2022年7月31日日曜日

2022年7月30日(土)明治安田生命J1リーグ第23節 北海道コンサドーレ札幌vs名古屋グランパス 〜ののさんの言う通り〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • 前回札幌に敗れてから名古屋は3バックに切り替えたようで、中谷&丸山に、本格化の兆しを見せる藤井を併用できるのはメリット。一方でトップに適任者がいない(酒井や金崎は怪我ですかね)中で、マテウス(3バックだとはまる役割がなさそう)をトップで起用しなくてはならないのは厳しいところです。代表で活躍した(私はあまり見てなかったですけど)相馬も、本来はウイングバックよりも前線でプレーできる役割の方がいいでしょう。
  • 札幌は岡村と西、金子が負傷との報道で、特に情報がない高嶺はcovid-19関連でしょうか。スパチョークは本来シャドーなのでしょうけど、ウイングバックや中盤センターでも試されているようで、チーム事情もあれば本人のクオリティも考慮して、だと思われます。

名古屋の狙いとゲームプラン①:

  • 永井とレオナルドを夏のマーケットで獲得した名古屋。ひとまずこの試合は、コンディションや連携面でより状態が良さそうな前者が先発しますが、マテウスとの2トップとなると、必然と、そのユニットが望ましいフィニッシュのパターンは見えてきます。
  • すなわち、この2人が相手DFを背負ったり、狭いスペースでプレーするよりは、DF背後にスペースがある状態でそのスペースに向かって2人で攻撃していくシチュエーションを作りたい。永井はボールを持たない”素走り”が得意で、マテウスはドリブルが得意とする違いはありますが、2人とも、時間をかけて札幌のDFが戻ってくる前に、速い攻撃を仕掛けた方が恩恵があるタイプだと思います。

  • 名古屋がGKランゲラック(あまり足でボールを扱うのはうまくなさそう)とDFで、後ろからパスを繋ぐことに正当な理由があるとするなら上記の点。
  • 名古屋にとって後ろ…札幌から見ると名古屋ゴールの近くでボールを動かすと、人をマークする意識が強い札幌の守備は前方向に出てくるので、マテウスと永井の前方…福森と宮澤の背後には、名古屋の2トップが走りたいスペースが大きくなります。
札幌を前方向に誘導して背後を強襲したい

名古屋の狙いとゲームプラン②:

  • 名古屋の、2トップの速さや走力を活かした攻撃をしたい、とする狙いは、札幌がボールを持っているシチュエーションでも、基本的な考え方は同じだったと思います。
  • ボールを持っているときは、札幌は宮澤と福森の2バックのような形で、かつこの2人がボールを運ぼうとすると、それぞれは中央からより開いた位置どりをするので、札幌の縦パスを引っ掛けることができれば、名古屋は札幌の守備が整っていないところから速攻を仕掛けることができるためです。

  • ただ、名古屋の前線守備は、永井が札幌のDF(宮澤)に出たとして、おそらく永井としてはマテウスにその背後…アンカーの深井を見る仕事をして欲しかったのでしょうけど、マテウスと永井のこの辺りの連携がイマイチで、深井や荒野が中央でフリーになっていることが多く、札幌をはめることができていませんでした。
前からはまる気がしない名古屋の守備vsとりあえず前に当てる札幌

  • 名古屋の対応でそれ以上に気になったのは、最終ラインがあまり高い位置を取らないこと(DAZNだと見切れていることが多いのですが、札幌のFWに常に遅れた感じの対応でした)。
  • 前節、柏との対戦では、柏は常にラインを高く保って、興梠や札幌の前線の選手をゴールから遠ざけようとしていました。小柏がいない札幌相手にはこれが一番効果的だと思うのですが、名古屋はあまり押し上げないので、高い位置で札幌のDFに制限をかけていた永井やマテウスと、DFの間はかなり間延びした状態で、中央の3人(仙頭、レオシルバ、稲垣)はかなり広いエリアをカバーしなくてはならないし、そもそも3人で守のは無理そうでした。

  • 必然と名古屋は、1列目は高い位置から守っているけど、2列目以降はそれにあまり連動しない、中途半端な対応になっていて、枚数的には名古屋は中央に3人いて、札幌は深井と荒野で2人、これだけだと名古屋が優勢に見えますが、札幌は中央のスペースを突っ切るような、深井や荒野を飛ばしたパスを前線につけようとするので、名古屋は中央を使われていたとも言えます。

  • ただ、札幌としてはDF→FWの長い距離のパスばかりだと、それは受け手のところで読まれやすく、興梠や駒井、青木は常に名古屋のDFを背負った状態、マークが外れていない状態でパスを受けることになります。
  • この時、興梠だけは名古屋のDFを背中でブロックしながらボールが収まったり、50:50のプレーに持ち込めるのですが、青木や駒井は背負った状態だと、名古屋のDFに潰されてしまって名古屋ボールになります。

  • 名古屋はDFのところでこうしてボールを回収できるのはいいですが、カウンターをしたいとするなら、本来はもう一つ前のMFのところでボールを奪えるとよかったでしょう。
  • しかしながら、名古屋のゲームプランを考えると、アウェイの札幌でそんなにアップテンポな試合展開にする気はなさそうで、となるとボールを奪う位置はそこまで高くなくてもよかったかもしれません。この仮説通りなら、マテウスと永井がやや張り切りすぎていた感じはします。

2.試合展開

十分な予習/演習期間:

  • 先述の通りマテウスと永井の守備の練度が微妙な気がしましたが、全般に、名古屋は札幌に対するケーススタディをよくやってきたんだろうな、という印象の立ち上がりでした。
  • 札幌は名古屋にマッチアップを合わせてくるのですが、名古屋はおそらく、今の札幌は前線からそこまで強い圧力をかけなくて、名古屋のDFはボールを持てるなと確認していたのでしょう。右の中谷か、左の丸山のところで、駒井や青木の監視が弱めと見ると、ドリブルで持ち出そうとしていました。
  • また、中央の藤井は、中央で興梠との1on1の関係が崩れることはほとんどないのですが、丸山、中谷、たまにレオシルバとのワンツーを使って興梠の背後をとって、前にボールを運ぼうとしていました。
マンマークだけどボールを運べる隙のある札幌の前線守備

10番は前半は沈黙:

  • 名古屋はボールを運ぶと、基本的にはマテウスにボールを集めます。ただ、前半はマテウスは決定的な仕事(枠内シュートやラストパスの成功)は、1回あったかどうか、といったところで、札幌がうまく対処していたと思います。
  • マテウスはスペースがある状態でスピードに乗ってドリブルを開始し、左足を振り抜くと脅威になります。札幌相手だと、スペースがあるのは宮澤や福森の背後と、あとは菅が高い位置をとった背後…サイドの位置。なのですが、名古屋は後方から運ばれたボールを受け取る際に、永井が前、マテウスが後ろのタテ関係になっていることが多くて、マテウスは少し下がってトップ下みたいなイメージでプレーしていることがありました。
  • 下がってくるマテウスは、宮澤か福森が前に出て、簡単に前を向かせない対応をします。福森だと、トラップで逆を取ったりして博打っぽくかわせなくもない気もしましたが、全般に、札幌はこの相手のFWへの対応については、できる限り高い位置でまずファーストディフェンスをすることは徹底していて、これは名古屋とは対照的で、かつスピードのある選手がいない札幌としては勇気が必要なプレーですがうまく対処していました。
  • ですので、中央でのマテウスはボールを受けてもsmoothにターンできず窮屈そうにプレーします。

  • 中央にスペースがないと判断して、マテウスはサイドに流れてきます。これは、名古屋のDFから最初にボールが運ばれてきた時の動きもそうですし、名古屋が札幌のゴール付近に到達した時の展開でも該当します。この辺りは、マテウスは本来はFWではないということで、選手特性というか習性というか、得意なプレーをしたがっていたともいえるでしょう。
  • サイドに流れて、1on1の体勢で前を向きやすくなったマテウスは脅威ではあるのですが、右サイドタッチライン付近からだとゴールまでは距離があって、そこから直接シュートは現実的ではなくなります。マテウスは右から、左足でインスイングのクロスボールもあるのですが、名古屋はターゲットが永井しかいなくて、永井もボックス内で抜群に冴えるというものでもない。ですので、サイドのマテウスからの名古屋のフィニッシュも、札幌はほぼ問題なく対処できていました。

スペースとタイミング:

  • 札幌の攻撃は、先述のようにDFからトップへの長めの縦パスが多く、あまり効率的なものではなかったと思いますが、興梠がボールを収めることと、また収めたあとでシャドーが前を向けるスペースが、名古屋相手だとそれなりにあったことで、”攻撃っぽい”形には何度かなっていたと思います。

  • 31分に深井のゴールで先制するのですが、この時は、名古屋のリスタート(FK)のところで、まず深井がレオシルバを捕まえて、レオシルバは丸山にボールを戻す。丸山→藤井→丸山→仙頭と渡って、仙頭がルーカスの背後からの圧力を嫌ってワンタッチパス。これが中途半端になって、札幌が回収、名古屋は丸山が前に出てフォローしようとしたところからが🔽の動画のプレー。

  • この時は、丸山が出た後の名古屋の対応があまり良くなくて、丸山の背後を藤井がスライドするとか、稲垣が下がって埋めるとか、そうしたカバーリングの仕組みが名古屋にはなくて、藤井は興梠を見ていて、他の選手もマンマークの仕事を放棄していないので、丸山が出て生じた穴は最後まで埋まらないまま。
  • 札幌の方は、荒野の逆を取ったラストパスもよかったとして、あとはシュートを沈めた深井がスペースに飛び出すタイミング(パスの出し手の”雲行き”を見て、使うタイミングまで待ってから動いた)がよかったと思います。

  • 名古屋に関してここでもう一つ言及しておくと、仙頭は前半から、ボールを持っている時に丸山の近くまで下がってくる。鳥栖でプレーしていた頃に、左のDF(中野伸哉?)を押し出して、自身は下がってプレーしていましたがそんな感じの位置どりでした。
  • ただ、丸山は鳥栖のDFみたいに最初から高い位置をとって何かをするつもりはなくて、結果的には仙頭と丸山が近くにいるだけでプラスの作用はなさそうで、寧ろ、下がってボールを受けるけど次の展開があまり用意されていないところが、札幌の先制点の起点になってしまいました。結果、仙頭は45分でピッチを去り、内田が投入されます。

内田の投入と興梠の交代:

  • 後半から入った内田は、仙頭ほど下がってくることはなくて、より前目の位置で永井やマテウス、相馬と相互的にプレーしようとしていたと思います。
  • 特筆するとしたら、田中駿汰が守る札幌の右サイドの背後のスペースに飛び出す動き。これが2つのゴールにつながりました。もう一つは、クロスボールの際にターゲットとして主にファーサイドで待つこと。マテウスがサイドに流れても、内田が詰めていれば最低2人のターゲットは確保でき、ゴール前のオプションが増えます。

  • 一方の札幌は、興梠が腿裏?を押さえて交代に迫られ、52分にトゥチッチを投入。予想通りなのですが、ポストプレーによってビルドアップの質の低さをサポートできる唯一のFWを失ったことで、札幌はポストプレーから後方の選手が攻撃参加する形をほとんど作れなくなります。

他に手はないとはいえ…:

  • そして64分の札幌の2枚の交代カードが、試合中の最大のポイントだったと思います。
  • まず、ここ最近定番の、福森を下げる交代で中村。そして、病み上がりの深井に替えて中島。前線は右に中島、左にトゥチッチの2トップ+その下に青木になります。

  • この、2トップ+トップ下にする交代は過去も幾度か見せていて、狙いとしては、最終ラインを相手の枚数+1にすることで、1人余らせてカバーリングしやすくすること。その分、”前”の枚数が1人減りますが、3人のDFを2人のFWで守ることはできなくはない。DFの攻撃参加はリスクもあるので、多少プレッシャーをかけただけで積極的にプレーできなくなったりもするためです。
前を1人削って後ろを3人で守る

  • ただこの日の名古屋は、札幌相手にDFがボールを運ぶ意識が強く、枚数関係で3対3の同数でも果敢にチャレンジしていたと説明しましたが、そこを札幌が1枚削って名古屋3:札幌2の関係になり、しかもその1枚は守備はまだ勉強中の中島なので、名古屋は簡単に札幌陣内にボールを運べるようになります。
  • 名古屋のDF(中谷など)がボールを持って札幌陣内に入ってくると、札幌はこの選手を捕まえられる選手がいないので下がって守る対応しかできない。ボールを持っている名古屋の選手には圧力が掛からなくなります。

  • 札幌の交代カードは、まだリーグ戦で使えると見られていない(であろう)田中宏武とスパチョーク、そしてドウグラスオリヴェイラ。
  • ですので、中島をここで使うのは、わからなくもないのですが、ただ代表戦でもスタメンで全く出れなかった(守備etcに問題があるから長いプレータイムは与えられない)中島を入れて、かつ2トップにして…となると、構造的にピンチになるのは予想が容易で、このカードを切らざるを得ないチーム事情はかなり厳しいな、という感想でした。

チェアマンのサッカー観:

  • 札幌は名古屋のボールホルダーにアタックできない、かつ、人を見る(純粋なマンマーク的な)守り方をするので、スペースに飛び出す名古屋の選手への対応も後手になります。仮に、人でなくて、危険なスペースを埋める守り方をしていると、名古屋の選手が走り込んでボールを受けるとかして、”使いたい”スペースにあらかじめ対処できるのですが、そうしたやり方に切り替えてはいませんでした。

  • そんな感じで、ボールに圧力が掛からない、スペースも守れないのでヤバそうだな〜と思っていた67分。
  • 内田がスペースに飛び出して左サイドで”基点”を作り、中央に折り返して永井→レオシルバ。左から来たボールを、レオシルバが身体の左側でコントロールせず、自分の前をボールが横切るように右足に置いてからシュート。
  • この、”パスの出し手から遠い方の足”でコントロールすると「懐が深い」とかよく言われますが、守る側としては先にボールにアタックしたいので、ボールに近い方の足…中村は、レオシルバの左足の方に向かって突っ込んでしまいました。今日からすぐできるくらいの、とてもシンプルなフェイントなんですが、DF心理を考えるとこうした局面でも有効なんですね。
  • ただ、中村は、先ほど述べたように、DF3人で守っているので1人余る(自分の背後を誰かがカバーしてくれる)という心理もあって突っ込んだのかもしれません。結果的には誰もカバーしてくれず、レオシルバが1枚上手でした。

  • そして、名古屋の2人の交代(宮原と永木が入る)を挟んで81分。左WBに回っていた、ここも内田の背後をとるプレーから。

  • 先述した札幌の問題点が動画にも都合よく収まっていて、まず中島とトゥチッチの2人で名古屋のDFをうまく見れておらず、丸山の左足での浮き球パスを全くケアできていない。名古屋がサイドのDFに展開するのは分かりきっているのですが、中島はそこに制限をかけるでもないし、パスの受け手をケアできてもいませんでした。
  • 内田のマークはルーカスで、80分出場した後にこの背後をとる動きについていくのはなかなかハードではあるでしょう。ただ、「人を捕まえること」がほぼ全てのミシャ札幌のディフェンスは、スピードをもってスペースを突いてくるアクションにめっぽう弱く簡単に攻略されることは、皆さんにも伝わるかと思います。

  • それでも、名古屋のレオシルバとマテウスが迎えた決定機は、この試合中に幾度もあったわけではなくて、レオシルバは完全にワンチャンスでしたが、そこをきっちり決める決定力は、野々村チェアマンの持論である「結局はサッカーって個人のクオリティなんだよね」(意訳)も、確かに間違ってはないな、と感じました。

  • 興梠、福森、深井がおらず、有効なカードもない。いうまでもなく大変厳しいラスト15分でしたが、ATのCK、ニアで中村が飛び込んで名古屋のクリアミスを誘い、最後は青木。

  • 名古屋はCKは3人ゾーン+他は札幌のターゲットをマンマークで守っていて、そのゾーンの間っぽいところに菅のクロスボールと中村が突っ込んできた構図でしたが、多分練習だとこうしたボールを跳ね返すシミュレーションは何度もやっているのでしょう。
  • ただ中村のようなサイズのある選手が助走をつけて際どいところに突っ込んでくるのは、もしかするとトレーニングでは再現が難しいシチュエーションかもしれません。その意味では、失点に絡んだ中村が帳尻っぽい活躍で得点を生んだと言えるでしょうか。

3.雑感

  • 完全にDFの柱になった岡村を欠く中で、宮澤をはじめ各選手が、60分頃までは守備で非常に善戦していたと思います。先述の通り、選手交代でかなり厳しい構図になりましたが、これだけ使える選手が少ないと、とった策自体は今回はそれしかなかったのかな、とも思います。
  • 菅が出場停止の次節あたりで、起用できる選手を増やしてほしいところですが、この順位・ポイントだとそうもいかないのでしょうか。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
※次節湘南戦はスペース(Twitter)やる予定です。

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