スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスタメンは3-4-1-2、GKク・ソンユン、DF進藤、増川、櫛引、MF上原、深井、宮澤、福森、菅、FW都倉、ジュリーニョ。
ファジアーノ岡山のスタメンは3-4-2-1、GK中林、DF篠原、岩政、竹田、MF田中、島田、矢島、片山、FW藤本、伊藤、赤嶺。
札幌は報道通り菅がトップ下。加えて櫛引がスタメンで福森がウイングバックだが、櫛引起用の理由は、後述の単純な守備能力での要因に加え、進藤と福森の両ストッパーでは攻撃的すぎる(2人とも攻撃が好きで、スペースを発見するとどんどん前に行く)ので、純粋なDFである櫛引を入れてバランスを取る意図もあると考える。
特に進藤は第1節のヴェルディ戦のようなカウンターからの失点に繋がるプレーにも関与しているなど、流れの中での攻撃参加についてはもう少しバランスをとる必要がある。櫛引の起用で攻撃力はやや落ちるが、菅の起用や都倉の復帰で充分にカバーできる。
WBについては、左WBが福森か堀米かによって、ドリブラータイプの選手への応対がどの程度変わるかは、昨シーズンから何度か注目しているが、福森の方がやや堅いように思える。また個人的には、上原はスタートで使う場合、右WBで強さ、速さが活きる。左サイド起用ではよほど自由に振る舞える相手でない限り窮屈にプレーしている印象を受ける。
岡山は押谷が不在で代役は藤本。また右サイドは加地ではなく田中。
1.前半の展開
◆岡山の基本形
岡山はトップの赤嶺がDFラインと駆け引きをして攻撃の縦幅を作り、中盤のオープンスペースをシャドーやボランチが利用する。特に右サイドはシャドーの伊藤(左にもよく出てくる)とボランチの矢島がおり、更にこの試合では仕掛けられる田中もスタメンで起用されている。この試合を見る限りでは、まず最終ライン右サイド(篠原~岩政)でボールを保持し、右から組み立てられなかったらサイドチェンジして左サイドを狙う、という動かし方が多かった。右サイドからの組み立てが多いのは、矢島のポジショニングの他、岩政が右利きであることも影響していると思われる。
島田が下がって4バック化して組み立てる 矢島はスタート位置が右で、「中央やや右寄り」のポジショニングが多く、左にはあまり流れてこない まず矢島のいる右で組み立てようとして、無理なら左サイドに振る。 |
◆札幌の守り方
四方田監督はトップ下に神田、中原といった選択肢もあったが菅を選択。札幌はこれまで、守備時にトップ下を出した5-2-3でセットしていたが、岡山が右サイドから組み立てる時は3トップでのプレッシングを行わずにリトリートし、矢島へのパスコースを遮断する形で守備を行う。
基本的に矢島は札幌の1列目~2列目の間でポジショニングするので、コースが切れていない時はトップ下の菅を中心に近くの選手がケアする。菅がトップ下なので中央(矢島に近い位置)にポジショニングする状況が多いが、見たところ菅のマンマークではなく、流れの中で近くにいる選手(3トップ、都倉・ジュリーニョ・菅の誰か)が見るやり方だった。
逆に、矢島のいない左サイドでは、3トップでの積極的なプレッシングを行い、高い位置でボールを奪う動きを見せる。この違いは恐らく、右サイドでは矢島のポジショニングによりプレッシングを外され、また矢島に前を向かれた時のリスクを考慮したためだと考えられる。
岡山の右からの展開は、中の矢島を使った展開、サイドチェンジを警戒 シャドーが落ちて受けようとするとCB櫛引が飛び出して対応する |
右ストッパー篠原が持つとボランチ矢島、シャドー伊藤、WB田中が受ける位置に 札幌は中のコース遮断を優先 矢島を離すな、と宮澤・ジュリーニョが指示を送る 菅は流れの中で右サイドにいる |
岡山の最終ラインが左に振ると、3トップによるプレッシングで高い位置から奪いに行く 矢島は左には流れてこない、CBからシャドーやWBにつけてくる |
島田が中央で持つと矢島の間受けを宮澤がケア 島田が左ストッパー竹田に展開するとプレッシング |
◆素直すぎる?岡山
上で説明したように、札幌が中を切ることにより、岡山は右サイドの展開で、矢島経由でのビルドアップ、サイドチェンジを阻害され、サイドを迂回したビルドアップが多くなる。このとき、岡山は比較的素直にCBからシャドーに当てる形を多用し、CB→WBという外→外のパスはあまり使ってこないことに加え、J1では広島、浦和などが多用するシャドーのフリックプレー等も少ないため、札幌としては櫛引や進藤が前に出て伊藤や藤本を着実に潰すことで起点を作らせなければ怖くない。この試合で櫛引が左ストッパーに入ったのは、こうした楔のボールを潰す仕事を考慮してだと思われる。また岡山は3バックの両サイドが押し上げられていない状態で楔のパスを試みることが多く、CB⇒WB、CB⇒シャドーの距離が長くなりがちであることも、楔のパスが潰しやすい要要因である。
札幌が中を切るとサイドが空く 岡山はWBを使わずシャドーに素直に当ててくる。 |
◆U字パスは悪くない
5-2-3で守る札幌は、相手がサイドから組み立てる際に3ラインがボールサイドに寄ると、下の図のように「2」の脇が大きく空く。逆にボールサイドは密度が高く、攻撃側(岡山)は数的不利になる。札幌はこの「2」を使われないために、ボールホルダーに寄せてサイドチェンジされないことが重要で、下の場面では3トップのうち篠原に近い菅がこの役割を担っている。篠原が高い位置まで持ち上がると札幌はボールサイドに寄せて守る |
ただ、篠原から直接サイドチェンジが蹴れないのであれば、ボールを最終ラインに戻して、CB経由でサイドを変えることもできる(所謂グアルディオラの言うところの「U字パス」)。これなら時間はかかるが札幌の5-2-3ブロックをスライドさせることができる。守る側の札幌としては、特に「2」が何度も反対サイドにスライドさせられることは好ましくない。
下の写真22:38のように、ボールホルダーにプレッシャーがかかっていて、適切な場所に人を配されている状況では、U字パスで攻撃をやり直した方が得策である。厳密には何度か岡山のU字パスによる2次攻撃は見られたが、もう少し徹底しても良かったように思える。
岡山は右サイドで手詰まり気味だが2次攻撃に移行せず 篠原は囲まれたままトップの赤嶺へ出す |
所謂「U字パス」での展開例 仮に篠原がいったん戻して竹田のサイドに変えられていれば、 札幌の中盤にかなりのスライドを強いることができる |
◆リズムを生む矢島
岡山は前半30分過ぎ頃から矢島をブロックの外で活用する。最終ライン3枚で行っていたビルドアップに落ちてきた矢島が加わると、矢島はドリブルでボールを運ぶこともできるため、特に中央での札幌のファーストディフェンスがぼやけ始める。また左右のCB、特に右CBの篠原を押し出し、右サイドでの展開を容易にする。岡山の最終ラインの3枚、ボランチの2枚が前を向いて時間を得る機会が増え、そこから赤嶺、シャドーの2枚へのシンプルなパスで札幌の最終ラインを揺さぶる。
矢島が最終ラインまで落ちてくる ジュリーニョの軽いチェックをターンでかわして持ち上がる |
1列目の守備が機能しないと矢島に時間を与えてしまう ここも伊藤がボランチ脇を使いに落ちてくる 矢島は右サイドに展開と見せかけて裏を狙うシャドーにパス |
35:30頃には岡山にビッグチャンスが到来する。左サイドから侵入し、札幌の意識が左サイド(札幌からみて右サイド)に集中したところで矢島がバイタルに侵入、深井がチェックに出るが身体の向きで横パスのフェイクを入れてから、大外から侵入する田中に決定的なパスを通す。
35:30、横パスと見せて大外から入ってくる田中を狙う 矢島はこの身体でフェイクを入れてのパスを多用する |
2.後半の展開
◆後半も岡山の攻勢
後半も岡山の攻勢が続く。ボールを奪うと札幌の陣形が整わないうちにシンプルなロングボールをサイドのスペースに走る片山、伊藤らに蹴り込み、また蹴った後は素早く全体を押し上げることでセカンドボールの回収、および札幌が拾った後のネガティブトランジションで優位に立つ。岡山は58分に島田⇒豊川、66分に伊藤⇒岡本と、前線にフレッシュな選手を投入する。ただ、岡山の組み立ては札幌のブロックをサイドに寄せるプレーが少ない。単純にボランチ脇を狙うプレーでは札幌のボランチ2枚と、飛び出してくるセンターバックの進藤・櫛引がうまくケアしており、やや単調な印象も受けた。
岩政から伊藤へのパスは進藤が前に出て潰す |
◆奪ったらWBの裏へ
57分、札幌は都倉⇒内村に交代。札幌は守備時、右から内村、菅、ジュリーニョと並ぶ。この時間帯ビハインドを負っている岡山はウイングバックを高い位置に上げて攻勢に出てくるが、札幌としては奪った後サイドのスペースに走り込む内村や菅を使うことでチャンスができる。
岩政からボランチ脇へのパスが短く、宮澤が跳ね返す。進藤も飛び出してケアしている |
内村がキープ、菅がサイドのスペースに走り込む…この後クロスバー直撃のシュートを放つ |
◆出場時間は期待の証
終盤になると、札幌は菅の運動量低下が目立ち、トランジションについていけなくなる。特に守備時のプレスバックが殆ど見られなくなり、岡山が中盤のオープンスペースにボールをもって侵入すると、CBが飛び出しての対応を迫られる。菅が戻れず中盤が足りなくなる |
菅が戻れず中盤が足りない 櫛引が飛び出して対応 |
この後、終盤にようやく堀米、稲本を投入し中盤の守備を固めた札幌が凌ぎ切り、1-0で勝利。
北海道コンサドーレ札幌 1-0 ファジアーノ岡山
・13分:福森 晃斗
【雑感】
インフルエンザ明けの都倉が完調に程遠い出来で、札幌は殆ど攻撃の形を作れなかったが、またしても早い時間帯に福森の飛び道具が炸裂したことが大きかった。中原や神田ではなく菅を先発で起用し、かつ"3人目のアタッカー"ではなくMFとしてのタスクを課していたことはやや意外だった。
中盤で深井の強さが際立ち、最終ラインでは櫛引、進藤の積極的な飛び出しで岡山の前線の選手に仕事をさせなかった。また増川は少なくともボール保持時は河合よりも質の高いプレーを見せている。センターラインの安定と、都倉やセットプレーによる決定力が現在の順位(第7節時点で3位)に直結している。
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