2018年8月18日土曜日

2018年8月15日(水)19:00 明治安田生命J1リーグ第22節 ガンバ大阪vs北海道コンサドーレ札幌 ~数合わせの夏~

0.プレビュー

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF駒井善成、深井一希、宮澤裕樹、石川直樹、都倉賢、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK菅野孝憲、MF兵藤慎剛、早坂良太、荒野拓馬、小野伸二、FW宮吉拓実、菅大輝。前節途中交代の菅はベンチスタート。三好は8/18にジャカルタで開幕する(男子サッカーは8/10に開幕)第18回アジア競技大会に臨むU-21日本代表メンバーに招集されているためこの試合から最長で9/1(第25節神戸戦の試合日)までチームを離れることとなる。
 ガンバ大阪のスターティングメンバーは4-2-1-3、GK東口順昭、DF三浦弦太、菅沼駿哉、ファビオ、オ ジェソク、MF藤本淳吾、高宇洋、遠藤保仁、倉田秋、FW一美和成、アデミウソン。サブメンバーはGK林瑞輝、DF藤春廣輝、米倉恒貴、MF高江麗央、食野亮太郎、小野瀬康介、FW中村敬斗。7/22の第17節清水戦後、ちょうどハーフシーズンを終えた段階で16位という状況で、レヴィー クルピ前監督を解任、U23チーム監督の宮本恒靖新監督を内部昇格させた。クルピが連れてきたマテウスがチームを去り、長澤はこの試合直前の8/13に獲得が発表された渡邉千真との入れ替わりで神戸へ期限付き移籍。高宇洋は宮本体制で5試合連続のスタメン起用となる。初瀬と韓国代表のオーバーエイジであるファン ウィジョがアジア大会に招集中。

1.基本構造


1.1 リトリートするガンバ

1)健太スタイル?


 前半18分に倉田のPKでガンバが先制する展開となったが、それまでの18分間の大半はガンバが自陣にリトリートし、札幌がボールを保持する展開が繰り広げられた。
 札幌はこの日は立ち上がりから明瞭に、深井を下げた4-1-5に変形。対するガンバは4-4-2の陣形を敷くが、ガンバの4-4-2は実質的に4-4の2ライン守備と化していた。1列目に一美とアデミウソンが並ぶが、アデミウソンは札幌のジェイのような非常に気まぐれな守備をしていて、殆ど計算に入っていないようなフリーロール的な振る舞いをしていた。よって4-4ブロックの前方のエリアは殆ど一美が見ていたのだが、一美1人でできることは非常に限られていて、途中からはアンカーポジションの宮澤をケアすることに専念していた。
リトリートするガンバ

2)好き勝手に運ぶ


 札幌は序盤、4-1-5の「4」の左端、福森を大外のレーンにおいて、右端の進藤を右のハーフスペースに配するやや非対称な形で開始する。これは札幌が頻繁に使っている形であるが、1発のロングキックで逆サイドや中央に決定的なボールを送れる福森をプレッシャーの薄いエリアに置いて、進藤はネガティブトランジションに備えておくことを意識している。
 この状態から、ガンバの守備の様子を観察しながら、序盤は深井がよくボールを運んでいた。深井が持ち上がると、先述のようにガンバの1列目は殆どそのボールの制限をしないので、実質的にガンバの守備は2列目から始まる。だがこの時、深井が持ち上がった段階で既にガンバは大外の福森と、中央や反対サイドへの展開と複数の選択肢をケアしなくてはならなくなっている。
 大外に福森と石川が2人並ぶ状況になると、藤本は中央を切れなくなりサイドに引っ張られるので、深井の持ち上がりには高が出ていくが、そうなれば中盤は遠藤1枚。かつてのチームメイトである宮本によって引導を渡されかけている遠藤1人で中央カバーするのは不可能で、札幌は殆ど好き勝手に中央でボールを出し入れできる状況になっていた。
ガンバは2ライン守備なのでボールの出し入れが容易

1.2 中央密集で徹底封鎖

1)ペナ幅守備を徹底


 ファーストディフェンスの緩さが示すように、ミドルサードまでは好き放題させていたガンバだが、札幌がアタッキングサードに侵入してからの対応は非常に明確だった。
 札幌が一度中央に縦パスを送ると、ガンバの4-4ブロックは前後左右を圧縮し、自陣ゴール前、ペナルティエリアのすぐ外の位置に8選手が密集し、中央を使おうとする札幌の選手を窒息させようとする。この時、8選手がペナルティエリア幅に入り、アウトサイドは完全に捨てているようなポジション取りをする。
 札幌もそうした、中央を締める対応をしてくることはわかっているので、中央で3回以上パスを繋ごうとすることは殆どなく、ミシャが日に日に仕込んでいる外→中→外のお馴染みのアタックでサイドにボールを逃がす。この時、DFを背負ってプレーすることが多いジェイと都倉が左利きなため、一度トップに当ててからの展開は、やはり札幌左サイドを使うことがどうしても多くなる。
ペナ幅に選手が密集

 札幌は頻繁に石川が左でフリーになる。石川に渡ったところで三浦や藤本が出てくるが、この2人の対応は、反対サイドのオ ジェソクの対応ほどタイトではなく、石川は何度もクロスを供給する機会が巡ってくる。

2)呼び込んで逆襲狙い


 札幌のフィニッシュが最終的にクロスが多いか、地上戦での突破を狙ったものが多いかまでは集計してないが、基本的にはジェイと都倉の高さを活かす狙いを持っていることは間違いなく言える。どちらでもいいのだが、フィニッシュで札幌が再び中央にボールを入れてくる時、ガンバは密集した7~8枚(1枚はサイドに引っ張られていることが多い)の選手で中央で跳ね返すと、前がかかりになった札幌の背後をカウンターで狙う。前半はずっとこの展開だった。
 ガンバのカウンターは、定石通りサイドハーフの倉田と藤本が起点となるものもあったが、加えてフリーロールとして残しているアデミウソンが活きてくる。守備で殆ど役割を持たないアデミウソンがピッチに立っている理由はこの局面で活用されることであるのは容易に想像がつくはずだが、進藤はともかく、キム ミンテは頻繁にアデミウソンと距離を取って守っており、かといってアデミウソンがターンし加速した時に止められるような位置取りができていなかったように思える。
跳ね返して逆襲に移行したい

1.3 ガンバのボール保持


 ガンバのボール保持時の形は4-2-2-2で、横幅はSB。倉田と藤本が中央に入り、前4人は流動的になっていたが、そもそもそこまでボールを殆ど運べていなかった。ファビオと菅沼に対して、ジェイがいつものように気まぐれに追いかけるだけでガンバの最終ラインは困難に陥っていて、遠藤や高が何らか助けるわけでもない(少なくとも、宮澤と深井の前進守備で殆ど問題外なレベルになっていた)。先述の逆襲か、脈略なく放り込むかしか、ゴール前にボールを運べるイメージは殆どなかった。

2.20分以降

2.1 3-2-5化する札幌


 20分以降、札幌は深井が最終ラインに下がる機会が殆どなくなり、3-2-5の陣形で攻撃を組み立てようとする。同時に開いた位置にいた福森も中央寄りに移動し、ボールを運ぶ役割は深井から、福森と進藤に変わる。深井と宮澤が中央で2枚並ぶことで、アデミウソンも完全に我関せずではいられなくなり、一美と2人で深井・宮澤を見ることが多くなっていた。もっとも、1列目を突破されるとそこで仕事終了、のような振る舞いも依然としてあったが。
 福森がハーフスペースにいると、同じサイドのWBへの展開(石川)だけでなく、反対サイドのWB(駒井)へのパスも選択肢として常に相手に突きつけることができる。ガンバは駒井に対してはオ ジェソクの決め打ちでほぼ問題なかったが、ボールサイドでは福森からチャナティップ、石川と選択肢がある中で、実質三浦が両方を頭に入れなくてはいけない状況に陥る。それはCBの菅沼とファビオが中央で時折2トップに近い形をとる都倉とジェイをケアしなくてはいけないためで、特に福森が自由に蹴れる状態になっていると、アーリークロスをこの2人に合わせることもできるため、最優先でケアしなくてはならない。
プレーメーカーは福森へ

2.2 大外の危険性に気付く


 35分以降、ガンバは三浦を石川に対して明確に当てるようになる。これでガンバの最終ラインは、SBが札幌の両WB、CB2枚が都倉とジェイとマッチアップする機会が増えるので、チャナティップが浮くことが多くなる。
 ガンバの対処法は、藤本と高が気持ちでプレスバック。特に藤本は状況を見て、三浦と受け渡しながらWBに対処することも増えていく。
 チャナティップは構造上、三浦が石川に出ていったタイミングでハーフスペースに残っていればフリーになりやすかったはずだが、実際はより中央のレーンにいることも多かった。これについてはやや動きすぎな印象もあり、この点は課題だと言えるかもしれない。
大外を空けると危険と判断

 札幌は39分、石川が負傷し菅と交代。以降は特に何も起こらずハーフタイムに突入する。

3.大阪は南も北も5バック


 後半立ち上がり、札幌はジェイが2回、チャナティップが1回起点となり、計3回、中央で楔を受けて大外のWBに展開するミシャアタックを発動させる。これを見てガンバは59分、藤本→米倉に交代。更に64分、遠藤→高江に交代。アデミウソンを1トップ、米倉を右WBに置いた3-4-2-1に変更する。
64分~

 ガンバの3-4-2-1は守備時はほぼ完全なる5-4-1。ペナルティエリアのすぐ前方を守る人数を、前半の8人から9人に増やし、マッチアップを合わせただけで中央を固めるコンセプトはほぼ同じ。札幌は4日前の試合と同じく、再び大阪のチーム相手に5バックのミラーを相手にすることとなった。一方、大半の時間をスコアイーブンで推移したセレッソ戦と異なり、16位ガンバ相手が1点をリードする状況ということで、ガンバはセレッソのように必要以上に前に出てこないし、シャドーが攻め残ることもない。札幌は、セットプレー等でガンバの選手が攻撃参加した直後に撤退する前に素早く前線に展開しないと、5+4の9枚ブロックを1枚ずつ引き剥がす作業を行わなくてはならない。

4.マルチな切り札

4.1宮吉の投入と動かないガンバ


 札幌は70分、宮澤に変えて宮吉。73分、深井に変えて小野を投入。
73分~

 70分過ぎになると、ガンバは極端な撤退+中央密集を見せる。5トップを意識した5バックということで、5バックの両端の選手はもっと札幌のWBを見てもいいじゃないか、と思うが、ガンバの5バックは大外に張る菅と宮吉に意地でも釣られない、といったポジション取りを見せる。唯一、倉田だけが進藤を明確に守備基準としていて、ボールが渡ると潰しに出てくる(一美→福森も同じだが、福森があまりサイドで攻撃参加しないので一美は動く機会が少ない)。
ワイドに張る宮吉と釣られないガンバ

4.2 大外を開ける動き


 中盤センターに入った小野と駒井、更には下がってくるチャナティップがガンバの「4」の前方、アデミウソンの背後でボールを動かすと、倉田以外は20歳前後の選手が並んだガンバの2列目は札幌のボール保持に対して前に出てくるので、ガンバはライン間が空き始める。
中央でボールを動かすと2列目が食いつきかける

 都倉やジェイが起点をつくり、右サイドに展開するが、この時サイドに展開するタイミングで宮吉は中央に入り、大外を守るオ ジェソクの意識を完全に中央に向ける。その空けられたレーンに進藤が登場。進藤の攻撃性能は全般に、ここ数試合で更にチーム内の評価、信頼が高まっているように感じる。
食いついたら中央経由でサイドに振り、進藤を砲台に

4.3 藤春の迷い

1)サイド専任


 ガンバの対抗策は非常にわかりやすい、大外を見る選手を新たに配して守るというもの。倉田に変えて藤春を投入するが、藤春は札幌の攻撃時、常に大外のレーンを埋めるように守る。宮吉が中に入ればオジェソクに任せるし、大外でクロスを上げようとする選手は藤春が責任を持って見る、という役割分担になる。
藤春でサイド封鎖を狙う
 ところがアディショナルタイムの4分弱を経過したところで、札幌のスローインからの攻撃に対し、藤春が空けた大外のレーンから進藤のクロスに都倉が頭で合わせて札幌が同点に追いつく。この時、ガンバはボールを保持する小野に対し、高江が寄っていくことで中央が手薄になり、そこを藤春が絞っていたという関係になるが、藤春は高江にコーチングしボールへの圧力を高めるように指示を出している。
 この指示自体は問題ないが、問題は藤春自身が中央に絞ることで自らタスクオーバーを招いている。進藤にパスが渡った後、藤春は更にオジェソクを制して自ら進藤に寄せる選択をしているが、この寄せは不十分でやはり無理がある運用になっていた。結果的にオジェソクは全くプレーに関与せず、「いるだけ」対応になっている。
藤春自身のコーチングでタスクオーバーを招いた

 この辺りの整理は、ピッチ上での選手の判断に依るところもあるが、まず5バックに更に藤春を追加して実質最終ラインを6枚にする采配に始まるところから、ガンバがあまり5バックでの対応に慣れていないことが裏目に出た印象を受けた。

5.雑感


 ガンバの5バックへのシフトには「またかよ」と思ってしまったが、明らかに4枚では守れそうな様子はなかったので当然ともいえる対応だった(もっともゴールが入るかは別の話)。前半のやりたい放題のうちに得点できるとよかったが、結局またも宮吉の投入がゲームを動かす展開となった。

2 件のコメント:

  1. 交代が白井ではなく宮吉だったのは論理的だったのか。なるほど

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    1. WBが中央に入ってワイドストライカーになるパターンは最近増えてきましたね。菅や早坂に比べると白井はやはり、アウトサイドでの仕事の方が得意かなと思います。また、白井はまだ守備が怪しい時がありますね。単純に対面の選手だけを見ていればいい時は割といけますが、中間ポジションを取る選手の受け渡しが怖い印象です。

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