いに強い山下とのマッチアップを回避する狙いもあったと予想される。
一方そんな札幌も序盤から顕在化しつつあった、前からの守備がイマイチはまらないという問題がこの時間になっても解決されていない。前3人が中央とサイドのうち、荒野を中心に中央をまず潰していく選択をとっていたが、セレッソはCB+ボランチの4枚に加えキム ジンヒョンに戻してからのロングフィードもあるので、荒野らの頑張りは空転に終わることも多かった。
もう1点あげると、この試合のセレッソはリスタートがかなり速い。やはり5-2-3で守備をする札幌の弱点として、前3枚が戻り切らないうちに運んでしまえば手薄になるという点はチームとして把握されていたのだろうと考えられる。
1.8 兄を上回る弟のビッグセーブ連発とアクシデントの発生
セレッソは前半に3本の枠内シュートを放っていて、その3つ(開始早々のコーナーキックにファーサイドで山村のヘディング、15分、左サイドの丸橋からのクロスのこぼれ球に走り込んだソウザの強烈なミドルシュート、30分過ぎの杉本のドリブルからのミドルシュート)とも簡単なシュートではなかったが札幌のGKク・ソンユンが見事なセーブで札幌を救う。またシュートではないが、32分の左サイドからのフリーキックにも長身を滑らせて飛び込み防いでいるが、このプレーでセレッソの田中と接触があり、ク・ソンユンは前半途中でピッチを後にしてしまった。
2.後半
2.1 暑さもあり硬直化
後半頭くらいから顕著になってきたのが、セレッソの攻撃・札幌の守備時の対応で、セレッソのサイドバックに対して札幌はかなり高い位置までウイングバックを前進させ、サイドで明確な1vs1の形を作り、下の図のような4-3に近い守備陣形で対応することになる。これをやると両サイドが非常に空きやすくなるが、セレッソはサイドハーフの清原と杉本が中央に絞ってくるので、札幌が空けたサイドのエリアはデッドスペースになっている。よってウイングバックが簡単に負けなければサイドは抑えられるので、前3人を前方での仕事に専念させられるメリットが生じる。
ウイングバックが高い位置まで出て4-3状態で対応 |
前3人を「専念」と言えば聞こえはよいが、要するに仕事をする・守備に割く人数が減っており、札幌の守備は前半よりも手薄になっている。しかし札幌もセレッソも後半開始から10分頃には運動量が落ちていて、セレッソも札幌の守備陣形を見て、選手が動いて形を変え、ギャップを作るといった変化が徐々にできなくなっており、後半開始~60分頃まではやや膠着した展開となる。
セレッソも、ソウザが守備時に最前線に出て4-4-2の陣形を形成する時間帯が減り、中盤に吸収された4-5-1に近い対応をするようになっていく。これもやはり暑さ等による運動量の低下が影響していると考えられる。セレッソは最前線がリカルド サントス1枚になったことで、札幌は最終ライン~ボランチのエリアでのボール保持が容易になる。
2.2 切り札の投入
札幌は59分に石井→内村に交代。石井を下げた理由は、恐らく前半早い段階で警告を受けており、カードトラブルを警戒したこと、また前線で荒野の運動量やヘイスのポストプレーが効いていて下げる選手のチョイスが難しかったこと等だろうと考えられる。
59分~ 石井→内村 |
そして内村投入直後、下の写真60:52頃~の局面が、結果的にこの試合の札幌の最大のチャンスであり、またこのJ2首位攻防戦の戦術的なレベルを象徴しているような局面でもある。札幌右サイドからのスローイン、セレッソのFWによる中央の守備はこの時間帯かなりルーズになっていて、札幌は上里から福森にサイドチェンジすると、セレッソは福森に対し、杉本と山村の二人が一気に飛び込んでくる。すると彼らの背後には写真のように広大なスペースができ、堀米に預けてインナーラップしてきた福森に簡単に使われてしまう。結果的には福森のパスを受け、高速ターンで山下をかわした内村が左足でニアにシュートを打つが、キム ジンヒョンがセーブ。傍目に見ると、福森の攻撃性能や両GKのセービング、ソウザやヘイスのゲームメイクなど、選手個人で目につくプレーは確かにあるが、それらが生じている背景には、このプレーに象徴されるような戦術的なルーズさにも一因がある。
スペース管理を無視して2人で飛び込んでくる |
福森がインナーラップから持ち上がって内村へラストパス |
2.3 前がかりの交代が生んだ躓き
札幌は内村を投入して攻勢を強めるつもりが、なかなかボールを前線にいい形で届けることができずにいた。これは前線3枚の構成が内村+都倉+ヘイスとなり、荒野が右サイドにシフトしたことで、札幌はバイタルエリアのギャップで受ける選手がヘイスしかいなくなってしまうことが大きい。この問題は内村と都倉を併用した試合で何度か起こっていて、両選手とも特に後半の勝負どころになると、最前線に張り付いて勝負しようとする傾向があるので、相手の守備がルーズになりやすい時間帯で効果的に攻めることができない原因となっている。
受ける選手がヘイスしかいなく単調になってしまう |
2.4 リズムを作るベテラン
セレッソは69分にソウザ→玉田に交代し、玉田はそのままトップ下に入る。この交代直後の時間帯は再び流れはセレッソに傾く。70分以降の時間帯、札幌もかなり運動量が落ちてきており、5-2-3でセットする守備はボランチ脇がかなり空くようになってきている(ヘイスがプレスバックしてなんとかしようとするケースが多かった)。この状況で玉田はボランチ脇に生じるスペースで受けてシンプルに捌くプレーを繰り返すことで、セレッソのボール保持時間を増やしていく。ソウザの場合は中央だけでなくサイド、低い位置とより広範に動くが、玉田が中央の仕事に注力したことで、特に右サイドでは清原が外、玉田が中という分担が明確になり、攻撃の横幅ができてきたことで札幌としては対応が難しくなっている。
かなりボランチ脇にスペースができやすくなる 玉田はシンプルに受けてはたくを繰り返す |
2.5 終盤の展開
80分頃にキム ジンヒョンがセービングの際に足を攣る局面を挟んで、札幌は深井→上原、セレッソはリカルド サントス→田代の交代を行う。札幌は上原が右サイド、荒野がボランチに回る。前貴之ではなく上原だったのは、1点を争うゲームでセットプレーでの攻防を補強する意図が大きかったと思われる。
セレッソの最後の交代カードは86分の清原→関口。ただ、終盤のセレッソは田代を投入したことでほぼパワープレー主体に切り替えており、あまり関口がサイドで勝負するような局面は作られなかった。6分と長いロスタイムでも何も起こらず、0-0のスコアレスドローでで試合終了。
最終布陣 |
セレッソ大阪 0-0 北海道コンサドーレ札幌
マッチデータ
3.雑感
一番の収穫は、菊地が攻守ともに錆びついていないことが確認できたことで、最終ラインに右の菊地、左の福森と揃ったときのビルドアップ能力はJ1水準と言ってよい。守備面では持ち前の鋭い読みが健在で、低い位置でセットして迎撃する守備戦術ともマッチする。進藤や櫛引といった若い選手の出場機会が減ってしまうことは一面残念だが、右CBのポジションが明確に攻守ともアップグレードされたことは、首位でターンし各チームからマークされる後半戦を戦ううえで非常に大きい。後方で的確に支援してくれる選手の存在は、石井やマセードの負担も軽減される。
ただ、中盤センターが前寛之も離脱したことで、いよいよ危機的な状況になっている。上里も少しずつコンディションが上がっているようだが、深井は無理をさせられず、サブは前貴之か、中原か、はたまた河合か…といった状況で、故障者が戻ってくるまでは四方田監督も考えを改めなくてはならないかもしれない。
読んだー(`・ω・´)シャキーン にゃんむるですー。
返信削除菊地ありがとう。ヘイスありがとう。俺は中原が見たいんじゃー。
5-2-3の腰のスペースは、みんな狙ってくるのう。毎試合そこに飛び込んだ福森の後ろにできたスペースを使われてバタバタするけど、増川と菊地いるし多分どうにかしてくれるじゃろ。たぶん・・・。
でも相手が不用意に作ったスペースつかって内村にパスだした福森はえらいです。内村のシュート、ニアだって分かった瞬間入ったと思ったんだけどなー。ジンヒョンはやっぱりすごいわー。ソンユンもあれぐらいすごいGKになってくれ。特にキック精度はもっと上げないとねー。
でもこのゲームの一番ありがとうは、ぶっちぎりでソンユンでした。ありがとう(・∀・)ノ