2023年7月9日日曜日

2023年7月8日(土)明治安田生命J1リーグ第20節 アビスパ福岡vs北海道コンサドーレ札幌 〜華麗なるリテイク〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 4月の札幌ドームでの対戦から、福岡は選手が4人入れ替わっていて、①右の湯澤がベンチスタートで小田が左、左SBには前嶋。②CBの三國が負傷もあり外れて4バックに変更し、金森が左のMF、③本来右のMFでスタメンのはずの紺野も負傷で佐藤が右。④長期離脱の中村に代わって、セルティックから加入した井手口が中盤センター。
  • 3バックの1-3-4-2-1から4バックの1-4-4-2に変わると、アタッカーを1人増やせるので、一般には、より敵陣でプレーすることを意識した変化だと捉えられると思います。ただ、蓋を開けてみると、福岡のスタンスはこれまでの対戦と変わらず、前半はかなり抑えて後半に仕掛けるといったもので、単にそこは人の配置やフォーメーションだけで論じられないものだったと思います。なお3バックを採用したのは、5/28の13節マリノス戦のようで、ここのところは1-4-4-2を使っていたようです。

  • 札幌は前節と同じメンバー。福岡は2トップということで、柏戦のように中村がCBで岡村とユニットを組むことも想定しましたが、宮澤のCBを選択しました。

2.試合展開

いつもの福岡vs札幌:

  • 一言で言えばいつもの展開、予想通りの展開でした。
  • やはりこのスタイルの札幌相手ということで、福岡は、札幌が好きなように前半開始からプレーして後半に足が止まるのを予期してプランを立てていたと思います。そして少なくともこのカード直近2戦では、福岡は後半に置いついて札幌での試合で勝ち点を持ち帰ることに成功しています。7月に入って気温も上がり、また悪天候も相まって、福岡がこのプランで来ることは想定できましたが、札幌は特に対策もなくいつも通りプレーしていたと思います。

  • ピッチ上での現象に少し言及します。主に札幌が持っていたので札幌ボールの時の話です。
  • 福岡は2トップがハーフウェーライン付近まで撤退。そしてサイドハーフの様子に目を向けると、福岡のやりたいことがわかるのですが、ハイプレスをするなら通常は札幌のサイドの選手(田中駿汰や中村)のパスコースを切って中央に誘導するような立ち方をする。
  • 前半、金森はそれをせずにほとんど自陣から出てくることがなかったのですが、それは金森には前嶋と連携して、金子を封じるというタスクがあったから。
  • 金子に渡った時に、前嶋は金子の縦突破を切るような立ち方をして、そしたら前嶋の内側が開くのですが、金森が急いでそこに戻ってきて金子の内側を塞ぐように守ります。その金森のコメントで、

--警戒していた札幌の金子 拓郎選手を前嶋 洋太選手との連係でうまく抑えました。
  • と、ありますがまさにこの話をしていますね。「縦に行く」という分析も福岡はさすがですね。私も何度か言及していますが、金子のチャンスクリエイトは今シーズンはむしろ縦突破からの早いタイミング、クイックなモーションでの右足クロスから生まれていて、この選択肢が残っているとDFが下がって対応しないといけないし面倒だ、という分析なのでしょう。ほとんど金子は前半仕事ができていなかったと思います。




両チームの不安要素:

  • 不安要素というか試合が動きそうな感じがしたのは、まず福岡は右サイドの小田のところ。亀川や田中達也も含めて、福岡はSB/WBが(多分)全員右利きで、ゲームプランやコンディションで使い分けている(湯澤のベンチスタートについては、長谷部監督はコンディションの話もしていますね)のだと思うのですが、前嶋と小田の左右の配置は、札幌の選手とのマッチアップを考えたのだと思います。
  • 見た感じ、小田は佐藤からのサポートを、金森によるそれほどは享受できていた印象がなく、となると私の予想ですけど、小田の方が1人で札幌のウインガーを守れるから小田を右にしたのかなと思いました。
  • ただその小田のサイドで福岡は後手に回っていた印象で、それはルーカスの突破というより、中村の攻撃参加が活発で、彼の大外を回るだけじゃなく内側にも入ってくる動きに福岡はどう対応すればいいか不明瞭な感じで、特にCBとSBの間に入ってきた時はほぼ捨てるしかない感じに見えました。
  • その中村の縦突破から札幌の先制点が生まれます。縦突破が有効である(DFのライン構築が崩れる)好例と言えるでしょう。
  • 先制点に関与した中村とスパチョークが、札幌の前半の中で変化をつけようしている感じに見えた選手で、スパチョークは多分背負って受けることができないので、トップでのプレーの際は左右にとりあえず動いてみたり下がったりしていました。それはあまり効果的には見えなかったのですが、先制点の場面ではスパチョークが浮いたところで一度経由していて、コンサはゴニ以外にトップでボールを触れる選手がいない中で、一応結果に繋がったことは記録しておきます。



  • 札幌の方の不安要素。それは最初の図に書いたのですが、宮澤とルキアンのマッチアップ。後半から入った湯澤のコメントで、
ルキアンは前節のセレッソ戦からああいうスペースを取っていて、そこが彼の武器だとチームのみんなであらためて見直して、スペースにボールを流してあげるというのは意識してプレーしていたと思います。
  • とありますが、「ああいう」に右サイドが得意というのも含まれているのかはわからないです。ただ、序盤の最初のプレーだけは別でしたが、福岡はずっとルキアンと宮澤のマッチアップになるように右サイドでプレーしていて、前半シュートには結び付かなかったものの宮澤の背後をとったプレーもありました。
  • やはり宮澤はCBでもないし、元々足の速さもおそらくプロの水準では平均未満なので、スピードに乗らせない対応をしたいところでしたが、前半から宮澤は時にファウルもしながらギリギリの対応だったと思います。

不可解な遅さ:

  • 予想通り、(そしておそらくおそらく)予定通り、福岡は後半からギアを入れ替えてきます。後半最初に札幌がボールを持った時に、SHが高い位置を取って外のパスコースを切って中央に誘導。前半見せていなかった対応を早速見せます。

  • そして54分に小田→湯澤。札幌が疲れてくるところで攻撃のタスクを与えた選手を入れたのでしょうけど、59分くらい?に札幌は駒井がボックス内で華麗なステップを披露してグローリのファウルを誘ってPK。しかし金子がポストに当てて失敗。
  • PK失敗の直後64分に福岡は佐藤→FWのウェリントンを投入。ここから立て続けに2点が生まれますが、ウェリントンのゴールだけの切り出しがないのでハイライト動画を貼ります。

  • まず1点目は、オープンな形で札幌が突っ込んでのロストからで、グローリのスルーパスが出た時に宮澤はどういう状態だったのか映ってないですが、ポジショニングのミスがないとして、一か八かのスライディングに懸けたところで、体力的にはかなりきつかったんだろうなと思いました。
  • 2点目は完全に右サイドのスペース(言ってませんでしたが、福岡はSHが中に入ってプレーするので札幌のSBがついて行って、CB脇は開きやすいのは最初からでした)での勝負で完全に負けていますね。
  • スコアが2-1となって70分にようやく宮澤→福森のカードが切られますが、おそらくタイミング的に失点を見て決断したのでしょうけど、普段からこの交代(福森か宮澤が先発なら早めに替える)は定番化していますので、前半からキツそうな宮澤のところのテコ入れはもっと早くてもよかったな、とみてました。もっとも、福森でもルキアンは止められないので、中村をサイドにしたのがこの試合の一番の謎(菅をベンチスタートにしてまで)かもしれません。これもコンディションだったのでしょうか。

  • コンサにはもう一つ、定番の交代が、相手の足が止まったところでゴニの投入。点は取ったけど特に機能していた感じはしないスパチョークを、こちらは82分まで引っ張りましたが、ゴニももう少し早くてもよかったかな、とは思いました。投入直後に早速ゴニがボックス付近でポストプレーからFKを得たり、最後、岡村が上がってパワープレーの時に、岡村の頭にクロスと、ゴニの足元に縦パスと選択肢が2つある状態では、福岡も厳しそうだったので、この日の交代策はなんでかな?という感じはしました。

雑感

  • 大筋は本文で書いた通りなのですが、センターラインの強度が一定ある福岡はやはりコンサには難しい相手です。そして毎回同じ展開に持ち込んで、またも勝ち点をゲットした長谷部監督の手腕が光ったと言えるでしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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