2016年3月7日月曜日

2016年3月6日(日)16:00 明治安田生命J2リーグ第2節 FC岐阜vs北海道コンサドーレ札幌 ~早くも訪れたターニングポイント~

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-1-2、GKク・ソンユン、DF進藤亮佑、河合竜二、福森晃斗、MFマセード、深井一希、上里一将、堀米悠斗、ジュリーニョ、FW都倉賢、内村圭宏。サブメンバーはGK金山隼樹、DF上原慎也、増川隆洋、MF前寛之、、FW内村圭宏、ヘイス。小野は開幕戦後に左臀部(でんぶ)の張りで別メニュー調整中、稲本は左内転筋の張りを訴えそれぞれ欠場、トップ下に宮澤、中盤に深井が起用されている。開幕戦は謎の欠場だった福森が左DFに復帰。開幕戦はベンチ外だったヘイスがベンチ入り。開幕から早くも故障者が続出している(それも中核と考えられてきた選手)が、開幕戦の出来は散々だったので、2戦目でメンバーを入れ替える口実ができたことは悪くない状況かもしれない。
 FC岐阜のスターティングメンバーは4-4-2、GK ポープ ウィリアム、DF益山司、田森大己、田代雅也、岡根直哉、MF高地系治、水野泰輔、秋葉勝、レオミネイロ、FWエヴァンドロ、瀧谷亮。サブメンバーはGK常澤聡、DF阿部正紀、MF青木翼、田中パウロ淳一、レオナルド ロシャ、苅部隆太郎、FW遠藤純輝。岐阜も開幕戦でザスパクサツ群馬に0-4と惨敗しており、メンバーを数人入れ替えてこの試合に臨んでいる。田森、田中パウロ淳一、秋葉、ポープ ウィリアム、といった新戦力がスタメン出場。長身のストッパータイプである岡根の左サイドバック起用は、右に流れてくる都倉対策だったと予想されるが、砂川誠氏によると「足元も悪くないので起点にもなれる」。

※この記事は第22節セレッソ大阪戦の後に作成しました。

1.前半の展開

1.1 砂川誠氏が語るラモスサッカー

1)「気持ちを見せろ」?


 この試合のスカパー!中継で解説を務めた砂川誠氏による、端的なラモス瑠偉監督の戦術評は、「守備はマンマークで対面の選手に勝つ、攻撃は個人のアイディア、クオリティを出していこう」というもの(前半27分頃の発言より)。砂川の解説も初めて聞くうえ、シンプルな表現なのでどこまで信じていいかわからない面もあるが、ラモス氏のキャラクターや、岐阜の序盤からの試合運びを見る限り、この指摘は頷ける部分が大いにある。

2)気持ちで解決できないもの


 ただ札幌に対してこのプレーモデルでは、岐阜の選手はいきなり問題に直面してしまう。何故なら岐阜の基本フォーメーション4-4-2に対して札幌は3-4-1-2で、下の図で示すようにミスマッチ…札幌3バックに対し岐阜2トップ、中盤の岐阜2枚に対し札幌3枚と数的不利に陥るエリアがある。
 この状況で、例えば岐阜の2トップ、瀧谷とエヴァンドロが「対面の選手に勝つ」を実践しようとしても、そもそも札幌のどの選手が自分の「対面の選手」なのかわからないという状況に陥ってしまう。
 また中盤も、ボランチ2枚に対して札幌は3枚が中盤にいるので、「対面の選手」に付け、という指示だけでは対応が難しいのだが、この点は後述する。
 上記の話は、3-4-1-2というフォーメーションを取り巻く、極めて基本的な話なのだが、結論から言うと0-4という試合結果のうち、かなりの部分はこの問題に起因している。

 そして岐阜が「対面の選手」を捕まえられないので、札幌の最終ラインはフリーの状態でボールを蹴ることができる。個人的には、福森以外の札幌のDFの選手はそこまで足元の技術に優れているとは思わないが、それでもフリーの状態にすれば、30~40mの距離のパスを最前線の都倉や、サイドに張る石井やマセードに通すことができるので、この試合の入り方の時点で岐阜は札幌に対しどうしても後手に回ってしまう。
システムの噛み合わせとミスマッチ:中央は札幌、サイドは岐阜が多い

1.2 札幌のビルドアップと岐阜の守備対応

1)予想通り札幌のビルドアップを阻害できない岐阜


 上記を踏まえたうえで、より具体的に試合の展開を見ていく。
 まず札幌のボール保持・岐阜の守備時において、序盤の札幌は最終ラインの河合のところまでボランチの上里や深井が下がってからボールを運んでくるが、岐阜は形の上では4-4-2でセットしているものの、まずどのようにプレッシャーをかけて札幌のビルドアップを阻害するのか、具体的には先述のように、エヴァンドロと瀧谷の2枚で札幌の3バック+上里や深井という計4~5枚をどう見るのか、という点において基本設計、コンセプトが殆ど感じられない。
 そのため深井がドリブルで持ち上がっても、4-4-2でセットした陣形が後方にズルズル下がるだけで、札幌が敵陣に運ぶまでボールホルダーに対するプレッシャーが殆どかからないという状況を簡単に作ってしまう。時折FWの瀧谷とエヴァンドロが札幌のビルドアップ部隊に1人、又は2人で当たってくるが、4-4のブロックはこの時ステイ又は後方に下がっているので、2人で引っ掛けられなければ意味をなさない。
初め4-4-2でセットしているものの、組織的にプレッシングを行わず
ドリブルで持ち上がると後方のブロックはズルズル下がる

2)開幕戦からの修正


 札幌としては序盤によく見られたこの一連のプレーで、開幕戦よりも改善している点は、河合が安易に蹴っ飛ばさずにボランチがドリブルで運んでいる点。おそらくビルドアップで主要な役割を河合に任せると、プレッシャーがあまりかかっていない状態でもロングボールを蹴ってしまい、開幕戦のようなマイボールの時間が短くなり、都倉も前で勝てない…といった状況に陥るため、河合のサポートとしてボランチ2人に後ろでの仕事を担うよう、調整したと考えられる。
 特に、深井が初めは様子見、岐阜の出方を観察しながら、(おそらくスカウティング通り)プレッシャーが弱いとみると、運べるところまで持ち上がるプレーが非常に効果的で、敵陣まで運んだあとは、都倉の高さを使っていくボールや、4-4ブロックの間で受けるジュリーニョへのパスなどで岐阜の守備陣を揺さぶっていく。
 なお図中では都倉が最前線で1トップ気味、ジュリーニョと宮澤がその下に並ぶ3-4-2-1のような形で示されているが、札幌の前線3枚は流動的に動き、このような形になっていた時間帯もあるのでこう表している。ジュリーニョは基本的に左に流れてくるので、都倉は中央から右サイドで活動する時間帯が多かった。
ある程度の所まで運べれば都倉も競り勝ちやすくなるし、間受けのパスも決まりやすくなる

事例 9:14、上里からジュリーニョへの素晴らしい縦パス
プレッシャーが緩く、数秒時間があるので余裕をもって縦パスを出せる

1.3 岐阜のビルドアップと札幌の守備対応

1)起点は左


 砂川誠氏の予想通り、岐阜のビルドアップは左SBに入った岡根を起点に前進させようとしていく。岐阜のCBはベテランの田森と大卒ルーキーの田代の組み合わせで、経験の浅い田代はともかく、本職ボランチの田森の所からも序盤はあまりボールが出ず、組み立ては殆どがサイド経由となる。札幌はこの岐阜の最終ラインに対する対応が非常にクリアになっていて、下の図のようにSBに渡ったところでサイドのFWが当たる。トランジション時などでFWが当たれない場合は、ウイングバックが前に出ていく。左サイドの場合、岐阜は岡根からストロングポイントであるレオミネイロへの縦パス、外→外の経路がファーストチョイスとなる。
5-2-3でセットしてSBに渡るとプレッシング開始

2)アイディアの発揮


 上記の流れを見てもわかるように、札幌は基本形である、FWが相手SBに対応する形がつくれれば、守備時のマッチアップは前線、中盤、サイド、自陣ゴール前の各エリアではっきりする(下図参照)。なおかつ岐阜はあまりポジションチェンジを行ってこないので札幌の各選手としては守備の基準点が非常に明確である。
 例えばマセードは、基本的に自分の担当するゾーンはレオミネイロしか使ってこないので、レオミネイロの突破さえ警戒していればよい。これが岡根が持った時に、マセードの担当ゾーンに瀧谷が流れてくると、レオミネイロと瀧谷のどちらに着いたら良いかわからない、といった状況に陥るが、岐阜はあまりそうした変化をしてこない、というより、やはり監督の「個々でアイディアを出していこう(チームとして用意しない)」姿勢、方針が大きいといえる。
明確なマッチアップ
担当するゾーンの選手に負けなければよい

 前半、岐阜がアイディアを発揮してきた局面は、例えば13:10頃の展開で、やはり岡根から、この時はサイド(札幌のボランチ脇、マセードのゾーン)に流れてきた瀧谷が楔のパスを受ける。するとマセードが瀧谷に対応するので、一瞬レオミネイロがサイドでフリーになる。瀧谷からダイレクトでレオミネイロに渡ると、札幌はカバーリングをした進藤が釣りだされる形になる。
瀧谷がゾーンを横断することでマセードのマークがずれる

3)前3人の守備を検証

<岐阜のサイドバックがたびたび空く>


 この試合で露見されている札幌の守備対応の問題点を1つ挙げると、前3人(都倉・宮澤・ジュリーニョ)による1列目守備において、3人の戦術遂行力にばらつきがあり、具体的にはジュリーニョが相手のサイドバックをフリーにさせてしまう状況がしばしばある点。
 守備時の札幌の前3人の並び方は基本的に決まっておらず、攻撃終了~トランジション突入時の並びのまま守備を開始するが、都倉とジュリーニョの2トップの試合は、ジュリーニョが左、都倉が右という並びになっている時間帯が多い。そのためジュリーニョも多くの守備局面において相手の右サイドの選手と対峙するが、この時ジュリーニョはSBをフリーにしてしまうことが少なくない。

 ジュリーニョがSBをフリーにしてしまう要因は主に2つあり、
①SBではなくCBに釣られてしまい、勝手にSBを放してしまう
②下の図のように、一度反対サイドに振られてスライドしている状況で、逆サイド(ジュリーニョサイド)に振られるとついていけない
 このうち②はジュリーニョでなくとも難しい(現代サッカーではピッチの横幅を3人では絶対にカバーできない)が、ジュリーニョは①…勝手にSBを放置してしまうこともしばしばある。
ジュリーニョがSBに対応できず、SBには石井が出るがサイドは数的不利に
石井のハードワークでカバーする

<左ウイングバック石井の「走って死んで」>


 すると上の図のように、石井がSBに出ていくことになるが、本来の石井の担当であるサイドハーフの高地はフリーになってしまう。そこでどうするかというと、この試合では石井のハードワーク(全速力でプレスバックする)によって辻褄を合わせているのが実情であった。また岐阜が石井を外して縦に運んだところで特段の有効打を持っていなかったことにも助けられている。
 この記事の投稿時(7月・前半戦終了後)においても、ジュリーニョの守備の問題は改善されておらず、このことがジュリーニョがスタメンを外れる要因の一つになっていると考えられる。

 またこの日の岐阜以上にシステマチックで、ボールを縦に素早く運ぶことができるチーム相手だと、ウイングバックのハードワークではどうにもならないため、下の図のように最終ラインが1人ずつスライドして4バック化する対応もとられているが、これだと今度は大外が空いてしまうという問題があり、いくつかの試合でこの点を突かれて失点している。
最終ラインがスライドする対応だと大外が空いてしまう

<どっちみち横幅を3人では守れない>


 もっともこれを、見出しに「ジュリーニョの守備の問題」としてしまうとジュリーニョに非常に問題があるような印象を与えてしまうが、個人的にはジュリーニョの守備は、ブラジル人FWとしてはまずまずよくやっているレベルだと考える(本職がどこなのか、いまだにわからないが)。むしろ都倉も毎試合、終盤はヘロヘロになっていること、3人でスライドして横幅を守るミッションの困難さを考えると、札幌の前3人の守備負担はJ2のFW陣の中でも一二を争う負荷の大きさだと言えるかもしれない。
都倉がサイドラインまで出て行って
岡根をケアすることで縦への展開を防ぐ
ジュリーニョと宮澤はボールサイドにスライド
反対サイドに振られたとき、益山が高い位置をとっているので
ジュリーニョは益山をケアできない(横幅を3人では守れない)

1.4 浮いた10番


 一方、札幌の攻撃・岐阜の守備時も同様に見ていくと、冒頭に書いた通り、4-4-2でセットしたうえで、「守備はまず人につく」を実践してくる。マッチアップは下の図の通りだが、岐阜の攻撃時との違いは、札幌は後方のビルドアップ部隊…福森や進藤、両ボランチが、岐阜の1列目の守備を回避した後に後方にとどまらず、攻撃参加してくる。するとかみ合わせとしては、サイドでは2vs2、ゴール前も2vs2となっているが、問題は中央で、ボランチ2枚に加えて札幌は宮澤がいるが、岐阜の両ボランチは終始札幌の上里と深井を見ており、トップ下の宮澤は頻繁にフリーになる。
最後方は最低3枚を確保したうえでボランチやストッパーが前に出ていくと
各ポジションでマッチアップが同数、宮澤のところだけ浮く
岐阜の両ボランチが札幌のボランチを見ているので宮澤が浮く
福森の縦パスを石井がダイレクトで都倉へ
岐阜CB2枚に対して2vs3の状態に

1.5 俺らの10番


 そしてこの浮いた宮澤がレシーブ役として中盤に構えつつ、前線に走り込みフィニッシュに絡む動きを繰り返すことで、(序盤から怪しかった)岐阜のディフェンスを破綻させていく。
 まず21分、トランジションから札幌はジュリーニョが失いかけるがリカバリーし、高い位置に走り込んだ上里へ。上里から岐阜のライン間にポジショニングする宮澤にパス。宮澤が出てきたCBの田森の股を抜き、フリーで左足シュート。こぼれ球を都倉が詰めて先制。宮澤の半身の状態で受けての股抜きも見事だったが、岐阜は右SBの益山のポジショニングと体の向きは完全に外の石井を意識していて、もう少し絞っていれば田森が抜かれたところでカバーリングが間に合っていたはず。
ライン間でフリーになり個人技(股抜き)も炸裂
手前、益山の体の向きとポジショニングに注目

1.6 アイディアの限界


 札幌が先制した後、岐阜は何度か、ボールをアタッキングサード付近に運ぶ局面を作っている。そのパターンとしては大まかに、ロングボールを放り込んで前線の選手が競り勝つか、札幌の前線の守備がずれたりサボったりしたところで縦パスが入って収まる、という2パターンに分類される。いずれも再現性としては微妙だが、それでも前にボールを運ぶ局面は作ることができる。
 ただ岐阜はアタッキングサードに運んで以降、ラモス監督の言うところのアイディアやクオリティを発揮したうえで対面の札幌の選手に勝てる部分、要するにストロングポイントどこか(誰か)というとはっきりと答えられないのが実情である。基本的に札幌が5バック+2ボランチで中央を固めて守るため、サイドに押し出されることになるが、サイドでボールを持つことが多いサイドバックの益山や高地が、札幌の対面の石井にアドバンテージがあるかというと微妙で、ラモス監督のスタイルの場合ここで勝負して勝てないと好機は巡ってこない。おそらく左のレオミネイロvsマセードというマッチアップなら幾分か岐阜に分があるが、チームとしてもそこを活かそうという共通認識があまりなく、レオミネイロ自身も中に入ったりしてしまうので生きてこない。
 そして共通認識がないので、せっかく前にボールが入っても、そこから次のプレーを考えてしまうのでアクションが遅くなり、札幌の守備が間に合ってしまう。ラモス監督のいう「アイディアを出していこう」は例えば、速攻の3vs3といった局面を前提にするならともかく、7~8人でブロックを作って守る相手に対するコンセプトとしては厳しいと言わざるを得ない。

1.7 マンマークでは守れない理由


 札幌の2点目となるPKを獲得したシーンも、やはり浮いていた宮澤が石井に落とし、石井がフリーでシュートを撃つ状況を作ったことでPKを献上している。
 34分、札幌は左サイドからボールを運ぶと、石井がタッチライン際で受けた所で深井がサポート。この時岐阜の守備は、下の写真を見てもわかるが、まさに「人につく」を忠実に実践しており、ボールと反対サイドで都倉に2人の選手…CB田代とSB岡根がマークしている。中央ではボランチがジュリーニョをマンマーク、という状況だが、ゾーンを守るとという観点でポジショニングしている選手が皆無なため、ジュリーニョがDF背後のスペースに走りだしたときに、付近の選手が遅れて着いていくことしかできない。
福森のパスをジュリーニョが呼ぶ
中央で宮澤が浮いている
宮澤が浮く

 裏に抜けだしたジュリーニョが切り返したときも、岐阜の守備は忠実にマンマーク…都倉に対してダブルマークを実践しているので、中央に入ってきた宮澤が空く。宮澤は走り込んできた石井への落としを選択し、石井のダイレクトシュートを田代がブロックするがハンドの判定でPK。ジュリーニョの飛び出し、最後の石井のシュートもそうだが、岐阜はマンマークなのでスペースへ動き出す選手に対し必ず後手を踏む(動き出してから個々が判断して対応する)。現代サッカーでマンマークが難しい理由を説明するかのような一連の展開で札幌が2点目を奪う。
宮澤の落としを走り込んできた石井がシュート
中央のエリアはがら空き

1.8 進藤伝説の幕開け?


 2-0となった直後の40分、札幌は自陣でプレスバックした都倉がレオミネイロとのデュエルを制し、そのまま自分で敵陣までボールを運びカウンター。この時もレオミネイロはサポートがなく、ボールを受けてから考えているような状態で、停止しているうちにプレスバックしてきた都倉に寄せられてボールを失ってしまった。都倉からジュリーニョ、ジュリーニョが大きくサイドチェンジすると後方から駆け上がってきた進藤がペナルティエリア内で滑って転ぶ。しかし進藤は尻餅をついた状態で足裏でボールを中央に折り返すと、都倉のやや後方に転がり、都倉が反転しながら強烈なボレーシュートを叩き込んでハットトリック達成。恐らく進藤の語り継がれるプレーで、札幌が前半のうちに決定的な3点目を挙げる。

 更に2分後の42分、札幌の後方でのポゼッションに岐阜は特攻プレス…前から順番に一人ずつ捕まえていくが、マッチアップ上、トップ下の宮澤が浮く問題に手を付けないまま目の前の選手に食いついていくので、福森が浮き球を前線に送った時、再び宮澤が浮く状態になっている。福森の浮き球をジュリーニョがスルーして宮澤に通り、宮澤が裏へ走るジュリーニョに出すとGKと1vs1。都倉に折り返したボールはスライディングクリアを試みた岡根のオウンゴールとなり4-0。岐阜は前半、シュート0本という散々な出来だった。
(4点目)
前から一人ずつ当たるも、宮澤が浮くというマッチアップ上の問題を解決しないまま



2.後半の展開

2.1 闘魂注入


 後半頭から岐阜は秋葉、エヴァンドロを下げ、レオナルド ロシャ、苅部を投入。水野が左、レオ ミネイロがFW、高地と苅部のダブルボランチ、右サイドにレオナルド ロシャと大胆に選手をシャッフルする。
後半開始

 "カリオカ"ラモス監督に闘魂を注入された岐阜は後半、札幌の緩い入りもあり、いきなりビッグチャンスを迎える。47分、岐阜左サイドからのスローインに対し、札幌は前3人を残した5-2のブロックで迎撃するが、この形だとボランチ脇のスペースを岐阜に与えることになる。岐阜の入れたボールから、ボランチ脇にいたレオナルド ロシャが左サイドの奥、マセードの裏に浮き球を送る。この時点でも札幌は5-2の守備で、岐阜の高地と水野に対し、マセード1枚で対応させてしまっている。水野が高地とのワンツーで楽々サイドをえぐったところでようやく進藤がマセードのサポートに出るが、水野はフリーの高地にマイナスのパス、高地のクロスにレオミネイロのヘディングシュートが枠をとらえるが、ク・ソンユンが至近距離で超人的な速度で反応しセーブ。
スローインに対し5-2で守る札幌
ここまでえぐられてようやく対応する

2.2 求められるクローズの共通認識


 メンタル面以外で後半の岐阜は何が変わったかというと、レオナルド ロシャが中盤右、レオミネイロがトップに入ったような、アイディアが発揮できる環境が少しできたという程度で、組織面についてはハーフタイムを経ても基本的に変わっていない(そもそもハーフタイムで何かを植え付けられるならば初めから実践している)。ということでやはり岐阜は札幌がボールを持つと、特に決まり事はなくボールに近い選手が当たってくるというスタイル。
 札幌は大量リードを奪っており、岐阜の選手が個々の判断で散発的に向かってくる状況であれば、後方でボールを回して時間を消費することは難しくないと思われるが、たとえば下の写真、57:21の状況のように、フリーで深井がパスを受けた際に近くにフリーの選手がおり、十分につながる状況でも深井は最前線へのロングボールを選択してしまう。
 技術的な問題もあるが、チームとしての共通認識…4-0ならばそのまま試合をクローズさせて良いので、こうした安直なプレーの選択をさせないようにしていく必要がある。もっとも、札幌が前半で4点リードという数年に1度あるかないかという展開になったため、どうしてよいかわからない、という状況でも致し方ないのかもしれない。
フリーで繋げる状況だが前に蹴り飛ばしてしまう

2.3 札幌の狙いどころに気付いたレオナルド ロシャ


 後半、岐阜の選手でアイディアを発揮していたのは主にレオナルド ロシャ。後半途中から、レオナルド ロシャは札幌のボランチ脇のスペースを使えないかと徐々に中寄りのポジションをとるようになる。岐阜の最終ラインの選手もこのポジショニングに気づいていて、また札幌が徐々に前線の守備強度が緩くなっていったこともあり、最終ラインからスペースにポジショニングするレオナルド ロシャを狙った縦パスを何度か試みている。
 もっとも岐阜はレオナルド ロシャがこの位置で受けて、前を向いて仕掛けられるような仕組みを仕込んでいるかというとそうではなく、トップの位置から下がってきたレオミネイロとの即興的な絡みがたまたま噛み合ったりする状況があることで、レオナルド ロシャの間受けとターン→仕掛けという攻撃に繋がるプレーが成立する。ボランチ脇を狙うこと自体はロジカルだが、そこからのプレーはあくまでアイディアでしかない印象である。
札幌の前線の守備が緩くなり縦パスが通りやすくなる
ボランチ脇のスペースにレオナルド ロシャやレオミネイロが降りてくる
縦パス自体は供給されるので、そこから何とかして前を向いて仕掛けようとする


2.4 3バックへの変更と反撃

1)中盤は岐阜が数的優位に


 60分過ぎ頃から岐阜は3バックにシステムを変更している。これにより札幌とのマッチアップは下の図のようになり、左サイドはレオミネイロが流れてきたリ水野と高地が入れ替わったりと、(恐らく)即興的にいろいろなことをやっているが、どちらかというと重要なのは、ボランチ脇のスペースで更にレオナルド ロシャが受けやすくなっている点である。
 最終ラインが3枚になったことで、札幌の3トップと数的同数になっているが、宮澤がボランチに下がってヘイスが加わった札幌の3トップは前から追いかける走力が落ちており、岐阜の3バックは殆どプレッシャーを受けていない。むしろCBが3枚になったことで中央からのパスの供給源が増え、札幌の3トップの間、もしくはサイドのゾーンからの縦パスが非常に通りやすくなっている。
中盤は札幌2枚に対し岐阜3枚で捕まりにくくなる
札幌は最前線の守備が緩くなっている
水野と高地は時折入れ替わる
宮澤がボランチに下がったことでプレッシング圧力がかなり弱まっている

2)3センターのお披露目


 上記に対する札幌の対応は早く明快で、73分にジュリーニョに代えて前寛之を投入。システムは3-5-2の3センターと、恐らく札幌の歴史の中でも非常に珍しい陣形を採用する。3センターにしたことで、岐阜と中盤の枚数が揃い、レオナルド ロシャをフリーにさせにくなっている。また前寛之は左に流れてくるレオミネイロのカバーリングのタスクも担っている。
 最前線は3バックに対し2トップが中央を守り、サイドに開いて展開する場合は3センターから宮澤か前寛之が対応する。ただ、岐阜の3バックは現代サッカーで一般に行われる3バックのビルドアッププレー、ドリブルで2トップ脇を持ち上がるといったプレーをあまり行ってこない。半面、アバウトさゆえにサイドのゾーンを使おうとする選手が複数いて、たとえば下の図であれば左は高地が中途半端な位置にいて、前寛之がマークすべきなのが高地か岡根なのか微妙な状況もあるが、仮にギャップができたとしても特にそこを使ってくるということもあまりになく、特段の問題はなく対処できていた。
3センターにして中央を固めると、高地とレオナルド ロシャはサイドに逃げる

FC岐阜 0-4 北海道コンサドーレ札幌
・22' 都倉 賢
・35' 都倉 賢
・41' 都倉 賢
・43' オウンゴール
マッチデータ


3.雑感

3.1 重鎮の離脱を起爆剤に変えた四方田監督の手腕


 四方田監督が2015シーズン途中の就任以来一貫して着手してきた"小野システム"が、開幕1試合を戦った段階でメインキャストの故障により瓦解。しかし小野の代役としてトップ下に入った宮澤の攻守両面での活躍により、開幕戦で噴出した停滞ムードを一掃する快勝を収めることができた。結果的に小野抜きで戦ったこの試合がターニングポイントの一つとなり、2016年シーズン前半戦の首位ターンにも繋がっている。
 ある程度想定されていたことだが、小野のコンディションは7月に入ってもなかなか上向かなかったため、そもそも使いたくても使えない状況が続いた。それでも開幕数試合で小野中心のチームビルディングに見切りをつけ、次善の策を早急に構築し、前半戦の快進撃を導き出した四方田監督の手腕は、師匠・岡田武史氏を髣髴とさせるところがある。

3.2 新キャプテン宮澤が最初に発揮したリーダーシップ


 岐阜の出来が悪かったことを差し引いても、トップ下で先発した宮澤の貢献度は、四方田監督の就任以来取り組んできた3-4-1-2システムが機能する道筋を示したという点でハットトリックの都倉に匹敵する。個人的には3-4-1-2という現代サッカーではほぼ絶滅しかけた布陣が札幌で機能するか、大いに疑問であったが、トップ下が2トップと並んで最前線で守備ラインを形成し、相手の最終ラインに対してプレッシングを行うことで一定の守備力を担保することが可能であると示された。
 そして宮澤のプレーを見て、3-4-1-2を採用して上位を目指すためにに本当に必要なのは、1試合に1回の小野のスーパーなテクニックではなく、1人目のディフェンダーとして振る舞える体力や戦術センスであるという事実にチームの多くが気付いたはずで、自らのプレーでチームを進むべき方向に導いたことは、宮澤がキャプテンに就任して最初に発揮したリーダーシップだったと言えるかもしれない。

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