0.スターティングメンバー
スターティングメンバー&試合結果 |
A(アジアン).
- 今回もこの形式で行くんだ。
B(ベコム).
- はい。私自身が過密日程なので。しばらく楽したいので、この形式になると思います。
A.
- FC東京さんほどではないと思うけどね。
B.
- それはありますね。まだカップ戦2つ残ってますし、ちょっとこれはないな、って感じの日程ですよね。プレミアリーグみたいな。
- 個人的には、ルヴァンという大スポンサーの存在や、札幌みたいなクラブでもタイトルを獲得するチャンスが散在することはメリットなんですけど、世界的に見てもリーグカップと協会カップが併存しているのってイングランドとか一部の地域のみじゃないですか。その中でも日本はルヴァンカップってH&Aでグループステージからやるのは本当に大変な日程になりますよね。試合数減らすとスポンサー的には難しいんですけど。
A.
- 長年このスキームだし難しいね。
- スタメンは、東京は三田じゃなくて内田、それ以外はベストメンバーって感じだね。札幌はアンデルソンロペスがスタメンかな?と思ったけど、川崎戦と同じだった。
B.
- 東京はこの後、鬼のような日程ですが、ルヴァンカップが中止になったこともあって、この試合はほぼベストですね。そして、内田がものすごく重要でしたね。
- 札幌としては、前節の川崎ほど危険というか、前線の守備強度が下がったら即死レベルのチームではないので、そのあたりは人を変えることで調整、というのが考えられましたが、結果的には「うまくいっているチームは変えない」ということでしょうか。こちらはサブに外国籍のFW3人が並んでいて、ややアンバランスな印象はありましたね。
1.ゲームプランの推察
A.
- 戦略論で見るとお互いどうだろう。
B.
- まず、お互いにボールを持たない方が都合がいいチームにシフトしてますね。東京は元からそうですが、札幌は今シーズン途中から。
- 東京は一言で言うと、相手のミスに乗じて速攻で点を取るチームですね。あと、ストロングポイントは4バックなんですけどクロスに対して中央が固い。長谷川健太監督が好む守り方ですけど、4バックはペナルティエリア幅から極力動かさないで、CBと長身のGKで中央封鎖を徹底しています。1-4-4-2で守りますが、元々フィニッシュがクロスボール主体の札幌としては相性があまりよくない相手です。
- 戦略論の話をすると、札幌に持たせて勝手にふらふら攻め入ってきた隙をついてカウンター。札幌が頑張って、このプラン通りにいかなければ交代カードで調整しますが、最後までガードは緩めないチームだと思います。
- ボール保持時はあまり細かい約束事がなさそうですね。どっちかというと、ボールを失うシチュエーションをコントロールしたい。フィニッシュはある程度、個々のアイディアに任せるよ、として裁量を与える。但しちゃんと戻って来いよ、戻れる位置でプレーしろよ、みたいなトレーニングをしているんじゃないでしょうか。妄想ですが。
A.
- 川崎と東京はかなりテイストが違うチームだけど、札幌は川崎戦と同じメンバーだった。ゲームプランも同じ?
B.
- 共通項は一部あると思います。ディフェンスはある程度、方針が見えたけど、点を取るにはオープン展開からわちゃわちゃやるのが一番可能性があって、この2年間仕込んできた5トップで攻撃するやつは、ディフェンスとうまく融合できてない状態ですよね。
- なので、後半に前線の選手を投入してオープンな展開にするのは同じだと思います。それまでの時間はピッチを広く使う、要するに簡単にゴールに向かうな!ってのも、川崎戦と同じイメージでプレーしろ、って感じだったと思います。ミシャ的には。
2.試合開始時点での構造
A.
- 次はゲームの構造の話だね。東京の内田がキープレイヤーだった。
B.
- はい。前節の記事を読んでない人もいると思うので、札幌の狙いを再度図示するとこんな感じですね。
- スタメンでは、中央に勝てる選手を最初から置いてない。森重と渡辺に対して捨てている。波多野もハイボール処理は得意そうでしたね。結構GKが変わる時って、違うタイプの選手が出てくること多いと思うんですけど、林も波多野もサイズがある選手で共通してますよね。
- なので、ボールをワイドに動かす(≒ピッチの横幅を使う)。相手がスライド対応が乱れてきたところで中央にボールを入れて仕掛けてみよう、という攻め方になります。
- ミシャが言ってた、ストイチコフが右、ラウドルップが左、もこういう考え方で、ウイングを逆足サイドに置くと、聞き足で持った時に縦突破よりもピッチ中央…反対サイドを見ることができるんですよ。縦突破って結局最後は中央にクロスを蹴って終わるので。そうじゃなくて、すぐにクロスを蹴るんじゃなくて、ボールを長く持って、左右に揺さぶりたい。
札幌の設計(左右に揺さぶってから中央を攻略) |
A.
- 東京は、内田がいるとどうなる?
B.
- 彼の仕事は、金子のところで札幌のボール循環を遅滞させることでしたね。札幌左サイドから金子に渡りそうなところで可能ならカット。無理なら小川とのダブルチームに切り替えます。小川が縦切り、内田が中切りで金子はかなり大変になりますね。それでもスタッツ上は結構ドリブルは成功していたみたいですが。
- ともかく中切られていると、金子は左足で持ってカットインしながら逆サイドを見る時に常に内田がいるのでうぜーなって思ってたんじゃないでしょうか。
距離を無視する福森のサイドチェンジを寸断したい東京 |
— アジアンベコム (@british_yakan) November 11, 2020
88 - 金子拓郎はFC東京戦で8回ドリブルを敢行。うち7回成功。成功率は87.5%。ニャース。 pic.twitter.com/8EzOnftIO7
A.
- 普段はディエゴが左で、右が三田って配置もあるようね。三田が右なのはカウンターの際にシュートに行きやすいとか、か。
B.
- ディエゴを右に持ってきて、内田を左にしたのは福森を意識でしょう。ピッチをワイドに使うサッカーってキック力が極めて重要になります。福森は狙ったところに蹴る精度もそうですが、キック力とかパスのレンジが日本人離れしている。
- 札幌の他のサイドプレイヤー…ルーカス、金子、田中のサイドチェンジなら、ピッチを横切っている間に東京のSBがスライドで対応できていました。福森はそうはいかないので、小川が最初から金子に寄っていると、今度は駒井が空いてしまうので、2人体制で対応が必要だったのだと思います。
A.
- 札幌はどうすべきだったの?
B.
- 東京は、形は1-4-4-2なんですけど、マンマークというか人を決め打ちで守る傾向があるんですよね。反対サイドのSBは、CBの隣のスペースを守るよりも大外の人を意識している。中盤センターは対峙するMFの選手を捕まえる。だから、人とボールを動かしていると結構スペースが中央にできます。
- この中央のスペースを使いたかったですが、チャナティップが30分で下がってしまったのは痛かったです。東京相手には中央で彼が受けて反転して展開、のパターンが毎回有効でしたので。ただ、チャナがトップだと、トップの仕事をしようとするので、機能していたかは微妙ではありますが。
- それでも、コンセプトとしては外⇔外で回し続けると難しいので、外⇔中⇔外、という形を狙いたかったですね。
3.それしかない
A.
- 試合展開を見ていこう。前半あまり札幌はシュートシーンがなかったね。
B.
- ひとつ言えるのは、川崎戦だとオープンまでいかない、”半オープン”くらいな展開から荒野がボールを運んで敵陣に侵入していましたが、そういうのはあまりなかったですね。これは中盤の攻防というか、雲行きみたいなのが影響していたと思います。
- 東京は最終的にカウンターできればいい、というスタイルで試合を進めるのもあって、”敵陣にどうやってボールを運ぶか?”としたときに形はあまり重要じゃない。セーフティにボールを逃がす、処理する方がプライオリティが高くて、ロングフィードを多用します。▼の図は渡辺からで描いてますが、GKの波多野が蹴るのも多かったです。
- この時に、ターゲットがディエゴオリヴェイラ。ディエゴはマンジュキッチというより本田KSK選手っぽい使い方だと思ってます。ターゲット以外で、マンジュキッチの持つ役割は大抵のチームでクロスに対して大外のフィニッシャーですけど、ディエゴは、よりチャンスメイカーとして中央で前を向かせたい、という面もあるので。
2トップ相手にはフォアリベロ宮澤が動くので分が悪い |
- この、ディエゴが競るとかから始まる展開で、札幌はアンカーの宮澤がCBに下がって東京の2トップを見ていると、中央にスペースができます。東京はここに、誰って決まってないんですけど選手が出てくる。荒野と高嶺はこれをケアしないといけない状況がまず、ありました。荒野も高嶺も動くのが好きですけど、この構図があると後ろ方向への意識が強くなるんですよね。
A.
- 川崎戦だと荒野が自由に動いて、結果的にマークが外れてフリーでボールを持てていた、って感じだったよね。
B.
- はい。ただこの試合では、荒野が流れの中で下がってもあまりフリーになれなかったですね。これは、一つは東京もマンマーク気味の対応で、荒野がどこにいても安部かアルトゥールシルバが出てくるので簡単に前を向けない。もう一つは、出てない方が中央を守る関係になっていたので、中央にそんなにスペースがなかった。
- 最終ラインも含めて、中央を固められてスペースがなくなると、荒野からスピードアップするパターンは発動させることができなかったですね。
荒野が下がると早めに捕まえる東京 |
A.
- スピードアップできないと、前に運ぶのに苦労するね。
B.
- そうなるとスペースを探してボールを動かします。スペースはサイドにあります。札幌がサイドにボールを動かした後は…東京は「1.」に書いたように万全の対応ができていたと思います。
- 監督コメントを見ても、荒野が浮くのは気にしていたようですね。後は、ミシャはいつも通り「うちのほうが決定機が多かった」と言ってますが、健太監督はボックスに侵入した回数を意識している。これは私が常々書いている話と一緒ですね。
A.
- 徹底して良さを消されてたね。そうなると、先制点を与えたのはいつも以上に痛かったね。
B.
- 東京の狙い通りの展開だったと思います。札幌は一つずつ、誘導されて、この時は田中がダイレクトでボールをはたいたパスが奪われて始まりました。
- これは田中らしくなかったですね。ダイレクトパスって有効に見えますけど、相手を引き付けているからダイレクトではたくと剥がせるんであって、この場合は普通に中央に読まれている状態でパスしてしまって、中央で失って10秒でカウンター、という格好のおぜん立てをしてしまいましたね。
- 後は、安部が宮澤を誘導して、逆を突いたスルーパスも上手かったと思いますし、東京ぐらいスカウティングが丁寧なチームだと、キムミンテ以外には札幌はあまり足が速い選手がいないのも考えて、永井はポジショニングしていたと推察します。
永井ゴーゴーゴール⚽#FC東京 #fctokyo #永井謙佑 pic.twitter.com/mNRhdCy17a
— *june typhoon tokyo* (@junetyphoontyo) November 11, 2020
A.
- 21分で1-0。相手はカウンターしたいチーム。やっちゃいけない展開にしてしまった。スコアが動いたのもあって、札幌は川崎戦と比べるとちょっと攻め急いでいた印象があるね。
B.
- 荒野が消されている分、札幌はチャナティップが運び役を担おうとしていました。↑の健太監督が荒野だけでなく駒井とチャナティップも名前を挙げていますが、札幌は基本的にそこまでの流動性はなくて、あくまで2トップは2トップだと言っていい。ですので、東京のマークはCBが駒井とチャナティップを見るようになっていました。
- で、そのチャナティップが左サイドに流れて、ルーカスと絡むような感じでボールを運ぼうと頑張っていたと思います。結果的に、これは渡辺を誘い出すことにもなります。30分過ぎで交代してしまったのは残念でした。
A.
- ベンチにいるFWの中ではアンデルソンロペスが一番バランスがいいから、入れるとしたらアンロペなのはわかるね。
B.
- はい。それは言えてますね。アンロペは1人でカウンターも一応できるし、ターゲットにもなれるので、この変化でピッチ上の雲行きがどう変わるか、前半のラスト15分間は見ていたと思います。
A.
- 変わったと思う?。
B.
- 変わらなかったですね。ですので、後半からドグちんことドウグラスオリヴェイラを入れて、試合に火をつけようとしたんだと思います。繰り返しますが札幌はオープンにしないと点が入らないので。
4.空気は湿ったまま
A.
- そういう意味では、川崎戦はオープンになりそうなタイミングで点を取りに行った、という交代だったけど、この試合はまずオープンにするために選手を変えた、とも言えるかな。
B.
- そうですね、両方の意図ですね。前線にサイズのある選手を投入すると、そこにボールを放り込む選択ができる。結果的にこれが東京のCBによって跳ね返されようと、ボールが行き来する展開になりがちで、必然と選手間が開いてオープンになります。ミシャは点を取りに行く状況では積極的にこの手を使います。
A.
- それで、試合に火が付いたかというと。
B.
- いや、そういう感じはしなかったですね。東京はカウンターサッカーっていうか、相手のミスをトリガーにして攻めるサッカーだと思うんですよ。意図的に自陣に引き込んで、きれいに奪って一気に攻める、みたいなのよりも、ミスを誘って、最少人数でアタックする。だから、札幌が放り込みを増やして、札幌だけアンバランスになっても、東京がそんなにシュートまで持ち込もうとしなかったというか。
A.
- 交代もかなり慎重だったね。
B.
- まず63分にFWのレアンドロを下げて高萩。敵陣で守っているときは1-4-4-2の2トップになりますが、自陣に引くと、トップ下にスライドして、トップの永井と2列目とのスペースを見る役割でしたね。
- そして75分にアダイウトンを永井に、原をディエゴオリヴェイラに替えています。原はルーカスフェルナンデスのサイドに置いて、ここも完全に蓋してしまおうというものでした。これは、札幌がサイドから放り込んでくることを見越してましたね。ルーカスの突破もそうですし、福森が後ろから放り込んでくるのも視野に入れていて。
A.
- ジェイが入ったのが76分で、東京の方が先手を打っていたね。
B.
- はい。メンバーとこれまでの試合展開を見ていれば、札幌が最後何をやってくるかはバレバレですよね。これで手を打たない方が問題がある。
- そのジェイが入ってからは、札幌はゴール前で大渋滞でしたね。
A.
- 1トップ2シャドーだと思ったんだけど。
B.
- ゴール前ではそうなるイメージだったと思いますが、結果的にはジェイが2トップの左みたいなポジションに終始して、ドグちんと被りまくりで無駄でしたね。
- あと、あれは守備に転じた時に、結局2トップにしないとマークが合わないので、それはジェイとドグちんの2トップなのか、ジェイとアンロペの2トップなのか、多分みんな別のイメージで動いてて調整が難しかったんですよ。
- ジェイを入れて殆ど札幌的には投了だったので、この辺で振り返りは終わりましょう。
雑感
A.
- いつも通りまとめようか。
B.
- もうシーズンが終わりかけているところで、新たな守備様式みたいなものは示しつつあるシーズンですが、それが攻撃と両立できてないのはずっと課題ですね。だからゲームプランとして60分くらいで、分割して用意しないといけない。その時に、外国籍のFWの選手はどっちかのプランでしか使いづらいから先発起用がしにくい。かといって、日本人選手+チャナティップだと純粋なFWがいなくなる。経済活動と感染防止策の両立みたいな感じで苦労していますね。
- FC東京はその辺を、前線の個人技で完結できる外国人選手で補っていると言えます。そういう意味では「首都大都会のビッグクラブFC東京の方が資金と選手がある」のは間違ってない。
A.
- それはどうやったら両立できる?
B.
- 何度か書いてますけど、ビルドアップの質の向上ですね。単に敵陣に運んで終わり、じゃなくて、なるべく敵陣で待つ選手がプレーしやすい状況を作ったうえでボールを届ける。もっと突っ込むと長くなるんで年末にでも書きますが、GKとCBが相手の1列目と駆け引きできる必要があります。
- そうすると、前線の負担が減って、相手をかわしたり外したりするタスクが少なくなる。それでも点を取る形を持っているFWは絶対必要だとは思いますが。
A.
- 長くなりそうな話だね。また今度にしましょう。
B.
- はい。それではみなさん、また会う日までごきげんよう!
いつも拝読しています。
返信削除チームの発展プロセスとして高い位置でボールを奪えるようになりポゼッション率があがると中盤にスペースを作るプルアウェイが得意なボックスストライカーが必要なのはよく分かる試合でしたね。
川崎との試合後にウイングバックのサイド変更について左利きのストイチコフを右に、右利きのラウドルップを左にしたバルセロナを例に挙げていましたが、当時のワントップはロマーリオだったと記憶しています。
ウーゴはロマーリオのイメージなんでしょうか。
ビルドアップで引きつけるのは深井が上手かった印象ですが、最近はまったく出番がないですね。怪我なのか分かりませんが・・・。
見ていただいてありがとうございます。
削除色々書かれていますが、まず、コンサドーレは高い位置でボールを奪っているというか、実際は高い位置から1対1で圧力をかけて限定させて、蹴らせて中盤で回収している、ぐらいが適切かと思っています。トータルフットボール革命当初は確かに高い位置で奪いきる意識があったっぽいですが、結局その奪いきるまでは頓挫して、現実路線に回帰したのがここ数か月だと認識しています。
クライフバルサは元々ダイヤモンドの中盤と、幅をとるウイングで構成されていたのは有名な話で、
https://www.youtube.com/watch?v=7NZ0byEyeOA
ただこれだと9番がいないのが問題で、ロマーリオを1年だけ入れて実験したと聞いています。コンサドーレとは類似点も相違点もありますが、最終的には点が取れる選手は必要なんでしょうね。