1.ゲームの戦略的論点とポイント
スターティングメンバー:
- お互いに、幾分か呑気な(?)監督やフロントスタッフは何を考えているのかわからないところがあるとして、サポーター心理ではここで負けたらこのシーズンやばいでしょ、と思っている状況であろう19位と20位の対決。
- 京都のリーグ戦ここまでの2勝はいずれもアウェイで川崎と神戸にそれぞれ1-0。ここ2戦は名古屋とセレッソに1-1で引き分けが続いていますが、リーグ戦で最後に勝ったのは4/27の神戸戦という状況。
- 前節以降の中断期間は、ルヴァンカップはすでに敗退しているため試合なし。この週の水曜日6/12に大宮との天皇杯はCBの鈴木義宜以外はターンオーバーで2-0と勝利しています。
- メンバーは鈴木義宜の負傷とアピアタウィアの不安定なパフォーマンスもあってCBがウィークポイントで、宮本のCB起用がここ最近は増えています。麻田は天皇杯での負傷によりメンバー外。
- 中断期間にルヴァンカップで富山とのH&A、札幌での天皇杯(vs栃木シティ)を消化して京都に乗り込むコンサ。カップ戦で菅、天皇杯でゴニ、そして代表招集中にスパチョークが負傷するなど全然中断期間感がない2週間となりました。他にも起用できない選手を整理すると、宮澤、青木、浅野、大森(?)、長期離脱中の深井、高木。特に浅野の回復具合は戦況を大きく左右しそうだと思っていましたが間に合いませんでした。
- これを踏まえて右DFには髙尾かと思いましたが西野。田中宏武は天皇杯ではJFLの栃木相手に得点に絡む活躍でしたが、その際の右ではなく左で起用されています。
2.試合展開
蹴って走ってまた蹴る:
- 序盤は特に、お互いに形を整えてからプレーを開始するというよりは、とにかく前に蹴って、選手が頑張って走ってマイボールにして、マイボールになったらまたスペースに蹴って…という展開の応酬(正直いうと19位と20位にふさわしいクオリティ)。
- なのでセットされた、整った展開というよりは、お互いに蹴り合って走り合うカオスな局面をうまく図で説明できるといいのですが、静止画ではどうしてもそれは難しいです。ただなんとか構図というか構造が少しは伝わると期待して言及します。
- コンサが放り込む時は、基本的には全て武蔵がターゲット。この際、武蔵は京都のCB宮本(本来CBではなくサイズがない)を狙っていて、中央よりも左寄りでフィードを待ちます。
- 対する京都のマーク関係は↓に示した矢印のようになっていて、原がGK菅野を見ることでほぼ仕事終わり(ウタカの特別待遇に近い)なら、1v1をあてはめていくと京都はフィールドプレイヤーが1人足りなくなります。ただそういうアンバランスな状況をあまり気にせず、基本的には前から1人ずつはめていくことを念頭に置いていたと思います。
それぞれのマッチアップでの攻防:
- マッチアップにおけるポイントをいくつか挙げると、京都はコンサのSBのところをインサイドハーフが担当するのか、SBが担当するのかはケースバイケースという感じで、ここをSBが対応するとかなり高い位置まで出ていくことになる。特に京都のSBは、ボールを持った時に高い位置をとってサイドで攻撃参加することが求められていることもあって、お互いにボールが行ったり来たりする展開だと、最終ラインに残っていない、帰陣が間に合わない局面も多発します。
- この状況(SBの福田が高い位置をとりがち)で、武蔵と宮本のマッチアップがコンサの左、京都の右サイドで発生すると、鈴木義宜はそちらのカバーに追われることになる。なので京都のDFは全体的に右寄りで、コンサの右サイドの近藤は常にスペースがある状態でした。
- 近藤にボールが渡る(近藤周辺にスペースがあるのでサイドチェンジはかなりイージーに決まる)と、京都は左SBの佐藤響が対応しますが、近藤が縦にぶっちぎれるスペースがある状態だと佐藤1人では対応が難しい。特に中央方向がスカスカなので、佐藤としては中央に行かせたくないのでしょうけど、そうすると近藤は得意の縦突破がしやすくなります。
- 一応、平戸や金子が戻れる時はDFラインまで頑張って戻ってスペースを埋めることにはなっていましたが、速い展開だとこの戻りは間に合いません。序盤2分にはGK菅野のフィードに、近藤の裏抜けからシュートまで至りましたが、佐藤と近藤のマッチアップwith広大なスペースでは何かが起こりそうな予感は十分でした。
- 武蔵と宮本のマッチアップは、宮本は明白なサイズとパワーの差がありながらも善戦していたと思います(ただ前半30分くらいで既に呼吸は上がっていました)。
- 普通に突っ込んでも勝てる相手ではないので、宮本は武蔵にボールが入ってから、縦を切って横(斜め?)方向にカットインさせて、鈴木義宜と2人、場合によっては金子など3人目の選手も活用して武蔵をストップする対応に徹していました。
- コンサおよび武蔵にとって難しい状況だったのは、武蔵が左、小林が右でスタートすることが多く、またトップ下ないし左シャドーのはずの駒井が殆ど中央〜下り目にいて左シャドーの位置に出てくることはほぼなかったため、武蔵が左に流れると周囲に使える選手がおらず、速くゴールに向かいたい場合には単騎突破しか選択肢がなかったという点でしょうか。
- 一応、左WBの田中宏武がいるのですが、宏武は福田とマッチアップしていて、福田が高い位置を頻繁に取る(かつ、ボールが互いに落ち着かない)場合は、宏武もそれに対応したポジショニングが求められるので、序盤は宏武はどこまで高い位置を取れるか慎重になっていたと思います。
- そしてサポートがない武蔵が単騎突破を図ると、先に書いたように宮本がうまく対処していて、ボックス内には侵入させても最後のところは死守していた京都でした。
- 前半が終わりに近づいたくらいの時間から、コンサの左サイドは武蔵の速攻だけでなく、田中宏武の攻撃参加を待ってサイドからの仕掛けを狙うことが増えていきます。この日の宏武は福田相手に十分持ち味を出せていて、特にカットインから右足クロスで2~3回シュートチャンスを創出していました。うち1回は後半早々の近藤のボレーシュートでしたが、ソンユンの至近距離でのセーブに防がれてしまいました。
- ただ京都は、宏武のカットインからの右足インスイングのクロス対応がかなり怪しく、枚数も足りないしマーキングも不十分なので、特に大外の佐藤響の周囲は、彼の前も後ろも怪しく、コンサはそこを狙うシャドーの選手がいてもよかったかなと思います。
目には目を:
- 京都が放り込んでコンサが跳ね返す時の構図を示すと、毎回↓のようになるわけではないのですが、特徴としては豊川と原の相互補完性というか、ポジションと役割を互いにスイッチしてプレーできることは京都の強みだと思います。
- 基本は原がセンターFW、豊川が右でスタートするとして、フィードが入る際に豊川は頻繁に中央に移動してターゲット、最初にボールを受ける役割になる。この際、原はサイドに流れる(右だけでなく左もあり)のですが、マンマークのコンサ相手だと、これは岡村を中央から移動させることになりますし、岡村がついてこない場合はコンサDFにマークの混乱を引き起こします。
- 京都は最初のフィードが成功すると、中央に絞った豊川や松田、押し上げていたインサイドハーフがボールを回収して、すぐにコンサのDFのスペースを突こうとしますが、この際も速攻は豊川のスペースへのパスから始まることが多く、最後の局面まで到達する際はフィニッシャーともなるので、1人で3役ほどをこなす彼が京都の前線における最大のキーマンだと言えるでしょう。
- 京都は(少なくともコンサ相手には)綺麗に崩すというかは、ポジションチェンジを利用して相手のマーク関係を混乱させる、もしくは曖昧にさせた上で、ロングフィードが成功すると運動量やガッツを活かして相手が整わないうちにシュートまで持ち込む、慌ただしい展開に持ち込むことで強みを発揮しようとしていたと思います。
とりあえず、やりきる:
- そしてお互いにややペースダウンした18分に京都が先制に成功します。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) June 15, 2024
美しい崩し✨
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平戸のワンタッチパスから綺麗に崩し
最後は松田天馬が2試合連続弾⚽⚽
ホームの京都が先制点を奪う🙌
🏆明治安田J1第18節
🆚京都×札幌
📺 #DAZN ライブ配信#京都札幌 pic.twitter.com/ldasZGIudO
- 動画の前の局面は、左サイドで金子がサイドチェンジ。そのまま金子が右サイドまで走り込んで受けようとしますがこれは駒井がしっかりついていきます。
- そこから京都が仕切り直して、右サイドで福田が田中宏武の背後に抜け出してクロス…というのが動画の場面。先述の金子のサイドチェンジがSB福田に渡って、そこに宏武がついていくのが伏線というか、福田が宏武に対して2回アクションを強いる状況になっていたので、最後宏武が抜け出した福田についていくのはシンプルにこれだけ走らされるとキツイのは確かでしょう。
- だから宏武と駒井のどちらが悪いというよりは、結局コンサは全部マンマークで守備に関する諸々の局面を処理しようとしているので、マンマークだけでは対処が難しい局面である以上誰が悪いという犯人探しは無意味なんじゃないかと思います。中央で原を見ていた岡村も同様です。この点では京都という福田が、走力という強みを活かすプレーでサイドをこじ開けたのは、互いにある程度想定していた局面のように思えますが、やることが互いに想定できる中でしっかりやり切った京都へのギフトだったと言えるでしょう。
- それでもコンサのミスというか課題に言及するなら、先日のヴェルディ相手に大量失点したゲームもそうでしたが、大外の松田のところを近藤がSB化して大外を任せるのか、DF(西野)が松田を離さずに見ておくべきなのかはおそらく決めていないので、近藤の対応ははっきりさせた方が良いとは思います。ここ数試合の感じだと、近藤は全般にSBとしてのタスク処理は不十分に感じます。
- そして直後の20分にはコンサのミスを突いて豊川。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) June 15, 2024
サンガのムードメーカー💪
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松田天馬のボール奪取から
豊川雄太が冷静にゴール右隅へ!
京都のムードメーカーが追加点をもたらす👏👏
🏆明治安田J1第18節
🆚京都×札幌
📺 #DAZN ライブ配信#京都札幌 pic.twitter.com/uE9TwmUwRI
- 技術的には馬場のコントロールミスなのですけど、動画の直前に見切れている岡村→荒野のパスのところで荒野なら前を向いて突破できたんじゃないかと思います(おそらく馬場もそれを見てポジションを上げている)。
- なので、馬場個人のミスでもあるけど、シンプルにチームとしての、こうしたbuild-upの完成度の低さ(そもそも練習しているのかどうか…)が問題だと思いますし、そもそもコンサの場合長いフィードとこうした繋ぐbuild-upの使い分けをどう考えているのかも気になるところです。特にこの試合は、武蔵と宮本のマッチアップがコンサ優位だったため。
半歩ぐらいは前進としておく:
- その後もお互いに長いボール主体でプレーしていて、正直あまり書くことが思い浮かばないゲームではありました…
- 2点を追いかけるコンサは、相変わらず最後のボックス内に侵入するところで課題を抱えていました。
- この日は左サイドの田中宏武の頑張りもあって、ボックス内に待つ選手にクロスボールが供給されるところまで到達していたのは、これまでの試合と比べてもマシだったとは思います。
- この際気になったのは、コンサのWB(左右両方)がボールを持った時に、京都のSBとCBの間のスペースを狙えそうな選手が誰もいませんでした。
- 左サイドだったら普通は左シャドーの選手になるので、前半は駒井なのですが、駒井は終始トップ下っぽい位置取りでこの付近には全く顔を出さず、左サイドは武蔵にせよ宏武にせよ個人での仕事を強いられます。中村桐耶がここを狙っても面白かったかもしれません(たまにやりますがこの日は別のことを考えていたのか?そうしたアクションがありませんでした)。
- 駒井は右利きということで、右サイドの方がそうしたプレーがしやすいかもしれませんが、後半になって長谷川の投入(右シャドーに入り、小林がトップ下/左シャドー)で、シャドーが順足になってもこのスペースを使う選手はおらず、京都相手に単独突破を繰り返して勝負していました。
- 京都はDF4人でペナルティエリア幅を守るのは難しそうで、早い段階で5バックにするのではないかと予想していましたが、結局はアピアタウィア投入は86分とかなり遅い時間。ベンチが我慢というか様子見をする時間帯は長く、チャンスはあったと思いますが活かすことはできませんでした。
雑感
- お互いに戦術的に煮詰まっていて打ち手に乏しい両チームだったかと思いますが、京都は”蹴って走って拾う”という現監督体制下での原点っぽいところは徹底していたと思います。コンサは結局個人で守って(マンマーク)個人で仕掛けるしかないのでしょうけど、現状は相変わらず1試合2失点ペースが続いており、まずそこを徹底するのかやり方を変えるのか考えるひつようがあるでしょう(あ、そういえば、やり方は変えないとか高らかに宣言してましたね。忘れてた…)。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
昨日スタジアム観戦組です。2失点目はご指摘の通り岡村-荒野ラインで突破出来るシチュエーションだったように見ましたし、失点後に荒野が岡村に「なぜパス出さない」というハンドジャスチャーをしていたように見えました。
返信削除スタジアムで見ていると最近の岡村はボールを持った際に以前よりも決め打ちのパスを出してる様子が気になっており、首を振って周りを見る余裕がないのが原因な気がしています。もう少し長短織り交ぜたパスを出せる技術があるという認識なのですが。自信を失っていて余裕がないのか、はたまた選手間の信頼感の問題なのか。
私が書いたのは岡村が荒野に出さないというより、その前の岡村が荒野に出したけどターンして相手のFWの間を抜け出さずにバックパスしたのは普段の荒野なら抜け出せるな、という意味です。
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