2020年7月26日日曜日

2020年7月26日(日)明治安田生命J1リーグ第7節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~机上論は現実へ~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー&試合結果
  • マリノスはオナイウではなく、エジガル ジュニオが2試合連続のスタメン出場。SBは高野ではなくティーラトン。仲川、マルコス ジュニオールはいずれも欠場でした。
  • 札幌はFWを誰も置かない予想外の形でした。チャナティップではなく、中野を中央に置いたのもポイントです。土曜日朝に「トレーニングで数人負傷者が出た」との情報がありました。メンバーを見ると、福森と田中を指していたのだと予想されます。福森も勿論ですが、プレッシング戦術でも撤退守備でも対応できる、新人なのにルーキーな田中の欠場が痛いところです。恐らく福森の代役に高嶺を立てることから、このメンバーが逆算されたのではないでしょうか。また早坂は初のベンチ入り、中野が初スタメン。アンデルソン ロペスはこの週になってようやく精神と時の部屋からチェックアウトしたとの情報があり、翌週からメンバーに加わってくるかもしれません。


1.両監督の頭の中を予想する

  • 札幌のこれまでのマリノス対策は、相手の3トップに対して普段より1人少ない4バックを用意し、最低限のリスクヘッジを担保しながらなるべく前線に人を投入し、ビルドアップを阻害してリズムを乱していこうとの戦略でした。
  • ただ、ミシャは過去に「平畠会議」でも語っていましたが、基本的に同数守備を好みます。一般にサッカーは「攻撃側が有利なので、守備側は相手よりも+1の人数で守るべし」と言われていますが、そのセオリーに反する哲学の背景というか、要するに「後ろに置く人数が多いほど前に割ける人数が少なくなる」ということを言いたいのだと思います。

  • なので、福森に代えて高嶺を起用せざるを得なくなったこの状況は、ミシャがチームを理想に近づけるチャンスだったはずです。福森は配給能力に優れますが、守備面では高さと強さは水準以上ではあるものの、背後への速さや、そもそも攻撃偏重な選択が多いため、いてほしい場所にいない(その場合、カバーしているのは菅や深井)という問題があります。
  • 攻撃(シュートに持っていく部分)は何人かの限定的なメンバーでやることもできますが、基本的に守備は全員でやるものなので、この重要なピースの欠如は機能性に大きく影響します。
  • 高嶺はいてほしいところにいてくれる(ポジションから逸脱したら、すぐに戻ってくる)ことと、相手のボールに関与しようとする選手に対して速く当たれるのが魅力で、前線からプレスをかけていくやり方との相性は良好です。マリノスはスペースを突くのが巧いので、あまり前から行きすぎると後方にスペースができてしまい危険ですが、プレスの強度をこれまで以上に高められるなら、損得としてはプラスになると考えたのではないでしょうか。
  • そしてプレス戦術は、体力的に90分続けることができないという問題があります。今シーズン過密日程下の各チームの試合を見ていると、概ね60分が限界でしょうか。体力が落ちた後のプランも用意しておく必要がありますが、ゴールを守る手段はいつもの5バック、攻撃に転じる時にはジェイを投入してボールキープやフィニッシュで何とかしてもらおうという考えがあったと思います。また、前半から、時折5バックで守っていたのはこの体力面も考えてだったと思います。
  • マリノスについては特段の札幌対策は見られませんでした。いつも通り、相手がボールを奪いに来るなら自陣で1列目を突破して前線に展開。敵陣に侵入後はハイラインを保って押し込み続け、守備の負荷を強いるやり方です。ものすごくナンセンスな話をすると、札幌にFWがいないことが予想できていれば、CBの伊藤の人選は変わったりはあったかもしれません。

2.基本構造

2.1 ボールの渡し方

  • 試合を通じたボール支配率は、ほぼ1:2でマリノスが多く、これはサッカーにおいては「一方的なボール支配だった」と言えます。マリノスにとっては、ボールを保持する展開は想定内ですが、札幌もこのことを覚悟して入念に準備をしてきました。

  • 札幌はトップにジェイも(ドゥグラス改め)ドウグラス オリベイラも置かない、所謂ゼロトップ的な布陣で対抗します。マリノスが自陣でボール保持する時に、以下のようなマッチアップになり、各ポジションで枚数が同数になり、誰が誰をマークするかが明確な状態になります。最初、中央からスタートする時は1人ずつ選手を捕まえ、マリノスがサイドに展開した時は、ボールと反対サイドの選手は中央に絞り、スペースを産めるようにしていました。
  • マリノスはCB2人と中盤3人のシステムなので、1トップ2シャドーよりも2トップ気味の布陣にし、中盤に3枚を置くこのシステムの方が選手を捕まえやすくなります。
マリノスにボールを持たせる札幌の対応(中央にFWは不要)

2.2 オプションではない、ルールだ


  • 試合に勝つことが最終目的だとして、そのためにはゴールを奪うこととゴールを守ることが必要です。なので、あらゆる戦術や戦略はそれらに結びついていないといけません。この日の札幌は、奪った直後にどう攻めるか?という点が明快に整理されていました。
  • マリノスはボールを失った後に必ず最終ラインが押し上げて、中盤の選手は相手のボールホルダー周辺に寄せます。これはすぐにボールを再度奪取したいためです。
  • 最終ラインが押し上げるとその背後が空きます。なので、DFは押し上げと撤退を使い分けるのがセオリーですが、ポステコグルーのマリノスには撤退の文字がありません。正直なところ、”目的”達成のためには手段の使い分けが重要だと思うのですが、好みの問題が大きいのでしょう。そして、GKのパク イルギュとCBのチアゴ マルチンスという戦力は、このやり方にとって大きな助けになります。
  • マリノスが押し上げてくることが分かりきっているので、札幌はボールを奪った直後、マリノスの最終ライン背後に必ず選手を走らせ、そこにアバウトでもいいのでパスを出すルールでこの試合はプレーしていました。

中盤や最終ラインで奪ったら(チャナティップ経由等で)必ず裏抜けを狙う

  • この時ポイントは、チャナティップが最前線の左で起用されていることです。チャナティップと中野のポジションは予想と反対でした。
  • プレッシングの際に、チャナティップはマリノスの右CBの伊藤とマッチアップします。伊藤としては、マリノスがボールを保持する際はチャナティップから離れてプレーしたいです。それは、自身がプレーするスペースを確保するためです。これに対し、チャナティップをマークする際には自身はチャナティップに近づいてプレーする必要があります。この対照性を札幌は巧く利用しており、ボール保持がマリノス→札幌と切り替わった瞬間、チャナティップはフリーになりやすい状態でした。直前まで伊藤は離れてプレーしていたためです。このわずかな時間と空間はチャナティップにとって、ボールをコントロールするのに十分なもので、札幌はまずチャナティップにボールを充てることができていました。
  • チャナティップにボールが入ると、マリノスはその位置から最終ラインだけを押し上げることができなくなるので、この状態から展開するパスはオフサイドトラップにかかりにくい。かつ、スペースが潤沢にあるので、札幌はボールを奪った後、前線の駒井とチャナティップは動かず、2列目の中野、ルーカス、菅、そして2.5列目の荒野が一気に前線に飛び出してDFの背後を急襲します。繰り返しですが、これはおぷしょではなく約束事となっていました
  • 基本的にこの縦への攻撃…中野や荒野の裏狙いは単発のアクションで完結します。より多くの選手が絡む攻撃となっていたのは、右のルーカスへの展開が成功した時です。

2.3 光り輝くクラッキ


  • 札幌がボールを奪うと、ルーカスは一気に右サイドを駆けあがります。前節は小川と一進一退の攻防だったルーカスですが、ティーラトンが守るマリノスの左サイドには、そのドリブルと右足のパスが大きな脅威を与えていました。
  • そしてルーカスは仕掛けるだけでなく、アウトサイドでボールを収められる技術があるので、ボールを奪った後、味方が複数人攻撃参加する時間を創出できます。それにより、この試合もFC東京戦と同様、駒井がルーカスの内側に走り込み、よりゴールに近い位置(ハーフスペース)を制圧し、そこからGKとDFの間への速いクロス、またはマイナス後方への折り返しで後ろから上がってくるチャナティップを使うなど、厚みのある攻撃になり、これは単発の攻撃よりもより脅威になっていました。
ルーカスに渡ると失わないので攻撃の枚数を増やすための時間を得られる

  • せっかくなのでデータを貼り付けます。上が4節の湘南戦(このブログで「駒井がゴールから離れてプレーするのでジェイが孤立気味」と書いたゲーム)、下が今節です。引用元

駒井のヒートマップ比較 4節(上)、7節(下)

2.4 高嶺革命

  • 札幌のゴールキックの際など、自陣のゾーン1でボールを保持する時は、札幌はマリノスのようにリスクを冒すことなく、マリノスの1列目守備を引き付けてから縦に展開することが目立ちました。この時も展開先は、右のルーカスか中央左のチャナティップ、この2人の、足元で収まることが期待できる選手でした。
  • 札幌は下図の形からボール保持を開始します。これの何が革命的かと言うと、普段札幌は高嶺の位置にMFの深井を下げ、その分福森がサイドに押し出されてプレーします。このサイドの福森は基本的にビルドアップ(ボールを敵陣に運ぶ)からは免除されており、ビルドアップをしているのは主に深井です(サイドチェンジで敵陣に運びたい時は福森が頼りになりますが)。なので深井はボール保持/非保持が切り替わる度に、毎回ポジションを入れ替えてプレーしなくてはならないので、深井自身の負担があるだけでなく、チームのプレースピードもその切り替える時間分遅くなります。
  • しかし高嶺は深井が担っている、ドリブルでボールを運ぶアクション、福森が担う左足でのフィード、両方を担うことができるので、ここを高嶺1人に任せ、深井は中央でセカンドボールの争奪戦に専念することができており、喜田と天野の中盤に数的不利に陥りませんでした。
高嶺1人でビルドアップできるので、中央で数的不利に陥らない
  • 上が第4節湘南戦での深井、下が今節の深井と高嶺のヒートマップです。深井は普段自陣ペナルティエリア周辺のやや左側から攻撃を組み立てます。この役割を高嶺に移譲することができたため、深井はピッチのより中央寄りでプレーすることができています。
深井(4節、7節)と高嶺(7節)のヒートマップ
  • 高嶺が1人剥がしてからフィード、チャナティップが足元で収める、収まらなくても荒野と深井がすぐにフォローする、それぞれの役割に専念できている状態だと説明すれば、この局面は札幌にとって非常にコントロールできていたと感じていただけると思います。

3.現実的だったゲームプラン

  • 互いに相手ボールになるとプレスを仕掛けるハイテンポなゲームで始まり、ミシャが息子たちの名前を呼ぶ時間もないほど目まぐるしく展開が切り替わります。
  • 開始45分でいきなりマリノスがチャンスを迎えます。梶川のフィードを左で遠藤、エジガル ジュニオが宮澤に競り勝ち、遠藤がドリブルで運んで折り返しをエジガルがシュート。ボックス内からでしたが、菅野が驚異的な反応ではじき出します。
  • 札幌のプレスは整理されていた、と言うけど、言い換えればこのやり方は1on1の集合体なので、自陣ゴールに近いところでデュエルに勝てないと誰もカバーしてくれないので一気にピンチになります。その意味で「ソンユンと同等の要求ができるGK」が2年間、バックアップで我慢してくれたことは感謝以外ありません。
  • 5分過ぎのマリノスのボール保持から互いの基本形(「2.1」参照)が見えてきます。先ほど書ききれなかったことを補足すると、この時もそうですが、完全なオールコートマンマークではなくて都度、選手を受け渡しながら守っていました。なので、この受け渡しの判断や、誰が誰を見る?という判断が怪しい局面もあり、この時もティーラトンがフリーでボールを持ったまま札幌陣内に侵入、ルーカスは遠藤を見ている、という状況でした。

危険性が低いと判断したら自陣に撤退して5バックで守る

  • ここから話を2つ広げますと、一つは、札幌は序盤から自陣ゴール前で5バックで守る選択も並行していました。
  • 結果的にはこれも勝因の一つだったと思いますが、マリノスは遠藤、水沼、エジガルの3トップで札幌が5枚で最終ラインを形成すると、札幌はここだと2人多い。しかし、その分どこかで2人足りなくなっています。マリノス相手だと、荒野と深井は中盤の選手を捕まえていることが多いとして、下図のように中央に攻撃参加してくるSB松原などが空きやすい選手でした。

浮いたままになっている選手が侵入してくると一瞬ギャップができる

  • マリノスの選手はSBでもCBでも前が空いていればボールを運び、縦にパスを通してきます。松原が侵入してくると札幌の余っている状態の5バックから選手が飛び出して捕まえる対応になるのですが、これが遅れると一気にピンチになります。特に松原→斜めに走るウイング(いつもは仲川、今日は水沼)はマリノスの得意のパターンで、この対応は札幌としても万全ではありませんでした。序盤だと8分、ティーラトンのスルーパスに天野が抜け出したプレーも、ティーラトンを札幌は完全に捕まえきれておらず、天野に出た時は完全に後手に回ってしまいました。
  • これが何故勝因の一つかと言うと、5バックで撤退することでゲームのテンポダウンを図れ、選手としては常にハイペースで走り続けなくてよく、消耗を押さえることができただと思うためです。前節マリノスが対戦した横浜FCはほぼ「プランA」主体というか、真夏の試合にも拘わらずハイプレスを緩めることなく果敢にぶつかっていきましたが、25分ほどで確実に足が止まっていました。ドーム開催も味方したかもしれませんが、札幌は結果的には90分守り切ることができ、そして中盤で人にも強くカバーリングも優れているキーマンの深井を65分まで引っ張ることにも成功しました。

4.観察タイムは必要か?

  • ヨーロッパのトップリーグの試合だと、戦術的に合理性があり洗練されているチームでないと、結果を残すのは年々難しくなってきていると感じます。試合は、自チームの設計と相手チームの設計のぶつかり合いなので、「自分たちの準備に対して相手が何をやってくるか?」を観察するのは重要で、典型的な話だと「メッシやイニエスタは開始15分は仕掛ける選択はとらず、ボールを動かしながら相手の構造を確認する」などとあります。
  • その観点でいくと、マリノスはあまり札幌の「構造」を観察せず、序盤からいつものやり方で札幌ゴールに迫っていたと感じます。結果、開始10分を使ってマリノスはエジガル、天野がチャンスを迎え、15分に天野のスーパーゴールで先制点を獲得したわけですが、序盤10分、15分のやり方としては、”観察”に費やすことも選択肢としてはアリだったかと思います。
  • この試合ではティーラトンとルーカスのパワーバランスがポイントでした。ティーラトンはマリノスにとって、彼が不調でもチームが機能するという意味では「替えのきく」選手です。一方ルーカスは戦術の核を担う、ルーカスの出来次第でゲームを左右する重要な選手です。ルーカスは、守備時はティーラトンのマークが主な仕事なので、この構図をよりマリノスが意識できていれば、ティーラトンが松原のようにもっと高いポジションや、SBから逸脱したポジションを取ればルーカスは守備負担が増大し、困ったはずです。その意味では札幌にはラッキーな状況でした。
札幌WB-マリノスSBのマーク関係
  • こっちもデータを貼り付けます。ティーラトンは松原よりも平均15mほど低い位置でのプレーが多いです。後半入った小池は松原と同じくらいまで高く出られています。
SBのポジション比較
  • もっともそれを誰が判断する?誰がどう伝える?という問題もあるので、現実には難しい部分もあるのですが、マリノスは確実に研究されまくっているチームなので、そうした「相手との対話」はこれから重要になってくるフェーズだと思います。
  • マリノスのリードを振り出しに戻したのもルーカスのクオリティでした。16分、菅野のフィードをトラップからの、ティーラトンを剥がして駒井へのスルーパス。その余韻が残る18分、駒井が畠中へのプレスでボールを奪い、折り返しをチャナティップがフォローして荒野。右サイドアタックとプレス、狙い通りの形が決まりました。
  • マリノスはこの前後のプレーで遠藤が大事を取って大津と交代。

5.微妙なバランスの変化

  • 札幌は前半終了間際に中野が痛んでプレー続行不可。後半頭から早坂が投入され、駒井が0.5列下がって中野のポジションに入ります。マリノスは後半頭からティーラトン→小池。そのまま左に入ります。
46分~
  • 小池は右利きで、左に張るよりも中央の方がやりやすいのもあるかもしれませんが、後半開始から早速ルーカスを牽制する動きを見せます。言うまでもなく、札幌にとってはやりづらい展開です。
  • そして中野の交代で、彼の重要性も浮き彫りになります。早坂は鳥栖だと(本来的な意味合いの)シャドーストライカーで、豊田陽平選手の背後から飛び出して得点を奪う役割をやったりですが、基本的には小回りよりも勤勉さや力強さが持ち味の選手だと思います。この布陣で起用するなら、必然とトップに近い役割になりますが、この布陣には「FW」は存在しません。
  • 早坂は右寄りでFW然として張るようなスタイルでゲームに入りますが、ボールが収まるわけでもなく、また駒井が見せていた飛び出しからのチャンスメイクも薄れます。このゼロトップシステムがうまくいく理由は私もあまり説明ができないのですが、確かにチャナティップ・駒井と合っていたのは早坂よりも中野でした。個人的にはターゲットになれる背の高い選手が1人は必要じゃないか?とスタメンを見て思いましたが、この組み合わせを”発見”したのは誰なのかわからないですが、素晴らしい仕事だと思います。

6.勤勉さへの報い

  • 56分にマリノスはエジガル、喜田がアウトでオナイウ、仙頭を投入。20分に札幌は深井がリミットでキム ミンテと交代。ミンテが左のDF、高嶺が中央にスライドします。これで「2.4」の高嶺をCBで起用する優位性がなくなり、札幌は中央の枚数が1枚減ることになります。
  • この交代があったくらいからややお互いにテンポダウンしていたと思います。札幌は裏を狙う選手が少なくなり、攻撃の迫力は削がれます。マリノスも交代で入ったオナイウや仙頭は元気ですが、動きの量やそれを必要とする連動したプレーは徐々に弱まっていった印象で、こうなるとフレッシュなオナイウでシンプルに勝負されるのが怖い状況になります。実際そのような、トップにシンプルに当てるビルドアップも見られました。クロスもいつもの、スペースを制圧してのグラウンダーのボールよりも、頭を狙ったボールが目立ちます。
  • 札幌は76分に3枚替え(ジェイ、金子、白井)。マリノスは81分に天野→渡辺でカードを使い切ります。お互いこの時間になるとボールが回らなくなり、トップのジェイやオナイウが降りてくることが結構多いかな?と感じました。ジェイはもう少しがマンしてほしかったのですが、逃げ切りのシチュエーションで投入するのは本来の使い方ではないので難しいところです。

81分~
  • 札幌は体力のある限りは「奪ったら裏抜け」を可能な限り続けていました。その多くはオフサイド等で不発でしたが、89分、マリノスのDF伊藤のクリアミスによって荒野が裏抜けに成功。GKの眼前で金子に足裏でパスし金子が落ちついて決めることができました。
  • やはり荒野の運動能力は驚異的で、この日も両チーム最多の運動量でありながらスピードも兼ね備えています。この試合は終始冷静、かつ勤勉にプレーしていたと思いますし、終盤の落ちてくる時間帯でも実ると信じて中盤から裏抜けを続けていました。最後は頑張った選手へのプレゼントでもあったと言えるでしょう。

雑感

  • 福森や武蔵の不在(に伴う高嶺、中野の起用)を好機へと変えるミシャの素晴らしい采配だったと思います。中野のゼロトップ+宮澤CBという布陣で、ディフェンディングチャンピオンに勝つという偉業を達成しました(あちらも数人不在ですが。やはり仲川とマルコス、チアゴ マルチンス不在だと露骨にクオリティに影響します)。3点とも狙い通りの形で、グループ戦術や共通理解の重要性を裏付けますし、決まり事でガチガチの中でもルーカスのような個人技に優れた選手が活躍できることも示されたと思います。
  • 特に、6試合負けなしと言いますが、武蔵の離脱後は3試合で3得点と、ゴール前のクオリティに課題が見られたので、このような解決策もあるぞと示せたのは大きいでしょう。荒野は退場処分はいただけないものでしたが、2019シーズンから継続的に称賛されるべきパフォーマンスを続けていただけに、結果で報われてよかったねという思いもあります。
  • ジェイの守備貢献や福森の攻守の切り替え、ポジショニング等は個人的に、損得を考えた時にトータルでどうか?とずっと思っていました。ただサッカーはゴール前のクオリティが最も重要なので、それをもたらす彼らを排除することは基本的にはなく、その存在から逆算されてチームを作る選手だと思っていましたが、この試合はそうした「机上論」が実践された格好でもありました。
  • あらゆるグループには時間がたてば、その多寡・大小はあれど”序列”のようなものができます。序列は秩序を維持するのに役立つこともありますが、競争や公平さの阻害となることもあり、この点においてはうまく序列をリセットすることもできたのではないでしょうか。
  • マリノスについて、「今シーズンは最終ラインのミスが多い」との意見がありましたが、それだけDFには負荷がかかっている(各チームが負荷をかけている)と言えます。CBで使える選手が復帰すると変わってくるとは思いますが、GKからの長いフィードを増やすとか、それを収められる選手をトップに置くとか、そうした負荷のコントロールも必要になるでしょう。

2 件のコメント:

  1. 移動が無いとはいえ、水曜日から中3日(木曜日はほぼクールダウンのみ)でよくここまで変えられたと思います。どういう戦術を考えるにせよ選手を納得させ実施させる必要があるわけで。
    ゼロトップということはジェイもドドも先発させないことなので木曜日に使いませんとは言えず、スポーツ紙らもジェイ先発と予想したことを考えても、恐らく前日1日で変えた訳ですよね。
    ミシャもすごいと思うけどコーチングスタッフも選手もかなり難易度の高いことをやり遂げたと思います。

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  2. ジェイですが、降りてきてることに最初は声かかったかもしれませんがやがて放置された気がします。
    (あくまで記憶内の印象です)
    これ、憶測は、ゼロトップ的にやるサッカーとジェイがいるときのサッカーの使い分けはジェイには伝わっていなかったのでは。
    ベンチからはいつもと違って流動的なことは分かりやすく、事前の説明は不十分で、かつ交代がチャナからだったのが合わさってあんなプレーになったのかと(あくまで憶測です)。
    ジェイって、「今日は新しいトライをするけどお前はトライせんでいいよ」だと納得せずに自分も新しいトライに適応できることを示したい選手かと。
    これ、ジェイにはっきり言えば良いかもしれませんが、通訳が2段入るとどうしてもってことと思います(憶測です)。
    なので今回に限ってはジェイの下がりすぎはジェイが悪い訳ではないかもしれません。

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