2020年11月15日日曜日

2020年11月14日(土)明治安田生命J1リーグ第27節 北海道コンサドーレ札幌vsサガン鳥栖 ~残されたミッション~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー&試合結果

A(アジアン).

  • 皆さんこんにちは。
  • リーグ戦27節、コンサドーレは29試合目の消化なので、この試合を入れてもあと6試合。サガン鳥栖は27試合目の消化。
  • 鳥栖のメンバーは、GKは高丘と入れ替わりで加入した朴一圭、最終ラインは、最近は原が4バックの右CBに入ってたけど、今日はエドゥアルドと宮のコンビは久々みたいだね。中野は2003年8月生まれだから17歳。俺たちの小屋松もスタメンだけど、いつもの左でなく右に入っているのは福森を意識かな。一方で、原川は2試合連続でメンバー外なのはよくわからないね。
  • 札幌もこのシーズンは半分捨てて守備練習やってる、ってことになってるけど、鳥栖みたいに若手を継続的に試合に出せるのは意義があるかもね。

B(ベコム).

  • 投資的な側面もあるのかもしれませんが、伝統的なキック&ラッシュから本来志向しているスタイルに転換するには、やはり若くて頭が柔らかい選手を使ったほうがいいとの考えもあると思います。金明輝監督はそういう志向性に見えますし、アヤックスと提携したりしてるのも大きいビジョンがあるんでしょう。
  • 一方で「ゴールの仕方は教えられない」。ので、トップは豊田とかチアゴアウベスをうまく組み入れていきたい、と見えます。
  • あと、鳥栖ユースって練習場と寮が併設で全寮制なのはすごいですね。

A.

  • 練習終わって30分で栄養補給できるのはでかいよね。東雁来だったら、どんだけ早くてもみんな家とか寮で食べるまで1時間半くらいはかかってそう。そっから風呂入って、学校の勉強して、寝るの何時だ…ってなる。全寮制じゃなくてもいいけど、そのあたりの環境は大事だよね。
  • 札幌は、荒野とチャナティップが出場停止と怪我でメンバー外。他は、菅以外はベストメンバーかな。この2人がいないなら、次のオプションとして走れるFWをスタメンから使う、というのが頭の中みたいだね。

B.

  • 前節の記事でもちょっと書きましたけど、9番を排除して成功したチームって歴史上存在するんですかね?ペップバルサもビジャがいて、スタートは左or右で張ってましたけど役割はワイドストライカーで設計されてましたし、ミシャが引き合いに出すクライフバルサも、ストイチコフってリーグ戦で20点近くとる選手じゃないですか。もしくはサリナスとかリネカーとか。

A.

  • バルサはお笑いレベルで、移籍市場での動きがへたくそなのはファクターとしてあるよね。ペップは9番が要らないんじゃなくてエトーとかイブラが嫌い。仮にイブラが来た年にスアレスが市場に出ていたら歴史は違ったのかも。でもスアレスがビジャの役割だったかもしれないし、1度は試しているようにも思う。その辺の話は、この試合と絡められそうなら後ほど改めて考えようか。

1.ゲームプランの推察

A.

  • 鳥栖から見たら札幌はどんなチーム?

B.

  • 金監督は、フラッシュインタビューで、「ロングボールとコンビネーションを警戒」みたいに言ってたと思います。ロングボールをまず挙げてた記憶が。意味合いとしては、他のチームと同じく「蹴りあう展開にしたくない」だと思います。

A.

  • どのチームも考えることは同じ。

B.

  • ミシャはオープンな展開が好きだけど、Squad的に明らかに上のチームにに対しては負けるからしない。Squad的に同等か、札幌の方が上のチームなら同じような話になると思います。

A.

  • 逆足ウイングは気に入っているみたいだね。

B.

  • はい。ただ、ウイングの使い方も含めて、ここ2試合よりもダイレクトな指向性が強いと感じました。
  • 具体的には、札幌はこの試合ほとんどサイドチェンジがなかったじゃないですか。これは鳥栖の対応によるところもあるんですけど。サイドチェンジを蹴ってボールがぽ一致を横切ると、攻撃に時間がかかるのでよりクローズな試合展開になります。一方、縦に蹴ることが多いと、「ボールを早く手放すほど早く返ってくる」。この試合は後者でしたね。

A.

  • じゃあ、そんな話も出たところで、試合の中身に入っていこうか。

2.試合開始時点の構造 

2.1 鳥栖の前線守備と札幌の泣きどころ

B.

  • 鳥栖は先述の通り、なるべくクローズに試合運びをしながら、札幌の隙を突いていく考え方だったと思います。小屋松の右での起用は一例です。
  • その意味では、▼の札幌が後方でボールを保持している時の対応も、ボールを握る時間を増やしたいので前線から圧力をかけるというよりは、札幌ゴールの近くで何かを起こせばビッグチャンスになるから、という考え方だったと思います。「ボールではなくゴールが欲しい」と言えるでしょうか。そう言うと、当たり前かもしれませんが。
A.

  • 鳥栖は前線はマンマーク気味だけど、中盤はゾーン気味だったね。松岡と樋口がボールサイドにスライドして、人よりもスペースを消す。極端には動かない感じの。結果として、札幌はこの対応をされると嫌?
鳥栖のプレッシング

B.

  • ゾーンとかのやり方はそこまで重要ではないと思いますが、対応に困っていたのは事実だと思います。
  • 一番決定的だったのは、札幌はGKの組み立ての関与が極端に少ないので、CBとアンカーだけでビルドアップの目的を達成する必要がある中で、2トップが札幌のCBをしっかり監視するとそれだけで手詰まり感はあったかもしれません。
A.

  • 菅野は「味方に渡して終わり」が多いよね。

B.

  • はい。パクイルギュがそうしていたように、うまく前進できないときにGKに戻してやり直す、もしくは相手がマンマーク気味なら、GKだけフリーになれるときがあるので、そこを起点にフィードで前進する、とかそういう機能がないと、今日ではボールを運びづらくなっています。菅野はシュートストップは凄いんですけど。
  • 後は、CBについては宮澤は戦術理解には優れるけど、あまり機動性がない。キムミンテは逆で、相手FWと駆け引きをするよりもダイレクトな選択が多い。この2人に、鳥栖の2トップがくっついてくると、個で剥がしたりできないので、札幌はサポートが必ず必要になります。
  • ここでCB任せにせず、2on2の状況からGKを含めて3on2を作ってプレーできるGKはミシャも切望していて、小次郎はその点で期待が大きいのだと思います。
  • ▼は実際にあった、11分頃の場面ですが、GKを使えないのでセーフティな選択で蹴って終わり、にしてしまいました。
CBの次の展開がなくビルドアップがすぐに終わる札幌
A.

  • 「ボールを早く手放すほど早く返ってくる」状況ね。

B.

  • アンロペもドウグラスオリヴェイラも、この手のボールを収めるのはあまり得意じゃないので、蹴ると50:50というより、鳥栖に分がありそうでしたね。札幌はそこでボールを渡して終わり、みたいな。鳥栖は左利き同士、エドゥアルドと宮をCBに並べたのはこの展開を意識していたと思います。

2.2 ゴール前のスペーシングの欠如

B.
  • 後は、本来ビルドアップって、点を取るために優位な状況を作った状態で、前線の選手にボールを渡す必要がありますよね。
A.

  • ジェイがいれば、まずボールを収めてくれるから、ビルドアップ自体も適当な形でいいい(放り込んで終わり)し、ゴール前でもスペースなくても勝てちゃうことがあるから、崩しもぶっちゃけ雑でもなんとかなるよね。

B.

  • 特に後者の話で、札幌のフィニッシュはクロスボール主体ですけど、ノースロンドン生まれのライオンハート・ジェイボスロイド様が不在なら、適当にクロスを蹴っても誰も競り勝てないし、シュートを枠内に打てないんですよ。
  • 荒野だろうと、駒井だろうと、ドウグラスオリヴェイラだろうと。ジェイがいないなら、適当じゃない、デザインされた形でクロスやラストパスを供給する必要がある。
A.

  • 荒野は今日いないけど、アンロペもドウグラスオリヴェイラもあんまり空中戦に強くないってなると、足でシュートを撃てるようなボールが本来は望ましい。

B.

  • そう考えた時に、ヘディングシュートと違って、足でシュートするならゴール前にスペースがないと無理ですね。いや、厳密にはヘディングでの得点もスペースがある状態で生まれることの方が圧倒的に多いんですが。わかりやすく言うとそういうことで。
  • クロスボールって、どのスペースを攻めるか?という観点では、主に3パターンしか攻め方はないんですよね。
  • ①GKとDFの間に出す。

  • ②ファーサイドのスペース。
  • ③マイナス方向のスペース。

B.

  • ただ全般に言えるのは、守備側が8人とか9人でゴール前にいる状態だと、どこにもスペースがなくなり、どんなクロスボールでもすごく難しい状況になるんですよね。相手のDFをボーイに変えるクオリティがない限りは。
  • ですので、クロスボールがどこを狙うか?という以前に、ゴール前にどうやってスペースを作るか、相手のDF枚数をどうやって削るか?は考えておく必要があります。
A.

  • 最終的にゴール前にスペースを作るにはどうするか、は、前に書いた、ピッチの縦幅を使う話だね。

B.

  • 基本はそうです。この時に札幌は問題があって、GKをビルドアップで使えないから、ピッチの縦方向の狭いエリアでボールを動かすしかないし、しかもボールホルダーに圧力強めに来られると、前に蹴ってボールを放棄しがちです。
  • 最終的には鳥栖はクロスで来るのはわかっているので、自陣に侵入されてもゴール前に枚数を確保すれば、狙いどころになるスペースは全部消せるので、札幌のサイドアタックって全然怖くなかったと思います。最終的にゴールを守る、という目的があるので、前線守備が上手くいかなそうな状況ではこちらに切り替えて目的達成をする考え方でした。
サイド深い位置から仕掛けても中央にスペースがないと攻略できない

A.

  • 札幌のCBを自由にさせないと、鳥栖は前線守備だけじゃなくて、自陣ゴール前の対応も含めてかなり楽になる、っていう構図だね。

B.

  • はい。雑に言うと、札幌のCBに仕事をさせなければ、鳥栖陣内に侵入してきても、それは適当な形・適当なボールでしかない。適当なボールでもゴールに飛ばせるクオリティがあれば別ですがそうではない

3.戦ってはいるものの

A.

  • そろそろ試合展開に。先に書いたような事情もあってロングボールを敵陣に蹴ることが札幌は多め。鳥栖は、それに比べるとパクイルギュが仕事ができるので、持ったら全部蹴る感はそこまでしない。

B.

  • その中で、どっちかというと2トップが地上戦で勝負して何度かセットプレーを得てましたね、札幌は。13分頃のドウグラスオリヴェイラが抜け出してパクイルギュに倒されたやつとか、17分頃のアンロペが中央で反転から仕掛けたやつとか。鳥栖のDFは2列目~3列目はゾーンで対応するので、アンロペが落ちるとエドゥアルドはついてこない。それで前を向けていました。
  • あと25分にはルーカスが中央でトランジションからドリブル、これもFKを獲得しますが、ルーカスは総じてスタートポジションが低いですね。最前列で張ってSB森下と勝負、というより、ゴールに斜めに入っていくポジションにいます。ボールを待っているというより、迎えに行っているともいえるので、これも速くてオープンな展開になりがちですよね。

A.

  • 札幌のウイングバックのポジションが低い理由は?。

B.

  • 鳥栖のサイドハーフが札幌の両サイドのCB(福森と田中)に強めに当たるので、そのサポートのために下がってボールを受けようとしていたのはあると思います。ただ、WBが受けたところには鳥栖のSBが出てくるので、ここでボールが落ち着かない。結局セーフティに蹴って、イーブンなボールを競り合う雑な展開になっていました。

A.

  • 鳥栖のシュートチャンスはカウンター主体だったね。

B.

  • チアゴアウベスが前を向いたときから始まることが多いですね。ただ、チョドンゴンがミンテにあまり勝てないと、ターゲット訳をチアゴがシェアする格好になるので、そもそもあまり前を向けない。それでもチアゴが持つと、小屋松が追い越していくとか、右サイドからの攻略を意識していたと思います。
  • 小屋松と本田のポジショニングはハーフスペース付近で、SBが幅をとってましたね。小屋松ってもっとウインガーっぽい動きをしませんでしたっけ?彼がサイドに張るよりも中央で勝負していたのも含めて、鳥栖は速くてダイレクトなアタックの志向だったのだと思います。


4.ゴールの仕方を知る男

A.

  • 後半の最初10分で鳥栖に3回くらいシュートチャンスがあったけど、いずれもカウンターや札幌のミスからで、崩されたという感じではなかったね。

B.

  • 特に狙いとか構図が変わった感はしませんでしたね。

A.

  • 55分、ちょうど後半スタートから10分で、CKからチアゴアウベスの得点で0-1。

B.

  • ボールを見てすぐにファーに流れてましたね。その前のカウンターアタックでもチョドンゴンと入れ替わってニアからファーにポジションをとってシュートでした。あの角度から左足が得意なんでしょうかね。
  • 得点自体は脈略がない形からだったと思います。このメンバーだと札幌は、セットプレーの守備微妙だなってのはありますが。高さはあってもあまりマークが上手くない選手がいますよね。

A.

  • 直後に札幌はジェイと白井が入って、ルーカスが右に。その右のルーカスの突破から、ジェイとワンツーっぽい形で中央に侵入して、ジェイの得点が63分。なんだか冒頭の話とつながったね。最後はストライカーが不可欠みたいなやつ。

B.

  • シュートの前のコントロールはさすがというか、相変わらず「ゴールの仕方を知っている」選手ですよね。ルーカスを右に動かしたのは、ジェイが前の試合で、クロスはインスイングでよこせ!ってリクエストしていたからなのか。白井との兼ね合いならこれしかないのかもしれませんが。

A.

  • 結果的には、鳥栖はDF-MFの間はあまり人に強くいかないって話だったけど、そこから得点が生まれたともいえる。

B.

  • それもありますね。この試合を通じて、あそこは確かに鳥栖の狙い目ではあるなと感じました。

A.

  • 鳥栖は68分に2トップを入れ替えて、林と豊田の並びに。札幌は74分に石川と中野。

B.

A.

  • 後は恒例のオープン合戦か。

B.

  • いつも以上にそんな感じでした。鳥栖は、その展開を見越してダイレクトなカウンターだけでなくて、クロスボールに強い豊田を入れる時間を見ていたんだと思います。

A.

  • この辺にしておこうか。


雑感

B.

  • お互いに戦ってはいましたが、フットボールとしては大味、両ゴール前の個々のクオリティで大部分が決まるような試合展開だったと思います。お互い勝ち点1でいいならこれでもいいと思いますが、そうでないなら、雑な言い方をすると、戦術的に工夫が必要ですね。
  • あんまり個別の話をピックアップしてもしょーもないと思ったので、前から書いている話ではありますが、マクロな部分…札幌のビルドアップって足りないね、という話を再掲しました。

A.

  • このシーズン1年かけて前線からの守備を仕込んで、撤退守備以外もできるようにする、としている。ビルドアップは2021年以降のミッションになる?

B.

  • それはあるかもしれないです。ただ、最終的に解決するのはミシャじゃないかもしれないですね。他のコーチングスタッフなのか。今いない選手なのか。ビルドアップって、色々なチームを見ていると少なくとも半年もあれば形になるので。もうミシャで3年近くですからね。

A.

  • 形がないわけではないよね。

B.

  • そうですね。あるけど、皆がイメージする典型的な、長いサイドチェンジとかを使って敵陣に入っていくミシャスタイルってJリーグ全体においても対策されていますし、札幌の今のスカッドともアンマッチになってきています。加えて2020シーズンに取り組んでいるディフェンスとも親和性が微妙な感じが。

A.

  • 川崎やマリノスみたいに好戦的というか、ボールを持とうとしてくれるチーム相手にはディフェンスからゲームを作れるようには、ある程度なってきているけど、ボールをそこまで持とうとしないチーム相手には自分たちから組み立てていくしかないからね。

B.

  • そうですね。その辺、あと数試合まだ残っているので、とりあえず楽しみましょう。それでは皆さん、また会う日までごきげんよう!

2 件のコメント:

  1. いつも拝読しています。

    疑問でしたが、記事を見てウーゴ獲得の意図もなんとなく見えてきた感じがします。
    ただ降格枠4のシーズンに高さで殴ることができるジェイを放出するのもリスキーなのでどうするのかな~と

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    1. 見ていただいてありがとうございます。

      編成の話で言うと、あくまで現場サイドとしては、ジェイ選手にせよウーゴ選手にせよ、現段階では「オプションが増えるのは基本的にはプラス」、ぐらいで考えていていいと思います。普通のチームだと、抱える選手の構成がアンバランスだと色々揉めたりするのを聞きますが、ミシャはその辺のマネジメントはできる、として。
      個々のパフォーマンスで言うと、今の時代エアバトルに強いFWは貴重なので、ジェイ選手は重要だと思います。

      そこに経営的な視点が入ってくると、コストパフォーマンス等の観点が介在ます。私はジェイ選手の今の稼働率(と、推定年俸)だと、リーグ中位~下位のチームにとっては「ぜいたく品」だなという印象はあります。ただその辺はフロントもわかっているので、金額は抑えめで契約延長を打診するんじゃないかと予想しています。

      昔のコンサドーレだと、狙っている「若手選手」って言っても高卒5年でほとんど出てない、市場価値の低い23~4歳くらい(山下選手が典型でしょうか)だったと思いますが、今のターゲットは岩崎選手のような年代別代表クラスだとすると、それを引っ張ってこようとするなら、違約金も含めてかなりお金が必要になる。手っ取り早く強化するなら、外国人選手の方が安いというシチュエーションもあるんじゃないかと見ています。

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