1.スターティングメンバー
- 2月3週にホームでの開幕を強いられる長野は、開幕戦は磐田とスコアレスからPK戦で敗退。2節は甲府に0-2で敗戦とJ2クラブ相手に厳しい戦いが続きます。ただ体感的には意外とそこまで寒くなく、2月1週に海沿いのフクアリで開催されるちばぎんカップの方がよほど寒かった記憶があります。
- メンバーは左SBに田中康介→忽那、右MF安藤→大卒新人の野嶋、中盤真ん中に森田→吉田、トップの清水→進、そしてGK田尻→(契約で出場を縛っていなかった)小次郎、と5人を入れ替えてきました。スタメンを見て意外と若い選手がいないんだな…と思いましたが森田や清水は既に試していて、この日はより経験のある選手に変えてきたといったところでしょうか。
- コンサはスタメンは前節と同じ。サブにW堀米、内田、岡田が入って宮澤、大﨑、キング、ティラパットがメンバー外。
2.試合展開
たのしめてるか?:
- 長野の藤本主税監督はかつて福岡、広島、大宮などでプレーした1.5列目の攻撃的MF、今風に言うとシャドー。2005年、大宮が初めてJ1を戦うタイミングで加入し、トップ下がないシステムを好む三浦俊也監督の元で左MFとして起用され「守備の楽しさを知った」みたいなことを言っていた記憶があります。
- そこから21年後のこのシーズン、長野がシステム1-4-4-2を採用しているのは当時の経験があるのかどうかはわかりませんが、三浦監督の大宮が低い位置にブロックを作り、DFにサイズのある選手を4人並べてゴール前で数的優位を作ってマンツーマンベースで守るというか、後ろで跳ね返して、トゥットやバレーのような長い距離を走ることが得意な選手、桜井のような1人で突っ込んでいける選手の個人能力で攻撃していたのに対し、藤本監督の長野はより高い位置でプレッシングを仕掛けてボールを奪い、相手が整っていない状態に複数人の選手が関与して攻撃するというコレクティブなスタイルをにトライしているように見えました。
- 20年前と今年2026年では、Jリーグのフットボールも幾分かアップデートされていて、三浦監督のようにボールを捨てて自陣をとにかく守るというスタイルは言ってしまえば今の時代にはかなり厳しいと思いますので、藤本監督の長野のスタイルは特段ユニークでもなくてスタンダードな路線かと思います。
- ただ「(ボールの奪い方や相手の追い込み方がわかって)守備が楽しい」みたいな話は、当時の藤本選手以外にも口にする選手をたまに見ますが、昨今のフットボールでプレッシングを仕掛けるスタイルを採用するとして、フィジカル能力や走力における選手への要求は年々より強烈なものになっているので、選手としては少なくとも守備やプレッシングの部分だけを切り取れば、楽しいというよりも厳しさを感じながらプレーしているのではないかと思います。
「いきなりロングパス」だけでは出口にならず:
- 長野がボールを捨ててコンサに持たせる展開が多い試合でしたが、コンサのGK田川から始まるプレーでは、コンサは配置は前節のvs大宮とほぼ同じ。福森がアンカー、木戸が左のインサイドハーフ、スパチョークが左シャドー気味に中に絞って、左SBパクミンギュがやや高めの位置どりをします。
- 長野は最初、2トップが福森の前に立って中央のパスコースを消すところから始まり、コンサのCBどちらかに持たせる形に誘導します。
- コンサは田川が特に制限をかけられていなければ、やはり西野にボールを渡すところから始まることが多いですが、西野が持った時に長野のFWの1人(↑の図では藤川)が中央からサイドに押し出すように(西野→田川のパスコースを切るように)出てきて、ボールを持っている西野のプレーや選択肢に制限をかける。
- 西野としては受け手が木戸かパクだとして、木戸は長野の中央の選手(吉田)が木戸の背後から見ている関係性になっている。
- パクのところは、長野の右MF野嶋が、木戸とパクの中間に立ってパスコースを切っているのですけど、ここはパクに常にぴったりついている(完全なマンツーマン)というよりは西野がパクに一番簡単に出したいコース上に立って物理的にも心理的にも制限をかけているというか、野嶋は西野もパクも両方を守っている状況で、ここのポジショニングや判断は繊細さが求められます。
- コンサは序盤、福森が下がってきて(CBの間や左SBのところに降りてきて)、このポジションチェンジに長野がついてこないと見ると黄金の左足でのロングフィードを発動。
- 相変わらず抜群の精度で前線の受け手(主に白井)に渡りますが、このいきなりロングフィード、いきなりサイドチェンジというのは相手の守備の関係性を動かす作用には乏しいので、受け手(白井)がボールさえあれば簡単に違いを作れるという話でなければ、長野がボールの受け手のところに移動(スライド)して対処できるので、実はそこまで効果的だとは言えない面もあります。
30分で突破口を発見:
- 10分に長野が先制します。
- 長野はこの試合ボールを持ったらGKから前線へのフィードが多いものの、GK(小次郎)が中央へのフィードを狙う割に、中央では長野のFW(進、藤川)とコンサのCB(家泉、西野)ではパワーや競り合いで明らかにコンサに部がありそうでした。
- なので中央に蹴ってもあまり効果的ではなく家泉や西野が簡単に跳ね返して終わり、な場面も少なくなかったですが、この10分の場面はこの試合で例外的に、藤川が家泉の前で触ってポストプレーに成功(藤川が触れる絶妙なところに小次郎のフィードが蹴られた)、進が拾って中に入ってきた近藤にスルーパス、コントロール1発でDFを外してシュート…という、長野としてはかなりうまくいった、この試合で2度目を見せることができなかった場面でした。
- しかしコンサも15分に、長野ボールのスローインからハイプレスで出口を封鎖して髙尾からバカヨコに浮き玉のパス。おそらく小次郎のリアクション的にバカヨコはダイブしたのでしょうけど判定はPKでバカヨコが自ら決めて同点。10-20分の時間帯でスコアが動いてまた振り出しに戻って、展開としてはどちらかがバランスを崩したりオープンになったりはしませんでした。
- 仕切り直し気味に再びコンサがボールを持ってプレーする時間が多くなります。
- コンサは左のパクが高い位置を取り続けます。左サイドはスパチョークが大外でウイングのプレーをしないので、パクが高い位置というか前線に攻撃参加できる位置をキープできるかがポイントの一つですが、build-upは味方に任せてパクは高い位置で我慢。長野は藤本監督がメインスタンド側、目の前でこの動きを見ていて野嶋にすぐプレスバックできるよう指示を送ります。
- そして30分くらいに、コンサは長野のFWの進と藤川が西野、家泉、GK田川、アンカー福森を見ている関係性からのプレスを回避してフリーの選手(この時は家泉)に渡して、この試合で初めてbuild-up成功、長野のプレッシングを空転させることに成功します。
- この試合、互いに開始から30分間、ボールを持っているコンサの配置とボールの動かし方や各選手の役割(出し手、受け手、潰れ役、サイドの仕掛け役など)と、それに対する長野の対応がほぼ決まっていて変化がない状況だったので、長野がそのままコンサの前進を食い止められれば問題なく構造を変える必要はないけれど、この30分のプレーのようにコンサが何度もトライした末に長野のプレッシングの剥がし方を見つけたという状況は、(もちろん人間なのでミスはありますが)コンサとしては1度突破口を見つけて次もまた同じプレーを突きつけて長野のプレッシングを突破できそうな状況。一方で長野としては、同じやり方を続けているだけでは厳しくなりそうな状況でした。
サイドではほぼ完勝?:
- 長野がボールを持っている時の話を少しすると、
- 長野は2列目の近藤と野嶋が中央に入ってくることが少なく、先に述べたように中央にパワーのある選手やボールが収まりそうな選手もいないので、突破口を見つけるなら中央よりもサイド、かつコンサのマーク関係が崩れていない(マンツーマンに近い)ので、足元で受けるよりもスペースに走る動きがもう少しあってもよかったかなと思います。
- ↑はシステム1-4-4-2でボールを動かす時のパターンの一つなのですが、長野の状況だとこのようにFWがサイドに流れてきてサイドの選手とユニットとして動ける距離を保ち、サイドの選手(野嶋)は足元よりも背後を狙う…というようなプレーをしていかないと、ボールを持った状態から崩すには難しかったかもしれません。
- 野嶋や近藤にこうした裏抜けの意識がなかったとは思いませんが、中央の進や藤川とのユニットで見た時に呼吸を合わせるのが簡単ではなさそうでしたし、そもそも前線の選手の守備タスクがそれなりにあったので何度もスペースに走るエネルギーがなかったのかもしれません。
- 野嶋は開始早々に1度だけ右サイドでボールを受けて中央にカットインするプレーを見せます。これはコンサの左SBパクがあまり得意ではない(と私は思っている)タイプの選手で、野嶋が前残り気味で何度か仕掛ける場面があれば面白いかも、と思いましたが、そもそも野嶋がそうしたプレーを発揮できるようにボールが届けられることは、以後ほぼありませんでした。
- そして反対サイドでは、この試合を通じて長野はコンサの右SB髙尾を突破することが全くできておらず、近藤に渡ったボールはほぼ全て髙尾が早いタイミングでカットしていたので、コンサはこのサイドから押し下げられてゴール前で対応しないといけない場面がかなり少なかったと思います。J2とJ3なので当然と言えば当然ですが、特にこのサイドのマッチアップで長野はコンサ陣内に入っていくことに苦戦していました。
2026年基準の対応によって徐々にオープンに:
- 長野のプレッシングがはまらず突破されることが徐々に増えてくる中で、長野としてはやり方を変える(自陣に撤退する)か変えずに貫くかの選択はあったと思いますが、結論としてはやり方は変わらなかったと思います。
- ただこの試合、コンサの選手が接触プレーで痛んで試合が止まる状況が何度かありましたが、それは長野のプレスがずれたり外され気味のところでコンサの選手を止めようとして強めにあたったり、ファウル相当の接触になったりといったことは戦術的な背景として指摘できると思います。
- ただ、コンサもシステム1-4-4-2で守るやり方をこのシーズンから採用していて、大宮相手に守りきれず3失点を喫してもいますが、今の時代に4バックの1-4-4-2というシステムで、ピッチをワイドに使った攻撃をしてくる相手に対し、引いてゴール前を固めて守り切ることはかなり難しいと言えると思います。それは前節の大宮に対するコンサもそうだし、この試合はJ2のコンサに対しJ3の長野が4バックで引いて守り切れるかというと難しそうなようでした。
- ですので長野は後半に入っても自陣ゴール前を固めるようなやり方はせず、依然としてプレスがはまらない、ズレているところがある中でも、アグレッシブにボールを奪いに前に出てきますし、ズレた状態で次々と選手が前に出てくるので、そこを外せばコンサはビッグチャンスになりますし、試合展開としてはややオープンになっていきます。
- 繰り返しますが長野はプレスがはまらないからダメとかではなくて、今の時代はこういうスタイルじゃないと勝ち点を拾えないのは事実かと思います。
ワイドはSB頼み:
- オープンになってスペースができてくると、それまで中央で密集していてなかなか前方向を向いてプレーができなかったコンサの選手…スパチョークや木戸がそれまでよりも容易にボールを持って前を向けるようになります。
- この2人のように技術があって俊敏で前方向にプレーできる選手がボールを持てるようになると、コンサボールの時の展開がややスピードアップします。
- 一方でスパチョークに関しては、形式上はシステム1-4-2-3-1の左ウイングまたはサイドハーフでありながら、ワイドの位置から相手のSBに対し1v1を仕掛けてそこを突破してラストパス(クロスボール)を中央に届けたり、もしくはSBに仕掛けてSBを引き付けることで味方が走りこむスペースを作るような、”ウイングのプレー”をほとんどしないので、結局最後のところでそうしたプレーをしないのが、コンサがここまで3試合でセットプレーを除くと1点しか取れてない(それもスパチョークのゴールですが)ことの原因の一つでもあると思います。
- 後半に選手交代で先に動いたのは、61分にFWの進→大﨑を投入した長野。
- コンサは直後64分に白井→青木を投入しますが、文字通り「動いた」というか、バランスを崩して仕掛けてきたのは長野の方だったかもしれません。
- 長身FWの大﨑は前線からプレッシングを仕掛けるスタイルにおいて持久性やプレーの連続性に難がありそうに見えましたが、30分間のプレータイムで2回ほど、前がかりになったコンサDFを単独突破してシュートに持ち込むプレーを見せており、それまでの進や藤川が見せなかったスタイルの選手の登場により攻守両面で良くも悪くもバランスが崩れ、試合が動きそうな雰囲気はありました。
- コンサは青木がそのまま右に入りますが、↑で「スパチョークがウイングのプレーができないことが課題」と書きましたが、右サイドにおいても白井が合格点は超えてるかな?という程度で、他の選手はウイングのプレーができないというのはコンサのスカッドにおいて軽視できない問題なのでしょう。
- 右をほとんどやらない青木をここで使うのも、超掲示板で絶大な人気を誇るキングに右サイドでチャンスを与えているのも、そうした事情の現れかと思います。
- そして両翼が青木とスパチョークとというウイングのプレーをしない選手2人になったことで、コンサは前線で”攻撃の横幅”を担保するためにはSBのパクと髙尾の攻撃参加がより不可欠になります。
- この辺はチームとして共通理解があったのかは謎ですけど、構造的に自然とSBが高い位置を取るようになっていたことに加え、家泉や福森も前でプレーしたそうな様子を見せはじめます。
- 長野の長身FW大﨑が効いていたのはこうしたコンサ側の構造の変化、前がかりになったことも要因の一つでした。
- コンサとしては、この試合最大のビッグチャンスが84分、パクが攻撃参加から左サイドを突破、青木(左に回っていた)が折り返して大森が低空ヘッドで狙いますがポスト直撃、という場面。
- 結局この時も、サイドのスペースに高速でアタックできるパクの個人能力があってビッグチャンスになったともいえます。
3.雑感
相手がマンツーマンベースの対応じゃなければ自陣でボール持ってる状態から何回かパスして相手がズレたところで敵陣に入るbuild-upは普通にできてる部類だと思いました。
— AB (@british_yakan) February 21, 2026
今日の試合だと35分くらいに1…
(残り651字)#querie_british_yakanhttps://t.co/7423B3itTw
- ここまで3試合、予想通り相手にボールを持たされる、コンサとしてはその状況をすんなり受け入れる、ボール持ちたがる形から毎試合始まっています。
- 開幕戦のvsいわきではマンツーマン気味に対応してくる相手に窒息気味でしたが、vs大宮とvs長野はいわきほどマンツーマンの純度が高くなく、丁寧にプレーすれば誰かがフリーになれる構造で、この状況においてはそれなりに相手の守備を剥がして前進するプレーが徐々に見え始めていることは評価できます。
- ただ長野が非常にアグレッシブというかボールに食いついてくる、前から奪いにくる守備をしてくるチームだったので、その背後にスペースができやすかったということは考慮する必要もあると思います。
- 一方で得点を奪う部分については、これまでも何度か触れていますが、①バカヨコの他にもう1人ゴール前に飛び込んでシュートを狙うアクション、②ワイドでウイング的なアクションをして相手のSBを引きつけたり崩すこと、がそれぞれ必要なように見えます。
- 例えば①に関しては大宮戦の宮澤の投入だったり、右サイドでキングや、この試合の岡田(!)の起用などを披露しており、チームとしてもそこの問題意識は確実にあるのでしょう。
- ただ、この試合も大森(トップ下、前節における宮澤の役割)の投入をやや我慢している感じがして、問題点とソリューションがわかりきっているからさっさとカードを切ることもできたはずですけど、そうはせず意外と慎重な采配に見えました。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。






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