2021年5月23日日曜日

2021年5月22日(土)明治安田生命J1リーグ第15節 北海道コンサドーレ札幌vs清水エスパルス ~「なんとかしている」のはだれか~

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • 8戦勝ちなしの清水は、ここ数試合スタメン起用が続いていた立田、鈴木唯人がベンチスタートでディサロが第8節以来のスタメン。また、チアゴ サンタナは体調不良だそうです。ボール保持は1-4-4-2、ディフェンスは1-5-3-2ないし1-5-4-1で守る、ロティーナがセレッソ自体から見せていた変則システムを採用しています。役割が変わるポジションには松田陸や片山のようなフィジカル自慢の選手が重用されていました。
  • 札幌はキム ミンテ、ルーカスが復帰しましたが、カップ戦での起用もあるのでベンチスタート。左は札幌加入後初めてとなる駒井。確か浦和では、たびたび左でも起用されていたでしょうか。当時はアウトサイドで違いを作る役割でしたが、このスタメンだと使い方は別だろうな、という予感がありました。ジェイのスタメン起用は、水曜日のルヴァンカップを「食あたり」で休んだ影響もあったでしょうか。

ロティーナによる日本のフットボールの捉え方:



――スペインでは「ロティーナは守備的な監督」という評価がありますが、同意しますか?

 その通りだ。私は守備がとても好きなので、そうした評価は全く気にならない。監督として早い段階からゾーンディフェンスを採用し、常にソリッドなチームを作ってきた。ただ、スペイン時代のロティーナと日本にいる今のロティーナは異なる。
  • 久々にこのインタビューを引っ張り出します。ヴェルディ、セレッソでの計4シーズン、ロティーナとイバンコーチのチームはポジショナルプレーを基礎に、あらゆるエラーを一つずつ消すことで勝ち点を持ち帰る作業を続けてきたと捉えています。
  • 一方で、セレッソでクルピという、戦術的なエラーが”多少は”生じてでもリスクを好む監督が後任に就いている事実が物語るように、見る人によっては「得点を取りに行ってない」とか「守備的だ」と捉えられがちかもしれません。
  • ただサッカーは最終的には相手よりも1点多くスコアを積んでいればよく、奪ったゴールと守ったゴールの価値はイコール。ロティーナの言う「エラー」を消した方のチームが勝利に近づくのは間違いない。どうやってゴールを奪うか?それは相手チームのエラーを突けばいいでしょ、というのがロティーナの元来のパターンで、そこにイバンコーチとの出会いでポジショナルプレー的な考え方がミックスされています。

最後に誰がリソースを使うのか:

  • ただ、セレッソで”最後にスペースを使う選手”は逆足サイドアタッカーの坂元。ビルドアップで時間とスペースを作って最後は坂元に展開するのが得意の展開でしたが、清水では右の順足アタッカーの中山か?というとそういう感じはしない。
  • 金子拓郎もそうですが、左利きの右サイドアタッカーはボールを受けた時に、ボールを置きたい利き足方向に相手のDFがいてスペースがない。ですのでボールを渡すだけでは攻撃が加速できないし、言い換えれば逆足のサイドアタッカーを置くことで、意図的に展開を遅くすることができます(但し札幌みたいなチームは例外)。
  • ロティーナのセレッソはこの作用を活用した設計になっていて、遅い展開からボールを動かしながら最後は坂元なり清武なりに任せるというもの。清水はまだそこまでの役割を誰が担うのか、誰に託すのかは検討中、といったところでしょうか。
  • 加えてセレッソには引いて守れる(サイドからのクロスボールに強い)DFとGKがいて、かつボールもそこそこ運べる。このポジションのクオリティは清水とは差があり、セレッソは引いて守る時間帯が多くても簡単に崩れないけど、清水はもう少しラインを高めに設定した方がいい、という設計に繋がります。
  • よって清水はこの試合に限らず、「引いて守ってからゆっくり前進」というよりは、相手ボールの時には積極的に前方向に押し上げて、プレッシングからのボール奪取と速攻にトライしています。
  • 一方でこれを、最終的に長身選手の力技で解決する傾向が強い、vs札幌としてアレンジすると、ゴール正面に枚数を確保してスペースを埋めて守るオプションも持っておきたい。ですので、過去のゲームと同様に、引く必要があるときは奥井を下げて、片山を中央寄りに配置するオプションを用意していたのでしょう。
  • 一概に「攻撃的」「守備的」と括ることは、正直なところマーケティング的な観点でもなければ意味がないと感じます。何故ならサッカーはターン制ではないので、攻撃しながら守備をする必要があるからです。「●●だから攻撃的」「守備的」とする論調はナンセンスです。

エラーを引き起こす土壌

  • 札幌は、ジェイが恒例のコンディション不良から戻ってからは、相変わらず空中戦で存在感を発揮し続けています。札幌がここまで勝った相手は開幕の横浜FC、福岡、仙台、徳島といずれも低予算のチームですが、直近2つの勝利はいずれも、ジェイのエアバトルが得点に直接関与したもの。それこそ野々村社長をして、これは「攻撃的なサッカー」だとのことですが、最終的にそれを担保しているのはジェイの個人能力だと言えます。
  • 徳島戦のようにジェイを後半から投入する考えもあったはずで、特にドウグラス オリヴェイラがメンバーを外れるならFWがベンチにいない。そして以前も書きましたが、純粋なマンマークによるディフェンスを採用していて、小柏、ジェイ、アンデルソンロペスを並べると、相手が4バックのチームだとしたら、誰かが「FWの役割」(中央で相手のCBをマーク)から弾き出される(結果的にはアンロペがそうなります)。
  • こういう、「アンロペが相手のMFとかサイドの選手をマークする役割を担っている状態」は、リスクというか、それこそロティーナ風に言うと「技術的/戦術的エラーを引き起こす土壌」になるので好ましくないはずですが、ミシャは最終的には、清水が3バックで来る(もしくはこの3人を並べても問題ない布陣で来る)と確証があったのか、それとも、どうしても先行する展開にしたかったのか、わからないですが、ともかく、今のチーム状態を考えるとギャンブル的なスタメンではありました。

メンバーと整合しないゲームプラン:

  • ただ、札幌のゲームプランは、恐らく前節の川崎戦と近く、なるべく後方でボールを保持して攻め急がずにゲームをコントロールしたいとの意図があったと感じます。
  • これは、ジェイの起用とはあまり整合しない(ジェイはゴール前で相手をぶん殴るためにいるのに、前半そのようなシチュエーションは殆どなかった)と感じましたが、駒井を初めて左WBでスタメン起用したことは、ある程度は整合していると思います。
  • 川崎戦ほどスローな展開にならなかったのは、川崎よりも清水の方がプレッシングの言意識が強かったから。清水がプレッシングのスイッチを入れると、札幌は最終的には菅野に戻して、あまり”やり直し”ができない菅野がフィード(主に、田中or福森へ)でリセットボタンを押す。
  • ボールが前に送られると、最終的にジェイ、アンデルソンロペス、小柏とオフェンシブなキャラクターの選手が並んでいるので、そこで仕掛ける(≒清水が巧く守ればボールロスト・トランジション)という展開が基本的な構造だったでしょうか。

2.試合展開(前半)

”エラー”の消し方①(札幌陣内でのプレッシングから撤退):

  • 序盤はまず、ホームの札幌がボールを握る、清水が持たせる時間が多くなります。ここで清水のGK権田のコメントを見てみましょう。

  • 権田は中山のタスクについて言及していますが、清水は2トップでスタートして、札幌がボールを下げるとプレスのスイッチを入れる。特にGK菅野がボールを持った時が狙い目で、札幌ゴール付近まで追いかけてきます。ここで、ディサロとカルリーニョスだと横幅を守り切れないのもあって、中山はディサロの右側に並ぶくらいのポジションを取って、高嶺にアプローチしてくる。
  • これはこの試合に限った話ではなく、2トップに任せて最低限コースを切って誘導、からのより低い位置で刈り取るというより、チャンスがあれば前線高い位置でボールを奪いきるという意思を感じさせます。
  • ただ、清水は撤退時にカルリーニョスが中央~やや左サイド寄りを担当する関係もあって、中山の担当エリアも右サイドだけでなくて中央まで含めた広いエリアになっている。高嶺は中央よりも、左のタッチライン際で待つ福森へのパスコースを探しやすい状況でした。

2トップ+中山で高い位置で守備
  • そして福森に渡ると、通常この位置から何かを起こすDFは殆どいないのですが、福森はDF背後のスペースや反対サイドのウイングバックに配球ができる。
  • 札幌側の視点からすると、できるといっても1試合に何回も成功するものでもないですが、1発で決まってしまうとビッグチャンスになるので、清水としてはここの”エラー”はケアしておきたい。福森を中山が二度追いする、そして最終ラインはラインコントロールしながら、奥井が片山の外側に移動する準備をします。

”エラー”の消し方②(スペースを消せば可能性の低い放り込みに終始する札幌):

  • 指宿がこう語っているように、また当ブログで毎週のように指摘しているように、札幌のフィニッシュは8~9割が大外からのクロスボール。
  • 地上戦と違って、頭を狙うクロスボールは、ある程度「人」を無視した配球が可能ですが、最終的に中央で合わせる選手は、助走をつけてジャンプするためのスペースが必要になる。ジェイはこの傾向が顕著で、スタンディング状態からのヘッドよりもスペースに走り込んで合わせる形が得意ですし、サイドの選手にもそれを要求している。この点、5バックで、CB3人をゴールエリア付近に配置することは有効であり、エラーを消すことができます。
  • 札幌の右は、金子が2人相手でも果敢に(無謀に)勝負を挑んでくる。清水は片山と、時に奥井のダブルチームで対応しますが、金子が左足に持ち替えて配球するクロスボールは、奥井が視界とコースを限定することでジェイの頭に合うことは全くありませんでした。
5バック気味で撤退して中央を固め、クロス連射に備える
  • そして、左は清水も警戒する福森ですが、札幌の、駒井の左での起用は、左サイドで福森の”滑走路”を空けるためだったのだろうと思います。
  • 正直なところ、駒井がいると何かが実現して、ルーカスフェルナンデスだと何かができなくなる、というロジックは私にも説明できない。ただ、駒井が左に張って仕掛けるというよりは、別の役割でしたし、ジェイの起用は福森からの配球と当然セットになるので、順当に行けばそうでしょう。
  • 98年のワールドカップで、クロアチア代表がドイツ相手にアップセットを演じた際、クロアチアのウイングバックには「ドイツのビアホフへのクロスボールは徹底的にカットしろ」と指示があったという話があります。
  • 福森&ジェイのユニットに対しても、同じように対応するか、それとも中ではね返すか、という二択がある。エウシーニョがもっと早く福森に当たるとかして前者を採用することもできましたが、清水はここも、上げさせること自体は許容していて、とにかくスペースを消していれば問題ないとする対応は一貫していました。
  • 札幌は、駒井がオーダー通り中に入って福森の滑走路(要は福森が好きにやるためのスペースです)を空ける。エウシーニョも引っ張って、福森をフリーにすることができました。しかし、弊害として、小柏と駒井のポジションが被って、小柏がハーフスペース付近で何かをする、という可能性はほぼ絶たれてしまいます。敵陣高い位置で活動領域を失った小柏は…サイドに流れたり、下がって駒井のスペースを空けたりしていました。
福森の滑走路は空くが小柏が窮屈な思いをする
  • それでもサイドに流れても多少突破したりできる(ので、チグハグさが多少ごまかせる)のが小柏の能力の高さなんですが、この、ウイングバックが中に入るパターンは菅やチャナティップが出ている時からずっとやっている。チャナティップはMFなので、下がっても仕事ができる(たまに、カウンターに追いついてカバーしたりもできる)のですが、駒井の割を食って小柏が消えるのは、本当に滑稽な設計のチームだなと感じます。

”エラー”にならない程度のスペース:

田中駿汰の前のスペースは捨てる
  • 田中駿汰はここでボールを自由に持て、任意の味方に殆ど障壁なく展開できる状態です。ここで、アンデルソンロペスが、中央ではスペースがないということもあって、またジェイとどうしても被ってしまうのでボール付近に落ちてくる。
  • ボールプレイヤーが落ちてくるとどうしてもパスしないといけない感じがするのはよくわかります(そして、ボールは返してくれない)。駿汰がアンロペに預けたりも何度かありましたが、清水はアンロペをサンドして簡単に反転させない。
  • そもそも、アンロペがこの位置でボールを受けるよりは、結局彼が今シーズンゴールを量産しているのは、とにかくゴール前で我慢できていることに尽きる(ヘディングが急に上手くなったとかはない)。ので、ここで得点王がボールに触っても清水としては何も怖くないのです。

札幌がエラーだらけでも何とかなっている理由:

  • フリーの状態が多い駿汰は前半途中から、金子の外側をオーバーラップするアクションを何度か見せます。
  • 札幌は福森だろうと、桜を咲かせに去った進藤だろうと、カップ戦で主に登場する中村や柳だろうと、このDFのオーバーラップは許容されているように見える。が、駿汰が上がったスペースを誰かが代わりに埋めているかというと、そうではない。小柏のような気配りができる新人はこのサイドにいないからです(そもそも攻撃的なキャラクター―の選手ばかり並べているので無理でしょう)。
  • まさにこういうのが、一般的なフットボールの感覚で言った時の戦術的エラー(原則を知らない)と言えるでしょう。冒頭に書きましたが、攻撃と守備を同時に行う必要がある協議において、「おれらは守備なんかようせんで」と言っているようなものです。野々村社長が惚れこむミシャのチームにはこの手の話が非常に多い。
  • エラーを消し、相手のエラーを突くことで勝利に近づくと考えるロティーナのチームがこれを見逃さないわけがない。16分、札幌の長いフィードがカットされて、右サイドは金子も田中駿汰も清水ペナルティエリア付近にいる状態。カルリーニョスが、カバーに入った、膝に不安のある深井を簡単にぶっちぎってボックス付近まで侵入します。

  • 決定的だったのは18分、権田のゴールキックのフィードを敵陣で片山が競る(後述)。ディサロが潰れて、カルリーニョスが左サイドで前を向き、田中駿汰の背中を取った状態で加速します。これはエラーと言うか、マンマークをどう捉えるか問題でもあるのですが、片山が競ったのは意図的に清水が札幌のエラーを作り出したと言えるでしょう。
  • ともかく重要なのは、カルリーニョスの2本のシュートを、菅野が素晴らしい連続アクションでセーブ。結局札幌がエラーだらけでも「なんとかなっている」のは全て、計算ができるGKとFWの存在によります。菅野やアンデルソンロペスがいて「戦力的に恵まれていない」は冗談だと言っていいでしょう。もっと悲しいクラブはいくつでもあります。

”エラー”を生む土壌としてのマンマーク:

  • さきほど「後述」としたシチュエーション(片山がゴールキックを競る)に関連する話をします。
  • 当たり前の話をしますが、マンマークは「誰が誰を担当するか」が重要になります。右ウイングのメッシのマークがアルベロアなのか、黄金の左足福森晃斗なのかで、「よし行け」と言えるか否かは大きく変わります。
  • 札幌が清水のスタメンを見て、決めていたマーク関係はこれ▼。基本的には相手が3バックであることが前提になります。
想定していたマッチアップ
  • 実際は清水は4バックでスタートするので▼こう移動します。片山は、札幌が思っているよりも高い位置を取る。ならば、得点王のアンデルソンロペスとマークをスイッチできればいいのですが、そうはいかない。札幌はFWを3人使ってるので、ここでアンロペにもっと負担の低い役割を負わせることはできない。
  • 徳島戦とまったく同じ現象で、この時はジェイがベンチスタートだったので、駒井と小柏を入れ替えることで解決できましたが、このスタメンだとリスクがあることがわかるでしょう。
18分(片山の移動で混乱からの決定機)
  • 清水のオフェンスは、トップのディサロが収めて、右の中山への展開が多く、片山のサイドでそんなに強烈に攻撃参加がしたりもないし、奥井が危険なアクションをしてくるかというとそうではない。ただ、マンマークである以上は片山にせよ奥井にせよ、フリーにしてしまうと守備がはまらない。手段だったはずの純粋マンマークに自ら手足を縛られているとでも言いましょうか。
  • そして18分のプレーは、ゴールキックの際に片山と奥井がポジションをスイッチして、かつ片山が中央付近に大きく移動。アンロペからすると、片山は殆ど札幌のDFの近くまで移動して競っているので、「これも俺が見るの?」ってなりますよね。この、「原則マンマークなのにマンマークしないといけないのかわからない状態」も典型的な戦術的エラーで、このギャップからカルリーニョスが抜け出す形に繋がっています。
  • アンロペはゴール前にスペースがない、そしてゴール前にはジェイがいるので下がってくる。これは仕方ないとしても、片山のポジショニングによって操作されて、下がった位置、もしくはサイドの低い位置からスタートすることが多くなります。当然これで札幌の攻撃力は幾分か削がれることになります。

3.試合展開(後半)

Golazoとエラーのあいだ:

  • スコアレスで折り返して後半へ。
  • 後半の入りも前半と同じく、まず持たせて時間を使う清水と、持たされる札幌の構図でしたが、50分にアンロペがゾーン2、まだそんなにゴールに近くない位置で倒されてFK。これを左にずらして、福森の柔らかいパスをジェイが競って、アンロペのボレーで札幌が先制します。
  • 清水はサイズのある片山と、鈴木がサンドする形でゴール前は守っていて、かつボールの出所がそこまで角度のある位置ではない。けどキッカーとターゲットの質が良すぎるというか、これで点取っちゃうなら清水としてはどうしようもない失点でしょうか。ただロティーナからすると、ヴァウドがアンロペから目を切っていたり、片山がもうちょいうまく競ってくれってのもあるかもしれません。ジェイのももに当たっているのでラッキーな面もあったでしょうか。
  • このゴールから殆ど間を置かない(得点後、殆ど札幌が自陣で回していて動きはなかったので)55分、CKのセカンドボールが金子の前に転がり、奥井が寄せますが、ペナルティエリアの外から巻いたシュートが権田の右手をすり抜けて2-0。
  • 権田相手にペナルティエリア外から得点するにはかなりのクオリティが必要になるので、個人的にはこれは分類としてはGolazoかなと思うのですが、ロティーナは試合後、「金子があそこから左足に置いて撃ってくるのは誰でもわかるんだから、なんでコース切れないんだよ」と珍しく、奥井を指して厳しめに言っています。その意味では守備側からすると技術的エラーの部分が大きいでしょうか。

ただ、警戒するのみ:

  • スコアが2-0となって清水は中山と奥井を下げ、西澤と鈴木唯人を投入。恐らく1-0の時点で準備していたんでしょう。
  • それぞれ左右のサイドに入りますが、クロスボールの質なら中山よりも西澤。ただスタートから起用すると、放り込み主体の展開(跳ね返えされてカウンターも多くなる)ので、中山でスタートしたのかと思います。右クロスを意識したフィニッシュということもあって、左の鈴木もセットで送り出したのでしょう。鈴木は金子の対応を頑張っていたので、奥井は今後厳しい評価を下されるのかもしれませんが。
  • 直後、続けて選手が痛む場面があり、札幌は60分にアンデルソンロペスが負傷。64分に青木が左シャドーに入ります。青木の投入には、マッチアップを合わせる(ボールを持っていない時は、ヴァウドではなくて宮本をマーク)意味もありました。
  • 飲水タイムを挟んで71分には高嶺→荒野、駒井→ルーカス。これで札幌は5バックにシフトし、マンマークでのプレスをやめる(厳密には、マンマークはやめてなくて、ジェイとCB2人のところは数的不利、他は、清水の2トップに対してはCB3人で数的優位、あとは対面の選手をマーク)。あとはもうこのスコアでいいよ、という姿勢を、残り20分にして明らかにします。
メンバー変遷
  • これは今シーズン全く見られなかった展開で、ロティーナの清水に対する警戒心がうかがえます。もっともこの展開ならアウトサイドに柳を入れるのがうってつけというか、明確なメッセージにもなったんでしょうけど、この試合メンバー外だったのは負傷でしょうか?
  • 清水の、残るカードは74分にエウシーニョ→福森、ディサロ→指宿。こちらの福森も左利きでフィードが得意。フィニッシュはやはりクロスボールで考えているのでしょう。狙いは明白ですが、札幌も手は打っている(こちらも5バックでスペース埋めるのがなんだかんだ一番安全ですね)。どちらかというと、清水は荒野と深井の周囲に斜めのパスを入れて、鈴木唯人が絡み形の方が、札幌が困っていたようでした。
  • ラストはミンテの「技術的エラー」でヒヤッとしましたが、札幌が2-0で逃げ切りました。

雑感

  • 清水では苦しんでいますが、ロティーナは本来「1点取れば勝てる監督」。なので、先手を取りたいのはもちろんだとして、それ以前に失点したらどうしようもないです。札幌のハイリスクなやり方だと、そっちの問題が非常に大きいのですが、結局そこは菅野が全てを解決する。間違いなくこの試合の立役者でした。
  • 得点については、こんな記事を見たのですが、何度も繰り返していたら「デザインされている」のでしょうか。であればデイビッド・モイーズのマンチェスターユナイテッドは80回以上クロスボールを蹴ったゲームがありましたが、デザイン性の塊ということになります。
  • 確かに点を取ることは必要だし、そのためには個々のタレントが不可欠なんですが、福森とジェイをピッチに立たせる、かつそれぞれが得意なポジションで運用するためにいろいろなエラーが生じます。今日は菅野が不条理を解決してくれましたが、この構図がある限り不安定な、中の下ぐらいのチームからは脱却できないでしょう。
  • そして時節。鳥栖にはプレッシングで窒息させたいところですが、アンロペの負傷は非常に痛いです。ジェイがスタートから起用されるとしたら、コンディションも考慮すると省エネモードになるでしょうか。ここ2試合は試合のテンポが変わってもいるので、その点も注目しましょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

8 件のコメント:

  1. 初めまして
    毎度毎度、楽しみに読ませて頂いております。
    試合後、即行でのブログアップには感服しています。

    この頃は読む度に、チームの先行きが暗澹たるものになっていくのですが、
    怖いもの見たさ半分で、毎試合後のアップを楽しみにしています。

    長年サポをやってきて、こちらのブログで戦術眼を養おうとは試みてますが、
    我がチームのビルドアップの様に一向に改善しないので、もう諦めました(笑)

    スタジアムでゴールに歓喜し、敗戦に落胆する
    そんな一喜一憂する日々で満足しようと。
    もうクラブの存属とか、世界に羽ばたくクラブなんて小難しい事は、
    プレジデント野々や頑固一徹エンターティナーな指揮官に任せて、
    社長の口車に踊らされ、「ただただ目の前のサッカーを楽しもう!」ってw


    どう足掻いても「中の下のプロビンチャ」でしか成り得ないんですよね…きっと(-_-)


    せめて、こちらのブログで指摘されているチームの問題点のあれやこれやは
    社長や指揮官、コーチ達も認識しつつ、
    今はこのやり方しかないと、割り切ってくれていると良いな~と願うばかりです。(無理かw)

    初めてのくjせに愚痴っぽい口上ばかりでは申し訳ないので、
    最後に、参考までにベコム氏から見て、
    社長、ミシャの云う戦術で、既存選手でのベストなスタメンって、どんなメンバーになりますか?
    お時間があればお聞かせ下さい。


    水曜はボコりたいチームの一つとの対戦ですが、
    現状を踏まえると、ボコられませんように(-人-)

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    1. コメント&閲覧ありがとうございます。
      Twitterでも質問があったんですけど、結局「このチームのベストのスタメン」って、明確な答えはなくて、それこそ幾つかあるオプションの中では、大抵は普段練習を見ている監督やコーチが選んでいる選手が、その監督のやり方ではベターなんだろうってのはほぼ動かしようがないんですよね。

      ですので、「俺ならこうする」なのか、「(上に行くために)このチームを変えるとしたらどうすべきか」みたいな話って、単にメンバーのセレクトの話に留まるものではないと私は思っていて、

      ・勝つためにどういうサッカーをすべきか
      それを実現するために
      ①どんな選手が必要か(チームに加わってほしいか)
      ②選手がどういう能力を身につけるべきか
      ③それらをどう組み合わせるといいか(戦術的なもの)
      etc…単にメンバーセレクトの話ではなくて、全てにおいて見直さないと無意味な話かなと思います。

      その点で、前も書いたんですけど、
      https://1996sapporo.blogspot.com/2021/04/20210424.sapporo.sendai.review.html

      結局ミシャはあまり選手に対して要求しないタイプなんだと思っていて、となると私はミシャ体制下で上記の②が問題として顕在化しているなと思っています。
      勿論、進藤みたいな若手はゲームを経験することで一定は良くなるんですけど、彼も元々できた強み(空中戦とか)が伸びたのは別として、何か新しいことがトレーニングを通じてできるようになって、結果このチームは戦術的に、チームとしてどう良くなった、ってのがすごく曖昧だなと感じています。

      という具合に、私は監督の仕事は「スタメンを選ぶこと」だけではなくて、複数のコーチングスタッフをまとめる・指導したりしつつ選手を育てながらチーム作りをすることだと思っています。
      メンバーを選ぶのは最後の作業でしかない、というか。
      ハリルホジッチが槙野に対人守備の仕方を教えてたり、四方田コーチが守備の対応を細かく指摘してたり(社長はそれが嫌だったみたいですが)、こういう積み重ねはメンバーセレクト以上に大事というか不可欠です。監督が直々にやるかどうかは、また別ですが。

      いずれにせよ「どんなサッカーをコンサドーレはすべきか?」がまず議論の最初に来ますね。それでいくと、野々村社長はきわめて抽象的な「攻撃的なサッカー」だとしていると思っていて、じゃあ何が攻撃的なの?というと、あくまで仮に、アタランタみたいな速攻主体でたくさん点を取るなら
      ・ジェイじゃなくてアンロペと小柏ですね。
      ・福森はキッカーとしては欲しいけど守備強度で考えるとどうですかね?けどこのポジションは5年間福森のライバルを補強してないんで、現有戦力と考えると難しいですね。
      ・金子が右WBから攻撃参加してカットインする暇ないですよね?
      ・駒井はシャドーじゃないですよね。
      ・岡村は対人に強そうなので、我慢して使ってもいいんじゃないですかね。

      とか、あくまで緩めの提案、指針レベルなら思いつくものはあります。

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    2. 返信ありがとうございます。
      ま、結局は数学みたいな正解なんて無いって事ですねw

      ジェイとアンロペ同時起用は、このところゴールはあるけど、今ひとつ感一杯です。
      福森の守備はもう目をつぶってますよねw
      もう1試合に3、4本ある「そこ!」ってパスを見るだけで満足しようとw
      金子タクロッベンもシャドーの方が相手は怖いだろうし、
      駒ちんのシャドーは逆に相手にとっては決定力が無くて楽ちん?
      大八はもっと試合で使いながらミンテの後継として育てるかと思ってましたが、
      そんな素振りもありませんでしたねえ。

      ミシャのネームバリューでの選手獲得も、下降線を辿る事に慄きながら、
      いざドームへ(明日ですがw)
      青木がもっとブレークして欲しいけど~中野コースの匂いがしないでもないですね。

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    3. まだ5月なので色々断言するのは早計ですね。

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  2. いつも拝読しています。
    川崎戦から引き続き高嶺&深井のボランチコンビで左センターバックに降りるのは左利きの高嶺と決めたことで自陣でのビルドアップが安定した印象です。
    一方でボールが行ったり来たりするオープンな展開も少なくなってゴールチャンスが減った印象も受けます。個人的にはこのまま安定した後方の繋ぎから崩していく方向に行った方がいいと思いますが、クロスを放り込む以外にリトリートした相手を崩す方法や重要な選手が居れば教えてください。

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    1. 深井と宮澤は「下がる人と残る人」の関係が”自由”ではない方が良い、との意識が強そうに見えますね。荒野や駒井は自由主義者に見えます。

      >引いた相手を崩す
      その辺は去年何度か書いてます。
      https://1996sapporo.blogspot.com/2020/08/20200808.shimizu.sapporo.prev.html
      https://1996sapporo.blogspot.com/2020/11/2020seasonreview1.html
      https://1996sapporo.blogspot.com/2020/12/2020seasonreview2.html
      サッカーにはオフサイドルールがあるので、こちらがボールを下げれば相手はラインを上げ、「リトリートしている」状態の解除を促します。ですので敵陣に入る(札幌だと、ウイングバックやシャドーが前線でポジションを取り直す)までに時間がかかるなら、GKを使うとかしてピッチの縦幅を使って相手の陣形にスペースを作ってから再度敵陣に侵入するのがベターです。
      ですのでこのプロセスで相手にビビってクリアする選手は難しいのと、前進できるときにボールを下げないで前にパスしたりドリブルしたりできる能力は重要ですね。札幌が再侵入すると、相手はブロックの位置を維持して守るか、下がるかっていう判断になる。この時に簡単に下がらせないように、スペースにドリブルして引き付けるのも重要です。宮澤と田中駿汰が今のメンバーでは高水準だと思います。

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  3. おはようございます。ブログ面白くて毎週楽しみにしています。
    話がいきなり脱線しますがオフサイドが来年の7月に変更だそうです、そのルール変更の意図は攻撃をもっと増やす為にと思えます。コンサドーレも理想、目指すところは攻撃的な…えーっとだんだんなんかバカになりそうなのでやめます。すみません質問を変えます。
    コンサドーレが攻撃回数を増やす為に、ゴールキーパー、DFラインやボランチからのパスで、誰が受け手で前を向いて、良い形でボール持てたら、ボックス内に近づける、相手から見て怖いと思いますか。個人的にはルーカスがボール持つとこうげきてきだなーと感じます。金子が悪いとは言いません。ついでにオフサイドのルール変わったら岩崎の時代がくると願っています。
    もう一つの気にしている事ですが、鳥栖の中野嘉大を見るとコンサドーレでもう少し輝けたのかなと、鳥栖の芝桜が青く見えます。ルーカスやミンテは僕から見て実力あるのにスタメンで出れないから出ていかれてもおかしくないと不安な妄想してしまいます。不安解消の為に札幌市内でミンテ嫁やルーカス嫁が札幌を離れられない理由を今日からでも作れますか?何かありますか?ゴミの分別くらいならミンテ嫁と一緒にしてあげたいです。

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    1. ルーカスと金子は最後に、なるべく相手ゴールに近いところで1対1を作る、いわば攻撃の構築の終着点の選手ですよね。彼らが1対1なら相手から見て怖いのは言うまでもありません。
      「構築」としては、その前に彼らにどうやっていい形でボールを届けるか、大事になる。福森のサイドチェンジから金子が多いですけど、本来はピッチ中央を使ってそうした展開を増やすべき。それはチャナティップと、かつては三好だったんですけど、縦に速いサッカーに尖っていくとチャナティップも埋没してますね。

      岩崎は…ジェフでも苦戦しているみたいですけどちゃんと見てないです。

      どんなチームにもポジション争いは存在しますし、定位置を確保できない選手は数年周期で入れ替わりますよね。それこそ札幌に柳がいるのも、FC東京でポジションがないからですし。福森も駒井も元は川崎や浦和でそうですよね。残念ながら全く人が入れ替わらないチームは存在しないし、チーム作りとしてはその方が健全です。監督も選手も変わらない状態が続くと、中長期的に見て緩やかに下降していきますから。

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