2023年7月16日日曜日

2023年7月15日 明治安田生命J1リーグ第21節 北海道コンサドーレ札幌vsアルビレックス新潟 〜応急措置と対応力〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 3日前の水曜日に開催された天皇杯から中2日。両チームともターンオーバーしており、札幌は大分でヴェルスパ大分相手に勝利、新潟は豪雨の富山でカターレ富山相手に延長戦の途中で試合中断という珍しい状況に。この日のスタメンの中では、荒野、ルーカスと、相変わらず替えのきかない岡村がスタメンで45分プレー。他、中村、田中駿汰、菅も岡村と交代で45分プレーしており、一概にホームの札幌の方がコンディションはいいとは言えない状況かもしれません。
  • そして新潟は、ハーフシーズン17試合で7ゴール4アシストと傑出していた伊藤涼太郎がベルギーへと旅立って、以降の3試合は左右どちらかのウイングを務めていた三戸が中央に移動、ダニーロ ゴメスがスタメンに昇格する形でしたが、この日は松田を右でスタメン起用(J1初?かと思えば今年2試合目、18歳のマリノスでのシーズンも6試合もスタメンで出てるんですね)。
  • 最終ラインは千葉・マイケルジェームズのベテランユニットが故障等もあり稼働が落ちて、トーマスデンと、左SBで堀米(負傷欠場)の2番手だった渡邊のCBでの起用が増えているようです。

  • 札幌は天皇杯で2ゴールの高校3年生・出間がベンチ入り。スタメンはここ数試合と同じで、ディナモザグレブへの移籍秒読みとされる金子も右WBでスタメン出場。


2.試合展開

新潟はアウェイモードを採用:

  • リーグ戦前半戦、第3節のビッグスワンでの対戦では、新潟はコンサに対してどこでボールを奪えるか、できれば高い位置で奪えるかある程度試していた感がありますが、雨の厚別での対戦となった今回はボールの回収位置をかなり低めに設定していました。DAZN中継で、前半終了時、後半終了時にボール回収位置がプロットされたマップが表示されるので参考になると思います。

  • コンサは両ワイドに1対1に強いウイングを備えている、Jリーグでは希少なチームで、速攻・遅攻を問わず金子とルーカスのドリブル突破が1試合で数回は期待でき、相手からするとここをいかに封じるかが焦点になります。
  • 金子は特に90分アップダウンできる体力と力強さがあるので、敵陣でボールを待っていてから高い位置で仕掛けるだけでなくて、自陣低い位置でボールを受けてもドリブルでボールを運べるので、新潟からすると金子がWBにいると、ボールロストした直後の陣形が整っていない状態でゴールに突っ込んでくる速攻も警戒しないとならなくなる。
  • このコンサの速攻対策としては、ボールを失う位置や状況、ピッチ上の状態をコントロールしておく必要があって、新潟はこの点においては鈴木にさっさと放り込んで中盤を省略することで対処していたと思います。

  • コンサの速攻を封じた上で新潟の対策としては、前節の福岡がとったやり方と似ていて、一言でいうとSBとSHの連携でコンサのウイングの縦と中を封鎖していたと思います。SBが早めに中央を離れて縦を切り、SHが戻ってきて中央を封鎖。
  • SHの後ろ方向の仕事が多くなるとハイプレスは捨て気味にならざるを得ないのも、前節の福岡と似ていて、新潟のボール回収位置はかなり低くなっていました。

  • 福岡以上に新潟が慎重だったのは、SBが中央を離れてSB-CB間の距離が開くと、そのスペースを高か星が早めに埋めるようになっている。コンサはこのスペースで浅野が待っていてフリーになることが度々あって、他、中村もたまに攻撃参加してきますが、新潟はそれらを入念にケアしていたと思います。
  • ただし、中村はこの試合攻撃参加がかなり控えめで、それはDAZNのカメラアングルの限界で確認できないのですが、対面の松田を気にしていたのかもしれません。コンサは右への展開が多いので、新潟の右の松田は、左の小見ほどルーカスへの対応にリソースを割かなくてよかったとしたら。

  • 星か高が下がったところには三戸も必要ならカバーリングするようになっていて、そうすると新潟は1トップの鈴木がほぼ孤立するのですが前半は想定内だったのでしょう。
  • コンサはサイド封鎖され、中央もスムーズにサイドチェンジできないとなると、高さのないFWに放り込むしかなくて、新潟のCBとGK小島というそこまでパワーのないユニットでも放り込みには対処できていました。

光る応急措置と対応力:

  • HTにコンサはスパチョーク→菅。新潟は三戸→太田。後者は接触で傷んだプレーがあったのでその影響だと思います。
  • コンサは金子が右のFW、ルーカスが右WBに回りますが、リーグ戦で久々にルーカスと菅の両翼だと、コーナーフラッグに向かってドリブルすることになるので中央にターゲットが欲しいと思いました。スパチョークの交代は特に意義なしですが、金子をFWに上げたのはよくわからなくて、菅よりもゴニの投入の方がよりフィットしそうに思えました。

  • 53分に新潟が先制します。スローインの際に右SBの藤原が攻撃参加していて、これがこの試合初めての、また唯一の敵陣ペナルティエリア付近でのプレーだったと思いますが、ウイングの内側をアンダーラップして低いクロスで鈴木にラストパス。札幌としては意表を突かれたというか警戒は甘めだったでしょう。

  • 61分に駒井のスルーパスに抜け出しかけた金子を新井が倒してレッドカード(DOGSO)で退場。新潟はFWの鈴木を下げて左SBに田上、右SHの松田も下げてSBの長谷川。

  • 普通このシチュエーションで完全にFWを削ることはレアだと思いますが、結果的には新潟のこの判断が功を奏します。おそらくベンチにFWの選手を入れてないので、鈴木を引っ張るのは得策ではないと判断したのかもしれませんが、新潟は完全に自陣で対処する方針として、便宜上1-4-4-1のトップにいる小見もMFのラインまで下がってカバーリングに徹します。

  • 札幌はこれを見て69分に2枚の交代カード。小林とゴニを投入します。敵陣に殆ど押し込んでいるので実態に近い並びで表現するとこんな感じでしょうか。

  • まだ組み合わせが見えないゴニと小林の起用法ですが、完全に押し込んだ状況だと唯一高さのあるFWの投入は必要ですし、そして新潟の守り方だと中央にスペースができやすく、ピッチコンディションも考慮するとミドルシュートが欲しい。小林の投入も納得でしたが、コンサは彼らが入ってもあまりおさまりが良い感じがしなくて、特に小林が前で仕掛けるのか後ろで交通整理をするのかが不明瞭で攻めあぐねます。

  • コンサの最後のカードは80分に駒井→福森。1人多いことを利用して岡村を前線に上げ、後ろは宮澤と福森の2人をDFとして総攻撃を仕掛けますが、福森はやはり本質的にはDFではなくフリーマンであって、この起用法(殆ど新潟は攻めてこないけど、最低限の守備タスクは存在する)だと福森の良さを発揮できず、宮澤とのユニットは、最後の力を振り絞って札幌陣内に飛び出す新潟の選手(主にファウルをもらって時間稼ぎをしたいがたまにゴールに向かってプレーする)相手に手を焼いている状態で、攻勢ムードも萎むものでした。

雑感

  • 新潟のゲームプラン(前半ボールを捨てる)と退場者が出た後のマネジメントが見事でした。特に投入された選手のタスク、働きが明確で、それと比べるとコンサはとりあえずクオリティのある選手を並べてみた感が強くてこじ開けられなかったです。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

0 件のコメント:

コメントを投稿