スターティングメンバー 札幌は函館開催記念ユニフォームを着用、パンツの色に合わせて紫のアイコン |
北海道コンサドーレ札幌のスタメンは3-4-1-2、GKク・ソンユン、DF進藤、増川、福森、MF石井、深井、前寛之、堀米、荒野、FWヘイス、ジュリーニョ。サブメンバーはGK金山、DF上原、櫛引、MF上里、河合、前貴之、FW内村。都倉は累積警告で出場停止、内村は直前の練習で太ももに張りを訴えたとのことでベンチスタート。肉離れの宮澤、右ふくらはぎ痛のマセードは前節に続いて欠場。荒野が恐らく初めて、キャプテンマークを巻く。
横浜FCのスタメンは4-4-2、GK南、DF市村、野上、西河、永田、MF佐藤、寺田、大崎、小野瀬、FW大久保、三浦(カズ)。サブメンバーはGK鈴木、DF楠元、MF中里、野崎、野村、松下、FWイバ。左SBのレギュラーである田所が前節の退場により出場停止。これまでCBで起用されてきた大崎が本職のボランチに入り、CBには野上。サイドは右に佐藤、左に小野瀬で野村がベンチスタート。カズは6月に入って好調なようで、第18節から4試合連続のスタメン出場となる。2トップの相方に予想された津田が欠場で、大久保がスタメン。
横浜はミロシュ・ルス監督が体調不良で第18節を最後に辞任、19節から中田仁司監督が指揮を執る。監督交代による明確な影響は、直前の20節にGKを若手の渋谷からベテラン南に変えた(戻した)くらいだったが、この試合はレギュラーだった野村をベンチスタートにし、サイドハーフのメンバーを見直している。なおスカパー!の予想スタメンでは寺田がサイド、佐藤がボランチとなっていたが、寺田は今シーズン一貫してボランチで使われており、ここを動かすことは考えにくかった。
J2リーグ戦は熊本地震の影響で未消化の試合を除くと、この試合で一巡し、前半戦が終了する。
1.前半
1.1 二人合わせて85歳
J2リーグ戦を見ていて、札幌よりも力が劣ると判断するチームのいくつかは、開始早々は2トップを中心に高い位置からのプレッシングを行い、試合が落ち着いたらローブロックで撤退、持久戦に持ち込むというやり方が見受けられる。ただ、この日の横浜は2トップがカズと"ジャンボ"大久保の、二人合わせて年齢85歳のコンビということもあり、札幌最終ラインが自陣でボールを保持している際は前からのプレッシングは行わず、中央のボランチへのパスコースを切るポジションをとる。もっとも、この2トップは年齢を考慮するとそこそこの運動量はあるようで、どちらかというと単に横浜のチームコンセプト上の理由だと言えるかもしれない。
横浜としてはFWが中央のパスコースを切り、札幌のビルドアップをサイドに誘導させ、例えば左では福森にSHの佐藤、堀米にSBの市村を当てる形を作ることが狙い。
横浜の狙い:サイドに誘導し、SHとSBがそれぞれ対応する |
しかし序盤の横浜はサイドハーフの佐藤や小野瀬が、福森や進藤に渡った際にチェックに行くタイミングがいまいちで、そのため札幌はこの攻撃の起点となる段階で、福森が非常にフリーでボールを持つことができ、ドリブルで持ち上がるなどしてボールを前線に運ぶことも容易にできる。後述するが、この試合の横浜は2列目の選手が全体的にボールに対する寄せの甘さ、ルーズさが散見される。
札幌の左右のストッパーに対する横浜のサイドハーフのチェックが甘い 札幌はウイングバックが高い位置をとれる |
また元々3バックで2トップに対して数的優位であることも相まって、中盤の選手が最終ラインの選手近くまで下がってサポートをする必要があまりなく、石井と堀米のウイングバックも高いポジションをとることができる。
1.2 横浜のビルドアップと札幌の守備対応:1列目の積極的なアプローチ
これまたJ2のいくつかのクラブに見られる傾向だが、ボール保持時にシステムの噛み合わせやポジションチェンジ等によりミスマッチができていても、あまりそれを利用することなく、すぐに最前線の選手や空中戦が強い選手を目がけてロングボールで一気にボールを前進させようとする特徴を感じる。この点については札幌にも非常に当てはまる部分があり(特に河合がリベロで出場している時)、3バックなので2トップのチームに対しては空く選手を作りやすいシステムにも関わらず、フリーの選手を作って剥がして一段階ずつボールを運んでいくということをあまり丁寧に行わない。
ではこの試合の対戦相手の横浜はというと、結論としては横浜は、後方から中盤まで丁寧に運んでいく…とまではいかないものの、「ある程度の段階」までは札幌の守備を剥がしてボールを運んでいこうとの意識は見せている。
ボールを持ったらすぐ放り込むのではなく、「ある程度の段階」まで運ぶことの意義としては、最終的には長身の大久保に当てることでボールをゴール前まで運ぶのだが、この時の大久保に当てるボールの距離をなるべく短くすることで、成功率を高めることができる。
下の図は4:00頃、横浜の最初のポゼッションプレーでの展開で、ビルドアップ開始段階においてまずCBが低い位置で左右に大きく開き、札幌の前線の守備を空転させようとする。そして時間を得られるサイドバックを基点にしてボールを運んでいくが、特にこの試合はレギュラーの左SB、田所を出場停止で欠いていることもあり、右サイドの市村(篤司、すっかり堅実な右サイドバックになっている)のプライオリティが高く、このファーストプレーでも市村がドリブルで運んでいく。
5-2-3でセットする札幌に対し、サイドで生じるスペースと時間を使う 市村がドリブルである程度持ち上がることができる |
このプレーに対し、札幌は左FWの位置にいたジュリーニョがサイドに出て対応する。市村がドリブルを開始したとき、ジュリーニョは一気に市村に詰めるのではなく、あえて市村にある程度の距離をドリブルさせてから、中央を切りながら距離を詰めていく。この時、一気に詰めるとバックパス等で逃げられてしまうので、ある程度、市村をドリブルさせて周囲の選手との距離を拡げさせてから、またウイングバックの堀米とダブルチームで当たれる状況を作ってから市村に奪いに行く。結果的にはジュリーニョのチャージが市村へのファウルとなってしまったが、この対応を見るだけでも、6月の松本戦などで稚拙さを露呈した前線の3トップ、特にジュリーニョの守備は問題意識を持ってトレーニングで改善されていることを感じる。
ジュリーニョはある程度市村に運ばせてから 中を切りながら寄せていく |
1.3 J2レベルでは3人で充分?
この前の3人で追い込むやり方自体は、札幌が今シーズン序盤から良く見せている形で、特段変わったところはないが、このやり方のメリットを挙げると、後方に"保険"として7人を残したうえで前方で3人で追いかけることができるという点。4-4-2等のシステムで2トップのチームの場合、前で2人だけで守備をすると、相手が3人でビルドアップすれば回避されてしまうことが多い。ここで3人に増やすと、2人で行う場合と比較して与える圧力が(単純な人数比の)1.5倍以上に大きくなる。実際、この日の横浜の最終ラインも3人で追いかけてくる札幌のプレッシングに何度か引っかかっていて、J2レベルではそこそこ効いているといえる。
もっとも、このやり方だとサイドバックに低い位置で時間を与えてしまい、またウイングバックの堀米が対面のサイドバックに向かっていくので堀米の裏のスペースが空くという問題がある。J1クラスのチームだと恐らくこうした点を的確に突いてくるので、先を見据えるとこの対応で良いとは言い切れない面もある。この試合の横浜も市村がボールを運んでから前線に供給する際、中央で待ち構えるターゲットマンの大久保よりも、むしろ右サイドに流れてきたカズを狙ったロングボールが蹴られることが多かった。見たところ市村が中央の大久保に蹴ることは十分可能な状況が多かったので、意図的なものだとしたら、やはり堀米が出て空いたスペースを狙っていたということが考えられる。
それでも、機能性は十分とは言い難いものの、札幌の1列目は後方からのビルドアップを試みる横浜の選手に対して前から積極的にアプローチしていくことでプレッシャーを与え、プレーの精度を低下させ、ミスを誘発させるということができており、ジュリーニョの先制点も、前に残っていた福森がビルドアップを試みる横浜の選手に高い位置でアプローチし、パスを引っ掛けることに成功したことから始まっている。
1.4 いつどこから守備を開始するのか
ピッチ上の諸条件が公平であるなら、前線から一定水準の守備ができる札幌と、前線は効果的な守備を行うことが難しい横浜のマッチアップにおいて、攻撃機会を多く得ることができるのは、後方で相手守備による妨害を受けず、自由にボールをキープできる札幌の方である。開始8分頃には、札幌が押し込み、横浜がローブロックで撤退するという構図が明確になる。
更にもう一つ横浜の守備の問題点をあげると、1列目の守備が機能しなかったり、もしくは守備をする姿勢を見せなかったりで突破された時に2列目の4人の選手が応対するフェーズに移行するが、ここでも、どの段階からチームとしてディフェンスを行うのかがはっきりせず、札幌の選手がボールを持ち上がるとズルズルと後方に下がるだけで、4-4のブロックがペナルティエリア付近まで後退してからようやくボールホルダーにアタックすることを始めるような状況であった。
見ていると、横浜の中盤の選手は自分たちがファーストディフェンダーとなる役割をあまり認識していないような印象で、どちらかと言うと前方のカズと大久保にその役割を果たしてほしいように思える。ただ先述の通り、カズと大久保のコンビでは高い位置からのプレッシングが難しく、チーム全体が後方に撤退してからようやく札幌のボールホルダー、前寛之や深井を追い掛け回し始めるが、札幌としては最終ラインの選手も活用して問題なくこのチェイスを回避することができる
横浜はペナルティエリア付近まで撤退してようやく守備開始位置が決まり 下がってきたカズと大久保が散発的にボールホルダーに向かってくるが 回避するのは難しくない |
1.5 面白いように釣りだされる
また札幌が後方の福森を起点にして狙いどころとしていたのが、札幌から見て左、つまり横浜の右サイドバックである市村の裏で、中央にいた荒野やヘイスが市村を誘い出すようにサイドに流れ、市村を動かした裏にヘイスor荒野が走り込み福森からのボールを受けるもの。
荒野とヘイスの2人で市村を釣り出し、裏を利用する |
そしてこのプレーに対し横浜は非常に脆さを見せ、札幌としては面白いように市村や、その隣のセンターバックの野上を釣りだすことに序盤から何度も成功する。下の写真、11:21頃の展開を見ると、横浜はブロックの外で高い位置をとる福森が受けると、SBの市村が出て対応する。福森からブロックの中のヘイスに渡ると、ヘイスはCBの野上がチェック。この対応は全然おかしいところはないが、この時ボールと反対サイドのセンターバック、西河とサイドバックの永田はスライドせず、ジュリーニョをマンマークしているかのような状態で守っている。すると11:24の写真のように最終ラインの中央がまるでモーセに海を割られたかのごとくガッツリと空くことになる。
堀米と福森に、ヘイスを合わせた3人で左サイドで展開すると… |
市村だけでなくCBの野上も頻繁に釣りだされる しかもファーサイドはマンマーク気味なので中央がぽっかり空く |
通常こうならないように、4-4で守るチームはボールサイドへのスライドと、外に釣り出されて枚数が足りなくなりそうならば中盤の選手が下がって最終ラインに入り5枚になる等の対応で守る。しかし横浜の守備は横スライドもしなければ、中盤の選手が落ちることもないので、ボール周辺には人がいるもののスペースは全然管理できていないという状態になり、少しボールを動かされれば簡単にゴール前までボールを運ぶことができてしまう。
1.6 ゴールラッシュの幕開け
札幌の先制点は16分、自陣深くでボールを回収した横浜が、CBから右に開いた内村に展開しようとしたところ、市村の前線へのキックを前に攻め残っていた福森が引っ掛け、ルーズボールをヘイスが収める。ヘイスが左サイドから中央にドリブルし、ゴール正面やや右のジュリーニョに渡すと、ジュリーニョの前には横浜の4-4のブロックが形成されていたが、肝心のボールに対するアタックがやや弱い。ジュリーニョがリバウドを彷彿とさせる鋭いモーションから左足を一閃すると、低い弾道のシュートがGK南の手を弾いて決まり札幌が先制。
ジュリーニョのシュートは素晴らしかったが、序盤から横浜は実質的に4-4で守っているにもかかわらず中盤の4のラインを構成する選手がボールにあまりアタックしない。この得点はそうした緩さをジュリーニョが突いた形でもある。
4-4のブロックこそ作れているがやや寄せが甘かった |
そして先制した後の札幌は、いつもであれば全体を下げてディフェンシブな試合運びにシフトしていくことが多いが、この試合は先制後も攻守両面において前がかり、重心が高めになっていき、高い位置からのプレッシングや奪った後の人数をかけたカウンターといった、リスクもあるがリターンも期待できるプレーを続けていく(余談だがこうしたチーム全体に"押せ押せムード"がある時、進藤は攻撃参加やインターセプトの試行が増えるなど、非常にわかりやすい変化を見せる選手だと感じる)。
これは石井が「積極的に攻めて、見ていて面白い試合をしたかった」とコメントしている通り、1万人を超える観衆が集まった函館市千代台公園陸上競技場の雰囲気に押された面もあったのかもしれないし、また戦術的な面では、1点目のゴールシーンにも表れている通り、横浜は低い位置から最終ラインのCB→SB、又は下がってくるアンカーの大崎で繋いで運ぼうとしてくるが、そのビルドアップはやや危なっかしいところがあるため、高い位置からプレッシングをかけていけば奪えると判断したことや、横浜の2トップにはあまり裏への脅威がないため、ラインを高く保つことが可能だったことなども要因だと考えられる。ともかく、前半30分までは札幌がかなり押す展開となる(Football Labのデータでは0~15分は66.0%、15~30分までは57.7%と非常に高いボールポゼッション)。
横浜としては、札幌がこうしてイケイケになった段階でも後方から繋いでいく姿勢を見せていたが、試合の流れを考えると、大久保へのロングボールを使うことで札幌の陣形を強引に押し下げるという対策がベターだったように思える。
イケイケの札幌はラインを高く保ち、ハイプレスも敢行するようになる 横浜は後方から繋いでくるが、だいたいSBのところで引っかかる |
下の写真のように、横浜はマイボールにした後、最終ラインのCBまで一度戻して立て直そうとするバックパスを非常に多く使うが、この時、札幌はトップ下+2トップの3枚が攻撃に参加して前に残っていることが多い。先制点の場面が典型だが、この前3人によるプレスに横浜にたびたび引っかかっている。
札幌は3人残っているので、横浜のバックパスは狙いどころ 前3人でプレスをかけられる |
1.7 偶然?のチャンスから個人技の炸裂
41分、札幌はク・ソンユンのゴールキックをジュリーニョが左サイドで競ると、横浜は市村が応対していたのでSBの背後が空く形となっているが、ちょうどこのスペースにボールが転がる。このボールを荒野が拾い、カバーに出た野上との1vs1を制して左足で中央のヘイスにグラウンダーのクロス。ヘイスがゴールを背にしてトラップすると、鋭く反転してシュート、ゴール右隅に決まり札幌が追加点を挙げる。このプレーについては、どの程度札幌が意図していたかはわからないが、結果的に横浜のSBを釣りだした上で、荒野が最も得意とするペナルティエリア角で仕掛ける形ができている。ただそれでもヘイスの反転シュートは素晴らしく、徐々にJ2では手が付けられないレベルのプレーを見せ始めている。
ジュリーニョと市村(ともに画面右下)が競ったボールが 荒野の最も得意な位置に転がる |
2.後半
2.1 横浜の不運
後半開始早々、まずチャンスを作ったのは横浜で、46:15頃、ゴールキックを中央でキープしてから右サイドの市村に素早く展開する。市村が持ったところに札幌は堀米が出て、最終ラインはスライドして4バックに近い形になっている。また横浜の右サイドハーフの佐藤がタッチライン際に張ったポジションをとることで、ストッパーの福森も中央からつり出し、中央を手薄にしたところで左から流れてきた小野瀬が佐藤からの斜めのパスを、増川を背負って受ける。小野瀬から福森の背後に飛び出してきた市村が角度のないところからシュートを放つが、ク・ソンユンが右足1本でセーブ。
要するに、素早い展開で札幌の守備を5-2対応にし、ウイングバックを釣りだして4-3、更に同サイドで福森を食いつかせてサイドにスペースを作るという、札幌の攻略法として定石になってきているやり方で崩すことに成功している。
素早い展開からサイドに人を集めて 2人を釣りだして崩す |
しかしこのク・ソンユンのセーブの直後、札幌はセカンドボールを拾うと堀米が長い距離を走ってのカウンターで4vs4の形を作る。堀米から右サイドのペナルティエリア角付近で受けた荒野がシュートを放つと、コースは恐らく左側を狙っていたが、足を出した横浜の永田に当たってコースが変わり、GK南の股間をくぐり抜けてゴールに入ってしまう。非常にラッキーなゴールで、後半開始2分で札幌が追加点を挙げる。
2.2 60分で決着
3-0となり横浜は53分にカズを下げ、野崎に交代。またこの時の横浜の陣形を説明すると、後半開始直後からセットオフェンスの機会がなく、明確な形を観察できなかったが、おそらう小野瀬がトップに上がり、カズがトップ下、中盤は右から寺田-大崎-佐藤の3センター、4-3-1-2に近い陣形になっている。野崎はカズが入っていたトップ下にそのまま入る。
53分~ 横浜はカズ→野崎 後半頭からの横浜の布陣は4-3-1-2に見える |
4-3-1-2にした横浜の狙いは、前線の中央のエリアで大久保に近い選手を増やしてロングボールの二次攻撃の厚みを増やす…ということではなく、見たところ札幌のボランチ脇の位置で受ける選手を確保するための交代のように思える。
2トップと中盤の選手とでボランチ脇を狙う サイドバックからの斜めのパスを受ける |
しかし横浜のこの布陣変更や選手交代の成果が表れるより前に、札幌がセットプレーから4点目を奪い試合を決定づける。59分、ジュリーニョの左クロスから得たコーナーキック。マンマークで守る横浜に対し、福森が上げたクロスはゴール正面で待ち構える増川の頭にピンポイントで跳んでいき、増川がマーカーの大久保をなぎ倒してヘディングを決めて札幌が4-0とリードする。
2.3 横浜のスクランブルアタック
4-0とリードした札幌は、62分に深井を下げ、上里を投入する。この時、札幌は右から荒野-上里-前寛之の3センターに移行し、守備固めを図る。札幌は3センターの3-5-2の試合途中からの採用が、ここ数試合でまた何度か見られている。リードした局面での上里の起用は、稲本を長期離脱で失ったこともあり、手薄なアンカーのポジションが務まるかのテストでもあったと予想される。
横浜はこの交代直後の64分、大久保に代えて長身のイバを投入。この交代を境に横浜も微妙に陣形を変えていて、イバを中央でワントップ、その下に2シャドーのような形で野崎と小野瀬が並ぶような陣形に見える。この時間帯の横浜は、疲労に加えてフォーメーション変更による影響もあり、スクランブル化し緻密さを失っていて、守備をする人数が4バック+アンカーの大崎の計5人のみになるような局面も見受けらる。
64分~ 札幌は上里投入、荒野が下がって3-5-2に移行 横浜はイバ投入、前3人は中央に寄るスクランブル態勢 |
2.4 中盤に運べるようになる
互いに陣形を変えた後、横浜の攻撃時のマッチアップは下の図のようになっている。札幌は5-3-2でセットし、横浜は前線3人が中央に寄る4-3-3のような陣形に近い。ポイントは2つあり、1つは札幌の前線が2枚になったことで横浜は大崎を落とせばボールが運びやすくなる。2つ目は、大崎が持ち上がれば中盤、ゴール前、両サイドの各エリアで、机上論では綺麗に1vs1の構図ができあがる。
特に2つ目の大崎の持ち上がりについては、横浜は前半から2人のCB+大崎の3枚でのビルドアップ自体は試みていたが、札幌は前に3人を配する守備陣形なのでなかなかこの3人だけでは回避することができず、結果サイドバック、特に右の市村に預けて運ぼうとするがそこも札幌の高い位置からの守備に追い込まれてしまうという展開が多かった。
しかし札幌の前線が2トップのみ、それもジュリーニョとヘイスのブラジルコンビになったことで守備の強度や意識はかなり低下しており、また横浜の3枚(CB野上、西河、アンカー大崎)に対して2枚でどう対応するかもよくわからないといった様子で、すると大崎のところが非常に空きやすくなる。こうして横浜は札幌が3-5-2に変えたことで、中盤までボールを届ける作業が非常にやりやすくなっている。
後方は大崎が降りて3-2で横浜が優位 大崎が持ち上がれば中盤も前線も数的同数 |
2.5 クローズできなかった札幌
1)勝手に持ち場を離れる
横浜は迎撃型守備を利用してギャップを作りたい 札幌は受け手を潰す |
しかし札幌がこうした迎撃型の守備を採用する上でしばしば問題となっているのが、両ストッパーに入る選手の状況判断で、特に福森の状況判断のまずさ、ケアすべきポジションを勝手に空けてしまうプレーが目立っている。例えば下の写真、70:45の局面では、福森の担当は落ちて受けようとする野崎で、この瞬間は野崎にぴったりくっついているが、この後福森は赤破線、野崎をスルーしてボールホルダーの寺田に向かって行く。
横浜としては、野崎に一度当てて食いつかせてスペースを使う…といった狙いだが、野崎に当てる以前に福森が勝手に持ち場を離れて飛び出すので、勝手に札幌の最終ラインが手薄になってくれる。
福森のプレーを見ていて感じることは、5-2-3だろうと5-3-2だろうと、自分の本来の持ち場の前、ボランチの脇のスペースを相手に使われるのを非常に気にしていて、下の図のように同サイドのウイングバックの選手が出ている状態でもステイせず、このエリアでボールを持たれると非常に積極的に食いつく守備をする。昨シーズンからずっと見られている現象なので、MFのスライドでこのエリアを早めにケアする(福森が出なくていい)形を作り後方を安定させる措置をとることが早急に求められる。
また75分の横浜のイバによる得点は、スカパー!中継だとやや状況が分かりにくいが、札幌の最終ラインは少なくとも3枚が残っていて、横浜はイバと小野瀬の2枚。中央の増川は、ボールサイドのDFである福森の背後…小野瀬が走り込むスペースを見ているので、進藤は増川の背後を見なくてはならないが、増川と進藤の間に入ってきたイバに進藤はあっさりと裏を取られてシュートを許してしまう。これは進藤のごく個人的な能力の問題だが、このワンプレーだけでも札幌がローブロックでの撤退守備を選択している理由の証明となってしまった。
こうして4-0からイバに2点を奪われ、守備の不安を露呈した札幌だったが、終了間際には内村のアシストから上原が5点目を挙げ、「函館home party」は今期最多の5得点を奪っての勝利で終えた。
北海道コンサドーレ札幌 5-2 横浜FC
・16' :ジュリーニョ
・41' :ヘイス
・47' :荒野 拓馬
・59' :増川 隆洋
・75' :イバ
・88' :イバ
・90+0':上原 慎也
マッチデータ
1点目、2点目は札幌の2トップによる"個の力"が発揮された格好だが、記事のサブタイトルとした1列目の守備:練度も試合展開に大きく影響した。精度・練度ではまだまだ向上の余地があるが、能動的に仕掛けていこうとのコンセプトがある札幌に比べると、横浜は1列目の活動量や守備の面では妥協しているチームであり、加えて函館に押し寄せた大観衆の後押しもあり札幌が主導権を握ってゲームを進めることができた。
ただ、札幌が良かったというよりは、横浜は3人でチェイスされると簡単にボールを失ってしまう程度のクオリティにもかかわらず、悠然と後方からパスで繋ごうとする姿勢が仇となった格好で、FW津田の欠場も痛かったが、早めに2トップに当てていくという選択をとっていればもう少し難しい展開になったのではないか。
3-5-2で中盤を厚くして守備的にシフトしたにもかかわらず、ラスト20分で2失点を喫してしまった。開催中のEURO2016でコンテ率いるイタリア代表が採用した3-5-2が話題になっているが、(諸タイプによる違いはあるものの)本来3-5-2のメリットは3ラインをコンパクトに保ちつつ、攻守両面で中央を厚くし、また4-4-2等の相手に対しミスマッチを突き付けていくこと。札幌の場合、守ると決めたら最終ラインはべた引きになるので、FWも連動して低い地位からプレーする意識がないと、3-5と2が乖離して相手にスペースを与えてしまう。この試合で横浜の大崎が後半途中から何度もドリブルでボールを運んでいたのはまさにこのスペースを与えてしまったことが大きい。
このことを考えると、守ると決めたなら前線もジュリーニョ・ヘイスのコンビではなく、より守備貢献のできる選手に入れかえが必要だったと考える。一方アンカーに入った上里は無難な出来だった。かつてと比べると運動量が明白に落ちてきたので、今の上里を使うなら2ボランチよりも3センターの中央の方が適性があると思われる。
福森は持ち場を放棄して赤破線、寺田に向かって行く |
福森のプレーを見ていて感じることは、5-2-3だろうと5-3-2だろうと、自分の本来の持ち場の前、ボランチの脇のスペースを相手に使われるのを非常に気にしていて、下の図のように同サイドのウイングバックの選手が出ている状態でもステイせず、このエリアでボールを持たれると非常に積極的に食いつく守備をする。昨シーズンからずっと見られている現象なので、MFのスライドでこのエリアを早めにケアする(福森が出なくていい)形を作り後方を安定させる措置をとることが早急に求められる。
ボランチ脇のエリアにすぐ食いつくので 簡単に裏が空く |
2)クローズできなかった札幌:②怖すぎるハイラインでの守備対応
また75分の横浜のイバによる得点は、スカパー!中継だとやや状況が分かりにくいが、札幌の最終ラインは少なくとも3枚が残っていて、横浜はイバと小野瀬の2枚。中央の増川は、ボールサイドのDFである福森の背後…小野瀬が走り込むスペースを見ているので、進藤は増川の背後を見なくてはならないが、増川と進藤の間に入ってきたイバに進藤はあっさりと裏を取られてシュートを許してしまう。これは進藤のごく個人的な能力の問題だが、このワンプレーだけでも札幌がローブロックでの撤退守備を選択している理由の証明となってしまった。
ハーフウェーライン手前から一発で裏を取られる |
こうして4-0からイバに2点を奪われ、守備の不安を露呈した札幌だったが、終了間際には内村のアシストから上原が5点目を挙げ、「函館home party」は今期最多の5得点を奪っての勝利で終えた。
北海道コンサドーレ札幌 5-2 横浜FC
・16' :ジュリーニョ
・41' :ヘイス
・47' :荒野 拓馬
・59' :増川 隆洋
・75' :イバ
・88' :イバ
・90+0':上原 慎也
マッチデータ
3.雑感
3.1 試合展開全般
1点目、2点目は札幌の2トップによる"個の力"が発揮された格好だが、記事のサブタイトルとした1列目の守備:練度も試合展開に大きく影響した。精度・練度ではまだまだ向上の余地があるが、能動的に仕掛けていこうとのコンセプトがある札幌に比べると、横浜は1列目の活動量や守備の面では妥協しているチームであり、加えて函館に押し寄せた大観衆の後押しもあり札幌が主導権を握ってゲームを進めることができた。
ただ、札幌が良かったというよりは、横浜は3人でチェイスされると簡単にボールを失ってしまう程度のクオリティにもかかわらず、悠然と後方からパスで繋ごうとする姿勢が仇となった格好で、FW津田の欠場も痛かったが、早めに2トップに当てていくという選択をとっていればもう少し難しい展開になったのではないか。
3.2 3-5-2へのシステム変更
3-5-2で中盤を厚くして守備的にシフトしたにもかかわらず、ラスト20分で2失点を喫してしまった。開催中のEURO2016でコンテ率いるイタリア代表が採用した3-5-2が話題になっているが、(諸タイプによる違いはあるものの)本来3-5-2のメリットは3ラインをコンパクトに保ちつつ、攻守両面で中央を厚くし、また4-4-2等の相手に対しミスマッチを突き付けていくこと。札幌の場合、守ると決めたら最終ラインはべた引きになるので、FWも連動して低い地位からプレーする意識がないと、3-5と2が乖離して相手にスペースを与えてしまう。この試合で横浜の大崎が後半途中から何度もドリブルでボールを運んでいたのはまさにこのスペースを与えてしまったことが大きい。
このことを考えると、守ると決めたなら前線もジュリーニョ・ヘイスのコンビではなく、より守備貢献のできる選手に入れかえが必要だったと考える。一方アンカーに入った上里は無難な出来だった。かつてと比べると運動量が明白に落ちてきたので、今の上里を使うなら2ボランチよりも3センターの中央の方が適性があると思われる。
読んだ(´・ω・`)しかし、仕事疲れでコメントする元気が・・・。
返信削除でも(`・ω・)ノがんばる!
フォーメーション関係のミスマッチの話は、裏を返せば相手方にも有利な場所が出来るわけで、今回の試合はちと参考にならなかったなー。次節以降の数試合が相手そこそこだし、チームの成長度合いをみるにはいいかなと思っとります。
福森の動き・・・気付いてましたか・・・きっと大試合で、「えっなんでお前そんなところに・・・」てな感じで得点するための練習です(・∀・)ノその前に何失点するかは秘密です。
ヘイスに関してはワシは開幕前から心配はしてませんでした。動画観てたから、体が絞れればケガのマイナス差し引いても化け物クラスの活躍するだろうくらいに思ってました。それより守備にある程度走ってくれたり、絶妙なポジション取りや体の使い方、スペースを作る動きなどに驚いた。試合作る事もしっかりやってくれるし、正直笑いが止まらないレヴェルです。まあこれから対策されるだろうし、イライラさせようといろいろなことしてくるだろうから情緒不安定にならないかだけ心配。
で、最後守備の話。試合終盤で体力や相手の攻撃の関係とかもあるから、なんとも言えないけど、3-5-2のままの方が安定してるような気がするんだよなー。これに関しては賛否あるだろうし、俺自身なんか考えまとまらないからまた今度。
あっ一つ忘れてた。上里を3センターの中央のはなし。考えた事無かったわー。意表突かれたー(`・ω・´)ちといろいろ想像してみますわー。これはどうなるんだ?んー・・・・(-ω⊂)ニャムニャム眠い・・・
それではまた・・・(-ω⊂)ニャムニャム