スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-1-2、GK金山隼樹、DF菊地直哉、増川隆洋、福森晃斗、MFマセード、荒野拓馬、上里一将、堀米悠斗、ジュリーニョ、FW都倉賢、内村圭宏。サブメンバーはGK阿波加俊太、DF櫛引一紀、MF河合竜二、小野伸二、神田夢実、中原彰吾、深井一希。ヘイスは右ふくらはぎ痛で別メニュー調整しており召集外。深井は疲労を考慮してベンチスタート。石井は累積警告で出場停止の一方で、小野が10試合ぶりにサブメンバーに復帰。ボランチは遂に1~4番手のうち3選手が離脱、深井もスタメンを外れ5番手の上里と荒野。ここにきて復調中の上里は非常に頼もしい。ただ直近4試合で1ゴール2アシストの荒野がボランチに回ると、前線の駒が一気に手薄になるのが気がかりではある。
FC岐阜のスターティングメンバーは4-1-4-1、GK高木義成 、DF野垣内俊、阿部正紀、田代雅也、磐瀬剛、MF田森大己、風間宏矢、苅部隆太郎、高地系治、レオミネイロ、FW鈴木ブルーノ。サブメンバーはGKポープ ウィリアム、DF鈴木潤、岡根直哉、MF水野泰輔、青木翼、FW田中達也、瀧谷亮。ラモス瑠偉監督の解任、吉田恵新監督の就任でメンバー、フォーメーションは読めないところだったが、FWを1枚削り中盤にアンカー(フォアリベロ)として田森を置いた4-1-4-1を採用。メンバーについては右SBを益山に変えて野垣内、FWに鈴木ブルーノ、といった選手を起用している他はこれまで起用されてきた選手が並んでいる印象。
0.前回対戦を振り返る+α
前回対戦は第2節、3/6に岐阜メモリアルセンター長良川競技場での対戦。札幌が都倉のハットトリックで4-0と完勝している。率直に言って札幌が良かったというより、岐阜は攻守ともにかなり問題を抱えているなといった印象であった。
その後、岐阜は7/22にラモス瑠偉監督を解任。第24節までを7勝3分14敗、最下位と勝ち点2差の19位という数字からも致し方なかったと言えるかもしれない。最後はクラブワーストタイの5連敗での解任となってしまった。後任にはコーチの吉田恵氏を内部昇格の形で充てている。
吉田監督はサガン鳥栖のコーチを務めていた2014年シーズンにもシーズン途中の内部昇格…尹晶煥監督の後を継ぐ形でシーズン途中に監督に就任している。この時は首位に立っていた鳥栖が尹晶煥監督を電撃解任、リーグ戦16試合を残した段階で引き継ぎ、7勝2分7敗、勝ち点23を獲得、と数字上はまずまずのように見えるが、実情は尹晶煥時代の堅守速攻型サッカーから遅効を採り入れた戦術へのシフトを試みたものの機能せず、途中で再び堅守速攻、つまりは尹晶煥スタイルに戻してシーズン終盤を乗り切ったという内容であった。もっとも、次のシーズンに鳥栖を率いた森下"モリゲ"仁志氏の成績や、鳥栖の予算規模等から考えると特段悪いという成績でもないかもしれない。
1.前半
1.1 岐阜の4-1-4-1
注目された吉田新監督の選択は、鈴木ブルーノをトップに、田森を最終ラインの前に置いた4-1-4-1。そして序盤のプレーを観察していると、岐阜のこの4-1-4-1の運用コンセプトは、前回対戦同様、最終ラインがマンマーク気味に札幌のアタッカーを捕まえるというもので、所謂J2で4バックを採用しているチームに多い「なんちゃって4-4-2ゾーン守備」をアンカースタイルに改良したものである。
岐阜の最終ラインがマンマーク(ボールの位置ではなく相手選手を基準としている)であるわかりやすい局面が以下の2枚の写真で示す局面。上の写真、5:20は札幌が堀米から福森へボールを戻すところで、一見するとこの時は岐阜は4枚のMFがラインを組み、ボールに近い風間が福森に出て、他の選手はボールに近いエリアをディアゴナーレで守っているように見える。
堀米から福森に戻したところ 一見4-4+アンカー1のように見えるが… |
が、次の写真5:29は福森から増川、増川から上里、上里から再び堀米、と札幌がボールを後方→前方と動かした局面。この時、上里がサイドの堀米に縦パスで展開した時、札幌は最終ラインから都倉と内村が縦パスを受ける動き…頂点の位置から降りてくると、岐阜は対応するDFも一緒に着いてくる。そのときジュリーニョは最前線で張っているので、岐阜の最終ライン4枚のうち2枚はジュリーニョをケアする位置…画面外の深い位置にいる。この画像の時点でラインディフェンスの体を成していない。
最終的にどうなっていたかというと、堀米がドリブルで切り込んでマイナス方向の上里にパス。上里が受けたとき、岐阜はとにかくゴール前の選手を捕まえることに必死で、スペースを与えてもおかまいなしという状況。このように岐阜の守備はまず人を捕まえる、次にボールが出たところを追いかけていく…とゾーン守備とはかけ離れた対応をしており、札幌の選手が動けば動くほど釣られてゴール前にスペースを与えてくれる。
以下にも人に食いつく岐阜の対応の事例をもう1つ示す。
もう1点、これは岐阜だけではないが4-1-4-1の難しさ・問題点として、最前線に1人しかいないため、相手の最終ライン~ボランチを非常に自由にさせやすいという点がある。どれだけハードワークできる選手であれども、1人で守備をしろというのは無理で、岐阜の1トップ、鈴木にできる仕事は非常に限られてくる。これはマンジュッキッチだろうと全盛期の中山元気だろうとほぼ同じで、MFのラインの前に陣取り、ど真ん中のコースを阻害することくらいしかできない。そのため札幌のビルドアップ部隊であるDFとボランチの選手は殆どノープレッシャーでハーフウェーラインを超えるエリアまでボールを運ぶことができる。
言い換えると、札幌ボールになれば札幌は必ずバイタル付近までボールを運ぶことができ、岐阜は必ず自陣ペナルティエリア付近まで撤退しなくてはならない。そのため必然と札幌が押し込む試合展開となる。
余談だが4-1-4-1については「アンカー回りが空きやすいという欠点がある」というフレーズで語られることが多く、またその理由として「アンカーの活動域を確保しようとすると、2ライン間が開いてしまう」とする言説をたまに見るが、個人的には4-1-4-1でアンカー回りが空く要因は、「最前線の守備の弱さを2列目がカバーしようとして前に食いついてしまいがちだから」だと考える。
一方の攻撃面では、典型的な「ボールを持たされると困るチーム」という印象で、札幌にブロックを築かれると打つ手がほとんど最前線への放り込みくらいしかない。前任監督が「アイディアを発揮していこう」系のラモス瑠偉氏で、チームを引き継いで3日の吉田新監督にはどうしようもないのだが。そのため、できることは鈴木に放り込んで、レオミネイロと風間が頑張ってサポートする…といった程度である。
よって岐阜が狙っているのは、札幌を前がかりにした状態で繰り出すカウンターで、最前線に配した、速攻で仕事ができる鈴木、左サイドの弾丸アタッカー・レオミネイロに前を向いた状態で仕掛けさせ、2人もしくは1人でフィニッシュまで持っていきたいところ。
またレオミネイロは時折、中央に寄り鈴木ブルーノと近い位置で2トップのような状態になる時間帯もあった。チームオーダーなのか、個人の判断なのかわからないが、いずれにせよ5バックの札幌相手に1トップだけで何とかしろ、というのは厳しいので、ある程度割り切って(守備を捨てて)リスク覚悟で行ける時にチャレンジしていこうとの思惑は推し量ることができる。
岐阜の前半最大の決定機は16分、右サイドからボールを運び、中央に侵入したレオミネイロが札幌のボランチ脇のスペースで鈴木とワンツー、長い距離をサポートしてきた風間にラストパスを通す。風間のシュートは金山の正面でセーブされるものの、やはりワントップの鈴木をレオミネイロと風間がサポートする形で決定機を演出している。
しかし耐えてカウンターという岐阜のゲームプランは開始6分であっさりと崩れる。先の5:20頃からの一連のオフェンスで、札幌は右のマセードから中央の上里、荒野と中央に展開すると、荒野は降りてきたジュリーニョに縦パス。ジュリーニョはフリックして都倉に繋ぐと、マンマーク気味に対応してきたDFの裏をとり都倉からのダイレクトでのラストパスを受ける。このフリックからのラストパスで完全にGKと1vs1、左足でコースを狙ったシュートを決めて札幌が先制。
写真で見ると、岐阜は最終ラインは4バックにアンカーの田森が吸収されていて枚数は足りているように見えるが、先述の通り4-4のラインの前を明け渡している影響で、札幌のボランチ・上里と荒野による前後左右へのパスは全くケアできない。
前後左右に岐阜の選手が完全に振り回され、中央の荒野に渡った時は荒野はドフリーで前を向いて受けられ、ギャップに降りてきたジュリーニョにいとも簡単に縦パスを通せてしまう。
そして岐阜はやはり最終ラインで各DFがマンマーク、都倉とジュリーニョの対応の他、右SBの野垣内は大外の堀米を向いて、また外よりの位置におりカバーリング付加、また中央にはアンカーの田森とCBの田代がいるが、この2人も内村を意識した位置におり対応できない。枚数は揃っていてもユニットとして機能しなければ、都倉やジュリーニョの個人技で各個撃破できるので攻略は容易い。
札幌は岐阜の4-1-4-1の1トップ周囲で、荒野と上里が終始フリーでボールを受けることができ、まさに自由を謳歌する状態になっている。特に上里が敵陣のセンターサークルを超えたあたりのゾーンでフリーで持つと、ワンステップから繰り出す左足の30~40m級のパスを持っているので、マセードと堀米のウイングバックはサイドの深い位置で張って待っていればパスが供給される状態になる。2トップに加えてウイングバックもウイング然として張られると、岐阜はズルズルと陣形が下がらざるを得なくなる。
正直なところ河合のような選手ならある程度、自由にさせても良いが、ロングキックだけならJ2でも屈指の上里をハーフウェーライン以降でこれだけフリーにすると、それはもはや守備をする気がないようなものと言っても過言ではない。言い返せば、ボランチの位置から高い位置に張るウイングにロングパスを届けることができるという能力は、それだけで価値がある。現状の札幌の戦術では運動量等の問題でボランチの4~5番手に甘んじている上里だが、"諦められない"魅力を持つ選手だなと改めて思い知らせてくれる。
上里からサイドのマセード、堀米へと展開してからのパターンで目についたのは、特に堀米が見せていた、トレーラーゾーンに向かって切り込んでいくプレー。岐阜は4バックがマンマークで札幌のFWとWBを見るので、SBが出た時に空くトレーラーゾーン、ペナルティエリア角のケアは中盤の選手によるプレスバックしかないのだが、中盤の選手も大体ボールか近くの人を見ているので実質全くの手つかず状態。堀米が野垣内との1on1をドリブルで制するか、寄ってきたジュリーニョを使うなどして切り込みシュートまであと1歩、とうプレーが見られた。
岐阜から見て最前線では、札幌の3バック+2ボランチの5枚vs岐阜の1トップ(鈴木)の5vs1という状況。0-0のスコアならばこの状態を放置して、後方のブロックで跳ね返すという選択肢もあるが、ビハインドを負った岐阜は勝ち点を得るために、能動的にボールを奪い返さなくてはならなくなった。そのためには下の写真のように、札幌の5選手が作るパスコースを寸断する必要がある。これは当然鈴木だけでは無理で、中盤の選手が加勢しなくてはならないが、岐阜としてはこの時間から前に出ていくことは想定外の展開であり、前からのプレッシングをチームとして用意していない。
なんとなく札幌のパス回しのスピードが緩まって、「いけそうなとき」に数選手が即興的にボールを奪いに行くが、そうしたシステマチックではないやり方ではパスコースを複数作っている札幌からボールを奪うことは難しい。パスコースを限定させたうえでチームとして奪いどころを設定して挑まないと徒労に終わってしまう。
岐阜が上記の問題を修正できない間に札幌はFW陣がクオリティを発揮し、試合を決定づける。
前半24分、岐阜は直前のオフェンスでレオミネイロが足を痛めてピッチを出る。この時間帯、鈴木がレオミネイロのポジション=左MFにに入って耐えようとするが、4-1-4-0状態の岐阜に対し、札幌は中央から上里が4-4のライン間、やや右サイド寄りのジュリーニョへパス。ジュリーニョはアンカーの田森を背負って受けるが、鋭くターンして中央からミドルシュート。30m級のスーパーミドルが決まって追加点。
そして32分、またも上里の縦パスから、アンカー脇で受けたのは内村。フリックしたボールはジュリーニョがさらにフリックし、岐阜のDFラインの前で内村がリターンを受ける。中央から左に切り返しての鮮やかな左足ミドルシュートが決まって3-0。年に1回あるかの難易度の高いゴールを連発し、札幌ドームを沸かせる。
札幌は前半8本のシュート、うち枠内7本というスタッツだったが、攻めまくっていたという印象はない。ノープレシャーの最終ラインを起点としてゆっくりとボールを回す→ボランチを経由してサイドに展開、仕掛けが無理なら一度戻す→岐阜のブロックが勝手に動いてくれるので縦パスが通る→中央から崩すか無理なら戻す…といった展開が多く、ボールを保持している時間の多くは自陣~センターサークル付近でのパス回しである。
後半頭から岐阜はシステムを変更している。岐阜はマンマークで対応するのでシステムが見分けにくいが、確かなことは、レオミネイロが守備を免除され最前線に鈴木と共に残るようになっており、中盤はどうやら風間、田森、高地の3枚で構成している。よって最終ラインに苅部が加わった、5バック気味の5-3-2又は3-5-2となっている。なおこの変更のうち、レオミネイロが最前線に残る陣形は前半35分頃、スコアが3-0となった直後にも見られていたが、この時はレオミネイロが空けた左サイドはガラ空きになっていたので、恐らく個人の判断だったと考えられる。
また、52分には鈴木→瀧谷に交代。鈴木は前半から1トップで張っていたため消耗が激しく、フィジカルの強いフレッシュな選手に代えることでエネルギーを注入する。
この布陣変更により起きた変化としては、ビルドアップの局面においてまずCBが3枚になったことで、3人のDFがワイドに開いたポジションをとることができる。そしてサイドに開いた選手を起点にしてボールを運んでいくが、岐阜から見て右サイドでは阿部-都倉、野垣内-堀米、風間-福森と札幌はマーカーを用意する。ただ福森と堀米がそれぞれ釣りだされる格好となっており、背後にスペースができる。ここに瀧谷が走り込むことでボールを当て、起点にしていくプレーという一つの形が成立するようになっている。
図を見てわかるように、岐阜のこのオフェンスは左右非対称、やや右サイド偏重で行われる。左にはレオミネイロと高地がいるが、よりボールに多く触っていたのは、札幌のボランチ脇のスペースを狙う風間のほうであった。風間がここで受けると福森が潰しに来る前に素早く展開する。風間と高地はインサイドハーフとして左右で対のポジションであるが、風間がこうして間でのプレーに専念する一方、高地はやや引いてバランス取りに徹し、左サイドのボランチ脇のスペースはレオミネイロに使わせる。
右から仕掛ける理由は、風間の間で受ける才覚を活かす意図や、また対面する札幌のDF…特に福森の食いつき癖を利用することを意識していたと思われる。
守備面では、札幌のビルドアップに対し、最前線は2枚に増やしたことで、ある程度のプレッシャー(あまりユニットとしての機能性は見られないが、運動量は感じさせる)をかけることができるようになる。そしてボランチ2枚に対し、中盤の最大3枚の選手を当たらせることで、荒野や深井のプレーエリアを奪う。このようにアグレッシブに前に出る一方で、後方には5バック気味に選手を残すリスクマネジメントをしている。
55分にはこのアグレッシブな前線からの守備により、札幌側の陣地で荒野からボールを引っ掛け、ショートカウンターから最後は高地がシュートまで持ち込む場面を作っている。
システム変更の影響もあり、岐阜が何度かゴール前にボールを運ぶ局面を作るが、札幌は金山の好セーブもありスコアは動かない。62分、岐阜は風間→田中達也、札幌は上里→中原に交代。ボランチの経験がほとんどない中原の投入は、後半立ち上がりから15分を凌いだことで札幌ベンチとしてもほぼ勝負が決したと判断したと見てよいだろう。
中原が投入された時間帯は、札幌は3-0とリードしていることもあり前半に比べると間延びし、個々の対応…特に前線の選手の守備がだんだんとルーズになってきている状況で、3トップの守備が機能しないため、荒野・中原のコンビはむき出しにされることが多く、ボランチの選手にとっては難しい状況だったといえる。
岐阜は田中が入り前線は3トップ、2ボランチの5-2-3のような布陣に変更されている。3トップvs3バックということで各エリアで枚数が同数のほぼミラーとなり、対応する札幌のDFは若干の混乱が見られたものの、基本的にはやはり岐阜は各選手が単騎で向かってくる状態なので、想像を超える個の力を発揮されない限りは大きく破綻しないで守れていた。
中原については守備面での仕事が目立った。70分頃になると札幌FW陣…内村やジュリーニョのサボりが顕著になってきて、たとえば下の写真のように選手間が空き、縦パスのコースができたときに出て埋める動きや、
サボった時に空けてはいけない選手を潰しに行く動きなど、疲労もありルーズになってくる時間帯ではいろいろなケースがありその都度、判断を求められるが、積極的な守備で助けることができていたと思う。
スコアが動かないまま時間が経過し、余裕の出た札幌は段々と軽いプレー、リスクのあるプレーの選択や、エゴと言うと大袈裟かもしれないが、札幌ドームで観戦している息子の前でいいところを見せたいマセードがフリーの味方を無視して強引にシュートを撃つなど、0-0や1-0ならばまずチョイスしないようなプレーも見られるようになる。
ここで一つ取り上げるのは、71分に増川のパスがインターセプトされて岐阜のカウンター、レオミネイロの独走をペナルティエリア内で菊地がスライディングタックルで止めた局面。増川が最終ラインで持った時に、福森はかなり前の位置まで攻撃参加しており、増川の左前方、福森が本来いるべき位置には誰もいない。そのため増川には縦のジュリーニョしかパスコースがなく、相手としては非常に守りやすい状況になっている。
これまでの試合でも福森は余裕があるときや、前がかりになっているときにこうした極端なポジショニングを頻発している。それが偶に得点に繋がったりもしており、またサイズがあり正確なキックのある福森が前にいることは小さくはないメリットがもたらされるが、一方でビルドアップの段階で、福森や河合をサポートする役割を殆ど放棄することにもなっている。
通常DFをこれだけ高い位置に上げる場合、大抵はそのポジションにボランチの選手等が流れることでビルドアップのサポートと、奪われたときにリスクヘッジを設計していることが多いが、札幌ではそうした設計があまり感じられなく、福森が個人の判断で行きたいときに攻撃参加しているように見受けられる。
都倉と内村が下がってくると、(受け渡さずに)マーカーもついてくる |
最終的にどうなっていたかというと、堀米がドリブルで切り込んでマイナス方向の上里にパス。上里が受けたとき、岐阜はとにかくゴール前の選手を捕まえることに必死で、スペースを与えてもおかまいなしという状況。このように岐阜の守備はまず人を捕まえる、次にボールが出たところを追いかけていく…とゾーン守備とはかけ離れた対応をしており、札幌の選手が動けば動くほど釣られてゴール前にスペースを与えてくれる。
人は捕まえているが、広大なスペースを与えている |
以下にも人に食いつく岐阜の対応の事例をもう1つ示す。
先制後、7:30の局面 内村とジュリーニョがMFの前まで下がってくる |
下がってくる内村を捕まえるために4-4のラインを崩して前に出ると、背後ががら空きになる 菊地から赤線のパスが出れば内村が裏を取ってバイタルで前を向ける ※実際は菊地からパスが出ていない |
1.2 4-1-4-1の難しさ
もう1点、これは岐阜だけではないが4-1-4-1の難しさ・問題点として、最前線に1人しかいないため、相手の最終ライン~ボランチを非常に自由にさせやすいという点がある。どれだけハードワークできる選手であれども、1人で守備をしろというのは無理で、岐阜の1トップ、鈴木にできる仕事は非常に限られてくる。これはマンジュッキッチだろうと全盛期の中山元気だろうとほぼ同じで、MFのラインの前に陣取り、ど真ん中のコースを阻害することくらいしかできない。そのため札幌のビルドアップ部隊であるDFとボランチの選手は殆どノープレッシャーでハーフウェーラインを超えるエリアまでボールを運ぶことができる。
言い換えると、札幌ボールになれば札幌は必ずバイタル付近までボールを運ぶことができ、岐阜は必ず自陣ペナルティエリア付近まで撤退しなくてはならない。そのため必然と札幌が押し込む試合展開となる。
余談だが4-1-4-1については「アンカー回りが空きやすいという欠点がある」というフレーズで語られることが多く、またその理由として「アンカーの活動域を確保しようとすると、2ライン間が開いてしまう」とする言説をたまに見るが、個人的には4-1-4-1でアンカー回りが空く要因は、「最前線の守備の弱さを2列目がカバーしようとして前に食いついてしまいがちだから」だと考える。
1トップでは殆ど守備できないため札幌のDF~MFのゾーンはほぼ放置 MFがブロックを崩してケアするしかない |
1.3 ゲームプランはカウンターでの一撃
一方の攻撃面では、典型的な「ボールを持たされると困るチーム」という印象で、札幌にブロックを築かれると打つ手がほとんど最前線への放り込みくらいしかない。前任監督が「アイディアを発揮していこう」系のラモス瑠偉氏で、チームを引き継いで3日の吉田新監督にはどうしようもないのだが。そのため、できることは鈴木に放り込んで、レオミネイロと風間が頑張ってサポートする…といった程度である。
よって岐阜が狙っているのは、札幌を前がかりにした状態で繰り出すカウンターで、最前線に配した、速攻で仕事ができる鈴木、左サイドの弾丸アタッカー・レオミネイロに前を向いた状態で仕掛けさせ、2人もしくは1人でフィニッシュまで持っていきたいところ。
またレオミネイロは時折、中央に寄り鈴木ブルーノと近い位置で2トップのような状態になる時間帯もあった。チームオーダーなのか、個人の判断なのかわからないが、いずれにせよ5バックの札幌相手に1トップだけで何とかしろ、というのは厳しいので、ある程度割り切って(守備を捨てて)リスク覚悟で行ける時にチャレンジしていこうとの思惑は推し量ることができる。
ボールを持たされると困る ロングボールで早く攻める |
岐阜の前半最大の決定機は16分、右サイドからボールを運び、中央に侵入したレオミネイロが札幌のボランチ脇のスペースで鈴木とワンツー、長い距離をサポートしてきた風間にラストパスを通す。風間のシュートは金山の正面でセーブされるものの、やはりワントップの鈴木をレオミネイロと風間がサポートする形で決定機を演出している。
16:20頃 レオミネイロ、鈴木が絡み、レオミネイロのラストパスから風間がシュート |
1.4 崩壊必然だったゲームプラン
しかし耐えてカウンターという岐阜のゲームプランは開始6分であっさりと崩れる。先の5:20頃からの一連のオフェンスで、札幌は右のマセードから中央の上里、荒野と中央に展開すると、荒野は降りてきたジュリーニョに縦パス。ジュリーニョはフリックして都倉に繋ぐと、マンマーク気味に対応してきたDFの裏をとり都倉からのダイレクトでのラストパスを受ける。このフリックからのラストパスで完全にGKと1vs1、左足でコースを狙ったシュートを決めて札幌が先制。
写真で見ると、岐阜は最終ラインは4バックにアンカーの田森が吸収されていて枚数は足りているように見えるが、先述の通り4-4のラインの前を明け渡している影響で、札幌のボランチ・上里と荒野による前後左右へのパスは全くケアできない。
前後左右に岐阜の選手が完全に振り回され、中央の荒野に渡った時は荒野はドフリーで前を向いて受けられ、ギャップに降りてきたジュリーニョにいとも簡単に縦パスを通せてしまう。
そして岐阜はやはり最終ラインで各DFがマンマーク、都倉とジュリーニョの対応の他、右SBの野垣内は大外の堀米を向いて、また外よりの位置におりカバーリング付加、また中央にはアンカーの田森とCBの田代がいるが、この2人も内村を意識した位置におり対応できない。枚数は揃っていてもユニットとして機能しなければ、都倉やジュリーニョの個人技で各個撃破できるので攻略は容易い。
先制点の場面 枚数は足りておりジュリーニョ・都倉にマンマークで遅れて対応しているが 各個撃破体制ゆえにチャレンジ&カバーができていない |
1.5 諦められない左足
1)FW脇は使いたい放題
札幌は岐阜の4-1-4-1の1トップ周囲で、荒野と上里が終始フリーでボールを受けることができ、まさに自由を謳歌する状態になっている。特に上里が敵陣のセンターサークルを超えたあたりのゾーンでフリーで持つと、ワンステップから繰り出す左足の30~40m級のパスを持っているので、マセードと堀米のウイングバックはサイドの深い位置で張って待っていればパスが供給される状態になる。2トップに加えてウイングバックもウイング然として張られると、岐阜はズルズルと陣形が下がらざるを得なくなる。
2)フリーの上里はレフティモンスター
正直なところ河合のような選手ならある程度、自由にさせても良いが、ロングキックだけならJ2でも屈指の上里をハーフウェーライン以降でこれだけフリーにすると、それはもはや守備をする気がないようなものと言っても過言ではない。言い返せば、ボランチの位置から高い位置に張るウイングにロングパスを届けることができるという能力は、それだけで価値がある。現状の札幌の戦術では運動量等の問題でボランチの4~5番手に甘んじている上里だが、"諦められない"魅力を持つ選手だなと改めて思い知らせてくれる。
上里からサイドのマセード、堀米へと展開してからのパターンで目についたのは、特に堀米が見せていた、トレーラーゾーンに向かって切り込んでいくプレー。岐阜は4バックがマンマークで札幌のFWとWBを見るので、SBが出た時に空くトレーラーゾーン、ペナルティエリア角のケアは中盤の選手によるプレスバックしかないのだが、中盤の選手も大体ボールか近くの人を見ているので実質全くの手つかず状態。堀米が野垣内との1on1をドリブルで制するか、寄ってきたジュリーニョを使うなどして切り込みシュートまであと1歩、とうプレーが見られた。
上里のキック1発によるサイドへの展開から堀米のトレーラーゾーン攻略 |
1.6 奪いどころが作れない
岐阜から見て最前線では、札幌の3バック+2ボランチの5枚vs岐阜の1トップ(鈴木)の5vs1という状況。0-0のスコアならばこの状態を放置して、後方のブロックで跳ね返すという選択肢もあるが、ビハインドを負った岐阜は勝ち点を得るために、能動的にボールを奪い返さなくてはならなくなった。そのためには下の写真のように、札幌の5選手が作るパスコースを寸断する必要がある。これは当然鈴木だけでは無理で、中盤の選手が加勢しなくてはならないが、岐阜としてはこの時間から前に出ていくことは想定外の展開であり、前からのプレッシングをチームとして用意していない。
ビハインドを負った岐阜はボールを取り返す必要があるが 札幌の3バック+2ボランチの5枚vs岐阜の1トップ(鈴木)の5vs1では絶望的なので 中盤が加勢しなくてはならなくなる |
なんとなく札幌のパス回しのスピードが緩まって、「いけそうなとき」に数選手が即興的にボールを奪いに行くが、そうしたシステマチックではないやり方ではパスコースを複数作っている札幌からボールを奪うことは難しい。パスコースを限定させたうえでチームとして奪いどころを設定して挑まないと徒労に終わってしまう。
⑥高地が上里をチェックすると上里が福森にボールを下げる このときに「いけそうだ」と判断し風間が福森に当たるが、それにより背後にスペースを作っている 福森から荒野へのパスが出そうで「いけそうだ」と苅部が荒野に寄って行く |
荒野がダイレクトでスペースに降りてきた内村にフリック 内村-荒野-堀米のトライアングルができており札幌はパスの逃がしどころを作れている (全然「いけそう」ではない) |
1.7 クオリティを見せつける
岐阜が上記の問題を修正できない間に札幌はFW陣がクオリティを発揮し、試合を決定づける。
前半24分、岐阜は直前のオフェンスでレオミネイロが足を痛めてピッチを出る。この時間帯、鈴木がレオミネイロのポジション=左MFにに入って耐えようとするが、4-1-4-0状態の岐阜に対し、札幌は中央から上里が4-4のライン間、やや右サイド寄りのジュリーニョへパス。ジュリーニョはアンカーの田森を背負って受けるが、鋭くターンして中央からミドルシュート。30m級のスーパーミドルが決まって追加点。
そして32分、またも上里の縦パスから、アンカー脇で受けたのは内村。フリックしたボールはジュリーニョがさらにフリックし、岐阜のDFラインの前で内村がリターンを受ける。中央から左に切り返しての鮮やかな左足ミドルシュートが決まって3-0。年に1回あるかの難易度の高いゴールを連発し、札幌ドームを沸かせる。
札幌は前半8本のシュート、うち枠内7本というスタッツだったが、攻めまくっていたという印象はない。ノープレシャーの最終ラインを起点としてゆっくりとボールを回す→ボランチを経由してサイドに展開、仕掛けが無理なら一度戻す→岐阜のブロックが勝手に動いてくれるので縦パスが通る→中央から崩すか無理なら戻す…といった展開が多く、ボールを保持している時間の多くは自陣~センターサークル付近でのパス回しである。
2.後半
2.1 岐阜のシステム変更とその影響
後半頭から岐阜はシステムを変更している。岐阜はマンマークで対応するのでシステムが見分けにくいが、確かなことは、レオミネイロが守備を免除され最前線に鈴木と共に残るようになっており、中盤はどうやら風間、田森、高地の3枚で構成している。よって最終ラインに苅部が加わった、5バック気味の5-3-2又は3-5-2となっている。なおこの変更のうち、レオミネイロが最前線に残る陣形は前半35分頃、スコアが3-0となった直後にも見られていたが、この時はレオミネイロが空けた左サイドはガラ空きになっていたので、恐らく個人の判断だったと考えられる。
また、52分には鈴木→瀧谷に交代。鈴木は前半から1トップで張っていたため消耗が激しく、フィジカルの強いフレッシュな選手に代えることでエネルギーを注入する。
5-3-2もしくは3-5-2気味に変更 田森ではなく、苅部が最終ラインに加わっている |
この布陣変更により起きた変化としては、ビルドアップの局面においてまずCBが3枚になったことで、3人のDFがワイドに開いたポジションをとることができる。そしてサイドに開いた選手を起点にしてボールを運んでいくが、岐阜から見て右サイドでは阿部-都倉、野垣内-堀米、風間-福森と札幌はマーカーを用意する。ただ福森と堀米がそれぞれ釣りだされる格好となっており、背後にスペースができる。ここに瀧谷が走り込むことでボールを当て、起点にしていくプレーという一つの形が成立するようになっている。
図を見てわかるように、岐阜のこのオフェンスは左右非対称、やや右サイド偏重で行われる。左にはレオミネイロと高地がいるが、よりボールに多く触っていたのは、札幌のボランチ脇のスペースを狙う風間のほうであった。風間がここで受けると福森が潰しに来る前に素早く展開する。風間と高地はインサイドハーフとして左右で対のポジションであるが、風間がこうして間でのプレーに専念する一方、高地はやや引いてバランス取りに徹し、左サイドのボランチ脇のスペースはレオミネイロに使わせる。
右から仕掛ける理由は、風間の間で受ける才覚を活かす意図や、また対面する札幌のDF…特に福森の食いつき癖を利用することを意識していたと思われる。
福森をどかしたスペースに、当たり負けしない瀧谷を侵入させる |
守備面では、札幌のビルドアップに対し、最前線は2枚に増やしたことで、ある程度のプレッシャー(あまりユニットとしての機能性は見られないが、運動量は感じさせる)をかけることができるようになる。そしてボランチ2枚に対し、中盤の最大3枚の選手を当たらせることで、荒野や深井のプレーエリアを奪う。このようにアグレッシブに前に出る一方で、後方には5バック気味に選手を残すリスクマネジメントをしている。
55分にはこのアグレッシブな前線からの守備により、札幌側の陣地で荒野からボールを引っ掛け、ショートカウンターから最後は高地がシュートまで持ち込む場面を作っている。
札幌ビルドアップ部隊に対し5vs5を作る |
2.2 ボランチ中原の試運転
システム変更の影響もあり、岐阜が何度かゴール前にボールを運ぶ局面を作るが、札幌は金山の好セーブもありスコアは動かない。62分、岐阜は風間→田中達也、札幌は上里→中原に交代。ボランチの経験がほとんどない中原の投入は、後半立ち上がりから15分を凌いだことで札幌ベンチとしてもほぼ勝負が決したと判断したと見てよいだろう。
中原が投入された時間帯は、札幌は3-0とリードしていることもあり前半に比べると間延びし、個々の対応…特に前線の選手の守備がだんだんとルーズになってきている状況で、3トップの守備が機能しないため、荒野・中原のコンビはむき出しにされることが多く、ボランチの選手にとっては難しい状況だったといえる。
岐阜は田中が入り前線は3トップ、2ボランチの5-2-3のような布陣に変更されている。3トップvs3バックということで各エリアで枚数が同数のほぼミラーとなり、対応する札幌のDFは若干の混乱が見られたものの、基本的にはやはり岐阜は各選手が単騎で向かってくる状態なので、想像を超える個の力を発揮されない限りは大きく破綻しないで守れていた。
62分~ |
中原については守備面での仕事が目立った。70分頃になると札幌FW陣…内村やジュリーニョのサボりが顕著になってきて、たとえば下の写真のように選手間が空き、縦パスのコースができたときに出て埋める動きや、
3トップによる守備が甘くなりボールホルダーを放したり パスコースが空く状況になる ボランチが前に出て埋める(宮澤や深井がよくやっている動き) |
サボった時に空けてはいけない選手を潰しに行く動きなど、疲労もありルーズになってくる時間帯ではいろいろなケースがありその都度、判断を求められるが、積極的な守備で助けることができていたと思う。
ジュリーニョや内村がサボるので中央で選手が空きかけるが 中原がチェックすることで前を向かせず、ボールを下げさせることができた |
2.3 大勢が決した後
スコアが動かないまま時間が経過し、余裕の出た札幌は段々と軽いプレー、リスクのあるプレーの選択や、エゴと言うと大袈裟かもしれないが、札幌ドームで観戦している息子の前でいいところを見せたいマセードがフリーの味方を無視して強引にシュートを撃つなど、0-0や1-0ならばまずチョイスしないようなプレーも見られるようになる。
1)福森の攻撃時のポジショニング
ここで一つ取り上げるのは、71分に増川のパスがインターセプトされて岐阜のカウンター、レオミネイロの独走をペナルティエリア内で菊地がスライディングタックルで止めた局面。増川が最終ラインで持った時に、福森はかなり前の位置まで攻撃参加しており、増川の左前方、福森が本来いるべき位置には誰もいない。そのため増川には縦のジュリーニョしかパスコースがなく、相手としては非常に守りやすい状況になっている。
これまでの試合でも福森は余裕があるときや、前がかりになっているときにこうした極端なポジショニングを頻発している。それが偶に得点に繋がったりもしており、またサイズがあり正確なキックのある福森が前にいることは小さくはないメリットがもたらされるが、一方でビルドアップの段階で、福森や河合をサポートする役割を殆ど放棄することにもなっている。
増川はパスコースが少ない中、ドリブルでコースを作ろうとする |
通常DFをこれだけ高い位置に上げる場合、大抵はそのポジションにボランチの選手等が流れることでビルドアップのサポートと、奪われたときにリスクヘッジを設計していることが多いが、札幌ではそうした設計があまり感じられなく、福森が個人の判断で行きたいときに攻撃参加しているように見受けられる。
3/13 第3節愛媛戦から 福森が高い位置に張りすぎて河合をサポートできていない サイドは上原に任せればよい |
結果この時は増川がドリブルから左サイド…画面外にいる福森にパスするが、先述のようにパスコースが殆どない中でのパスなので岐阜の選手も完全に読んでおり、またプレッシャーを受けて弱くなったパスをカットされ、レオミネイロに縦1本、福森のいないゾーンをドリブルで独走されてピンチを招いている。
増川からの苦し紛れのパスになってしまう 奪われてがら空きの背後へカウンター |
福森の大胆な攻撃参加にはカバーする選手がセットで必要 誰もいないと絶好のカウンターチャンスを与えることに |
2)小野起用時の守備
札幌は72分に小野を投入。小野の出場は第14節の5/22讃岐戦以来、約2ヵ月ぶりとなる。小野が休んでいた2ヶ月間の間に札幌は首位を快走しているが、この間、試合を経るごとに札幌は守備のバランスが改善されており、また第17節の松本戦に敗れた後はそれまで絶対的な存在だったジュリーニョがサブに降格、ヘイスと序列が入れ替わっているが、これも守備面での問題…ジュリーニョが動きすぎることでバランスが崩れる、が大きい。よって小野も今後、どれだけ出場機会を作れるかは守備面がどれだけできるかにかかっている。守備が殆ど計算できないならば、ラスト10分のスクランブル化した状況などでしか使うことは難しい。
札幌の守備時のFW3人の動きとプレーエリアは大まかに下の図のようになっていて、サイドの選手は中央に比べプレーエリアが広い。また相手がタッチライン際まで開いてビルドアップをしてくると、その選手を追いかけてタッチライン際、かなりポジションを下げた位置まで追いかけなくてはならないケースも少なくない。
守備時のFW3人の動きとプレーエリア (4枚でビルドアップしてくる相手に対する場合) |
これは攻撃の選手にとってはかなり負担となるプレーだが、現状のやり方では他にうまく守る手段がない(都倉がこの守備対応が非常にうまい。都倉>ヘイス≧ジュリーニョ>内村の順にうまいと思う)。走力、フィジカルコンタクトに加え、グアルディオラの言うところの、タッチラインをDFとして使い相手を追い込む技術が要求される。これまでのプレーを見ても、小野をサイドに配してこうした守備貢献を求めることは難しい。
となると小野が常に中央を担当するような仕組みを構築するのがベターだが、中央でも小野は基本的にディレイの意識が強く、ボールホルダーにプレッシャーをなかなかけられない。この試合では、大勢が決した後の投入で会ったことから小野の守備がクローズアップされる局面は殆どなかったが、最終ライン中央に展開力のある選手がいるチーム(2015シーズンのアウェイ福岡戦では、福岡の堤にロングフィードを頻繁に許していた)を相手にした場合や、リードされている状況で、プレッシングを発動させてボールを奪いに行かなくてはならない状況では、FWの中央でプレスの指導役が小野で務まるのか、という点はまだ疑問である。
その後、4点目は小野のパスから中原のミドルのこぼれ球をジュリーニョ、5点目は左クロスから内村が1点ずつを奪い5-0とする。岐阜は最後、岡根を投入しロングボール攻勢に出るが札幌が守り切り5-0で試合終了。なお84分からは内村に代わって神田が出場。終了間際には大チャンスを得るがシュートは無情にも枠の外へ転がっていった。
北海道コンサドーレ札幌 5-0 FC岐阜
・7' :ジュリーニョ
・24':ジュリーニョ
・32':内村 圭宏
・75':ジュリーニョ
・84': 内村 圭宏
・7' :ジュリーニョ
・24':ジュリーニョ
・32':内村 圭宏
・75':ジュリーニョ
・84': 内村 圭宏
3.雑感
あまりに緩すぎて上里がシャヒン状態に。3バックが一定水準のビルドアップ能力を備え、従前に比べて後方からの組み立て能力が向上している今の札幌に対し、岐阜のアンカーを置くかわりに前線の守備を放棄する4-1-4-1システムの選択は率直に言って大失敗。スーパーゴール2発がなくとも妥当な勝利だった。札幌のトップ下が中央であまり広範に動かないヘイスであれば、アンカーで対抗するのは効果的だったかもしれないが、プレーエリアが広いジュリーニョだったこともアンラッキーだったと思う。ジュリーニョに着いていく役割の選手を作ったことでかえってバランスが崩れてしまった。
最初の文面でうっちーが居ない・・・なぜかミヤザーが居る・・・・・・
返信削除>コンサドーサさん
返信削除ご指摘ありがとうございます。コピペしたテキストが残っていてしまいました。