2025年12月17日水曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(5) 〜進退をかけた一手も不発〜

5.選手個別note

  • 選手についての感想ですが、今回はポジション別のメモや雑感も付記します。サムネは聖地巡礼したけどなんかイメージと違ったやつです。撮影とか映像制作の人の技術ってすごいなと思いました。


5.1 センターFW

<総評>

  • そもそもモダンフットボールにおいて、センターFWの椅子はどのチームにも1つしかありません。かつてのインテルのロナウド&ヴィエリ(他、サモラーノ、カロン…)のような9番タイプを2人並べるのは現代では非常識、は言い過ぎかもしれませんが、攻守両面でゴール前からあまり動かない(動けない)選手をスタメンで2人使うことで生じるチーム戦術への制約を考慮すると基本的には「ない」話です。
  • このことを考慮すると、そもそもシステム1-3-4-2-1を念頭に置いた時に、開幕時点で明らかにセンターFWだなという選手がコンサには少なくとも4人(バカヨコ、ゴニ、中島、ジョルディ)いたことがまずおかしい。試合に出られない選手はどうしてもフラストレーションが溜まったりグループとしてのマネジメントは難しくなります。
  • 監督がやりくりしないといけないのはCBのような手薄なポジションだけではなく、こうした人数がダブついているポジションにも言えることです。

  • 岩政前監督が当初「システム1-3-4-1-2の2トップ」としたのは、戦術的に監督がそれをやりたいからではなく、コンサにFWが多すぎるから、DFが少なすぎるから、4バックだとポジションのアンバランスが大きすぎるから、という、しょうもない理由だからでしょう。
  • しかしその前監督の構想では、2トップはゴール前に9番として2人が待つ形というよりも、「ゴールから離れた位置でスタートして守備タスクもそれなりに担いつつ、スプリントしてゴールに入っていく」みたいな形を描いていたようなので、コンサの4人〜のFWはそうしたスタイルにもアンマッチ。ということで、開幕後は1トップの1-3-4-2-1を採用したのだと思います。
  • その後、今度は監督は「4バックに適した選手が多い」(積極的な意味でも消極的な意味でも両方だと思われる)とのことで4バックの1-4-4-2または1-4-2-3-1気味のシステムを採用しますが、このシステムにおけるFWとトップ下の組み合わせ、および適切な運用方法を見出すのに時間を要します。

  • その後、中断期間には逆襲の切り札として、三顧の礼でマリオ セルジオが加入します。
  • が、前線は9.5番タイプのバカヨコを軸とすることが徐々に見えていた中で、あまりモビリティがなさそうで、バカヨコと並べると前線が重たくなることが見え見え、利き足も左でバカヨコと被る9番タイプのマリオは、「鈴木智樹強化部員が、移籍交渉の成否に進退をかけるくらいで臨んでいた」(by竹林強化部長)とするフロントの熱意とは裏腹に、ピッチ上では岩政、柴田両監督とも使い所を見出すことに腐心します。

9 ジョルディ サンチェス

9試合、371分出場(うち先発4)、1ゴール、1アシスト
  • 攻撃面では、プレースタイルとしては組み立てに関与したり潰れ役になって味方を助けたり、オープンな展開でボールを運んだり…といった貢献は少なく、相手ゴールに近い位置で相手のミスやそこから生じるシュートチャンスを待つことにほぼ全振りしているように見えます。
  • これはJ2というカテゴリとは相性はそこまで悪くなく、ピッチに立った時に決めきれなくてもそこそこチャンスには絡んでいるのはこのプレースタイルによるところが大きい印象を受けます。
  • このシーズン1ゴールに終わりましたが、FWに有効なラストパスが届けられなかったコンサというチームにおいて、開幕戦、15節、19節と先発した試合ではいずれもゴールにあと一歩のところでシュートミスや取り消しがあって、そこは”持ってない”印象もありましたし、たらればではないですが、特に大分での開幕戦で絶好期を決めていれば、ジョルディ本人だけでなくチーム全体の命運も少しは別のものになっていたかもしれません。

  • 前線の9番タイプの選手の中でも最も動きの量があり、このシーズン、定期的にハイプレスをやりたがる(両監督とも)コンサとはこの点でも親和性はありそうでしたが、トータルで見ると、オンザボール、オフザボール、運動能力、戦術理解…あらゆる面でシンプルに実力不足かと感じました(J2というカテゴリで見ても、コンサのFWの選手の中で見ても)。

  • あとは、2024シーズンの夏に加入早々に練習を見ていた時からの感想ですが、やはり母国語で会話できる仲間が1人いてもよかったかもしれません。
  • 当時から(いや加入早々だったけど…)構想外気味というか、サブ組のシャドーをやらされていて、トレーニングにおいて本人も相当フラストレーションが溜まっていそうに見えました。
  • 岩政前監督が就任してもチーム内での位置付けは大きくは変わらず、トレーニングでの態度を疑問視されていたとの報道もありましたが、奥さん以外にスペイン語の話し相手がいればメンタリティも幾分か変わったのかなと思います。この点では、マリオを孤立させないように注意を払って欲しいところです。

20 アマドゥ バカヨコ

32試合、1,745分出場(うち先発22)、7ゴール、0アシスト
  • キャンプでは新監督にまずまずのアピールをしたようで前線の軸として期待されましたが、故障で開幕に出遅れます。
  • 4節以降はFW陣で最も多くの出場機会を得ますが、システムは1-4-4-2に変わり、左SHにシャドー系の選手(スパチョーク、青木)が起用され、センターFWであるバカヨコが前線の高い位置からかなりの運動量で相手のDFのボール保持に対して1stDFで頑張らなくてはならないチーム構造に次第に変容します。

  • 昨年夏の加入時に河合C.R.Cが「オルンガタイプだ!」と期待を語り、おそらく他の関係者(前監督、スタッフ、GM、強化部長…)の認識もその程度だったのでしょうけど、見たところ90年台のイングランド上位クラブで活躍したシェリンガム、カントナ、ベルカンプ、今だとコロムアニ?のような9.5番の役割で、味方の9番に前を向かせつつ自らは遅れてゴール前に入っていくのがこの選手の得意なスタイルに見えます。

  • そしてボールを持っていない時には、岩政前監督によってバカヨコが相手2人、場合によっては3人を管理しながら相手のボール保持を右の近藤のところに誘導し、追い込んでプレスをかける…というやり方を13節から採用しますが、この手の守備アクションが上手い下手以前に、190cmの長身でスプリンタータイプの選手には動きの量の部分で負担が大きすぎるように見えました。
  • 加えてコンサの場合、ビルドアップに難がありまくるので、FWがゴール前で待っているだけでは不十分、降りてきて縦パスを受けてポストプレーをしたり、周囲の軽量級の選手を活かすために潰れ役になったりしなくてはならない
  • 試合中に、味方に指示を出したりコミュニケーションを取っている様子を見ても、バカヨコはゴールしか見ていないエゴイストには見えずピッチの俯瞰で見ており戦術眼を備えている印象で、出場時間でフル出力を発揮するというよりはペース配分を意識したかのようなプレーに終始していたのも、「コンサだとFWがやることが多すぎる」からだと理解していたのだと推察します。

  • この姿勢が、もっとゴール前に入って欲しいとする岩政前監督の怒りというか”愛”のすれ違いみたいなもの?を招いて、5月の2試合(14節、17節)では前半途中に交代という仕打ちを与えますが、寧ろそれでようやく監督もバカヨコの選手特性をわかってきて、前線に長谷川、白井、木戸といったオフザボールで貢献できる選手を起用するようになり、またバカヨコもプレーの出力を調整して、数だけが多くて機能していなかった前線の軸となり、チームにようやく光明が見えた、という流れでした。
  • 時間及び仕事の範囲を限定されたあとは、「(武蔵を差し置いても)チームで一番足が速い」とビッグマウスをかましたスピード、ゴール前での鋭さと献身性やつぶれ役としての仕事を両立させた前線の切り札になり、7ゴールは全て23節までに挙げられたもの。
  • このシーズンJ2で12ゴール以上を挙げた選手が4人しかいないことも踏まえれば、PKなしですし十分に仕事をしていたと言えるでしょう。90分平均得点は0.576で、PKを蹴っているマテウスジェズスやマルクスヴィニシウスを上回ってもいます。

  • しかし柴田監督になってからは1トップにマリオがチョイスされることが増えます。
  • おそらく新監督はビルドアップをそこまで重視しておらず、とにかくFWにゴール前にいてシュートチャンスをモノにして欲しい、という思惑だったのかと推察しますが、潰れ役がいないとまともにプレーできないチームから潰れ役を取り除けばどうなるかは目に見えていたことでした。

90 マリオ セルジオ ※6月にシャペコエンセから完全移籍加入

15試合、588分出場(うち先発4)、4ゴール(うちPK1)、0アシスト
  • プレースタイルとしてはジョルディと似て、あまり組み立てやカウンターでは貢献せず、ボックス内での仕事がメインになるタイプ。
  • デビュー2試合目の熊本戦で、途中出場からビハインドのチームを救う名刺がわりのスーパーボレー。「9番」としてはここ数年でコンサに来た選手の中では最も期待できる選手でした。
  • しかしこの熊本戦では、後半途中から疲れの見える相手、しかも熊本というJ2でも特にオープンなスタイルのチーム相手に計3本のシュートを放ちましたが、その後の試合でも根本的にbuild-upに難があり、FWにボールを届ける機能が足りていないコンサにおいて、そもそも有効な形でシュートを打つためのお膳立てをほとんどしてもらえないまま時間が経過します(シーズンを通じてシュート数29)。

  • コンサというチームが、ビルドアップも崩しも難があるなら、相手の運動量が落ちた時間帯に切り札として使う手もあったかと思いますが、J2でもそんなに露骨にオープンな試合から終盤に落ちるチームがそこまでなかったこともあり、マリオ1人では何もできないままの試合も少なくありませんでした。

  • あとは殆ど先日の記事で書いた通りですが、マリオのような選手をどう起用して(既存のチームに組み込んで)チームがどう変わり、成績が向上すると考えていたのかがコンサのフロントからは全く感じられず…。タフな移籍交渉を頑張る、という熱意や努力はすばらしいのですが、頑張るだけではなく頭を使わないとなかなか成果に結びつかないよ、という典型例でしょうか。

13 キム ゴンヒ ※6月に契約満了で退団

11試合、304分出場(うち先発2)、1ゴール、0アシスト
  • ゴニもバカヨコや大嘉と同じ課題がありました。というか編成的に185センチオーバーの大型FWで運動量がそこまで期待できない選手が3人おり、かつ2列目もそこまで運動量がないというスカッドで、前線からたくさん走ってボールを奪いにいく戦い方は明らかに無謀でした。
  • そうしたタイプ被りの問題もあり、(それこそかつての小柏とのユニットのような)最適な組み合わせを見つけることができず、故障の多さもあって契約満了となりました。

45 中島 大嘉 ※6月に期限付き移籍で退団

6試合、230分出場(うち先発3)、1ゴール、0アシスト
  • 水戸での半年で何かを掴んだように見えたことで、クラブとしての期待は低くなかったと思います。
  • 加えて新監督とのフィーリングは悪くなさそう、というか、割と多弁で考えていることを口に出す(と思われる)大嘉に対してしっかりとフィードバックをくれる上司だったのでは?と思いますし、大嘉だけではなくFW陣全体に対して「横一線でありFWは得点することがアピールになる」とのメッセージが発され、実際キャンプではそこそこアピールしていたようでした。
  • それが最終的には、J3群馬への期限付き移籍も経てこうしたスタッツで終わってしまったのは、大嘉にはジョルディとバカヨコの項目で挙げた課題がそれぞれ存在しており、すなわち①ボールタッチ等の技術力やクオリティ不足、②運動量不足による守備貢献、が大きかったのではないでしょうか。
  • ①については「圧倒」と言いつつDFやbuild-upを担う選手に圧倒できる能力がないコンサにおいては、どうしてもFWにボールを当ててなんとかしてもらう場面が増えますし、②はまんまバカヨコのところで説明したのと同じ現象が大嘉に関しても生じていたように見えました(前半で交代させられるとかがないだけで監督の要求等は同じ)。

  • 「選手を躍動させたい」と常々口にしていた岩政監督ですが、広く守るのは体力的に難しいのか?プレーを区切って、疲れて頻繁に休んで止まる印象がある大嘉に関しては、指向するスタイル的に「圧倒」ではなく身の丈を意識して、捨てるところは捨てる、それこそミドルブロックで守ってFWはハーフウェーライン付近からアクションを開始する24シーズンの水戸のようなチームの方が「躍動」していたと思います。

5.2 1.5列目/2列目(シャドー・攻撃的MF・サイドアタッカー)

<総評>

  • 以前リカルドロドリゲス監督やロティーナ監督が、「日本にはシャドーという独特の役割があるがインサイドハーフやウイングが少ない」みたいな話をしていたことがあり、
  • この見解はコンサにも近いことが言えると思います。ウイングは1v1に強く、いるだけで相手のサイドバックに圧力をかけられる選手。インサイドハーフは中盤から前線までの広範なエリアでプレーしハイプレスのフェーズでもブロックを作って守るフェーズでも、ポゼッションでもフィニッシュでもカウンターでもボール周辺で関与したり多くのタスクを担う。こんな感じだとして、シャドーはより活動範囲が狭く、かつ1v1で輝くというよりは味方が何らか潰れてくれるなどして自身がフリーになったときに活きるような選手。
  • 要はモダンフットボールにおける王様的なのがシャドーで、ヨーロッパではなかなかそういう役割は減っているという指摘だと思いますが、日本ではまだまだ本職がシャドーという感じの選手が残っているし、コンサの編成にも必ずシャドー的な選手が複数入っている。
  • 別な言い方をすると、うまくて小さくてクイックだけどフットボール的には使いにくい選手が前線に多いのがコンサの編成で、モダンフットボール的なところを目指していた(少なくとも掲げていた)と思われる岩政、柴田両監督によってこの編成の問題も顕在化しと言えます。

  • ただ岩政前監督は元来のポジティブさもあり、(彼の言葉をそのまま受け取れば)シャドー多めのスカッドについて好意的に捉えていた節もあります。
  • そのまま受け取る、というのは、彼は「守備の文化がない」と後で言い出しますが、それはシャドーが多すぎる編成なのも十分この”文化”の問題にも関わっているので、どこまで真意だったかはわかりませんが、田中克幸の重用などは岩政前監督の特徴的な選手起用でしたし、彼のフットボール観が表れていたと思います。

  • スタメンクラスでワイドの専門家と言えそうなのは右の近藤くらいで、左は4バックのシステムだと青木やスパチョークが主に起用されます。
  • この本来シャドーの2人を左ワイドで起用していたのは上記の「シャドーが多すぎる編成」の特徴的な現象であり、一概にこうした起用はダメとも言えないというかうまくデザインされれば選手の特徴を活かしたチームにもできるのですが、あまりこの2人がワイドで輝いたとも言い難かったかと思います。
  • そして近藤は、右ワイドで起用されながらもより前に攻め残って、それこそシャドーのような運用のされ方をすることも多く、この運用法は岩政前監督体制での最大の謎でもありました。


7 スパチョーク

31試合、1,833分出場(うち先発20)、2ゴール、3アシスト
  • 得点に絡む能力がこの選手の長所ですが、J1でのシーズンと比較しても出場時間あたりの得点数、シュート本数あたりの得点数とも大きく低下している。パフォーマンスが落ちたとかではなく、これも本質的にはシャドーで周りの選手に守って、活かしてもらう(相手ゴール付近で前を向かせてもらう)役回りしかできないということが問題だったと思います。

  • スパチョークがシーズン序盤にスタメン出場が増えた時期は、チームが3バックの1-3-4-2-1から1-4-4-2にシステム変更していた時期で、当初の2トップの一角(もしくは下り目のFW)としての起用はともかく、サイドハーフとしては「まぁできるといえばできる」程度のパフォーマンス。
  • ワイドから1v1で仕掛けたり、決定的なラストパス(ワイドだとスルーパスというより、カットインからのクロスボールなどになる)が出せるわけでもなく、もしくはサイドバックの攻撃参加を促したりができるというわけでもないし、かといって得意とする中央に寄っていくと今度はワイドのディフェンスやバランスが問題になる。一応サイドハーフという扱いにはなるけど殆どサイドハーフらしい仕事は見られませんでした。ただしポケットを取るプレーは積極的に試みており、この点では戦術理解力を感じさせました。

  • それでも何試合か左MFとして試されたのは、他にこのポジションの候補者が青木、原で、青木のコンディションの問題や中盤起用などもあり有力な候補者がいなかったからというチーム事情にすぎません。
  • 得点に関与するプレーが最大の持ち味でありながら2ゴール、3アシストという極めて凡庸な数値にとどまったのは、まず適正ポジションでプレーする機会が前半戦はほぼなかった(≒そもそもゴール前でボールを持つことを殆どできなかった)、ということが挙げられます。

  • その後3バックへの回帰と程なく監督交代があり、最も適性があると思われるシャドーのスタメン選手に返り咲きましたが、今度は新監督下でボールを捨てる、もしくは前線の選手にボールを押し付けて個々の頑張りでなんとかする…というスタイルになったため、独力で打開したり体を張ったり…が得意ではないスパチョークの存在はどんどん希薄になっていきます。
  • 典型的なシャドーの選手なので、中央に潰れ役は絶対に必要だと思うのですが、この編成においてはバカヨコほぼ唯一の潰れ役でした。そしてバカヨコと中央でユニットを組んだ試合は限定的だったこと、またバカヨコのコンディションが上がっていった時期と、スパチョークにとって都合のよい役割が用意された時期が一致せず、2人の監督ともバカヨコに十分な信頼を与えなかったことなどもあり、数字で貢献することが難しいシーズンとなりました。

  • ただし最終盤に柴田監督下で、前線の選手にはよりプレッシングや前線守備での貢献が求められることとなってからは、スパチョークがではなく他の選手が使われると予想しましたがポジションを守り続けました。
  • あくまでJ2で12位のコンサの中では、ということになりますが、一定のハードワーカーとして認められたのは事実であり、それまでに見せていた姿とは一味違ったものだったかもしれません。

11 青木 亮太

32試合、2,110分出場(うち先発22)、4ゴール、5アシスト
  • シーズンイン当初は1-3-4-1-2のトップ下、または1-3-4-2-1のシャドーとしての期待がありましたが、序盤に1-4-4-2に移行するとこのシステムの左サイドハーフの仕事を割り振られます。ミシャ体制では左WBで起用されており、青木ならこの役割でも違いを生み出してくれるという期待感はありました。
  • その期待通りに1-4-4-2採用後の初戦、5節(vs秋田)ではカットインからの見事なミドルシュートでの得点と、左サイドをえぐってからクロスボールでのアシストを記録するなどさすがは青木というハイパフォーマンス。
  • しかし両サイドハーフが幅をとってからスタートする岩政前監督体制では、青木がサイドハーフとして輝いたのはほぼこの1試合のみ(20節では意表をついたロングシュートでの得点はあったが)。
  • 青木本人がワイドで孤立した状態を得意とする選手でもなくよりボールと味方に近い位置でのプレーを好むことと、後方からボールが運ばれてこないチーム事情もあり、仕事場はより後ろ、より中央寄りとなるよう監督の試行錯誤もありましたが最適解を見出せず、前線のエースとして期待された選手の躍動とは程遠い状況となってしまいます。

  • 中盤センターとしての青木は、ボールを運べないDF(というか家泉)を助けるというよりも家泉が本来行う仕事を引き取って代行していたので、本来青木が担うべき仕事はどこかに欠落してしまいました。これではチームとしては10人か9人でプレーしているようなもので、解決策として適切だったかは疑わしいものでした。

  • 何度かの負傷と監督交代があり、システムが1-3-4-2-1に戻り、柴田監督体制では得意のシャドーのポジションが用意されたものの終盤はベンチスタートが主でした。長谷川やスパチョーク、荒野といった選手の前線起用を見るとオフザボールでの仕事量と質が特に問われていたのかと予想しますが、全体としては先発22試合にとどまり、中心選手として期待された中ではやや元気がなかった印象でしたし、翌シーズン以降も契約が残っていると思われるのでなんとか復活して欲しい(新監督のプレーモデルに合致して欲しい)ところです。

14 田中 克幸

22試合、1,052分出場(うち先発11)、1ゴール、0アシスト
  • オフには背番号14を与えられ、新体制での始動後は「ファンタジスタが好き」と語っていた岩政前監督の寵愛を受け2トップの一角で試され、シーズンが始まってからもポジションを与えて…と、クラブとしてもなんとか彼を本格化させようとする動きを感じ、このシーズンの一推しとも言える位置付けでした。
  • しかしまず前線の選手として扱った時にいうほどのファンタジーアを感じませんでした。相手ゴール付近のラスト25mにおいて
  1. 自身が直接ゴールを脅かす
  2. 味方にシュートチャンスを供給する
  3. 相手のDFを崩す
  • といった仕事のうち何ができたかというとこれというものが思い当たらない。
  • シャドーというある程度、前残りが許容され前線での活動に力を割ける役割だと、フルシーズン出るならゴール+アシストで15くらいは欲しいなという印象ですが、1ゴール(直接FK)0アシストの選手をファンタジスタと呼ぶのは流石に無理がありすぎます(あくまで数字遊びに過ぎないですが)。
  • そして前線の選手としてはゴール前に入っていき得点を狙うようなアクションに乏しいため、特にシーズン序盤にユニットとして扱われることが多かったバカヨコ(こちらももっとゴール前に入れと言われていた)への要求が高くなったり、負荷が大きくなった要因の一つでもありました。

  • ならばポジションを下げてはどうか。シーズン半ばからは中盤センターが主戦場になりましたが、ここでもたとえば
  1. アンカーとしてCBやSBと連動しながら相手の1列目を外す
  2. DFと前線をリンクさせる、味方に仕掛けたりする機会を供給する
  3. インサイドハーフとして前線のスペースに走り込む(≒ポケットを取る)
  4. インサイドハーフとしてハーフスペース付近で何らか決定的なプレーをする
  • のような仕事があるとして、彼が何で貢献していたかというと答えるのが難しくなります。特にこれらの仕事をほぼ全て何らかやってしまう高嶺の隣に立っていると、見ていてこのままでいいものか…と思わされてしまいました。
  • このような状況でしたので、よりリアリスト気味な柴田監督体制の発足後は、故障もあったようですがポジションを失い、荒野、大﨑といったベテランの後塵を拝します。

  • であれば選手として大成する、までいかなくとも左足の才能を活かすためには、もっとプレーの量や動きの力強さを出していくしかないでしょう。もっともコンサの環境でそのレベルのアンラーニングというか一皮二皮むけることが可能かは何とも言い難いですが…。
  • このシーズンでいうと、前線で出場していた時、たとえば克幸が1-3-4-2-1の右シャドーを務めていたシーズンの序盤にコンサはハイプレスが決まらず黒星を重ねていましたが、克幸が絞って中央の選手を捕まえて圧力をかけたりサイドも含めて広いスペースを担当できないこともこの機能不全の要因の一つとみることもできました。
  • 中盤センターとしても、浦上加入、柴田監督就任後はボール回収位置が低くなり、(おそらく監督というより浦上の意向で)中盤センターの選手によりプレスバックのアクションが求められたことで一気に出場機会が減少しましたが、そもそもこうした最低限と言っても良いアクションを一つずつ計算できるようにしていかないと、このままだと仮にカテゴリを下げたりポジションを弄っても厳しそうに思えました。

16 長谷川 竜也

28試合、1,202分出場(うち先発16)、0ゴール、2アシスト
  • 別の選手の項目で「どの場面で具体的に貢献できるのかわからない」みたいなことを書きましたが、長谷川は監督が変わり、監督人事にプレーモデルが極端に依存するコンサにおいても、明確なストロングポイントや役割を見出してチームに貢献するプロフェッショナルというかマイスター的な一面を見せています。
  • すなわち、①ワイドでボールを受けて仕掛けからラストパスに持ち込んでFWにシュートを撃たせる能力(ドリブルして気持ちよくなってへぼいフィニッシュで終わり、みたいなチープなプレーではなく、しっかり中の味方を見てラストパスを出せる)、②先発として前線で体を張り試合を作る能力、を持ち合わせており、シャドーにカウントされながらもマルチに貢献できるため、数字は平凡ながらも前線の選手の中ではこのシーズン特に存在感のあった選手だと言えるでしょう。

  • 特に、夏場に2トップの一角としてスタメンで起用されるようになると、前線で体を張り、一つのプレーに関与して終わるのではなくすぐに次のアクションに連続的に移り、味方を助ける姿は他の選手にも波及したようで、木戸、白井と共にハードワーカー三銃士の登場により岩政前監督体制で毎回見せられていた軽すぎる試合運びにようやく解決策が見つかります。
  • 新監督就任後も引き続きハードワーカーとして、シャドーのスタメンとして重用されましたが、最低限の仕事は必ずやってくれる頼もしい選手ではあると思います。
  • 一方で、トップを目指すチームのシャドーとしては直接得点に関与する能力が物足りなく、確かにこのチームでももっとゴールしてくれ、アシストしてくれ、というのが厳しい要求ではあるのを承知の上ですが、シャドーとしては物足りなさがあるのも事実です。
  • もしくは町田ゼルビアで、先日天皇杯でシャドーに相馬(仕掛け役)とデューク(ハードワーカー)を並べる起用がありましたが、長谷川で1枠を占めるならもう1人にもっと強烈な選手を用意するというのはあるかもしれない(もっとも相馬もコンサの基準だとかなりのハードワーカーにもなりますが)。
  • 次のシーズンも重要な役割を担うとするなら、本来中央の選手ではないことは考慮されるべきではありますが、シュートの精度は改善を望みたいところです。シャドーのスタメンならもう少し得点が欲しいですが、そもそもそういったタイプのシャドーを確保していないこともコンサの編成自体の問題というか疑問でもありますが。

30 田中 宏武

14試合、538分出場(うち先発4)、0ゴール、0アシスト
  • 接触プレーで頻繁に相手とやり合ったり、劣勢やビハインドの試合で自分でなんとかしようともがく姿勢を見せる、ガッツ溢れるサイドアタッカー。
  • 「本職は左WB」と監督に宣言してのシーズンインで、開幕当初に実験室と化していた時期、2-4節では左WBとしてチャンスを得て、ボールを持った時は別にそこまで悪いパフォーマンスではないように思えます。
  • それでもこのシーズンも先発4試合、プロでの4シーズン通算でも先発11試合にとどまっているのは、WBやDF(チーム事情で左SB、練習でもやっていた)で出場したときに、ボールを持っていないときにワイドで最後尾に置かれる選手としてはディシプリンに欠けるところがあるからでしょうか。
  • 後ろに誰もいないシチュエーションでのプレーでは、自分で仕掛けたり打開しようとするだけでなく、もう少し冷静さが欲しいというか、自らはリスク回避しつつ味方の特徴を活かすプレーができることも望ましい。宏武の場合は、ワイドで1v1で仕掛けてくる選手に対応したりといった明白な守備の局面でのプレーもそうですが、例えばトランジションから攻守が入れ替わるような場面で自分がリスクをとって前に出ていくような振る舞いを好むように見えるので、この点でもやはりDFやWBではもう少し堅実性が欲しいと感じるところがあります。

  • なので現状はサイドアタッカーとして勝負することになるのでしょうし、また現状のスカッドでは貴重な逆足サイドのサイドアタッカーでもありますが、より重要な選手となっていくには、中央を見てクロスボールを合わせるプレーの精度を高めることなどに期待したいところです。

31 木戸 柊摩

22試合、934分出場(うち先発12)、0ゴール、0アシスト
  • 前線のトップ下やシャドーでスペシャルな選手として生きていくことは現状難しいとしても、技術のある労働者というプレースタイルならある程度はやっていけそう、という方向性が見えたのは、プロ1年目としては収穫だといえるシーズンだったのではないでしょうか。
  • 開幕2試合でそれぞれ1-3-4-2-1の中盤センターとシャドーの両方でスタメン起用され、新卒の選手としては悪くないスタートを切ったかのように見えますが、ピッチ上の各局面(自陣でのボール保持、敵陣でのボール保持、トランジション、敵陣でのボール非保持、自陣でのボール非保持、セットプレー…)で特徴を出せたとは言い難く、馬場の負傷と移籍や高嶺のDF起用で中盤センターに動ける選手が不足してもシーズン前半戦は出場機会が伸びない状況でした。
  • その後、6月のカップ戦(天皇杯vs大分)での長距離シュートによる得点や、長谷川との併用による前線起用など、不安定な立ち位置を補強する要素にも比較的恵まれ徐々に存在感が高まっていきます。ただ監督交代後は4試合ほどメンバー外となっており、負傷もないようでしたのでこの期間は謎でした(柴田監督がチーム内の雰囲気や空気感などに敏感な印象なので何かあったのかと勘ぐりたくなります)。その謎の空白期間を経て、終盤は中盤センターのスタメン格として浮上します。

  • 改めて中盤センターとして見ると、
  1. 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)
  2. 敵陣でのボール保持(≒崩し)
  3. トランジション
  4. 敵陣でのボール非保持(≒ハイプレス)
  5. 自陣でのボール非保持(≒ブロック守備)
  6. セットプレー
  • ハイプレスの際に、ボールを持っている相手選手に前を向かせない対応ができるようになって出場機会が増えていったところはあるかと思います。
  • あとはこれらの各局面でできることをもっと増やして欲しいのですが、例えば高嶺と組むなら、ボール保持の際に高嶺を前に出させるために木戸がボールを運んだり相手のプレスを回避する役割をより担うとか、敵陣に入った後に高嶺を前に出して後方で予防的なポジショニングをとって相手のカウンターを防ぐとか、新監督体制でどういうチームになるかにもよりますが、できる仕事の量が増えてくると良いでしょう(現状は敵陣でとりあえずミドルシュート、みたいな場面も目につきますので)。


33 近藤 友喜

32試合、2,507分出場(うち先発28)、5ゴール、5アシスト
  • J2ベストイレブンにもノミネートされ、5アシストは青木と並んでチームトップ。ですがプレースタイルはチャンスメーカーというよりチャンスイーターのようなもので、中央の味方にパスを出すよりも、自分が中央に入ってシュートを撃つ場面が目立ちました。
  • 試合を通じ、シーズンを通じ、MFというよりはほぼFWとして前線に残っていることが多く、
  1. 前線でプレッシングに参加するけど一度剥がされた後の貢献があまりない
  2. 自陣でブロックを作って対応する際にあまり関与しない
  3. 組み立てにあまり関与しない
  4. ウイングとしてワイドで相手のSBを攻略し、崩しを担うよりも、中央でFWもしくはシャドーのようにゴール前にいる時間が多い
  • といった振る舞いが目立ちました。出場時間の違いがあるにせよ、シュート55本はバカヨコ(40本、1,755分)よりも多くチームトップでした。

  • 岩政前監督体制では役割を固定しないという方針もあり、ワイドに張るだけではなく、より直線的にゴールに向かう役割も与えた方がチームへのリターンが大きい、と考えたのかもしれません。
  • それは結構なことですし、実際ゴールやアシストもしているのですが、それ以上にボールを持っていない時に常にコンサが少ない人数で対応しているような状況になっていたのは、この近藤の運用法が大きいと言えるでしょう。DFが質、量ともに不足し、負傷者も多く、何よりも序盤から低空飛行が続き、J2の中でも必死にならないと勝てない状況に陥った中で、近藤にここまでの特権的な扱いを与える必要があったのかは(何度も言いますが)謎でした。
  • そしてシーズン半ばに白井が長谷川や木戸との併用で、サイドアタッカーとして別の解決策を見せてくれ、柴田監督体制では白井がスタメンで起用されるようになったこと、その際に柴田監督が近藤に伝えたメッセージはある種の答え合わせでした。

35 原 康介

15試合、460分出場(うち先発5)、2ゴール、0アシスト
  • サイドアタッカーとして、自分の周辺にボールがないときに何をすべきか理解しているというか戦術センスを感じるところがあり、前のシーズンもそうでしたが、リーグ戦での通算4得点全てはオフザボールでの動き出しから生まれている。サイドに張るプレーと中央に入って得点を狙うプレーの使い分けができる選手であると感じます。
  • 一方で今後サイドアタッカーでキャリアを築いていくとして、肝心の、サイドに張った形からボールを受けて仕掛けるプレーはプロ2年目のJ2のシーズンでもまだ実戦級にあるとは言い難く、出場機会が増えるにはまずこの点を向上させる必要があります。25節(vs長崎)などでは左WBで先発した彼のところで、仕掛ける能力がもっとあれば、相手に与える脅威は全く別物になっていたと感じます。
  • 左サイドでのポジションを今後も狙っていくとして、クイックネスは一定はあると思いますので、簡単に相手に引っかからないようなボールの持ち方や、ボールをリリースする(中を見てクロスボールを選択する)タイミングな見えてこればプレーの幅が増えブレイクスルーに繋がるかもしれません。
  • ただ、キャンプでクラブから近藤と相部屋にされ、本人も近藤のプレーを参考の一つとしているような話もありましたが、この先輩はアスリートとしての速さや力強さが売りだとすると原が目指すところは別で、このチームの中では青木のような選手をモデルに「俊敏な青木」みたいなスタイルを目指して欲しいと感じるところもあります。

71 白井 陽斗

28試合、1,346分出場(うち先発17)、3ゴール、2アシスト
  • 開幕時の前線の顔ぶれを見ると9番タイプがバカヨコ、ゴニ、中島、ジョルディ、シャドータイプが青木、スパチョーク、田中克幸、長谷川、木戸、出間。この中で白井は、前のシーズンまでで一定の実績がある選手の中ではおそらく唯一、走力のある(スプリントのスピードとアクションの量を両立)選手。
  • キャンプでもバカヨコとの2トップで試されることが多かったそうですが、前半戦19試合で400分弱の出場時間、0ゴール0アシスト、定位置を確保できず…といった状況は前線の選手の中ではかなり大きな誤算だったと総括できるでしょう。
  • 前半戦の起用法はFWとワイド兼任でしたが、比較的前を向きやすそうなワイドであっても1v1で仕掛けて違いを生み出せず、シュートチャンスでも落ち着きに欠け、FWとしては潰れたり味方を助けることができない、と、適正ポジションが見当たらずこのカテゴリでは厳しいのか?と感じるところでした。

  • しかし後半戦最初の20節(vs藤枝)で近藤の不在により右サイドでスタメン起用されそれまでずっと問題だった1列目が剥がされた後の自陣での対応において、走力を活かしたプレスバックでチームを助けると、右MFとして意外と器用なプレーを見せつつ、バカヨコのポストプレーから長い距離を駆け上がり得点も記録するなどついにこのチームが機能する組み合わせと、前線の選手に求められるハードワークの基準を示す活躍を見せます。
  • その後は柴田監督によって右WBとして「近藤に対し基準を示す役割」として起用され、近藤がそれを理解すると本来の前線に戻り、バカヨコ、マリオ不在の30節(vs徳島)ではリーグ最小失点のチームを撃破する得点を挙げるなど、サイドアタッカーとして先発で出たことで色々な部分が好転し始めた印象でした。

  • ただFWとしては改めて振り返ると、枠内にコントロールしてシュートを流し込む技術には改善の余地があります。3得点はいずれもGKやスペースを見てコースを狙ったシュート、というよりも、スピードや運動能力を活かして直前のプレーの勢いを落とさずにシュートに持ちこみGKやDFののタイミングを外すことに成功したもの。まだ勢いでプレーしている感は否めず、ハードワーカーとしては計算できるけど、ゴール前でのシュートやラストパスに関してはまだ水物といった印象で、J2のカテゴリにも慣れた翌シーズンには改善を期待したいところです。

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残りのポジション(後ろ目の選手)は次回。

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