2019年7月12日金曜日

プレビュー:2019年7月13日(土)明治安田生命J1リーグ第19節 大分トリニータvs北海道コンサドーレ札幌 ~代役は大役の予感~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)MF金子(ユニバーシアード日本代表招集)
MF高嶺(ユニバーシアード日本代表招集)
×(負傷等で欠場濃厚)DF石川(7/3天皇杯Honda FC戦試合前の負傷)
MF中野(6/1広島戦での左ヒラメ筋肉離れ)
*(負傷等で出場微妙)MFチャナティップ(6/22鳥栖戦での左太もも裏痛)

 今週水曜日から中野が全体練習に合流したが、恐らく今週は調整を続け、来週から実戦復帰になるだろう。チャナティップも同じく水曜日から全体練習に合流だが、その症状から考えるとこちらはより出場の可能性が高い。その場合、アンデルソン ロペスがサブに回ることになりそうだ。前節から復帰した宮澤と駒井は、宮澤は荒野に代わって先発も予想される。荒野の調子も悪くなさそうだが、ここ2試合勝ちが遠いチーム状況を考慮すると先発起用だと予想する。左サイドは好調を維持する白井の起用が有力。

1.2 大分

×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)FW伊佐(左膝軟骨損傷、全治4ヶ月)
*(負傷等で出場微妙)DF岩田(6/30試合中の負傷)
MF松本(7/6横浜戦試合中の負傷)
MF小林(6/30試合中の負傷)

 ストロングポイントである右サイドのレギュラー、岩田と松本の負傷離脱は痛い。いずれも欠場が確定ではないが、欠場するものとして試合展開を予想する。右サイドはガンバ大阪から田中達也が加入し、移籍ウインドーが7/19に開く関係で次節以降にデビューが見込まれる。今節は恐らく星が起用されるだろう。福森直也は最近スタメンを外れているので、餃子の人との福森対決はお預けになりそうだ。


2.前回対戦(2019/4/6)のおさらい

プレビュー
レビュー

2.1 出会って50秒で瓦解


 スタメンは、大分はほぼこの時点のベストメンバー。札幌は前の試合でトランジションや守備面での懸念事項が露になったルーカス フェルナンデスをサブに置いて中野をスタメン起用。
 開始50秒でアウェイの大分が先制して1-5-4-1で撤退する展開に。札幌のマンマーク守備を逆手にとって、大分のストロングポイントである右サイドアタックで福森の側面を強襲。ポケモンで言うとカメックスのハイドロポンプ並みにバレバレの攻撃だったと思うが、もろにヒットしていきなり瀕死の傷を負った札幌であった。先制後も大分の速攻が、札幌のスピードにあまり自信のないバックライン(宮澤、福森)を蹂躙する。

2.2 5バック相手に遅攻一辺倒の札幌


 マンマーク基調の5バックで守る大分相手に2点のビハインドを負った札幌の策は、1-5-0-5に変化しての遅攻勝負。しかし後半ワイドに張るルーカスの登場までは中央レーンでの渋滞による拙攻が続き、可変システムの利点を活かせない。シャドーが落ちてWBがハーフスペースに入る1-5-0-5の役割で違和感なくプレーできる中野が1点を返すが、その中野が下がると再び停滞。90分間アンロペちゃんは狭いスペースでフラストレーションをため込んだ。



3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌


青字が前節との更新・変更点。
コンセプトより多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持(自陣)ビルドアップはミシャ式4-1-5から、高い位置に張るWBを出口と位置してサイドチェンジ等でボールを届ける。キム ミンテがスタメンに復帰して以降は後方の役割が固定気味で、宮澤がアンカー、深井が中央左。福森のフリーロールも自重気味。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。そうでなければ無理せずロングフィード。
ボール保持(敵陣)サイドアタック主体。押し込んでから仕掛けるのは右のルーカス。菅は極力シンプルにクロス供給に専念か、相手SBを押し込んで福森をフリーにする役割。ルーカスのアイソレーションを活かすためにチャナティップ、福森からのサイドチェンジを狙うが、チャナティップは消されがち。
ルーカスはコーナーフラッグ付近で自由を与えられているが、福森はファーサイド狙いを徹底する。
ボール非保持(敵陣)相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。
時間帯にもよるが、先制したらリトリートの傾向が強くなる。
ボール非保持(自陣)基本は1-5-2-3で、前3枚はポジティブトランジション用に残しておく。ゴール前からCBを動かさないことを重視。なるべくマンマーク関係を維持する。
ネガティブトランジション中盤2枚は即時奪回を目指す。ビルドアップが成功するとともにポジションと役割がCBからセントラルMFのそれになる。CBは2枚、時に1枚で相手のFWと同数。裏はGKク ソンユンの極端な前進守備で何とかさせようとの考えがここ数試合は強くなっている。
ポジティブトランジションシャドーが裏に飛び出しての速攻がファーストチョイス。
先制したらリトリートからの速攻狙いに切り替える。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任だが、ルーカスもたまに蹴る。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。

3.2 大分

青字が前回との更新・変更点。
コンセプト疑似カウンターもしくは純粋なカウンターで、相手ゴール前にスペースを確保してから、前線の速さを活かしたフィニッシュを狙う。
ボール保持(自陣)ミシャ式1-4-1-5をベースに、GKを組み入れた自陣ゴール付近で数的優位を作るビルドアップ(0-4-2-5?)から相手の1stディフェンスを無力化し、疑似カウンターを積極的に狙っていく。
ボール保持(敵陣)高さのある選手がいないため、フィニッシュは地上戦メイン。地上戦で勝負できるスペースをゴール前に作ることから逆算。疑似カウンター狙いのビルドアップで作った貯金を使ってスピードを落とさずにフィニッシュまで持ち込む。
小塚がビルドアップの出口になり、特に右サイド(WB松本の突破か、松本が相手SB/WBを引き出して裏にシャドーが走る)からのアーリークロス。アタッキングサードでは基本的にボールを下げない。
ボール非保持(敵陣)リトリート、マンマークの意識が強い。敵陣では無理はしない。1-5-2-3でセットしミドルゾーンから守備を開始。1列目3人で縦を切り限定させ2列目+最終ラインが受け手をマンマークで背後から迎撃。
ボール非保持(自陣)1-5-4-1で撤退してゴール前はほぼ人を捕まえる守備。1列目・2列目は捕まえる対象の選手を常に視界に入れ続ける位置取り。非保持時もシャドーはなるべく高い位置取りを狙い、カウンターの仕掛ける余地を作ろうとする。
ネガティブトランジション基本的にはリトリート。
ポジティブトランジション脱出地点が敵陣付近で、かつ相手のバランスが崩れていればシンプルに裏を狙う速攻。崩れていなければボール保持に切り替え。
セットプレー攻撃左足キッカーは長谷川、右足は小塚。
セットプレー守備CKではゾーンとマンマークの併用。ゴール前に3人で列を作る。(浦和戦ではゴール近くから鈴木、長谷川、岩田)。4人でマンマーク(後藤>前田>三竿>高山)。

4.想定されるゲームプラン

4.1 札幌のゲームプラン


 ここ数試合は、自陣からのロングカウンターの意識が強まっている印象。ホームで敗れている大分相手に引いた戦い方を選択することは大いに想定される。一方、ミシャはビルドアップが得意なチームからはボールを取り上げる志向も強い。ただ、ジェイの起用や、大分の前線の選手特性を考えると、やはり引いて守りを固めて試合に入ると予想する。

4.2 大分のゲームプラン


 ホームゲームであり勝ち点3と札幌相手のダブル達成が欲しい。ただし、崩しのキーマンである松本と岩田を欠くなら、ショートカウンター寄りの戦い方をいつもよりも強めるという考え方もあるかもしれない。戦術的な柔軟さ(どっちがボールを持つ展開でも戦える)は大分の方がありそうだ。

5.想定される試合展開とポイント

5.1 利害一致(ツゴーアウジャン)


 どちらがボールを持つ展開になるか予想がつかない(五分五分ということもあるが)。ただ、両チームともミシャ式なので、トランジションよりもボール保持/非保持の局面はポイントになるだろう。互いのボール保持局面での現象を予想する。

 札幌がボールを持っている時、大分は札幌の左、大分の右サイドに誘導したいと考えるだろう。大分は速攻/遅攻共に右サイドが得意。一方、札幌は左の福森が攻撃におけるストロングポイントであり、かつボール非保持時には隠したいウィークポイント。大分は誘導して巧く守れば、札幌のスピードに難ありの左サイドを強襲できる。もっとも札幌も深井からボール保持攻撃が始まる傾向があるので、誘導の必要はないかもしれないが。
大分は右サイドに誘導したいはず

 大分は相手が3バックなら、1列目がパスコースを制限させ、縦パスを”出させて”から2列目・3列目がマンマークで迎撃守備を敢行するやり方を基本としている。札幌に対してもいつものやり方で来るはずだ。深井からの前進に対し、中央の宮澤、白井、チャナティップにはそれぞれマンマークがつく。ミシャ式の教義に忠実な対応だが、師匠よりもアグレッシブ。
1列目が誘導・限定して2列目以降で受け手をマンマーク迎撃

 札幌にとりうる策は2つある。1つは得意の旋回式ポジションチェンジでマンマークの基準を狂わせること。チャナティップ、好調の白井と揃えばこれはスムーズにいくはずだ。大分の右シャドー(オナイウ)が基準を見つけられなければ福森がフリーになる。
(札幌の対応1)ポジションチェンジで大分の守備の基準を狂わせる

 そして福森がフリーになった状態で、大分が重心高めの迎撃守備を敷き続けるなら裏を狙えばいい。裏が気になれば、反対サイドのルーカスもフリーになるだろう。
守備の基準を狂わせてからフリーの選手から展開

 そう考えると大分は、札幌が形を変えてきた段階で撤退した方が得策。すると札幌はスペースがなくなるので、4月の札幌ドームでの対戦に似たシチュエーションになる。ギャップができたまま攻められるなら札幌にチャンスはありそうだが、それだけでクリティカルな状況は生まれないと予想する。

 もう一つ、札幌が採りうる策は、マンマークで守るDFを背負っても質で勝てる選手を突破口とすること。具体的にはチャナティップとジェイ。チャナティップはコンディションが気になるが、札幌にはボーイを大人にする男がいる。これも福森から、さっさとジェイに放り込んで様子を見る(勝てればOKだし、あまり勝てなくても大分ボールになった時に陣形を整えられるのでコストは小さい)という戦略も大いに考えられる。

5.2 大分の守り方とゴール前攻略のキーマン


 リーグ戦の直近5試合(vsFC東京、名古屋、神戸、浦和、横浜)で大分は計7失点を喫しているが、このうちビルドアップのミスを突かれての失点が3点(神戸戦の2、FC東京戦の1)、ショートカウンターからの失点が2点(FC東京戦の1、名古屋戦の1)。まともに5バックを崩すそうとするよりも、ビルドアップを破壊するか、籠城してカウンターで仕留める方が得策かもしれない。
 大分の撤退守備について気になることを言うと、ゴール前では中央を固める意識が強いが、サイドは大外を守る選手1人が独力で何とかするという状況が散見される。最終ラインは基本的にマンマークだが、マリノスや名古屋のような、アタッキングサードで横幅を使わないチーム相手だと、大外WBも中央に引きつけられてサイドを簡単に破られることもあった。
 恐らくサイズのないGK高木をサポートするため、中央からなるべく動かないようにDFを運用しているが、それならばサイドを、できればスピードのある選手で攻撃したい。こう考えると、札幌でポイントになりそうなのは好調の左の白井か。オンザボールだけでなく、オフザボールでも仕事ができる。サイドに張ったとしても、ハーフスペースに入ったとしても、白井の出来が中央ゴール前攻略の成否を握りそうだ。
大分はゴール前では人基準+中央密集の意識が強く、サイドには積極的に出ていきたい。

5.3 ここでもキーマンは白井?


 先述の通り、大分相手に点を取って勝つには、大分のビルドアップでミスを誘うか、カウンターを狙うやり方の方が有効かもしれない。
 それぞれアプローチは異なる。前者を考えるなら、大分がボール保持時の札幌のミッションは、なるべく大分ゴールに近い位置で相手選手にプレッシャーを与えるような守備をすることになる。ビルドアップの出口である小塚にボールを届けられれば大分の勝ち、札幌は小塚を消しながらミスを誘う対応が求められる。

 札幌がいつものマンマークだとしたらこのようなマッチアップが想定される。例えばチャナティップの守備力なら、島川には問題なく対処できそうだが、ジェイ-鈴木のマッチアップではシンプルに鈴木を困難に陥れることは難しそうだ。最大の課題は、青い円の部分にGK高木、もしくは長谷川が登場するが、ここでどこまで対応するか。高木がボールに関与する局面は、札幌のクソンユンのそれと同様に相手にとっては狙いどころだ。仕掛けるなら、武蔵や宮澤がジェイをサポートする仕組みが必要になる。
 しかし現実的には、これまでの札幌の戦いぶりを見ると、前線の一角にジェイがいる状態ではミッション達成は難しいだろう。
前からハメようとするなら「ジェイの隣」が問題になる

 (追記)現実味は薄いかもしれないが、札幌の右シャドーが本来の守備の基準(三竿)を捨ててGK高木にプレスをかけると面白そうだ。その場合、三竿にはルーカス。大分の左サイドの三竿と高山にルーカス1人では数的不利に陥るが、右利きの高山はゴール前で右足に持ち替えてクロスに持ち込まなくてはならないし、三竿の攻撃性能も岩田ほどではない。大分のメンバーではある程度”捨てて”いいエリアだと思うし、ハマった場合のリターンは大きい。
現実味は薄いがシャドーはGKにプレスでもいい


 となると札幌ゴール前での攻防に、判定は持ち越しになる。ここでの札幌の狙いは「武蔵とチャナティップをなるべく高い位置に置いた状態で守り切りカウンター発動」だと定義できる。17節の仙台戦のように、両シャドーが押し込まれて反撃できない状況だとジリ貧に陥る。
 大分は松本と岩田がいなくても、隠し玉がない限りは右サイドアタックだろう。チャナティップを前に残しておくなら、白井と福森で対処する必要がある。大分のパターンは2つ。↓で示したような、WB白井を引き出してから裏のスペースをシャドーが突く形が1つ、もう1つはWBの縦突破で純粋に勝負するもの。いずれにせよ仕上げは低くて速いクロス。
撤退守備に移行時は、できればシャドーを下げずに対処したい

 札幌はここで、白井と福森で勝算が見えれば全体としての収支はプラス。チャナティップが下がる状況になると、守備の強度は増すが勝ち点3を奪う上ではマイナスかもしれない。白井の役割がここでも重大なことは間違いない。

用語集・この記事上での用語定義

1列目守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。
守備の基準守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。
トランジションボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。
ビルドアップオランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。
ビルドアップの出口後方からパスを繋いで行うビルドアップに対し、相手は簡単に前進させないようハイプレス等で抵抗する。
この時、ハイプレスを最初から最後まで行うとリスキー(後ろで守る選手がいなくなる)ので、ハイプレスは人数やエリアを限定して行われることが多いが、ビルドアップを行っているチームが、ハイプレスを突破してボールを落ち着かせる状態を作れる場所や選手を「ビルドアップの出口」と言っている。
マンマークボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。
対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。

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