スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-1-2、GKク ソンユン、DF菊地直哉、増川隆洋、福森晃斗、MF石井謙伍、前寛之、宮澤裕樹、ジュリーニョ、ヘイス、FW都倉賢、内村圭宏。サブメンバーはGK金山隼樹、DF永坂勇人、MF河合竜二、堀米悠斗、神田夢実、小野伸二、FW上原慎也。前節・町田戦とスタメン、サブ共にまったく同じメンバー。恐らく今シーズン初めてだと思われる。
ギラヴァンツ北九州のスターティングメンバーは4-4-2、GK鈴木彩貴、DF星原健太、西嶋弘之、福田俊介、川島大地、MF小手川宏基、風間宏希、新井純平、本山雅志、FWロドリゴ、小松塁。サブメンバーはGK中山開帆、DF寺岡真弘、福森健太、MF井上翔太、加藤弘堅、内藤洋平、FW原一樹。2017年シーズンより新スタジアムへの移転が決まっている北九州だが、試合開始前の時点では21位金沢と勝ち点差1、20位岐阜とは勝ち点差6で最下位に沈む。予算が限られている中で、7月に長崎より期限付き移籍で獲得したロドリゴが初スタメンだが、元々FWはある程度計算できる選手が揃っており、補強ポイントはそこではないように思える。なかなか軸が定まらない様子のCBは、大宮から期限付き移籍で獲得した福田と、28節から復帰してきた西嶋の組み合わせだが、この西嶋の復帰が補強だと考えられているのかもしれない。
1.前半
1.1 "あわよくば"サッカー
いきなり余談だが、この試合の前…水曜日から金曜日まで九州北部に出張していて、雨が多くまた肌寒い天気が続いていた。ところがこの試合時の気温は30.5℃。残暑の陽気を感じる中でのキックオフとなる。
前回対戦時の北九州のスタイルは、札幌ホームということもあり、かなり慎重、守備的な試合運びをしている。具体的には、2トップをやや前に残すものの、後方の4-4ブロックは終始低い位置にセットして最低限8枚の守備人数を常に確保するようにしていた。
しかしこのやり方の問題点は、前に2人しかいないので札幌の3バック+ボランチによるビルドアップを阻害しにくい点である。おそらく前2人でプレッシャーをかけて、あわよくば高い位置でボールを奪う…というイメージだったと思われるが、4vs2、5vs2という人数では難しい。
前回対戦時のこうした状況も踏まえ、開始10分頃までの展開で、北九州は全く異なる2つの顔を交互に見せるかのような試合の入り方をしている。というのは、①ある時は積極果敢な前プレ、②ある時は自陣に全員を戻してのドン引きリトリート、という具合である。
1)基本はリトリート
試合中盤以降の展開を見ていけばわかるが、この試合、首位・札幌に挑む北九州の基本姿勢は自陣深くへのリトリートからのリアクションサッカー。札幌のポゼッションが始まると、全選手が自陣に撤退するが、このとき小松とロドリゴの2トップを縦関係にした4-4-1-1の守備陣形を作り、札幌を迎え撃つ。小松の位置は下の図のように自陣ペナルティエリアよりも手前、かなり低い位置でセットしていることがわかる。
北九州のこの4-4-1-1の守り方は、ゾーンというよりマンマーク。特に札幌の最終ラインで組み立ての起点となる菊地、福森に対し、サイドハーフの小手川と本山を当てていくということが意識されている。
菊地と福森を空けない |
<意外なキーマン・ロドリゴ>
ただこのやり方だと、札幌の選手が移動するたびに北九州の選手もどんどんつられて動いていくことになる。よって中盤の並びがぐちゃぐちゃ、もしくは人がいるべき位置を開けてしまってスカスカ、ということになりかねないが、この解決策として、トップ下気味のポジションを取っているロドリゴが頻繁に中盤のラインまで下がって開けたスペースを埋めている。
例えば下の図では、札幌左サイドの展開で、風間がヘイスにマンマーク気味に付いていると、ヘイスがボールサイドに流れるとそのまま風間がついていき、バイタルエリアのスペースが空いてしまう。するとこの空いた中央のスペースは、新井がスライドするのではなくロドリゴが下がって埋める(新井はこのとき、マーク対象としている宮澤を見たまま)。ロドリゴはこれまで出場機会が少ないこともあり、どのような選手なのかよくわからないが、この働きを見ていると、意外と気が利く系の選手なのかな、という印象を受ける。
序盤、何度か発動させていたのが、2トップが高い位置から追っていく、いわゆる前プレで、主に札幌がボールを下げたときに2トップの小松とロドリゴ、特に引き気味でトップ下のように構えているロドリゴが小松の横に並ぶか、小松を追い越して札幌のボールホルダーを追っていく時が前プレのスイッチになっている。
考え方としては恐らく、前2枚だけでは札幌の守備陣に混乱を与えることができないので、中盤の選手…サイドハーフと、場合によっては両ボランチも前から当たらせることで枚数を確保し、これまたマンマーク気味に人につくことでフリーの選手を作らせず、ビルドアップをさせないという考え方。
2トップは基本的に小松が前で、小松一人が最前線にいる際は一人で追っていくということはない。その意味で、この場合もキーマンは1.5列目から最前線に加わるロドリゴ、ということになる。
ただ北九州の前プレは印象としてはやり方が殆ど整理されておらず、まずスイッチを入れる状況判断がケースによってバラバラ、要するに小松とロドリゴが個人の判断でいけると思えば追っていき、小手川や本山が追随するといったレベル。また追い方もマンマークを前提とした、基本的に一番近い選手についていくという程度のもの。
↑の図では前から札幌の選手に1人ずつをはめているが、宮澤に対しては本山と風間の両方が向かっており、そのため最終ラインは4人しか残っていない。札幌は2トップ+トップ下+両サイドの5人が前にいるので、ソンユンが石井にフィードを蹴ると、石井に川島が引っ張られ、非常に不利な状況が発生しやすくなっている。
北九州はセオリー通り、プレッシャーの薄いサイドバックを起点にボールを前進させていく。
具体的には、以下の図で示す、FWの間でパス交換して中央に守備の意識を寄せ、サイドバックを解放してからウイングバックを釣り出して裏を使うプレーを何度か見せていく。このプレーはここ数試合対戦したチームが全て展開しており、札幌対策のテンプレになりつつある。
北九州は特に右サイド:小手川&星原vsジュリーニョ(&福森)というマッチアップを積極的に狙っていく。ただ、小手川のところまでボールを運ぶことには成功するものの、そこから決定的なシュートチャンスまでもっていくには、小手川が対面の選手に勝つなり、明確なギャップを作ってマークを外すといったプレーの精度が足りず、札幌の守備に混乱を与えるには至らなかった。
上記の発展形で、恐らく北九州が仕込んでいた攻撃のパターンの一つに、ボランチが引くことで札幌のボランチを動かし、空いた背後のスペースを使うという狙いがあったと思われる。
下の図に示したように、北九州が最終ラインでボールを動かしている時、新井と風間のWボランチは少しずつ札幌の3トップの間に滑り込むようにポジションを下げていく。このとき、図のように前寛之が新井に食いつくと、その背後のスペースが空いてしまう。
このスペースを使う役割の選手は本山とロドリゴで、下の図に示した33:10頃のプレーでは本山が右サイドに進出し、スペースに顔を出している。この時は新井のターンがイマイチで本山にパスを出せず、本山はかなり悔しそうな態度を見せていた。
北九州が中央を固めているので、札幌としてはサイドから打開したいところで、そのためには石井とジュリーニョの両ウイングバックを高い位置に張らせ、ここにボールを届けて勝負させる形を作りたい。特にジュリーニョがスタメンということで、積極的にボールを集めたいところだが、前半の札幌は、ジュリーニョが高い位置でボールを受けられない状況が非常に目立っている。
なぜジュリーニョが高いポジションを取れないかというと、後方にサポートする選手…ボールの配給役、オシム風に言うと「水を運ぶ選手」がいないから。
守備の仕方という観点では、北九州も札幌も基本的はリトリートがベースのチーム。よって、この試合を通じてお互いに高い位置からボールを奪いに行くという姿勢はあまりなく、待ち構えてミスを誘うような展開が続く。
特に、様子見ということもあったのか、また暑さもあったためか、後半開始からの数分間は互いにボールを回収すると、ゆっくりとパスを回しながら攻撃陣形に移行するが、守備側は積極的に取り返そうとはしないため、非常にゆったりとした、言い換えれば緩い試合展開となる。好みの問題はあるが、見ていて早送りしたくなるような動きのなさであった。
一応首位のチームが試合しているとは思えないほど緩い試合の象徴的シーンが下の64:40、本山の浮き球パスにロドリゴが抜け出してループシュートを放った場面で、最終ラインをこの高さに設定しているにもかかわらず、ハーフウェーラインを越えて前を向いて持つ本山に、札幌は全くプレッシャーがかかっていない。ロドリゴのループが勢いを欠いたため失点こそ免れたが、あわやお笑いゴールを献上してしまうところだった。
そんな緩い展開の中、先に仕掛けたのは札幌の側で、後半開始10分(55分)を過ぎた頃から守備の開始位置を上げていく。ボールを失うと、前半は自陣で待ち構えるだけの守備だった対応が、前線のトリデンテ…都倉・ヘイス・内村の3名でボールホルダーとその周囲の選手を追いかけていく。
この対応はせいぜい軽いジャブ程度のものだが、ビルドアップをあまり用意していない北九州はこれだけでも困ってしまう。すると苦し紛れに後方から小松目がけて放り込まざるを得ないので、ボールをイーブンな状態にさせてから回収しやすくなるとともに、北九州の陣形を前後に分断させる意義もある。
ただ前線3枚が守備を仕掛ける位置を上げたことで、リトリートする際に戻ることが難しくなり、結果的に札幌も前後分断気味の陣形、当ブログでも毎試合のように触れている5-2の守備陣形と前3枚の距離が離れていくになっていく。
ロドリゴの中盤を埋める動き |
4-4ブロックに加えてロドリゴも低い位置で守備に加わる |
2)時折見せる前プレ
序盤、何度か発動させていたのが、2トップが高い位置から追っていく、いわゆる前プレで、主に札幌がボールを下げたときに2トップの小松とロドリゴ、特に引き気味でトップ下のように構えているロドリゴが小松の横に並ぶか、小松を追い越して札幌のボールホルダーを追っていく時が前プレのスイッチになっている。
考え方としては恐らく、前2枚だけでは札幌の守備陣に混乱を与えることができないので、中盤の選手…サイドハーフと、場合によっては両ボランチも前から当たらせることで枚数を確保し、これまたマンマーク気味に人につくことでフリーの選手を作らせず、ビルドアップをさせないという考え方。
2トップは基本的に小松が前で、小松一人が最前線にいる際は一人で追っていくということはない。その意味で、この場合もキーマンは1.5列目から最前線に加わるロドリゴ、ということになる。
ボールを下げると前プレを狙うが 人数配置等イマイチ整理されていない |
ただ北九州の前プレは印象としてはやり方が殆ど整理されておらず、まずスイッチを入れる状況判断がケースによってバラバラ、要するに小松とロドリゴが個人の判断でいけると思えば追っていき、小手川や本山が追随するといったレベル。また追い方もマンマークを前提とした、基本的に一番近い選手についていくという程度のもの。
↑の図では前から札幌の選手に1人ずつをはめているが、宮澤に対しては本山と風間の両方が向かっており、そのため最終ラインは4人しか残っていない。札幌は2トップ+トップ下+両サイドの5人が前にいるので、ソンユンが石井にフィードを蹴ると、石井に川島が引っ張られ、非常に不利な状況が発生しやすくなっている。
1.2 北九州のビルドアップ
1)札幌対策のテンプレと右サイド偏重の展開
北九州はセオリー通り、プレッシャーの薄いサイドバックを起点にボールを前進させていく。
具体的には、以下の図で示す、FWの間でパス交換して中央に守備の意識を寄せ、サイドバックを解放してからウイングバックを釣り出して裏を使うプレーを何度か見せていく。このプレーはここ数試合対戦したチームが全て展開しており、札幌対策のテンプレになりつつある。
北九州は特に右サイド:小手川&星原vsジュリーニョ(&福森)というマッチアップを積極的に狙っていく。ただ、小手川のところまでボールを運ぶことには成功するものの、そこから決定的なシュートチャンスまでもっていくには、小手川が対面の選手に勝つなり、明確なギャップを作ってマークを外すといったプレーの精度が足りず、札幌の守備に混乱を与えるには至らなかった。
FW~ボランチ間でゆっくりと何度もボールを動かして 右サイドが空いたら星原から縦に展開 |
2)右サイドへの密集と本山の絡み
上記の発展形で、恐らく北九州が仕込んでいた攻撃のパターンの一つに、ボランチが引くことで札幌のボランチを動かし、空いた背後のスペースを使うという狙いがあったと思われる。
下の図に示したように、北九州が最終ラインでボールを動かしている時、新井と風間のWボランチは少しずつ札幌の3トップの間に滑り込むようにポジションを下げていく。このとき、図のように前寛之が新井に食いつくと、その背後のスペースが空いてしまう。
このスペースを使う役割の選手は本山とロドリゴで、下の図に示した33:10頃のプレーでは本山が右サイドに進出し、スペースに顔を出している。この時は新井のターンがイマイチで本山にパスを出せず、本山はかなり悔しそうな態度を見せていた。
釣り出されたボランチの背後を狙う本山 |
1.3 徹底マークされるジュリーニョ
1)なぜジュリーニョは高い位置を取れないのか
北九州が中央を固めているので、札幌としてはサイドから打開したいところで、そのためには石井とジュリーニョの両ウイングバックを高い位置に張らせ、ここにボールを届けて勝負させる形を作りたい。特にジュリーニョがスタメンということで、積極的にボールを集めたいところだが、前半の札幌は、ジュリーニョが高い位置でボールを受けられない状況が非常に目立っている。
4-4-1-1のFW脇に福森が入っていくと サイドで誰もジュリーニョのサポートができなくなる |
なぜジュリーニョが高いポジションを取れないかというと、後方にサポートする選手…ボールの配給役、オシム風に言うと「水を運ぶ選手」がいないから。
ジュリーニョの背後で、適切な距離感をとり、パスを供給する役割を通常、福森や宮澤(左ボランチ)が担っているが、この試合、この2選手は何をしていたかというと、福森は中央寄り、FW脇のポジションでサイドから内側にどんどん入ってきてしまう。また宮澤は後方でビルドアップの仕事がないために、攻撃の厚みを出そうとして前線にどんどん飛び出していく。これは、リトリートした時の北九州は札幌の最終ラインに対して殆ど有効にプレッシャーをかけず、また上の図のように、4-4-1-1で守るためFWの脇、中央寄りのポジションがかなり空いている。
福森としてはここを使って中央突破なり、何らか打開したかったのだと思うが、このことが結果的に北九州の"罠"になっていて、福森がジュリーニョから離れた位置を取ったことで、ジュリーニョはパスの供給役を失い、ボールを受けられないのでどんどん下がってきてしまう。
それでもジュリーニョが何とかしようとして、サイドの低い位置でボールを受ける局面は何度かあったが、ジュリーニョに渡ると北九州は右サイドバックの星原が密着マーク。このとき、星原がアグレッシブに出ていくので背後が空くが、ここは福田がスライドして埋めている。最終ライン中央はCBの西嶋とSBの川島2人になるが、お構いなしに福田は中央を離れてサイドに詰めていく。これで、ジュリーニョはドリブルコースを失い、個人技での打開が難しくなる。
ジュリーニョが徹底マークされていることで、札幌の後方で攻撃のサイドを"決めている"選手…増川や福森は、25分頃から右の石井を使った攻撃の比率を高めていく。
石井がジュリーニョに比べて攻撃機会を多く得られ、また高いポジションを取れたのは、右サイドでは内村という水の運び役がいたためである。なかなか攻撃が機能しない中で、札幌は25分頃から内村が低い位置に下りてくる場面が増えていくが、このとき下の図のように、北九州の左サイドの守備は本山が菊地や前寛之、川島が石井、というマッチアップで考えられているため、札幌右サイドに流れる内村を見ることのできる選手がいない。
内村が繋ぎ役となって、菊地や前寛之から石井へのパスを届ける役割を担うので、石井は高いポジションに張り、川島相手に1vs1を仕掛ける役割に専念することができる。
もっとも札幌の右サイドアタック、もとい石井の課題はフィニッシュの精度で、北九州が人数をかけてゴール前を固め、ピンポイントのクロスしか得点に結びつかない状況では、石井のクロスではなかなか可能性を感じることは難しい。この試合を通じて、クロスを上げた本数はかなり多かったが、そのほとんどはゴール前を固められた状況でのキックであり成功率は非常に低くなっている。
この試合では内村が水を運ぶ局面が多かったが、その役割は内村でなくともよい。下の写真、38:40は内村がやっていた役割を宮澤と菊地の連携により遂行していて、このときも石井が仕掛ける形を作ることができる。
ただ内村にせよ菊地にせよ、札幌のこうしたプレーは恐らくチームとしてあまり仕組まれていないと思われる。
ジュリーニョを常に見ている星原 |
2)ドリブルのコースがない
それでもジュリーニョが何とかしようとして、サイドの低い位置でボールを受ける局面は何度かあったが、ジュリーニョに渡ると北九州は右サイドバックの星原が密着マーク。このとき、星原がアグレッシブに出ていくので背後が空くが、ここは福田がスライドして埋めている。最終ライン中央はCBの西嶋とSBの川島2人になるが、お構いなしに福田は中央を離れてサイドに詰めていく。これで、ジュリーニョはドリブルコースを失い、個人技での打開が難しくなる。
スライドしてスペースを埋めるのでドリブルコースがない |
1.4 石井とジュリーニョの違い:水を運んでくれる味方の有無
1)石井に水を運ぶ内村
ジュリーニョが徹底マークされていることで、札幌の後方で攻撃のサイドを"決めている"選手…増川や福森は、25分頃から右の石井を使った攻撃の比率を高めていく。
石井がジュリーニョに比べて攻撃機会を多く得られ、また高いポジションを取れたのは、右サイドでは内村という水の運び役がいたためである。なかなか攻撃が機能しない中で、札幌は25分頃から内村が低い位置に下りてくる場面が増えていくが、このとき下の図のように、北九州の左サイドの守備は本山が菊地や前寛之、川島が石井、というマッチアップで考えられているため、札幌右サイドに流れる内村を見ることのできる選手がいない。
浮いた内村が石井に水を運ぶ |
内村が繋ぎ役となって、菊地や前寛之から石井へのパスを届ける役割を担うので、石井は高いポジションに張り、川島相手に1vs1を仕掛ける役割に専念することができる。
もっとも札幌の右サイドアタック、もとい石井の課題はフィニッシュの精度で、北九州が人数をかけてゴール前を固め、ピンポイントのクロスしか得点に結びつかない状況では、石井のクロスではなかなか可能性を感じることは難しい。この試合を通じて、クロスを上げた本数はかなり多かったが、そのほとんどはゴール前を固められた状況でのキックであり成功率は非常に低くなっている。
2)チームとして仕組まれているのか?:持ち腐れるジュリーニョ
この試合では内村が水を運ぶ局面が多かったが、その役割は内村でなくともよい。下の写真、38:40は内村がやっていた役割を宮澤と菊地の連携により遂行していて、このときも石井が仕掛ける形を作ることができる。
菊地が石井を高い位置に押し上げる |
ただ内村にせよ菊地にせよ、札幌のこうしたプレーは恐らくチームとしてあまり仕組まれていないと思われる。
この予想の根拠は、例えばこの形を発動させるまでに非常に時間がかかっていること、内村が下りてきたときに石井が連動したポジションを取らないこと、等があるが、加えて、「本来ストロングポイントである、左のジュリーニョ(+福森)には水を運ぶ選手をまったく用意できていない」という点。ヘイスは何度か左サイドに流れて受けようとしていたが、先に図で示したように、札幌が左での展開を試みると、北九州はヘイスが流れて受けるスペースをしっかりと埋めている。となると、やはりボランチを落として福森を押し上げ、福森がジュリーニョを押し上げるという形をもっと作るべきだったのではないか。
2.後半
2.1 先に仕掛けたのは札幌
守備の仕方という観点では、北九州も札幌も基本的はリトリートがベースのチーム。よって、この試合を通じてお互いに高い位置からボールを奪いに行くという姿勢はあまりなく、待ち構えてミスを誘うような展開が続く。
特に、様子見ということもあったのか、また暑さもあったためか、後半開始からの数分間は互いにボールを回収すると、ゆっくりとパスを回しながら攻撃陣形に移行するが、守備側は積極的に取り返そうとはしないため、非常にゆったりとした、言い換えれば緩い試合展開となる。好みの問題はあるが、見ていて早送りしたくなるような動きのなさであった。
一応首位のチームが試合しているとは思えないほど緩い試合の象徴的シーンが下の64:40、本山の浮き球パスにロドリゴが抜け出してループシュートを放った場面で、最終ラインをこの高さに設定しているにもかかわらず、ハーフウェーラインを越えて前を向いて持つ本山に、札幌は全くプレッシャーがかかっていない。ロドリゴのループが勢いを欠いたため失点こそ免れたが、あわやお笑いゴールを献上してしまうところだった。
本山に対して緩すぎる |
そんな緩い展開の中、先に仕掛けたのは札幌の側で、後半開始10分(55分)を過ぎた頃から守備の開始位置を上げていく。ボールを失うと、前半は自陣で待ち構えるだけの守備だった対応が、前線のトリデンテ…都倉・ヘイス・内村の3名でボールホルダーとその周囲の選手を追いかけていく。
この対応はせいぜい軽いジャブ程度のものだが、ビルドアップをあまり用意していない北九州はこれだけでも困ってしまう。すると苦し紛れに後方から小松目がけて放り込まざるを得ないので、ボールをイーブンな状態にさせてから回収しやすくなるとともに、北九州の陣形を前後に分断させる意義もある。
前からプレッシャーを仕掛けて蹴らせるとともに前後分断化 |
2.2 前後分断・分業体制になるデメリット
ただ前線3枚が守備を仕掛ける位置を上げたことで、リトリートする際に戻ることが難しくなり、結果的に札幌も前後分断気味の陣形、当ブログでも毎試合のように触れている5-2の守備陣形と前3枚の距離が離れていくになっていく。
これにより特に割を食っていたのがジュリーニョ。前3人が戻ってこないので、守備に重きを置いてプレーせざるを得なくなり、回収した後も後方のリスクを考えると、なかなか攻撃参加しにくくなってしまう。
札幌は66分に内村→小野。小野が投入された後の前線3枚の並びは、恐らく細かく決まっていないが、この試合ではヘイスが中央、小野が左という並びが多い。
同時間帯、68分に北九州はロドリゴ→原、72分に本山→井上。この小野が投入された時間帯は、両チームがかなり間延びしている時間帯。札幌はアイディアのある小野、北九州はアタッカー的な原と井上ということで、選手のタイプは違うものの、互いに隙を突いて仕留めようとの狙いは同じ。
ただ札幌の攻撃から、小野をどう活かそう、との狙いは殆ど読み取れない。正直な感想としては、76分の石井→上原の交代にしても、疲れの見えた選手を下げて、同じ位置に何かをやってくれそうな選手に置き換えたというだけのように思える。
この時間帯の後、ピッチ上で起きていた事象について言及すると、北九州は75分頃から攻撃の人数を増やし、バランスを崩して攻めてくる。特に前半からずっと自重していた、左サイドバックの川島の攻撃参加が目に見えて増加している。
左サイドで川島が上がってくると、札幌は5-2守備で守らなくてはならず、北九州はサイドに展開するだけで簡単にバイタルエリアに運ぶことができる。このとき札幌のボランチはほぼガス欠で、横にスライドしてのカバーはほとんど不可能になっている。そのため、菊地がサポートにサイドに釣り出されるが、当然最終ラインの枚数はどんどん目減りする。
下の図、80:10に井上が抜け出した形は川島が上がってきた左サイドで、菊地が釣り出された裏、ペナルティエリア角を突かれかけた形。パスがわずかに合わなかったため難を逃れた。
82分には同じような展開からこの日最大の決定機が訪れる。北九州右サイドで、星原の縦パスから小手川がジュリーニョの裏を取り、福森を釣り出してペナルティエリア角に星原が侵入。この時ジュリーニョは星原からの速い展開…外→外→中という展開についていけず、福森が明けたスペースに出てきた星原をフリーにしてしまう。
前後で攻守の役割が分断、割を食うジュリーニョ |
2.3 あくまで個人に委ねる
札幌は66分に内村→小野。小野が投入された後の前線3枚の並びは、恐らく細かく決まっていないが、この試合ではヘイスが中央、小野が左という並びが多い。
同時間帯、68分に北九州はロドリゴ→原、72分に本山→井上。この小野が投入された時間帯は、両チームがかなり間延びしている時間帯。札幌はアイディアのある小野、北九州はアタッカー的な原と井上ということで、選手のタイプは違うものの、互いに隙を突いて仕留めようとの狙いは同じ。
ただ札幌の攻撃から、小野をどう活かそう、との狙いは殆ど読み取れない。正直な感想としては、76分の石井→上原の交代にしても、疲れの見えた選手を下げて、同じ位置に何かをやってくれそうな選手に置き換えたというだけのように思える。
2.4 サイドバックの攻撃参加に肝を冷やす
この時間帯の後、ピッチ上で起きていた事象について言及すると、北九州は75分頃から攻撃の人数を増やし、バランスを崩して攻めてくる。特に前半からずっと自重していた、左サイドバックの川島の攻撃参加が目に見えて増加している。
左サイドで川島が上がってくると、札幌は5-2守備で守らなくてはならず、北九州はサイドに展開するだけで簡単にバイタルエリアに運ぶことができる。このとき札幌のボランチはほぼガス欠で、横にスライドしてのカバーはほとんど不可能になっている。そのため、菊地がサポートにサイドに釣り出されるが、当然最終ラインの枚数はどんどん目減りする。
下の図、80:10に井上が抜け出した形は川島が上がってきた左サイドで、菊地が釣り出された裏、ペナルティエリア角を突かれかけた形。パスがわずかに合わなかったため難を逃れた。
サイドがスカスカからの中央を突かれる |
82分には同じような展開からこの日最大の決定機が訪れる。北九州右サイドで、星原の縦パスから小手川がジュリーニョの裏を取り、福森を釣り出してペナルティエリア角に星原が侵入。この時ジュリーニョは星原からの速い展開…外→外→中という展開についていけず、福森が明けたスペースに出てきた星原をフリーにしてしまう。
星原の鋭いシュートがゴールを襲うが、ク ソンユンがこの日唯一のセーブ機会で集中を切らさずに横っ飛びからのビッグセーブ。リバウンドの原のシュートにも反応しチームを救う。
このプレーで四方田監督はジュリーニョを諦め、神田と交代させている。神田はボランチに入り、前寛之が左サイドに回る。神田が入ったことで、サイドの守備においてウイングバックとボランチでの挟み込みを徹底し、残りの時間を守り切る。
ギラヴァンツ北九州 0-0 北海道コンサドーレ札幌
マッチデータ
左サイドの構図を見ればわかるように、札幌の攻撃は役割が整理されていない。その中で、これまで首位を走る原動力となってきたのは、野々村芳和社長の掲げる「(攻撃は)個人のクオリティを活かすサッカー」を体現する個人技の爆発だが、この試合はそのキーになる選手が軒並み不発だった。前線で最も相手に脅威を与えていたのは恐らく内村だったが、ジュリーニョは徹底マークを受けてサイドで封じられ、福森の飛び道具も高さのある選手たちに合わなかった。
今節の結果をもって6位以内が確定し、またJ2リーグ戦は残り8試合と、徐々に終わりが見えてきた。正直な感想としては、個人技の爆発を前提にするサッカーを掲げている以上、北九州相手の90分間で違いを見せられないならばJ1では相当厳しいと思う。長丁場のリーグ戦中で、徐々に改善していくのかと思っていたが、むしろ特定の選手の"個"に頼る傾向は一層増しているように思える。
ジュリーニョのカバーが遅れる |
このプレーで四方田監督はジュリーニョを諦め、神田と交代させている。神田はボランチに入り、前寛之が左サイドに回る。神田が入ったことで、サイドの守備においてウイングバックとボランチでの挟み込みを徹底し、残りの時間を守り切る。
ギラヴァンツ北九州 0-0 北海道コンサドーレ札幌
マッチデータ
3.雑感
左サイドの構図を見ればわかるように、札幌の攻撃は役割が整理されていない。その中で、これまで首位を走る原動力となってきたのは、野々村芳和社長の掲げる「(攻撃は)個人のクオリティを活かすサッカー」を体現する個人技の爆発だが、この試合はそのキーになる選手が軒並み不発だった。前線で最も相手に脅威を与えていたのは恐らく内村だったが、ジュリーニョは徹底マークを受けてサイドで封じられ、福森の飛び道具も高さのある選手たちに合わなかった。
今節の結果をもって6位以内が確定し、またJ2リーグ戦は残り8試合と、徐々に終わりが見えてきた。正直な感想としては、個人技の爆発を前提にするサッカーを掲げている以上、北九州相手の90分間で違いを見せられないならばJ1では相当厳しいと思う。長丁場のリーグ戦中で、徐々に改善していくのかと思っていたが、むしろ特定の選手の"個"に頼る傾向は一層増しているように思える。
読みました~(・∀・)ノ
返信削除ジュリーニョが生きなかった理由に納得。
それにしても面白くない&先が見えない(チームの戦い方)試合だったなー。暑さ応えたのかな?
明日の水戸戦は観てて楽しい試合で勝って欲しいですわ・・・。
次回も期待してマッタリ待ってますー(`・ω・´)シャキーン