2017年9月26日火曜日

2017年9月23日(土)14:00 明治安田生命J1リーグ第27節 北海道コンサドーレ札幌vsアルビレックス新潟 ~キャスティング主義の弊害~

スターティングメンバー

0.プレビュー

0.1 スターティングメンバー


 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF菊地直哉、横山知伸、福森晃斗、MF早坂良太、宮澤裕樹、兵藤慎剛、石川直樹、ヘイス、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK金山隼樹、MF河合竜二、稲本潤一、マセード、小野伸二、FW都倉賢、菅大輝。
 アルビレックス新潟のスターティングメンバーは4-2-3-1、GK大谷幸輝、DF小泉慶、富澤清太郎、ソンジュフン、堀米悠斗、MF磯村亮太、加藤大、ホニ、小川佳純、山崎亮平、FW富山貴光。サブメンバーはGK守田達弥、DF大野和成、大武峻、MF伊藤優汰、酒井宣福 原輝綺、FW河田篤秀。

0.2 その他


 札幌は都倉は負傷や出場停止以外では四方田監督就任後、恐らく初めてとなるベンチスタート。2016シーズン、あれだけヘイスとジュリーニョの同時起用に慎重だった四方田監督だが、遂に外国籍選手による3トップに踏み切った。福森は左内転筋痛でこの週は別メニュー調整が続いており、石川の3バック左での起用も想定されていたが、万全ではない中で強行出場。最終ラインは横山が中央、菊地が右とシーズン開幕時のメンバーに久々に戻った。キム ミンテは今月3日から別メニュー調整だったようで、今週19日に全体練習に合流したとの報道があった。
 新潟は呂比須ワグナー監督の初陣となった5/20の第14節札幌戦以降、リーグ戦勝ちなし。公式戦全体でも2勝4分け14敗(2勝は札幌とバンディオンセ加古川…天皇杯2回戦での対戦)。夏のマーケットでDF大武、MF磯村、小川、FWタンキ、富山を獲得するも依然として最下位に沈む。チアゴガジャルドは規律的な問題で干され中。8月より期限付き移籍で加入した小川がトップ下で3試合連続のスタメン。ドウグラス タンキは累積警告4枚で出場停止。

1.前半

1.1 辿り着いたのはJ2仕様

1)引かざるを得ない理由


 試合開始と共に札幌は自陣にリトリート。やはり4バックの相手に守備がハマらないと判断したか、とも考えられるが、加えてこの日は起用している選手の特性…端的に言えば、ジェイをスタメンで使っているから札幌は引かざるを得ない。
 ボールを持った時は何かを起こせるクオリティを持つジェイだが、ボールがないところでは大半の時間帯は優雅にジョギングをしている。そんなジェイが5-2-3ブロックの頂点で起用されているので、大抵の場合、ジェイのポジショニングと動きによって、味方の守備対応が決まるのだが、仮にチームとして守備の開始位置を高い位置に設定しようとしても、ジェイがまずどこまでスイッチを入れられるか、入れられたとしてもゲームの中で継続できるのかは不透明。であれば、最初から撤退して裏のスペースを消した方がリスクが小さい。
新潟に持たせてリトリート

2)J2仕様のカラーコーン対応+7枚ブロック


 もっとも、ジェイをスケープゴートにすることは酷な部分もある。5-2-3で前に3枚を配す形は2015シーズン途中の四方田監督の就任以来の基本形だが、札幌は相変わらずこの前3枚の運用に極めて機能性を欠いている。出ている選手がジェイでもヘイスでも、都倉でもジュリーニョでも内村でも変わらないのは、前3枚で相手のプレーを限定させようという発想が殆どない。
 初期状態で中央に3枚が並んでいて、なんとなく中央を切っている(切っているというほどポジショニングも精査されていない)が、相手がどのような形に変化してボールを持っても、3枚が中央に残ったままの所謂”カラーコーン”のような対応が常である。
 2016シーズン、守備のやり方はシーズン中に3度ほどの変遷があったと思うが、最終的には前3枚は殆ど前残りのカラーコーン、相手が中央を迂回してサイドに出てくると、5バック化していたウイングバックが25m程ポジションを上げて対応する。ボランチ2枚と残りのDF4枚はボールサイドにスライドし、7枚で守るというやり方に落ち着いた。

 そしてこの日の守備のやり方も、序盤の10分ほどは5-2-3でセットして、サイドに出されるとWBが前に出てきて、ボールサイドにスライドした7枚で守るという、去年よく見た形だった。
 ここで大事なのは、新潟が札幌陣内に侵入してくると、どれだけ圧力をかけられるかという点だが、序盤はWBの早坂が勤勉なスプリントで堀米の前に出て進路を塞ぐ。新潟は残念ながら、ここからボールの前進、攻撃の展開の形を殆ど確立できていないようで、堀米にしろボランチの磯村や加藤にしろ、安易な縦パスで札幌のブロック内にボールを送り込んで引っ掛けてロスト、という形が多かった。
3トップの脇から容易に侵入可能 WBが前に出て対応

 上の図に2つ補足すると、1つは序盤、新潟の磯村が最終ラインに落ちて3バックになるような形が2回ほどあった。これは札幌の前が3枚なので、新潟のCB2枚に仮にジェイやヘイスが強く寄せて来ると展開が困難になるためのリスクヘッジ。ただ札幌はそうした仕掛けもないため、10分以降は磯村は中盤でプレーし、新潟はCB2枚でボールを動かしていた。

 もう一つは、7枚ブロックと書いたが、札幌から見て右、ヘイスのサイドを突かれると、大きく空くことになる逆サイドにはチャナティップがプレスバックしてスペースを埋めることが頻繁にあった。これは常に行われていた動きではないので、約束事として徹底されているというほどではなかったが、四方田監督の体制下ではこうした「ある程度は選手の判断に任せる」という対応がいくつかある。
 恐らく攻撃の選手に守備であまり負荷をかけたくない、四方田監督のやり方なのだと思うが、チャナティップはかなり頻繁にプレスバックしてスペースを埋める。この辺は、札幌のスカッドで唯一インターナショナルレベルでプレイしている、チャナティップの危機察知基準の高さによるのだと思う。

1.2 狙われたヘイス ~研究していた新潟、ゴーメ君の逆襲~

1)新潟の展開の中心はゴーメ君


 札幌がボールを持たせてくれることを確認した新潟の最初の手は、CB~左SB間でボールを動かすこと。新潟のCBからの最初のパス、又はGK大谷のゴールキックは、大半が左SBの堀米へのパスだった。新潟は左からの攻撃の形だけ準備していたようで、それは攻撃時のサイドハーフの位置…山崎はタッチライン際に開いてパスコースを作り、ホニは中央に寄ってくるという形を見ても、左サイドで持った時に堀米に多くの選択肢を与えるように設計されていた。

2)ヘイスを狙い、ブロックを動かす


 先に書いたように、札幌の1列目3枚は中央を切るが、サイドに展開されたときは前進を阻むような対応はしてこないので、堀米はその気になれば、札幌の1列目を簡単に突破できる。しかし前半の新潟の目的は、ゴールに迫ることよりも、「ヘイスを動かすこと」だったと思う。試合後のコメントで、堀米が
 後半は相手の運動量が落ちると分かっていたので、焦らずに自分たちの形で攻め続けることができた。
とコメントしているが、要するに前半は様子見、後半勝負というゲームプランを新潟は意識していたと思う(結果的には、狙い通り終盤に2得点、札幌は運動量ガタ落ちで大失速)。

 話を戻すと、堀米にボールが渡った時の札幌の対応は、堀米がすぐに1列目をドリブルで越えてこれば早坂が一気にポジションを上げて対応、ヘイスのスライドが間に合うならヘイスがスライド、というものだったが、堀米はボールを受けるとわざとスローダウンし、ヘイスを食いつかせる。ヘイスがタッチライン付近まで移動してくると、堀米はCB(ソン ジュフン)にボールを戻す。これを何回か続けることで、膝に負担があり運動量の少ないヘイスを走らせ、また札幌のブロックをスライドさせることで消耗させる。
ヘイスを初め札幌の選手を動かして消耗させる

3)走らされることでの負担の大きさ


 札幌は最終ラインに初めから5枚を置いて厚く、また前に3枚を置くので中盤に2枚しか置けない5-2-3の基本布陣、しかも前3枚の守備負担は薄いので、相手が1列目を超えてくると、どうしても中盤~最終ラインの選手がオリジナルポジションから大きく移動しないと相手をケアできない。
 この「相手を限定できていないので、相手に主導権を握られた状態で長い距離を頻繁に移動させられる」ことは、選手にとって非常に大きな負担になる。
 更に、7枚ブロックでの対応を90分間続けることが体力的にもたないことは、2016シーズンの戦いで既に証明済み(試合終盤に運動量が落ちて攻め込まれる展開がすごく多かった)。その2016シーズンの当事者であり、左サイドを1人で支えていた功労者、かつ展開によってはバランスを無視した選手起用で点を取りに行く”キャスティング主義”(ジュリーニョの左WB等)のたびたび犠牲者となっていたのが堀米。「相手の運動量が落ちると分かっていた」という発言には、単なる対戦相手としての発言以上の重みを感じさせる。

1.3 気まぐれなライオンは操縦不可能?

1)漂う異物感


 上記、新潟が狙いを持ってボールを動かしてくる中で、もう一つ気になったのが、相変わらずチームの中で異物感を感じざるを得ないジェイの振る舞いだった。
 写真10:06、1.2で説明したように新潟は堀米へのパスでヘイスを動かす。ヘイスは堀米の位置まで後退し、チャナティップもプレスバックするので札幌は5-4-1のような形になる。堀米がCBソン ジュフンに戻したところだが、札幌はヘイスとチャナティップが後退したので前3枚のラインは瓦解。1列目にはジェイ1人となる。
 札幌は恐らくこうして5-4-1で守ること自体は想定している。では5-4-1になった時、ジェイの仕事はどう想定されているのか。実のところ、筆者にはよくわからない。1トップの1枚でできる守備対応は限られているのも確かで、その意味では都倉でもジェイでも大差はない。
 しかしながら、この時の宮澤と兵藤、更には四方田監督の様子を見ると、ジェイにも「最低限の仕事」を求めていることは確かだと思う。最低限の仕事というのは、相手の状況、味方の状況を見て、危険なスペースや人をチェックすること。この時は、札幌はヘイスとチャナティップが後退させられてMFのラインが下がるとともに、中央が手薄になる。そして新潟は中央でボールを持っている。ここで自由に蹴らせれば、裏抜けや2列目のホニが前を向くことでゴールを脅かされかねない。
 なので札幌は何らかケアしなくてはならず、宮澤や兵藤、そして四方田監督の認識ではそれはジェイの仕事。しかしジェイはこの時センターサークルの真ん中を漂っていて、直前の展開(新潟のCB→SB→CBの展開で中央が空いている)にまるで我関せず?という様子。
中央でこれだけフリーで持たれると危機を迎える

 ジェイのそんなルーズな対応を見て危機を察知した宮澤と兵藤がボールホルダーに寄せていく。どちらかがチャレンジ、どちらかがステイが望ましいが、スクランブル対応なので二人とも出てしまう。
ポジションを捨てて潰しに行く

 中盤を2枚で守る札幌。二人同時に出たことで、言うまでもなくバイタルはがら空き。縦パスを通されて新潟は間受け成立。
バイタルはがら空き

 写真だとわかりにくいが、ジェイはSB堀米に出た段階(ヘイスが動かされた時)からCBに戻される流れにおいて、そもそも直前のプレーが終わった後、次のプレーに移行する準備ができていない。これはヘイスにも抱く印象だが、ジェイよりは遥かに計算できるレベル。
 またジェイは1トップとしてある程度、前残りが許され、ボール回収後のプレーに備える役割を任されていたという可能性もあるが、監督、宮澤、兵藤というチームの重鎮のリアクションを見ると、そういうわけでもないように見える。

2)結局はホニだけだが


 もっとも、こうして札幌の穴を認識して的確に突いてくる新潟だが、崩しの局面での制度や威力はかなり貧弱だった。上の写真でもMFからトップ下の小川やFWの富山に縦パスが出るところまではいいが、ここで収めて崩しに移行することも、スピードを落とさずにコンビネーションや単独突破で仕掛けることも新潟は殆どできず、大半は札幌の3バックに迎撃されて終了。個人的には、必要以上に中央にパスを入れ過ぎだとも感じたが、もっと前半はひたすら札幌を走らせるようなボールの動かし方をしても良かったと思う(簡単に縦に入れてくるので札幌は助かっていた)。
 唯一の例外が右MFのホニ。見ていて明らかに「やべえな」と感じる突破力を備えており、前回対戦でロングカウンター1発でやられたことも記憶に新しい。ホニをどこに置いてどう使うかが、新潟が点を取る最大のポイントで、この試合は右MFに配し、中央に寄った(つまり札幌のボランチ脇)のポジションを取らせていたのは、とにかく前を向きやすい位置に置きたいとの考え方だったと思う。

1.4 酷すぎるラフプレーとアンフェアトレード

1)富山のラフプレー


 前半20分間で札幌はシュート1本(7分頃、ヘイスのスルーパスに抜け出した石川)、新潟は0本。動きの少ない試合展開だったが、20分に試合のキーポイントとなった1つのプレー。カウンターから左サイドをドリブルで運ぶ山崎のクロス。DFとGKの間に送られたボールに富山が足を出して突っ込むとク ソンユンと激突。過去にも同様のプレーでGKを病院送りにしたことがある富山の危険なプレーでク ソンユンは金山との交代を余儀なくされる。直後、富山も河田と交代するのだが、韓国代表にも選ばれている不動のGKと、最下位チームの控えFWに過ぎない選手の交換では札幌に分が悪すぎる。
 そしてこのプレーを機に、新潟の球際に激しい…をやや超過した水準のラフプレーが散見されるようになる。

2)新潟 特攻の背景


 富山のプレーは別にして、新潟が守備時にファウルになったり、ならなかったりだが接触プレーや、札幌からすると札幌の選手に勢いよく突っ込んでくるようなプレーが多くなる理由は戦術的な部分にも要因がある。
 新潟はマッチアップを以下のように考えている。SHが札幌のDF、SBが札幌のWB。ここにボールが渡ると、あまりポジションを考えずにどんどん食いついてくる。久々に横山・菊地・福森の3枚が揃った札幌は、低い位置でボールを持つことも苦にしないが、新潟はプレスの開始位置をあまり気にせず、突っ込めるときにどんどん突っ込んでくる。
新潟のマッチアップの考え方

 味方の動きに連動はできているが、プレスを仕掛ける位置がやや高くなると、縦の圧縮ができなくなるので、選手間の距離が開き、ブロックの密度や強固さを確保できなくなる。その圧力不足をカバーするために、新潟の守備は選手ひとりひとりが長い距離をスプリントする(時に勢い余って札幌の選手に突っ込んでいく)ことで成り立っているので、守備の局面で接触プレーが増えてファウルがかさんだということが指摘できると思う。
縦圧縮ができていない

高い位置から追いすぎると間延びする

 新潟の荒っぽいプレーにイライラしていた札幌サポーターだが、FKのこぼれ球を押し込んだアディショナルタイムの早坂のゴールで溜飲を下げて後半戦へ。

2.後半

2.1 ものが違う


 後半立ち上がりは、前半は札幌を消耗させることに徹していた新潟が、スコアが動いたことでよりダイレクトにゴールに迫る(言い換えれば、簡単に放り込んで走ってくる)ようになった印象だった。
 そんな新潟の心を折りかけたのが56分のヘイスの直接FK。ゴールまで距離があり、速いボールでなければ直接狙うのは難しい状況だったが、注文通りに縦回転をかけた低く急激に落ちるキックで貴重な追加点をもたらした。

2.2 新潟のターン

1)ヘイスの限界


 堀米の言う、札幌の運動量が落ちてきた時間帯は60分過ぎから。
 札幌の選手個人でいうと、初めに疲れが見えたのはヘイス。足が止まり、前線に上がったまま戻ってこなくなることが常態化する。となるとヘイスの脇、新潟の左サイドはフリーパス状態で、そんなヘイスがジェイと並んでいるため新潟は左サイドからボールを運ぶことに全く苦労しなくなる。
 ↓のように堀米が運んでくると、札幌は宮澤と兵藤がボールサイドにスライドして何とか侵入を防ごうとするが、堀米が運んできたことでここの人数関係は3on2。分の悪い勝負となってしまう。
 また、札幌は5バックが自陣にくぎ付けで、この堀米の侵入のようにバイタルエリア付近を侵食されたときに迎撃できないことが多くなる。これは新潟の前線の選手がトップに張り付いていた(ホニや山崎も河田とほぼ同じ高さにいた)ためだと思われ、まだ早坂は動ける状況だったと思う。
サイドのカバーに追われる宮澤と兵藤

2)伊藤の投入


 66分、新潟は小川→伊藤に交代。伊藤は左サイドハーフ、山崎が中央にシフトするが、呂比須監督の「途中から4-1-4-1にした」というコメントはこの交代策を指している。そして左に入った伊藤はそ、れまでの山崎よりも更にインサイド、つまり札幌のボランチ脇を常に狙っているかのようなポジションを取る。
66分~

 山崎が下がり、伊藤が中に絞ると中盤の人数関係は4on2。2枚で守っておりただでさえスカスカの中盤に、4枚の選手を配されると宮澤と兵藤はどこから潰すべきか、判断が非常に難しくなる。
伊藤と山崎が中盤に寄ってくる

 前節神戸戦について、兵藤が「ボランチ周りにいっぱい選手がいた」という旨のコメントを残していたが、この試合もまさに同じ現象が起こっていた。
伊藤が絞り山崎が落ちる

2.3 最後まで尾を引いたキャスティング主義

1)一気に怪しい雲行きに


 77分、札幌は宮澤が接触プレーで痛み一度ピッチを出る。この時、ベンチは稲本の投入を準備しているとの情報が入る。宮澤が戻った直後の80分のコーナーキック。ホニがファーに蹴ったボールを戻りながらの河田のヘッドがそのままゴールに吸い込まれる。シュートではなくとりあえず折り返したようなヘディングだったが、金山も虚を突かれたような形で反応できなかった。
 新潟は恐らく前半、札幌がヘイスをニア、ジェイを中央に立たせているのを見て、この2人を超えるボールをファーに蹴ってきた。河田のマークは宮澤だったが、ピッチを離れていたことも影響してか、ファーサイドでフリーにしてしまった。
ヘイスとジェイのいないファーサイド

2)稲本の投入も形は維持


 81分、稲本と酒井宣福(加藤と交代)が投入される。中盤スカスカ状態の札幌。ようやくジェイを下げて、中盤を厚くするのかと思ったら、稲本と宮澤のWボランチ、兵藤を一列上げた形だった。結果的に、中盤の枚数が足りずスペースを埋められないという状況は変わらない。四方田監督によると、「チャナティップと稲本は5-3-2に慣れていない」とのことだったが、稲本は代表やヨーロッパ(ガラタサライ等)でアンカーを務めた経験がある。チャナティップも札幌加入後、試合途中からこの形を経験している。全く無理ということはないはずで、ピッチで起きていた事象(中盤の枚数が足りないのでスペースを突かれ放題)を考えると、単に人を入れ替えただけの2ボランチよりも、踏み込んだ策が欲しかったと感じた。
 ともかく、フレッシュな選手を入れて前掛かりになる新潟の勢いを止めることはできなかった。
87分~


3)再びファーへのコーナーキック


 87分、札幌の3枚目の交代策は、90分間ホニと対峙し限界に来ていた石川に変えて河合。その河合が入った直後のCK。再びファーを狙ったホニのキックが折り返されたところで競り合っていたのは小泉とチャナティップ。この時、札幌はマークが何か所かずれていて、最終的にアシストの前のパスを出した山崎についていたのは稲本。チャナティップに一番近いポジションにいたのは河合。マーク対象がいない河合が考えていたのはカバーリングで、おそらくチャナティップが競り負けることを予期してカバーできる位置を取ろうとしていた。ただ中央で稲本-山崎のマークが外れたところに河合が出て、潰しきれなかったところを繋がれて押し込まれたという形だった。河合の対応は難しかったが、結果的にどっちつかずの対応となってしまった。
チャナティップのカバーを考えていた河合だが

3.雑感


 GKが前半で負傷し交代枠を1つ消費。残留が絶望的だからか?ラフプレーに終始する新潟相手とあって途中交代など試合中の采配が難しい展開となった。ただスタメンの選出に問題があった。具体的には、戦術的な柔軟性のある(90分動け、前線守備のキーマンであり、ロングカウンターでの走力やハイボールのターゲット、セットプレーの守備などでチームに貢献でき、展開によってはサイドのMFに下げることもできる)都倉を外し、高さと決定力はあるがボールのないところでのプレー関与が極小なジェイを起用したことで、2点を先行したものの後半は疲労困憊になる選手が続出。誰をどう変えようとも、ピッチ上に問題が残る状況が生じてしまった。

4 件のコメント:

  1. いつも愛読させて貰っています。
    素人の素朴な質問で恐縮ですが、以下の点についてご教示頂けませんでしょうか?

    ○後半ガス欠を起こす可能性が極めて高い523を、四方田さんが採用し続けている理由について

    ジェイやヘイスが殆ど守備面での貢献が期待できないにも関わらず(両者共に出ている場面)、ボランチ横のスペースがスカスカになる523を採用しているのでしょうか?素人考えでは、せめて53ブロックを形成したうえでジェイとヘイスを前に残し、ボール回収時にはジェイ目掛けてロングボールを当てる、という方が守備面も改善されますし、前も2人居れば何とかなるような気がするのですが。。。
    523は、j2の時でさえサンドバッグ状態になることがしばしば見られたのに、相手選手のクオリティが格段に高いj1で、前3枚がカラーコーンと化している523で籠城しきれるとはとても思えないです。
    四方田さんだって百も承知だと思うのですが。。。

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    1. コメント&閲覧ありがとうございます。
      難しい質問ですが、まさに「考えるブログ」で考えていきたいテーマですね。

      私見ですが、四方田監督は札幌について「普通のことをやっても勝てない」と思っているのかもしれません。
      四方田監督にとって「普通のこと」とは、開幕時に採用していた5-3-2(3-1-4-2)でゾーンで守る形で、ハーフラインまで引いて低い位置で奪って速攻、というもので、あの形は開幕時が一番完成度が高かったですね。その後、色々と微調整をする過程で完成度がどんどん落ちていって、段々と個を活かすような形になっていったのですが、勝つためには組織を壊してでも、何らか個を発揮できるような入れ物にすることが不可欠、と思っているのかもしれません。小野やジェイの起用は、そうした天性の才を何らか組み込みたいという考えだとも思います。

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  2. 全てのゴールがセットプレイ(絡み)であったとはいえ、いろいろなモノが蓄積しての結果だったかなと捉えています。
    ジェイは1つアシストをしていますが、守備の貢献度があまりに低いことを考えると出た試合では2試合に1試合はゴールを決めてくれないと割に合わないですね。足下に収まるなど技術の高さはありますが、それ以上のスペシャルなものがないと…。
    中盤で押し込まれカードを切る前に宮澤が削られていったんピッチを出る、ホニの応対で石川が消耗させられ挙げ句足を攣るなど後ろに不安を抱えていたので都倉を出して前から圧力をかけるという考えは四方田監督としては抱きにくかったのかなあ、と。中盤を厚くするなら稲本を入れるのはまあアリかなとは思うんですが、2ボラに慣れていたからという四方田監督のコメントにはちょっとガックリでしたね。

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    1. >フラッ太さん
      全体の試合運び、幾つかのターニングポイントでの札幌の振る舞い、いずれも中途半端になってしまった感はありますね。ここ数試合悪くなかった河合を外したのも含めて、スカッドを見るとボールを持って押し込む展開を想定していたのかもしれません。ただ新潟のほうが試合運びが一枚上手でしたね。

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