2020年8月14日金曜日

プレビュー:2020年8月15日(土)北海道コンサドーレ札幌vs川崎フロンターレ ~贅沢な実験~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー
  • 札幌のメンバーは清水戦をベースに、福森と石川が離脱中、高嶺もミッドウィークのカップ戦で負傷交代してしまった左DFをどうするかが焦点です。前節警告2枚で退場した田中が使えれば左DFでの起用もあったかもしれませんが、いずれにせよ右利きの選手を立てるか、ルヴァンカップで後半からDFに入った菅を持ってくる(その場合、左は中野?)必要があります。
  • 前者は考えられるのは駒井を右、進藤を左というのがあります。ただシャドーで機能している駒井を動かすかどうか。そのまま左に持ってくるならキム ミンテでしょうか。高嶺が普通に出れるといいのですが、交代の仕方から無理そうに思えるので、このメンバーを予想しました。個人的には高嶺が川崎相手にどこまでやれるかが楽しみでもあるので、予想が外れるのは構いません。⇒と、書いて記事を公開しようとしたところで、福森が全体練習に合流しているとの情報。コンディションが心配ですが、状況的に強行出場するでしょう。ミンテかなぁと思ったのですが。更に武蔵がメディカルチェックのためにベルギーへ。くまモンは最大2地点まで瞬間移動できるのは有名な話ですが、武蔵のスピードでもベルギーから札幌へは難しそうなので、代役が必要です。となると前線の構成が読めなくなってきます。ルヴァンカップで慣らし運転を終えたジェイもいますが、ここ数試合踏襲でゼロトップ気味でしょうか。
  • そしてマリノスと同じ[1-4-1-2-3]の川崎に対しては、トップ下を置く形で枚数を合わせてくるでしょう。2トップ気味にするならアンデルソン ロペスか、ここ数試合評価が高まっているドウグラス オリベイラの起用も考えましたが、水曜日に温存した駒井の右FWはマリノス、神戸相手にハマっていたので動かさないと予想します。
  • このほか、後述しますが、プレスの強度と速攻の質が重要そうなので、走れる選手をベースにエクストラプレイヤーのルーカスがキーマンになりそうです。
  • 川崎はメンバーは割と固定気味で、リーグ戦の前節は山根と家長がコンディション不良で欠場していますが、彼らが問題ないとしたらこちらもメンバーの予想は容易です。山根はカップ戦でスタメン出場しているので問題ないでしょう。家長は名前がなかったため、今節も小林の右を予想します。ただ、大島がルヴァンカップで退場処分を受けて出場停止。順当に、大島不在の2試合で起用されている下田でしょうか。


2.川崎フロンターレに対する印象

2.1 基本スペック

  • 簡単に言うと彼らはボールの扱いが巧いです。そして、あまり言及されないですが、フィジカル的な力強さも持ち合わせたスカッドだと感じます。これらの強みが、スペース創出を殆ど必要としなくても敵陣でゴールに向かってプレーできるという独特のスタイルを形成しています。この印象はここ数年変わりません。本来メッシとイニエスタを除く全てのサッカー選手は「スペースの下で平等」であって、スペースがあれば快適にプレーできますがスペースがないとただの人になってしまいます。これはルーカスフェルナンデス選手でも大森健作選手でも変わりません(ルーカスは今スペースを得やすい戦術になったことで再び輝きだしてますね)。川崎の選手はスペースがなくても点を取ってしまいます。
  • そのため、敵陣に入ってからの時間が長くなり、相手ゴール前にスペースがないことが続く展開でも不都合を感じないとというか、敵陣に押し込んでプレーすることでのデメリットが小さい(自陣に引き込んでスペースを作るようなプレーをあまり要求しない)。これもあってか、2020シーズンは敵陣高い位置からのプレッシングも採用しています。
  • 大半の時間を”相手陣内の住人”として過ごせる理由は他にもあり、谷口とジェジエウ、加えてアンカーの田中碧の対人能力の高さが挙げられます。
  • 特に対戦相手としては、右CBを任されるジェジエウと勝負できる能力のあるスプリンターがJリーグにはほとんどいない(この文章を書いていて、オルンガとのマッチアップが非常に興味深くなってきたのですが、配信期限ぎりぎりで見逃してしまいましたが、15分で交代したんですね)ので、谷口とジェジエウの背後のスペースは意外とリスクにならない。動けるアンカーの田中も加勢すれば、この3人で迫力のないカウンターアタックはすり潰してしまいます。
  • ただ、動けるアンカー・田中碧の周辺は比較的”何か”が起きそうな雰囲気もあります。かつての山口蛍選手や札幌の荒野なんかもそうですが、なまじ能力が高いからか、相手を引き込むよりも自分で動いてゴールを取りに行く傾向が強い。
  • [1-4-3-3]でセットした時に、田中の前をダミアンが守っていることもあって、ダミアンが動く→ダミアンの周囲から出てきた選手を捕まえに田中も動く。このパターンは多く、Jリーグだとあまり問題にはならないようですが、ヨーロッパだと各チームとも相手のエラーを突くことを考えてプレーするので、個人的には今後のキャリアに注目しています。
  • 2019シーズンはエウシーニョの後継となる右SBの確保に苦労していたようですが、ここまでは、基本的にはあまり家長を追い越さないタイプの山根が解決策となっています。馬渡やマギーニョを試していたシーズンと比べると微妙な変化であり、これもあってかアタックのエリアはより中央に寄っている印象を受けます。
  • あまりGKがボールを扱うシチュエーションを信用していないのは相変わらずで、ゴールキックはロングフィードが多いのも特徴です。ここでボールを放棄した分は、主にゾーン2でのプレッシングやネガティブトランジションで補っています。自陣を使わないサッカー、とも言えそうです。

2.2 戦術面のやり方や傾向

  • ボール非保持はどのエリアでも基本的に[1-4-3-3]。全般に捕まえる守備が得意で、特に2列目の[3]が積極的にポジションを崩してボール(というより、相手選手)を狩りに出動します。アンカー田中の前後左右への出動も目立ちますが、加えて右インサイドハーフの脇坂も家長の背後を頑張ってカバーしていました。
  • ビルドアップの段階では5レーンを意識したポジションを取りながらボールを運びます。敵陣のゾーン3付近まで進出すると、前線の選手はボールサイドに寄ることが許容される(最近のJリーグではこのパターンのチームがいくつか見られますね)ようで、崩しはやはり短いパスを使ったレイオフ→裏への飛び出しを多用します。結構このパターンは相手に読まれがちで、トライの分相応にボールロストも少なくないのですが、密集を活かしたトランジション(相手のボールホルダーを囲む)で補っています
  • 一方でポジションが整っていればSH-SBの隣り合う関係からのインナーラップが発動したりと、使い分けることもできています。
  • 2月の開幕直後はアウトサイドでSB-インサイドハーフ-ウイングの3人を集め、主にオーバーラップとインナーラップを駆使して突破する形を見せていましたが、再開後はレアンドロ ダミアンを使った中央でのポストプレー等、中央突破のプライオリティが高まっているように感じます。

3.試合展開の予想

3.1 駒井とルーカスを前に送り込みたい札幌とその成立条件

  • 近年の対戦では、昨年のルヴァンカップ決勝を除くと、ミシャチームは川崎に対してハイプレス主体のスタイルで挑んでいます。これは、川崎はマリノスと同じくゴール前でのオプションに優れるチームなので、ボールを持たせて時間を与えると、(スペースは殆ど与えないとしても)危険だとの考えが根底にあるためです。
  • 今回も同様の考え方は崩さないと思いますが、一方でボール奪取後は、より速く攻めたいと考えている(マリノスと神戸相手の策と同じ)と予想されます。ですので、カウンターをするためのスペースを確保するために、ここ3試合のリーグ戦と同様、相手に枚数を合わせてからボールを持たせ、自陣ハーフウェーライン付近に撤退し、奪った後は素早く前線に展開してシュートまで持ち込む。マリノス相手にこの”実験”は1度成功しただけだともいえますが、相手の性質を考慮すると、今回も試す価値はあります
川崎に持たせてから谷口の背後を狙いたい

  • 川崎の右ウイングに家長ではなく小林が起用されるなら、札幌は川崎の右よりも左サイドからの展開に対処できるよう用意しておく必要があります。基本的に、スタートでは登里は絞り気味に、左ウイング(三苫?)はワイドに開いたポジションを取ります。ルーカスと進藤がそれぞれ捕まえることになると思いますが、進藤が三苫に出た背後のスペースのケアは試合を分けるポイントになりえます。
  • 札幌は宮澤がスライドするか、インナーラップしてくる川崎の選手にそのままマーカーがついていくか。下田には荒野がそのままついていくことで対処できるかもしれませんが、厄介なのは登里が追い越してきた時で、ルーカスはできるだけ前に残らせたい(もしくは、そこまでついていけない)札幌はマークの受け渡しが発生します。川崎はこの瞬間にギャップを突くのが巧く、札幌の受け渡しがスムーズにいかないとそのズレを維持したままゴール前まで運ばれてしまう展開も予想できます。なお大島→下田の影響が大きそうなのもここで、進藤の背後をインナーラップからのクロスなら、大島よりも左利きの下田の方がスムーズなはずです。このこともあり札幌にとっては嫌なスペースになります。
進藤が出た後のスペースのケアとマーク受け渡し
  • ジェジエウほど速くはない谷口と登里のサイドに、駒井とルーカスを投入できれば一気に期待値が高まります。そのためにはどこかでボールを奪い、かつ”残す”必要がある。進藤のマッチアップまでは川崎に運ばれてしまうとして、その”次”が現実的な奪いどころになるでしょうか。
  • そう考えると、進藤の隣を守る宮澤はリベロとして自由に動けるようにしておきたい。宮澤がダミアンのマークを受け渡して動くとしたら、左CBで起用される選手(福森?ミンテ?)がダミアンのマークを担当することが多くなりそうです。なんだかミンテが適任のように思えてきますね。

3.2 必然の地上戦勝負

  • 川崎は先述の通り[1-4-3-3]でセットします。川崎の対応はスペースを守っているというより積極的にハンティングしてくる対応で、特に2列目の脇坂と田中碧はかなりプレーエリアが広く感じます。札幌がゆったりとボールを持っていると、距離を詰めて時間とスペースを奪ってくるので、横スクロールゲームで床とか天井が迫ってくるステージ(私が苦手なやつです)のような圧力を感じることになりますし、手遅れになる前にボールをリリースしてビルドアップする必要があります。
マッチアップの例
  • 問題は、このサイズの前線だとジェジエウに中央は跳ね返されてしまうと思われ、サイドの菅も山根相手だとターゲットになれるか微妙なところです。その分、チャナティップ、駒井、中野の地上戦で攻略がしたいところですが、トップのダミアンが動いた後など、田中碧が出てきてスペースができることがあり、俯瞰的に見て狙い目じゃないかと感じます。
  • 思いつくのは、一つは福森に早い段階で渡して対角のルーカスに蹴っ飛ばしてもらう。いきなり蹴っ飛ばすことが分かり切っていると、登里も対処が容易ですが、再度への放り込みはそこからカウンターを食らったりすることは少ないので、確率が低くても選択肢としてはアリです。この場合は、上の図の形…福森が開かないでプレーするのがいいでしょう。
  • もう一つは、最終ラインが幅を取って横幅3枚の川崎を動かしてからプレーする。福森と進藤はタッチラインに開き、できれば深井が小林を引き付けてから福森に渡します。これで川崎は脇坂が出てくるので、そのスペースに荒野と、チャナティップもサポートすると、川崎は荒野とチャナティップの両方をケアする必要があります。田中碧に加え、ジェジエウが出てくるならトップ(中野?)の裏抜けが刺さる。福森をタッチライン付近に置くなら、まず深井が最初に引き付けてプレーできるか、そしてこの構図に早い時間帯で気付けるかどうかが重要でになりそうです。
地上戦で勝負できる選手を並べて脇坂が動いた後のスペースを使う
  • 川崎のMFは可動範囲が広い分、スペースができやすい。FWを外して中野、チャナティップ、駒井と並べると必ず誰かが浮くんじゃないかとの期待感はあります。1列目のプレスを外せれば面白くなりそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿