0.21年目の出発点
0.1 二刀流で制したJ2
北海道コンサドーレ札幌が2016年のJ2リーグにおいて、42試合、勝ち点85という成績で優勝とJ1昇格を成し遂げることができた要因はいくつかあるが、端的に札幌の勝因を挙げると、①札幌よりも戦力が上~同程度のチームに対して「弱者のサッカー」で勝ち点を積むことができた、②札幌よりも戦力が下のチームに対して、安定して勝ち点を積む武器を持っていた、と筆者は考える。22チームが参加するJ2は多様性に富んだ長期戦であり、前評判の高いチームであっても、戦術が読まれて対策を講じられた時に、"プランB"を持たないチームは勝ち点が伸び悩む傾向にある。四方田監督率いる札幌は、強者のサッカーと弱者のサッカーの二刀流を使い分けることで効率よく勝ち点を積んでいった。
0.2 2016年のチームの根幹とネック
1)拠りどころとなった強烈な個
一方で、二通りの戦い方を使い分けながら、共通してベースとなる戦い方として、ボールを相手に支配されながらも、FW3人の個人能力を活かしたカウンターを攻撃の軸としていたことが挙げられる。野々村芳和社長は以前より、強化費や予算面を念頭に、札幌の戦力はJ2リーグでも6番目程度だとの旨の発言を繰り返していたが、都倉賢、内村圭宏、ジュリーニョ、ヘイスという年間15ゴールが期待できるFW4人を保有していたチームは他になく、この部分のスカッドにおいては間違いなくリーグで上位だった(加えて、J2は毎年論外な予算の使い方をするチームが2つ程度あるので、強化費が6番というのはかなりいい位置にいる)。
2016シーズンに四方田監督が徹底していたのは、このJ2随一のFW陣を最大限に活かすことで、そのためにはまずとにかくピッチに3人を同時に立たせること。札幌のシステムは3-4-1-2と表されたが、実態は前3枚がほぼFWとして振る舞う3-4-3然としたものだった。第9節でジュリーニョがトップ下でスタメン起用されてからこの傾向は顕著となり、守備はDFとMFの7枚+GKク ソンユンで耐えて、前3枚はあまり守備では細かい仕事を求めない、というバランスは、先に述べた"二刀流"、強者のサッカーでも弱者のサッカーでも共通していた。
このFW3人を同時にピッチに立たせる戦略ことが功を奏し、実質就任1年目の四方田監督の下で、札幌は最終的にリーグ2位の65得点を挙げる攻撃力を手に入れた。またシーズンのクライマックスとなった41節のジェフ千葉戦、都倉の超人的な得点が決まった24節の松本戦など、窮地で都倉や内村のスーパーな個人技が炸裂し、際どい試合を拾ったことも幾度とあった(加えて、福森のセットプレーも言及しないわけにはいかない)。
2)見つけられなかったソリューション
一方、持ち駒の能力を活かすためにFW3人をピッチに立たせるシステムは、守備のバランスという点では最後まで最適解が見つからないままだった。2016年シーズンによく見られた状況を以下に示すが、特に試合後半において札幌は前3枚と後ろ7枚が分断し、MFの周囲において相手にスペースを与えやすくなっていた。(なんでこうなるのかは、過去の記事を漁ってみて下さい)。
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| (2016年J2第26節) |
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| (2016年J2第41節) |
日本代表のハリルホジッチ監督がコンセプトを示すように、欧州のクラブシーンでは攻撃と守備、加えてその両局面に介在するトランジションを含めた試合の局面全体のシームレス化が進んでいて、またそうした中で、トップクラブの選手には攻守のあらゆる局面でゲームに関与することが求められている。言い換えれば、守備専門のセンターハーフや、点を取るだけのFWは淘汰されつつある。
対する2016年の札幌の考え方は非常に"攻守分業"的なものだった。後ろはソンユンが守ってくれる、増川が跳ね返す。前にボールを出せばヘイスや都倉が何とかしてくれる。敵陣でファウルを得られれば大半が得点機になる。なので中盤でボールを持たれても、バイタルエリアに簡単に侵入されても最終的に勝ち筋を残せる。
このことはスタッツにも示されており、試合展開にかかわらず札幌は特に試合後半になると相手にボールを持たれ、攻め込まれることが多かった。
北海道コンサドーレ札幌の2016シーズン(3) ~先行逃げ切りスタイルの裏~
中盤が瓦解し、相手がボールを持ち、攻め込まれる局面が多くなれば、最後はゴール前の攻防で決まる。普通のチームなら決壊してもおかしくない状況でも、札幌には"専門家"である増川やク ソンユンがいた。この点においては、攻撃だけでなく守備も"個"によるところが大きいチームだった。