2023年11月26日日曜日

2023年11月25日(土)明治安田生命J1リーグ第33節 FC東京vs北海道コンサドーレ札幌 〜惰性からの脱却のために〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • FC東京はクラモフスキー監督が6月に就任し、選手起用で目立った変化としては、GKをスウォビィクから20歳の野澤。右SBは小泉を何度か試していたようですが、長友や白井も一定の出場機会をいています。そしてウイングに、主に左で俵積田の出番が増えていましたが、この日はアダイウトンと仲川の起用でベンチスタート。
  • 松木は代表帰りのためおそらく休養で、中盤センターに夏加入の原川と小泉が起用されています。バングーナガンデは負傷で徳元が左SBでスタメン起用。
  • 逆に序列が下がっていた選手に、木本が挙げられますが、前節の新潟戦に続いてエンリケトレヴィザンが2試合出場停止のため、この日はスタメン起用されています。
  • 札幌はルーカスが不在で右に浅野。馬場が累積警告4枚目で出場停止のため、宮澤が28節以来のスタメン復帰。GKは高木が加入した8/25の川崎戦以来初めてのベンチスタートで、菅野が復帰。



2.試合展開

25年の惰性からの脱却へ:

  • 前回5月の連休の際の、札幌ドームでの対戦では、アルベル監督率いるFC東京は、ピッチを特に縦に広く使ってコンサの守備を剥がしたかったのだと思うのですけど、色々と足りないFC東京のバックラインはコンサのマンマーク基調の守備を剥がさないままボールを手放して、ショートカウンター気味の展開からコンサが得点を重ねました。
  • この試合の入場時に「FC Tokyo 25th」と書かれたノベルティを配られて、25周年なんか〜と思いましたけど、なんというか…FC東京もコンサもその約25年の歴史の大半をボールを捨てるサッカーでやり過ごしてきたチームなだけに、クラモフスキー監督も前監督同様に難しいミッションを背負っていると感じます。結局相手に持たせてカウンターをした方が明らかに結果が出るというシーズンが何度もありましたからね。

  • そんなFC東京が前半は割と「それっぽい」サッカーに変質していて、もしくは変質しようとしていて私はちょっと感銘を受けました。
  • ボールを持っている時のFC東京の配置は↓みたいになっていました。仲川とアダイウトンがタッチライン際で待つ役割で、長友が中央に入ってくる。

  • まずコンサは見ていて、こういう3バックだか4バックだか一見してちょっと区別しづらい配置でくる相手に対してマーク関係が曖昧になる傾向があります。それは担当する選手がどこまでついていくかとか、マークをスイッチするか否かとかが曖昧になるという、マンマーク基調の守備であるあるな理由なのですけど。
  • 典型的なのは18分に、木本が右に開いてタッチライン付近でボールを受けて駒井のプレスを回避しながら仲川に一発スルーパス(シュートは枠外)。どうしても福森が槍玉にあがりますが、出し手が完全にフリーだったのでDFとしては対応が難しいプレーでした。
  • あとはハイライトにも載っているので見ていただければわかるのですけど、3分に原川が荒野の背後から抜け出してディエゴのスルーパスを受けてシュート。これもディエゴの移動でマーク関係が崩れて出し手がフリーの局面からでした。

  • FC東京に話を戻すと、特に相手がコンサということもあってウイングがウイングロール(サイドに張る)を徹底します。それで中央にスペースが(実に簡単に)できるので、あとはそこをどう使うか、というところ。
  • その中央を使う役割が、中盤センターの原川と小泉(アンカーとインサイドハーフの役割を2人で分担する)、中央に入ってくる世界の長友、そしてリンクマン風の佇まいをするトップ下の渡邊。得意なパターンに入ると強力な東京の3トップに、その得意なシチュエーションを作ってボールを渡す役割はこれらの選手が担うはずです。
  • GK野澤(あんまりこの試合だけでは良さがわからなかったが…)がスウォビィクに変わって起用されているのも、おそらくこうしたスタイルチェンジによって、バックパスの処理やDF背後のケアに向いた選手だと評価なのだと思います。

3ワーカー+2シャドー
  • ただ、この部分のクオリティに東京はちょっと問題があって、まず一番は、長友は配置の性質上、一番浮き気味でコンサが捕まえづらい選手だったのですが、ボールを受けたところでスペースを有効に使えたかというと、う〜ん…というところ。それは原川も同じでした。
  • 渡邊は受けた時にスペースがあると、前を向いて中央方向にドリブルして、コンサのDFを引き付けてから3トップにラストパスが出せていたのですが、渡邊1人だと、得られたスペースに対して仕事をする人が足りなすぎる感じがしました。渡邊以外はFC東京は労働者っぽい選手の比重が強すぎるように思えます。

  • それもあってか、FC東京は徐々に、中盤を飛ばし気味に前線3トップにさっさと縦パスを送る(私が最近よく言うのは「能力のある選手にボールを押し付ける」)プレーが増えていきます。
  • 特にアダイウトンが、サイドでプレスを回避しやすいのと彼の能力や期待値の高さもあってボールを押し付けられるのですが、縦パスをアダイウトンが受けてもDFを背負った状態でスタートすることが多く、彼の特徴が生きる局面ではなかったと思います。

  • また仲川とアダイウトンは、いずれもサイドの狭いスペースでボールを受けてから何かをするというかは、前にスペースがある局面の方が得意な選手で、あんまりウイングっぽいプレー(スペースがない状態で相手のSBと対峙して、そのSBを押し込むようにボールを扱う)が得意ではない。
  • おそらく監督の指示に忠実にサイドに張っていたのですけど、ピッチ上の選手の感覚としては、彼らの能力を活かすなら時間をかけてからボールを渡すのではなく、ボールを持ったらさっさと前線の選手(ディエゴを含む)に渡した方が良さそうだ、と考えるようになって、前半から(おそらくクラモフスキー監督が想定する以上に)オープンな展開になっていきます。
  • そのオープンな展開で、お互い選手がまだ疲れていない時は、シンプルにゴール前の強度で決まる傾向があって、何度かチャンスがあったのちにディエゴのゴールでFC東京が先制します。

中村の投入と労働者の疲労:

  • コンサのボール保持から始まる局面の話をします。
  • GK周辺にボールがある時は↓のような配置、構図になっている。この局面ではFC東京もマンマークというか1on1を意識した対応に見えました。
  • ただ前半にFC東京はディエゴ、アダイウトンがにそんなに頑張ることを期待していない感じで、たとえば中央を割ってアンカーの荒野にパスを出すのはできるし、落ちてくる青木や駒井も中央のスペースで受けられたりもするし、岡村や宮澤が困ることもあまりなかったように思えます。


  • コンサの前線は、初期配置では駒井がトップにいるけども、役割としては駒井はフリーマンで自由に動き回る。FC東京は中央のスペースに人をあまり置かないし、CBも駒井についてこないので割とやりやすかったかもしれません。
  • そして駒井が下がるとは逆に、小柏は基本的に裏抜けだけを役割としてやっていて、右でスタートしますが中央〜場合によっては左サイドまで流れてきます。この駒井と小柏はマンマークで捕まえるのはFC東京にはあまりフィットしてない感じがして、青木も含めて、コンサの前線の選手は割とやりたいプレーができていた感じはします。

  • 敵陣Zone3での守備が突破されると、FC東京はリトリートに切り替えますが、先述のようにディエゴとアダイウトン、場合によっては仲川も前残り気味で、その分は中盤センター2人とトップ下の渡邊の頑張りでカバーするといった体制。
  • たとえば、コンサのWBに対してはなるべく2人で縦切り、横切りの対応をしようとしていましたが、ヴィッセル神戸だと武藤とか佐々木がプレスバックしてやっていたのを、FC東京はアダイウトンや仲川ではなくて、中盤センターの2人と渡邊が頑張っていたし、前線では常に渡邊だけ帰陣が早かったと思います。


  • そして後半開始からコンサは福森→中村、菅→スパチョークのカードを切りますが、特に中村桐耶の投入については、中央にスペースがあるFC東京に対しては1人で長い距離を攻撃参加できる中村が効く、という試合の読みをしていたとするならさすがですね。
  • 後半はそのスペースでコンサの選手の攻撃参加が目立つようになる一方、FC東京の中央の選手は55分とか、後半の早い時間帯で明らかに疲れている感じがして、早い時間帯でコンサが2ゴールを奪って逆転しました。


雑感

  • 私がFC東京のスタッフだったら、レッズみたいにCBに外国人選手を2人連れてきて、あとは中央でプレーできるSB、ウイングプレーができるウイング、中央で前を向けるMFあたりが欲しいととりあえず言ってみます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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