0.プレビュー
スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF駒井善成、深井一希、宮澤裕樹、菅大輝、三好康児、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF白井康介、早坂良太、荒野拓馬、小野伸二、FW都倉賢。サブが兵藤→早坂となった以外は3日前の水曜日、長崎戦と全く同じメンバー。札幌ドームの芝の張替えが終わり、ようやく快適な環境(観戦・プレー共に)が戻ってきた。
柏レイソルのスターティングメンバーは4-2-1-3、GK桐畑和繁、DF小池龍太、鎌田次郎、パク ジョンス、高木利弥、MF小泉慶、手塚康平、瀬川祐輔、FW伊東純也、クリスティアーノ、江坂任。サブメンバーはGK滝本晴彦、DFナタン ヒベイロ、MF大谷秀和、細貝萌、亀川諒史、FW山崎亮平、中川寛斗。実際は瀬川と江坂は2トップに近いというか、明確な前後関係はなさそうだった。中断期間前の5/13に下平隆宏監督を解任し、加藤望ヘッドコーチを昇格させ、直後の5/20名古屋戦は勝利して前半戦を終えたが、中断空けのリーグ戦で3連敗と苦境が続く。中断期間に中谷が名古屋へ完全移籍、ハモン ロペスが契約解除、 千葉から高木利弥、フルミネンセからAFC枠が適用されるナタン ヒベイロを獲得と主力級を入れ替えている。中村航輔は中断空け初戦の7/18FC東京戦での脳震盪により離脱中だが、故障で別メニュー調整だった中山、中川、澤がこの週から全体練習に合流している。キム ボギョンは当日の体調不良で欠場との情報があった。
1.基本構造
1.1 札幌の中途半端な位置取りと対応
1)WBを高い位置に置いておく
それぞれ長崎と柏から、いま日本で最も快適なプレー環境が与えられるスタジアムに移ってのゲームとなる。その快適さを示すかのように開始直後から両チームともハイテンションな入りとなった。札幌も柏も、形こそ違えど相手のCBがボールを保持するとFWの選手が必ずプレッシャーをかけ、ボールをGKに下げさせるか、無理に前線に蹴らせるまで複数の選手が関与して追い込み、自由に持たせない意志を見せる。
しかし札幌は10分前後にはその意志は徐々に弱まっていく。この試合、前線から守備を開始するために札幌はいつもよりも1トップ2シャドーを高い位置に置き、この3枚で柏のCBを見る。加えてもう1点、ウイングバックの駒井と菅もいつもより高い位置を序盤からとっていたが、それは柏のSBにボールが渡った時に駒井と菅を前に出して簡単に前に運ばせないため。
札幌はWBを高めにおいて構える |
ボールと人の動きを図示すると、まず①ジェイがいずれかのCBに対し中央を切りながら寄せる。下の図は左CBのパクに寄せたときだが、パクがサイドの高木に出すと、高木が三好に寄せられればそれだけでビルドアップが詰まってしまう。そこでパクは中央を使って展開するために、鎌田に預けると②チャナティップが寄せる。これで1トップと2シャドーの計3枚を使ってCB2枚を見る形になるのだが、右SB小池にボールが逃がされると、③あらかじめ高めの位置を取っていた菅が小池に対して出ていく。
前からはめるためSBにWBを当てたい |
2)置物と化した前線守備と高い位置のWB
これが、10分以降はジェイがなかなか発動しなくなっていく。それは陣形の頂点に位置するジェイが常にスイッチを入れることができる選手ではないため。それは織り込み済みというか、選手特性を考えると仕方のないことではあるが、本来5バックで守っているチームがWBを上げて3バック気味の最終ラインで、サイドにウイングが張るチームに対してボールへの圧力をかけないとどうなるか。
高い位置で張るフリーのウイングにボールがどんどん供給される展開が待ち構えている。
柏も立ち上がりから、札幌のボール保持を高い位置からの守備で迎え撃つ。札幌の積極的な守備が10分ほどで打ち切りとなったのに対し、柏のそれは少なくとも25分過ぎ頃まで続き、その後もできる限り、札幌のボール保持の時間を短くさせようとしていた。
ミシャチームの基本的な形には、2トップで中央3枚、SHが札幌のサイドに移動したCBをほぼ1on1の関係でケアすることを徹底する(このかみ合わせの整理は過去に何度も見られたので割愛)。
柏のハイプレスに対して、札幌は多くの場面で前線の選手への放り込みを選択していた。ファーストチョイスはやはりジェイ。守備では常にボトルネックになっているジェイだが、オフェンスの局面では対峙するパク ジョンス、鎌田のコンビにクオリティの違いを見せつける。柏は最終ラインで唯一180センチを超えるパク ジョンスが優先的に対応するようにしていたが、それでもジェイが競り勝ってからの攻撃機会創出には何度か成功していた。
もう一つ、シャドーの三好とチャナティップ、特に三好が最終ラインからの浮き球のパスを受ける局面も複数回あった。図示すると三好は↓のようなポジションにいて、かみ合わせ的には本来ボールサイドのCBが応対することが自然に思えたが、先述の通りパク ジョンスはジェイをケアしなくてはならない。左SB高木は駒井への対応を優先するので、構造的に三好は浮きやすくなっていた。そのため、攻撃方向に完全に背を向けた状態で受けて180°ターンしてからの仕掛けの機会も三好は何度か得ていた。NHKや民放各局は最近、東京五輪世代のU21日本代表をよく扱っており、そのチームの10番である三好は札幌の中では「推しメン」と化しているが、この試合のダイジェストは三好中心で編集がされても、少なくとも前半はそう大袈裟な扱いでもなかったかもしれない。
札幌は上記のジェイと2シャドーに放り込む以外にも、多くの局面においてビルドアップの出口は空中戦による優位性を前提として考えられているものが多かった。
↓は28:30頃の展開で、進藤を福森を一列前に押し上げることで、高めの位置で、相手の空中戦がさほど強くない選手とマッチアップさせ、空中戦の優位性を活用してボールの前進を図るものだった。このCBを一列更に上げる形は、ミシャ体制になって度々見られている(福森がポジションを上げる形は4月ごろからたびたびあった)が。、なかなか再現性という点で微妙だったため触れていなかったが、前節の長崎戦でも進藤が高めのポジションを取ることが何度かあり、ここにきて1つのパターンとして位置づけられてきている印象がある。いつぞやの浦和の5-0-5を彷彿とさせる形でもある。
なお、この時は駒井が中央に絞ることで右サイドは整理されていたが、左サイドは福森が上がると、菅がやや内側のレーンに移動することが多い。チャナティップが下がり目や、菅と被らない位置にいるといいのだが、福森が攻撃参加するとこの3選手のポジションが非常にバッティングしがちになる点は以前より気になっている。
札幌が何らかの手段によって柏陣内にボールを運び(この試合は、上述のように放り込み→競り勝つ形が多かった)、得意の、最終ラインでの4on5のミスマッチを活用したWBによる崩しの形を作ると、柏はゴール前に4-4のブロックを敷いて対抗する。この時ジェイ(過去に柏戦3試合で全て得点を挙げており、昨年10月の厚別での試合でも空中戦から2得点している)をマークするために最終ラインはパク ジョンス-ジェイの関係性を作ることを最優先し、またもう1人の選手がサポートすることが望ましい(できれば鎌田)。必然と最終ラインは人を基準にした守り方になるが、2列目は基本的にゾーンで、4枚がボールサイドに寄って対応していた。
8枚で時間を稼ぐと、時折2トップも守備に加わる。2トップが4-4ブロックの前方に位置取りをすると、札幌の宮澤・深井のコンビと2on2の関係になり、このエリアで一方的に札幌にセカンドボールを拾われる展開を抑止することに繋がる。
特に福森の場合、大外のレーンからのクロス以外にも、1列内側のハーフスペースからのラストパスや自身がポジションを上げてのバイタルエリア侵入など、多様なパターンをもって崩しの局面に関わろうとする。重要なのは、これらのアクションは基本的に札幌が攻撃し続けている前提で繰り出されており、柏の選手…具体的には、この試合実質的な福森の守備対象となっている伊東純也に、トランジションからボールが渡った時にそのプレーを限定することはほぼ不可能なアクションを取り続けている。
伊東にボールが入ると、伊東自身の仕掛けもしくは小池との連携による崩しが多い。小池と伊東は必ず同じレーンに入らない。小池が外で張るのは、伊東が中央に進出している時が大半で、それ以外は伊東にボールが入ると隣のレーン(ハーフスペース)に入っていく。小池と共に、先述の高木、更に中央の小泉の計3枚で柏は中央の3レーンに人を配し、ラストパスやクロスが跳ね返された後の回収を図る。
5-2-3から更に押し込まれると5-4-1気味(三好はあまり下がらないが、チャナティップはよくブロックに加わる)に変化する札幌は、押し込まれると、攻撃に転じる際のボールの預けどころの確保が重要になる。柏は前線に4人の、スペースを活用できるアタッカーがいるが、札幌はチャナティップくらいしかいない(三好はまだその"数"に含められる水準だとは感じない)。
一方で札幌は、ジェイを前線に残している。好調ならばジェイは1人、2人がマークについていても収めてくれるが、柏はアンカーポジションで手塚を残し、ジェイの前方で、ジェイへの供給網を寸断する役割を担う。序盤のように三好が浮く形が減っていくと、札幌が奪った後ジェイに当てることはバレバレになっていて、頼みのジェイも包囲された札幌は、柏の攻撃を跳ね返した後に有効に攻撃に繋げられないことが多くなっていた。
後半開始から数分間の攻防の中で、柏は2列目サイドの選手が前線から守備を敢行できなくなる局面が散見されるようになる。これが前半からハイペースで試合を進めてきたことによるスローダウンだとすれば、ほぼほぼ4月の柏での対戦と同じような展開だと言えた。
伊東とクリスティアーノの出足が鈍くなると、伊東がそれまでケアしていた福森の位置は小泉がポジションを上げてケアすることもあった。伊東は小泉に福森を任せられる状況では、自身は最終ラインに加わって大外の守備を担当し、数的なミスマッチを解消しようとしていた。
前半、伊東の積極果敢な守備の効果もあってか、逆サイドを狙った福森のキックはいつもと比べるといまいちの精度だった(進藤も同様に、成功率が低かった)が、上記のような環境の変化があった後半も精度は向上しなかった。しかし柏のSHがの位置取りが低くなったことで、札幌はアウトサイドにおいて全般に受ける圧力が弱まっていたし、59分のジェイの同点ゴールも、柏は大外をクリスティアーノに任せるも駒井の縦への仕掛けで簡単に振り切られたことが大きかった。
柏はこの札幌の方針変更を見透かしたかのように、後半小池の攻撃参加が増加する。伊東が中央に絞り、小池の滑走路を大外に作ると、菅を伊東に充てていることがネックとなり、大外の小池へのマークが甘くなってしまう。
この形はどの程度練習しているのかわからない。中盤センターを2枚から1枚にしたことで、後方は枚数不足感を感じさせる様子もあった。すると左サイドでは、白井やチャナティップが本来取りたいポジション(少なくとも白井はウイング然として張らせたい)からどんどん下がっていくのだが、それによって柏の中盤の選手が引っ張られる。その状態でジェイや都倉がサイドに流れてくると、小池とのミスマッチが発生し、起点を作ることができていた。
結局柏に対しては常にこの、前線のパワーを活かした戦い方が最も有効だと言える。三好やチャナティップの出来はそう悪くなかったが、得点を奪うことに関しては、まだ壁を破れていない三好を都倉にリプレースするタイミングがやはりどこかであったのではないかと思えた。
気持ちハイプレスの申し子・中川寛斗がベンチスタートでも前線からの積極的な守備を繰り出した柏に対し、札幌は終始ロングボール(及びその落下点での空中戦)で対抗。リスク回避の考え方は十分念頭にあったと思うが、それでも中盤で引っ掛けてのロストなど、あってはならないミスで伊東が爆走する機会を量産してしまった。
そして以前示した通り、4バック相手にジェイを起用するとやはり守備の問題はより大きくなる。ただこの試合のように前線で勝ちまくるところを見ると、トータルで見てプラス、マイナスどちらかは判断しにくいところもある。
前線でスイッチが入らないと半端な位置にWBが取り残されたままで柏のウイングに対応 |
1.2 (水を得た魚)冷房を得た太陽王
1)快適な環境下で序盤から敢行されたハイプレス
柏も立ち上がりから、札幌のボール保持を高い位置からの守備で迎え撃つ。札幌の積極的な守備が10分ほどで打ち切りとなったのに対し、柏のそれは少なくとも25分過ぎ頃まで続き、その後もできる限り、札幌のボール保持の時間を短くさせようとしていた。
ミシャチームの基本的な形には、2トップで中央3枚、SHが札幌のサイドに移動したCBをほぼ1on1の関係でケアすることを徹底する(このかみ合わせの整理は過去に何度も見られたので割愛)。
2) 速めの放り込みでプレスに対抗
柏のハイプレスに対して、札幌は多くの場面で前線の選手への放り込みを選択していた。ファーストチョイスはやはりジェイ。守備では常にボトルネックになっているジェイだが、オフェンスの局面では対峙するパク ジョンス、鎌田のコンビにクオリティの違いを見せつける。柏は最終ラインで唯一180センチを超えるパク ジョンスが優先的に対応するようにしていたが、それでもジェイが競り勝ってからの攻撃機会創出には何度か成功していた。
もう一つ、シャドーの三好とチャナティップ、特に三好が最終ラインからの浮き球のパスを受ける局面も複数回あった。図示すると三好は↓のようなポジションにいて、かみ合わせ的には本来ボールサイドのCBが応対することが自然に思えたが、先述の通りパク ジョンスはジェイをケアしなくてはならない。左SB高木は駒井への対応を優先するので、構造的に三好は浮きやすくなっていた。そのため、攻撃方向に完全に背を向けた状態で受けて180°ターンしてからの仕掛けの機会も三好は何度か得ていた。NHKや民放各局は最近、東京五輪世代のU21日本代表をよく扱っており、そのチームの10番である三好は札幌の中では「推しメン」と化しているが、この試合のダイジェストは三好中心で編集がされても、少なくとも前半はそう大袈裟な扱いでもなかったかもしれない。
2トップが活発に動くので早めに放り込んで回避 |
3)極力ストロングポイントを活かそう
札幌は上記のジェイと2シャドーに放り込む以外にも、多くの局面においてビルドアップの出口は空中戦による優位性を前提として考えられているものが多かった。
↓は28:30頃の展開で、進藤を福森を一列前に押し上げることで、高めの位置で、相手の空中戦がさほど強くない選手とマッチアップさせ、空中戦の優位性を活用してボールの前進を図るものだった。このCBを一列更に上げる形は、ミシャ体制になって度々見られている(福森がポジションを上げる形は4月ごろからたびたびあった)が。、なかなか再現性という点で微妙だったため触れていなかったが、前節の長崎戦でも進藤が高めのポジションを取ることが何度かあり、ここにきて1つのパターンとして位置づけられてきている印象がある。いつぞやの浦和の5-0-5を彷彿とさせる形でもある。
CBの空中戦の強さを利用する |
なお、この時は駒井が中央に絞ることで右サイドは整理されていたが、左サイドは福森が上がると、菅がやや内側のレーンに移動することが多い。チャナティップが下がり目や、菅と被らない位置にいるといいのだが、福森が攻撃参加するとこの3選手のポジションが非常にバッティングしがちになる点は以前より気になっている。
2.可変システムvs定形システム
2.1 伊東純也vs福森
この試合は柏の右ウイング、伊東純也と福森のマッチアップが多くなっていた。縦への速さではリーグ屈指の存在と言える伊東と、速そうなイメージも走るのが好きそうなイメージもない福森。なるべく避けたいこのマッチアップが多くなっていたのは、柏のボール保持から始まる上述1.1の形以外にも、札幌の攻撃時にも要因があった。
1)柏の撤退守備
札幌が何らかの手段によって柏陣内にボールを運び(この試合は、上述のように放り込み→競り勝つ形が多かった)、得意の、最終ラインでの4on5のミスマッチを活用したWBによる崩しの形を作ると、柏はゴール前に4-4のブロックを敷いて対抗する。この時ジェイ(過去に柏戦3試合で全て得点を挙げており、昨年10月の厚別での試合でも空中戦から2得点している)をマークするために最終ラインはパク ジョンス-ジェイの関係性を作ることを最優先し、またもう1人の選手がサポートすることが望ましい(できれば鎌田)。必然と最終ラインは人を基準にした守り方になるが、2列目は基本的にゾーンで、4枚がボールサイドに寄って対応していた。
札幌の横幅アタックにはリトリートで対抗 |
8枚で時間を稼ぐと、時折2トップも守備に加わる。2トップが4-4ブロックの前方に位置取りをすると、札幌の宮澤・深井のコンビと2on2の関係になり、このエリアで一方的に札幌にセカンドボールを拾われる展開を抑止することに繋がる。
2)崩しの福森が抱えるリスク
札幌が以前から持っている崩しの形として、WBが押し込んでから攻撃参加してきたCBにボールを下げ、CBからのアーリークロスという形がある。この形は言うまでもなく福森サイドで威力を発揮する。
札幌は特にJ1に復帰した2017シーズンから、クロスでのフィニッシュが非常に多い。それは(チャナティップの加入まで)中央のブロックを崩せる選手がいなかったこともあるが、フィニッシュの多くをクロスとすることで、ボールロストの形を限定的にし、被カウンターのリスクと脅威をコントロールしやすくする狙いもあったと考えられる。
しかしCBが攻撃参加してフィニッシュに絡む形は、それがたとえクロスによるものであっても攻撃参加した背後にリスキーなスペースを生むこととなる。
福森の攻撃参加 |
特に福森の場合、大外のレーンからのクロス以外にも、1列内側のハーフスペースからのラストパスや自身がポジションを上げてのバイタルエリア侵入など、多様なパターンをもって崩しの局面に関わろうとする。重要なのは、これらのアクションは基本的に札幌が攻撃し続けている前提で繰り出されており、柏の選手…具体的には、この試合実質的な福森の守備対象となっている伊東純也に、トランジションからボールが渡った時にそのプレーを限定することはほぼ不可能なアクションを取り続けている。
よって伊東は自陣でボールを持てば、福森によってその加速を妨げられることは殆どないので、自陣から1人で縦方向に何度もボールを運ぶことに成功していた。
対照的に、柏は攻撃時に攻撃が成功しなかった後の展開への備えとなるポジション取りが意識されており、前半はよくセカンドボールを回収できていた。
柏のボール保持からの攻撃は、小池-伊東のユニットを持つ右サイドがファーストチョイス。中央寄りのレーンで江坂や小泉がライン間で受けるポジション取りをし、中央を意識させつつ、基本はよりセーフティな外→外の展開でウイングにボールを供給する(瀬川の先制点は、札幌の中央の対応がルーズだったところを鎌田からのパス1発で割られてしまった)。
この時、左SBの高木は右で展開されている時は中央のレーンに入っていく。ここのところ、実効性はともかくSBを内寄りに配する4バックのチームは増えてきたように思えるが、高木のこの位置取りは基本的に守備(セカンドボールの回収)を意識している。攻撃に関しては、札幌は5-2-3で守備をすることが多く、中央に入っていくと右シャドー(三好)と近い位置関係になりやすい。そのため、柏がCB経由で右サイドから左サイドに展開しようとすると、高木は再び大外のレーンに移動するようになっていた。
2.2 最低限のリスクマネジメント
1)右サイドからの展開と絞る高木
対照的に、柏は攻撃時に攻撃が成功しなかった後の展開への備えとなるポジション取りが意識されており、前半はよくセカンドボールを回収できていた。
柏のボール保持からの攻撃は、小池-伊東のユニットを持つ右サイドがファーストチョイス。中央寄りのレーンで江坂や小泉がライン間で受けるポジション取りをし、中央を意識させつつ、基本はよりセーフティな外→外の展開でウイングにボールを供給する(瀬川の先制点は、札幌の中央の対応がルーズだったところを鎌田からのパス1発で割られてしまった)。
右で基本展開し、高木は絞ってくる |
この時、左SBの高木は右で展開されている時は中央のレーンに入っていく。ここのところ、実効性はともかくSBを内寄りに配する4バックのチームは増えてきたように思えるが、高木のこの位置取りは基本的に守備(セカンドボールの回収)を意識している。攻撃に関しては、札幌は5-2-3で守備をすることが多く、中央に入っていくと右シャドー(三好)と近い位置関係になりやすい。そのため、柏がCB経由で右サイドから左サイドに展開しようとすると、高木は再び大外のレーンに移動するようになっていた。
2)スペースとジェイを徹底封鎖
伊東にボールが入ると、伊東自身の仕掛けもしくは小池との連携による崩しが多い。小池と伊東は必ず同じレーンに入らない。小池が外で張るのは、伊東が中央に進出している時が大半で、それ以外は伊東にボールが入ると隣のレーン(ハーフスペース)に入っていく。小池と共に、先述の高木、更に中央の小泉の計3枚で柏は中央の3レーンに人を配し、ラストパスやクロスが跳ね返された後の回収を図る。
ジェイを包囲するとともに中央のレーンを防備 |
5-2-3から更に押し込まれると5-4-1気味(三好はあまり下がらないが、チャナティップはよくブロックに加わる)に変化する札幌は、押し込まれると、攻撃に転じる際のボールの預けどころの確保が重要になる。柏は前線に4人の、スペースを活用できるアタッカーがいるが、札幌はチャナティップくらいしかいない(三好はまだその"数"に含められる水準だとは感じない)。
一方で札幌は、ジェイを前線に残している。好調ならばジェイは1人、2人がマークについていても収めてくれるが、柏はアンカーポジションで手塚を残し、ジェイの前方で、ジェイへの供給網を寸断する役割を担う。序盤のように三好が浮く形が減っていくと、札幌が奪った後ジェイに当てることはバレバレになっていて、頼みのジェイも包囲された札幌は、柏の攻撃を跳ね返した後に有効に攻撃に繋げられないことが多くなっていた。
3.後半の攻防
3.1 ハイテンポな展開に陰り
後半開始から数分間の攻防の中で、柏は2列目サイドの選手が前線から守備を敢行できなくなる局面が散見されるようになる。これが前半からハイペースで試合を進めてきたことによるスローダウンだとすれば、ほぼほぼ4月の柏での対戦と同じような展開だと言えた。
伊東とクリスティアーノの出足が鈍くなると、伊東がそれまでケアしていた福森の位置は小泉がポジションを上げてケアすることもあった。伊東は小泉に福森を任せられる状況では、自身は最終ラインに加わって大外の守備を担当し、数的なミスマッチを解消しようとしていた。
SHの守備はややルーズかつ現実的なものに |
前半、伊東の積極果敢な守備の効果もあってか、逆サイドを狙った福森のキックはいつもと比べるといまいちの精度だった(進藤も同様に、成功率が低かった)が、上記のような環境の変化があった後半も精度は向上しなかった。しかし柏のSHがの位置取りが低くなったことで、札幌はアウトサイドにおいて全般に受ける圧力が弱まっていたし、59分のジェイの同点ゴールも、柏は大外をクリスティアーノに任せるも駒井の縦への仕掛けで簡単に振り切られたことが大きかった。
福森のキックはなかなか対角の選手を超えなかった |
3.2 菅vs伊東純也
後半、札幌は左サイドの守備において、前半の反省からかなるべく菅を伊東にマッチアップさせるように人を動かしていた。札幌の左(柏の右)サイドに登場してくる選手は伊東と小池の2人。前半は菅を積極的に前に出して、小池とマッチアップさせていたので、どうしても伊東-福森のマッチアップが頻発してしまう。
伊東-菅の組み合わせを作り、福森は余らせておくために、小池を見る選手も必要になる。その役割はチャナティップ。シャドーがサイドハーフのように振る舞う、2017シーズンから使っている形式に変更してきた。
伊東が中、小池が大外に |
柏はこの札幌の方針変更を見透かしたかのように、後半小池の攻撃参加が増加する。伊東が中央に絞り、小池の滑走路を大外に作ると、菅を伊東に充てていることがネックとなり、大外の小池へのマークが甘くなってしまう。
3.3 最も有効な形
スコアが1-2となった後、札幌は投入準備をするも我慢していた都倉と白井を76分に投入。前線は都倉とジェイが並ぶ2トップに近い形となる。
76分~ |
この形はどの程度練習しているのかわからない。中盤センターを2枚から1枚にしたことで、後方は枚数不足感を感じさせる様子もあった。すると左サイドでは、白井やチャナティップが本来取りたいポジション(少なくとも白井はウイング然として張らせたい)からどんどん下がっていくのだが、それによって柏の中盤の選手が引っ張られる。その状態でジェイや都倉がサイドに流れてくると、小池とのミスマッチが発生し、起点を作ることができていた。
ジェイのパワーを小池にぶつける |
結局柏に対しては常にこの、前線のパワーを活かした戦い方が最も有効だと言える。三好やチャナティップの出来はそう悪くなかったが、得点を奪うことに関しては、まだ壁を破れていない三好を都倉にリプレースするタイミングがやはりどこかであったのではないかと思えた。
4.雑感
気持ちハイプレスの申し子・中川寛斗がベンチスタートでも前線からの積極的な守備を繰り出した柏に対し、札幌は終始ロングボール(及びその落下点での空中戦)で対抗。リスク回避の考え方は十分念頭にあったと思うが、それでも中盤で引っ掛けてのロストなど、あってはならないミスで伊東が爆走する機会を量産してしまった。
そして以前示した通り、4バック相手にジェイを起用するとやはり守備の問題はより大きくなる。ただこの試合のように前線で勝ちまくるところを見ると、トータルで見てプラス、マイナスどちらかは判断しにくいところもある。
ペップ・グアルディオラ
返信削除「ポジショナルプレーという発想は、自分たちがボールを持って攻撃している時でも、逆に相手に攻撃されている時でも当てはまる。 ポゼッションを失った時には、選手たちはすぐにボールを奪いかえすために、正しいポジションを取らなければならない。すぐにボールを奪い返せない場合には、カウンターアタックを受けないために、やはり正しい位置につく必要がある」
読んでるぞー。
返信削除夏バテでコメント書く元気ないだけだぞー。
ペップはとりあえずウチの監督になってください.....。