2022年7月10日日曜日

2022年7月10日(日)明治安田生命J1リーグ第21節 北海道コンサドーレ札幌vs鹿島アントラーズ 〜可もなく不可もなし〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果

  • 鹿島は2位につけますが、26失点は札幌、清水、磐田、ガンバ、神戸の下位グループに次いで上位では最多。3失点以上が12、15、16節と前節の20節(セレッソに3-3)ということで、このところはやや下り坂かもしれません。
  • 海外移籍が決まった上田のところには、序列的には土居が繰り上がって、その次にエヴェラウドのようですが、この試合は鈴木も欠場で土居とエヴェラウドのユニット。前節は和泉がトップに入ってもいましたが、また右に戻してきました。
  • あとは、ここ3試合は樋口がスタメンを外れて三竿が上がり、ミンテが最終ラインで出場機会が増えているようです。これは連戦も考慮したコンディションの問題か、それとも樋口がアンカーはちょっと厳しいということでのバランス調整なのでしょうか。ただこの試合は2トップ以外は序盤戦の好調時のメンバーにほぼ戻しています。
  • 札幌は前日練習で深井と、復帰早々の小柏に負傷があったようでいずれもメンバー外。スタメンは、前節の後半頭からの布陣同様、高嶺がDFの左に入って宮澤がスタメン復帰。福森がベンチスタートとなりましたが、鹿島のスピードあるオフェンスを警戒しての措置もあったと思います。
  • 駒井と荒野の配置はここ数試合の傾向だと逆だと予想していましたが、荒野が前、駒井は後ろで明確なミッションを担っていたと思います。

駒井に託されたミッション:

  • DAZN中継の冒頭で、札幌のDF岡村のコメントとして、「前節(FC東京に●0-3)は”ボランチ”が下がりすぎて前線をサポートできていなかった」と紹介されました。じゃあそこは修正してくるのか?と思いきや、この試合は、札幌は冒頭から駒井が低い位置でプレーすることが目立っていました。

  • 鹿島の2トップを、基本的にはエヴェラウドを岡村、土居を宮澤が見る関係性になっている。そのままいくと、宮澤が下がって、岡村と2人で菅野の隣でボールを最初に動かすのですが、札幌ボールになると駒井が毎回、岡村の隣まで移動して、宮澤はそれよりも前にいる、逆の位置関係になっていました。
駒井のミッション(まず後ろを落ち着かせる)
  • おそらく前回の鹿島との対戦で、鈴木を筆頭とする高い位置からのpressingに苦戦したこと、前節のFC東京戦などで後方でボールを失ってからの失点があったこと、など諸々を考慮して、後ろで最初に攻撃を始める役割を駒井に託したのかなと予想します。
  • 岡村のコメントと裏腹に、札幌はスタート時点では駒井が下がり、宮澤も前に行くとは言っても元々後ろからスタートする(相手のFWを見る)ところから始まる、荒野もボールを受けるのが好きなので下がってくる、ということで、結構後ろの枚数が多めでプレーしていた感じがします。
  • その分、本来荒野がいる右シャドーのところが誰もいなくて空いた格好で、そこに金子だったり、宮澤や興梠が流れてきたりで、このスペースを使って鹿島ゴールに迫ろうとしていたのが、副次的ではあるものの一つの傾向となっていました。

2.試合展開

思ってたのと違う展開に:

  • 前回の対戦時は鈴木と上田の2トップ、その背後を和泉、ピトゥカ、カイキが監視する形の鹿島のpressingに引っかかって、序盤からカウンターで再三ピンチを招いた札幌。ただこの日の鹿島は以前ほどのpressingの精度がなく、札幌はイージーにボールを保持できていました。
  • 例えば、鹿島は前回はGK菅野が持ったらFWが寄せて、その出しどころとなるCBももう1人のFWが見る、菅野に札幌SBへのボールを蹴らせて回収するか、それをコントロールできたとしても、SBの縦を切って中央にボールを入れさせて、中央で回収…からの速攻、とするやり方でしたが、まずこの試合ではエヴェラウドと土居からの圧力がいまいちで、札幌はGKもCBもボールを問題なく持てていました。

  • GKは中央にいるとして、その隣のCB、SBと渡ると、中央から離れてサイドに近づいて行くので、「パスを出せるアングル」は狭まっていきます。
  • そこにエヴェラウドが、パスコースやドリブルで運ぶコースの一部を塞ぐような寄せ方をしていけば、札幌の岡村なんかはかなり嫌だったはずで、鹿島としては岡村がどこにボールを出すかは読みやすくなる。後ろの選手は守備で前に出てボールを奪うタイミングがわかるのですが、エヴェラウドがあまりそうした守備をしない(≒pressingのスイッチを入れない)ので、鹿島はボールの奪いどころが定まらずに、そのまま札幌がボールを失わずに鹿島陣内に入るまではできていたと思います。

戦略目標は達成、と言っていいか:

  • 鹿島陣内に入って、札幌がいつものように両ワイドの金子と菅にボールを渡すと、中央にそんなにターゲットはいない(興梠もしばしば下がってくるので青木しかいない時も)ので、札幌にはそんなに得点の雰囲気はないにしても、それでもクロスが入って誰か中にいると、何らかシュート機会になるということで、鹿島はボールを奪う守備から、中央を固めて札幌のクロスボールを呼び込んで跳ね返す守備にシフトすることになります。
  • 鹿島は中盤の4人に攻撃的というか、後ろで守るタイプの選手を入れていない。特に樋口とピトゥカの中央の並びは、一般にこの役割を任されるタイプの選手と比較するとかなり攻撃性能を重視していて、それが強みではあったのですが、自陣に下がって守るシチュエーションになると、弱みの方が目立つようになります。
鹿島の8枚を下げた時点で戦略目標は達成

  • ですので札幌としては、この試合、枠内シュートがゼロ、トータルでもシュート9本、このスタッツは決していいものではないですが、試合展開的には、鹿島のMFとDFの8人を自陣に撤退するところまでたびたび持ち込んでいたのは、戦略目標は最低限、達成できていたといえるかもしれません。
  • 札幌はこの鹿島の8枚ブロックを崩せるクオリティがないので、ウイングバックにボールが渡るのは、「ゴールに対して迂回している」と捉えても間違っていないのですが、ただそれ以外でもセットプレーなり相手のミスを待つなり、で得点が入ることはありますし、鹿島の中盤を前でプレーさせると、前回の対戦のようにそのパワーやスピードで圧倒されてしまうので、試合展開としては個人的には悪くなかったと思います。

手を打たない(打てない)鹿島:

  • 札幌以上に鹿島としては、よろしくない試合展開だったといえるでしょう。ですのでハーフタイムに動いてくるかな?とも思っていましたが、そのタイミングでは静観でした。
  • 動きの内容として、予想していたのはエヴェラウドを何らかトップから外して(一応2列目もできますね)、前節見せたように和泉をトップにするなど。
  • エヴェラウドに関しては、長い距離を走れる選手ということでピッチに残しておいたのかもしれません。札幌だと、荒野がピッチどこかにいると、その走力が頼りになりますが、鹿島はカイキ、ピトゥカ、和泉、樋口、土居…だと、自陣からカウンターするよりは札幌陣内で奪ってショートカウンターとしたい。けど、それが難しそうで、自陣から走って攻撃するならエヴェラウドを残しておく理由になります。
  • あとは鹿島は札幌が少し寄せただけで、GKクォンスンテがシンプルに、背の高い選手を狙ってロングボールを蹴ることが多く、そのターゲットが主にピトゥカかエヴェラウド。それもあって様子見だったのでしょうか。

  • 結局56分に樋口⇨船橋、エヴェラウド⇨安西で、カイキをトップにスライドさせて安西が左のMFに。ただカイキはどっちかというとシャドーというか、トップの背後から飛び出してクロスボールに合わせてくるようなタイプなので、この辺りの交代で何かパワーバランスが変わることはなかったと思います。

札幌の動き:

  • お互いに負傷、離脱者の影響もあって、ベンチにあまり有効なカードがない試合だったかもしれません。札幌がこの試合で切ったカードは福森、西、中島と、使うタイミングを選ぶカード。深井や小柏だったら割といつでも使えるのですが、中島はスペースのある状況じゃないと難しいし、西も中央に入れると鹿島のパワーで押し切られてしまうかもしれない。

  • 63分に入った福森が、結果的には最大のジョーカーでした。
  • 福森の使い方としては、クロスボールでラストパスを供給するか、自陣でビルドアップ(相手のpressingを突破する)を助けるか、それ以外か。ビルドアップはそんなに問題がなかったので、攻撃の最後のところで何らかやってもらうイメージか?と思って見ていましたが、あまり福森はサイドには出てこなくて、中盤の1人としてフリーマン的に振る舞っていました。こういう「自由」が個人のクオリティを引き出す時もあると思いますが、この日は福森から決定的な場面はなくて、他の使い方でも良かったかもしれません。
  • 投入時にミシャが大輔コーチを介して割と熱心に伝えていましたが、それは攻撃よりも守備面で、例えば鹿島が速攻を仕掛けてきたときにすぐ戻りなさいとかそういった話だったのかもしれませんね。

雑感

  • 今回Twitterのスペースで実況しながら200人弱くらい?(アクセスは600人あったみたいですが同時接続は最大200くらいでした)の人と観ていましたが、結構難しいゲームが当たったな、という感想です。
  • お互いに得意の形が発動してこれこれ!とかやれると、わかりやすく伝わったかもしれませんが、そうはならなかったですね。かつ、その要因は互いにうまく相手の長所を消したというよりは、前半にクオリティ不足で長所を発揮できなかった、という感じでしたでしょうか。
  • ただ、札幌には悪くない勝ち点1だったと思います。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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