スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-5-2、GKク ソンユン、DFキム ミンテ、横山知伸、菊地直哉、MFマセード、兵藤慎剛、荒野拓馬、宮澤裕樹、菅大輝、FW都倉賢、ヘイス。サブメンバーはGK金山隼樹、DF進藤亮佑、MF河合竜二、早坂良太、小野伸二、FW内村圭宏、金園英学。水曜日に厚別で福島県代表・いわきFCと天皇杯を戦い、延長の末2-5で敗れた。この試合にスタメン出場し、2ゴールを挙げたヘイスがリーグ戦初先発。左サイドは前節・鹿島戦の早坂から菅(天皇杯ではボランチで先発出場)に戻してきた。最終ラインは累積警告4枚の福森が出場停止、菊地を左に持ってきた。器用そうなイメージのある選手だが、昨シーズンから左ではあまり機能していないように思える。
柏レイソルのスターティングメンバーは4-2-1-3、GK中村航輔、DF小池龍太、中谷進之介、中山雄太、輪湖直樹、MF大谷秀和、手塚康平、中川寛斗、FW伊東純也、武富孝介、クリスティアーノ。サブメンバーはGK桐畑和繁、DF鎌田次郎、ユン ソギョン、MF細貝萌、小林祐介、FWディエゴ オリヴェイラ、大津祐樹。札幌とは対照的に、9試合負けなしと絶好調で首位を走る。
0.王者によるハーフスペース攻略
札幌のこの試合の守備における戦術は、今シーズンこれまでの試合とは異なるアプローチが採られていた。この理由は前節の鹿島戦での0-3の敗戦を受けてだったと思われる。鹿島戦の記事更新をサボっているので(DAZNの見逃し配信が見れるうちに更新予定)、この試合の内容に触れる前に簡単に整理する。
4-2-2-2の鹿島と5-3-2で守備をする札幌の基本的なマッチアップは以下の通り。鹿島の攻撃の起点となる両サイドバックにはインサイドハーフが当たることになっているが、
基本的なマッチアップ(鹿島戦) |
札幌の3枚の中盤はピッチの横幅を守り切ることが不可能なため、例えば札幌から見て右サイド、山本に宮澤が出ていくと逆サイドで西がフリー。この西に対しては兵藤はスライドが追いつかず、早坂が一列上がって対応することとなる。
山本からCB経由で西に振られると兵藤のスライドが追いつかない |
早坂がSB西に対応すると、札幌は残りのDF4枚がボールサイドに”形式上は”スライドする。形式上と書いたのは、札幌の4枚のDFは基本的にボールサイドに寄せて圧縮というよりマンマーク的に動く…つまり近い選手を捕まえに行くため。
鹿島の先制点の場面では、土居がサイドに流れて福森を動かす。ゾーンで守るチームならば、河合が福森の空けたスペースにスライドするが、河合は目の前の選手(レアンドロ)を捕まえる。このような方針で守っているので、福森が動かされたスペースはがら空きで、結果的には土居⇒西とリターンされた後、西から中村への斜めのパスと中村のランにより、ハーフスペースを容易に攻略されてしまった。
淀みなくサイドを変えられると、札幌の3枚の中盤はスライドで対応することが不可能。柏の大外に張り、サイドチェンジを受ける左SBの輪湖に対応する選手は、主にマセードとなる。
最終ラインは人を見ておりスライドしないのでがら空き |
1.前半
1.1 目の付け所は同じ
1)同じ視点と異なるアプローチ
ハーフスペースが空きやすいというのはシーズン序盤から見られていた傾向であって、鹿島で完全に暴かれた格好となったが、柏もやはりこの点は最初の狙いどころとしていたと思う。
柏と鹿島の共通点は、いずれもストロングポイントが右サイドであること。相違点は、個で仕掛けられるユニット(小池&伊東)を持っている柏は初めに右サイドからアクションを開始し、右で揺さぶってから大きく左に展開という形が多かったことである。
2)第一波
柏のボール保持に対し、札幌はおとなしく全選手を自陣に撤退させる。柏のCBがボールを持つと、都倉とヘイスはファーストディフェンスとしてボランチへの縦のコースを切る。
柏のCBからSBに展開される(主に中谷⇒小池)と、小池に対して宮澤が寄せていくが、この寄せの強度はこれまでの試合ほどではなく、札幌としてはSBを起点にさせないというよりも最終的に中央を守れればよい、というような考えだったのだと思う。
小池が持った時に柏は前方に2つの選択肢を与える。一つは大外で張る伊東、もう一つは、ハーフスペースに走る中川。伊東が大外で菅を引っ張り、その内側のレーンにスペースを作ると、中川は幾度となくペナルティエリア角付近へのスプリントを繰り返すことで札幌のDFを動かす。
ハーフスペースへのランニング |
柏はこの”第一波”で札幌の守備を動かすと、そこから一発で仕掛けずに反対サイドへ展開する。これまでの試合、札幌は相手のアンカー(ボランチ)をフリーにさせることが多かったが、この試合はこれまでよりは柏のボランチをケアできていたので、反対サイドへの展開は主に柏のCBによって行われる。ただ、中谷と中山、いずれもボールを動かすことに長けている選手で、休む間もなく手薄な逆サイドを連続して札幌は突かれることになる。
CB経由で逆サイドへ展開 |
3)第二波
マセードが輪湖に対応したときの一例が下の7:21の写真。マセードの背後、青い四角で示したハーフスペースがガッツリ空いている。この局面が非常に典型的だが、札幌はゴール前で人を捕まえる守備で対応するので、マセードの隣のポジションを守っているキム ミンテはスライドしない。この空いたスペースにミンテの守備対象、武富が走るとミンテが付いていくとう具合に常に後手の対応を迫られる。
人を守っているのでスペースを守れていない |
1.2 走って死んで
1)小池の攻撃参加
開始15分ほどで札幌の出方(引いて守って、都倉へのロングボールやゴールキックで前進する)を見極めた柏は徐々に攻勢を強める。右サイドで張っていた伊東が中に入るようになり中央の厚みを確保すると、小池がポジションを上げて攻撃の横幅を担うようになる。
このSBの攻撃参加に対する札幌・四方田監督の対応がこの試合最大のキーポイントだった。下の25:53はCB中谷からSB小池にボールが渡る場面。小池の攻撃参加を察知すると、札幌はインサイドハーフの宮澤が小池に対してマンマーク気味についていく。アウトサイドの菅は何をしているかというと、中央に絞ってきた伊東に対し、こちらもマンマーク気味に付いている。
要するにポジションチェンジを考慮せず、サイドで菅vs伊東、宮澤vs小池というマッチアップを絶対に崩さないことで対応し、マークのずれを回避する(特に守備に不安のある菅のところ)とともに、最終ラインで常に5枚を確保することでハーフスペースを使われることを断固拒否、とでも言うべき対応方針を見せる。
本来インサイドハーフとして中央、荒野の隣のゾーンを守るタスクを有している宮澤に、小池の対応をすべて任せてしまうと、中央からサイドへスライドさせた後、小池の突破に対応すべく、最終ラインまで何度も戻らされることになる。しかし中央とサイドを一人で守ってくれる宮澤の文字通りのハードワークの甲斐あり、札幌は人に付いたうえで、ハーフスペースを空けずに最終ラインで対応することが可能になる。
伊東の絞りと小池の攻撃参加 |
2)死んでもDFを動かしたくないヨモ将
このSBの攻撃参加に対する札幌・四方田監督の対応がこの試合最大のキーポイントだった。下の25:53はCB中谷からSB小池にボールが渡る場面。小池の攻撃参加を察知すると、札幌はインサイドハーフの宮澤が小池に対してマンマーク気味についていく。アウトサイドの菅は何をしているかというと、中央に絞ってきた伊東に対し、こちらもマンマーク気味に付いている。
要するにポジションチェンジを考慮せず、サイドで菅vs伊東、宮澤vs小池というマッチアップを絶対に崩さないことで対応し、マークのずれを回避する(特に守備に不安のある菅のところ)とともに、最終ラインで常に5枚を確保することでハーフスペースを使われることを断固拒否、とでも言うべき対応方針を見せる。
菅と宮澤をマンマーク気味に対応させる |
本来インサイドハーフとして中央、荒野の隣のゾーンを守るタスクを有している宮澤に、小池の対応をすべて任せてしまうと、中央からサイドへスライドさせた後、小池の突破に対応すべく、最終ラインまで何度も戻らされることになる。しかし中央とサイドを一人で守ってくれる宮澤の文字通りのハードワークの甲斐あり、札幌は人に付いたうえで、ハーフスペースを空けずに最終ラインで対応することが可能になる。
サイドは宮澤に任せて、青い四角のエリアに人を配しスペースを埋めれている |
宮澤と兵藤の左右がこれまでの試合と入れ替わっていたのは、恐らくこのためだったのだと思う。攻撃の形に乏しい札幌としては、サイドに順足の選手を配し、速攻からシンプルにクロス、という形を両方のサイドで作れるように準備しておくのがベターだという発想だと思われる(加えて前節の早坂の左が期待外れだったというのもあるだろう)。
ただ、菅を生かすことで宮澤が犠牲になるというのは、チームトータルで見るとせいぜい±0、考え方によっては宮澤が機能不全になれば大きなマイナスと言えるかもしれない。そこまでして菅をスタメンで使う価値はあるか?という疑問は大いに残る。
3)筋肉と才覚
中盤の人数を減らしてゴール前に人を投入することで、札幌のボール奪取位置は必然と低い位置になる。何らかの手段でボールを回収することに成功すると、札幌は即座にFWの都倉、またはヘイスにボールを当てることで前進を試みる。両者のうち、二次攻撃に繋がる期待値がより高いのはヘイスだが、ネガトラ対策の柏の後方部隊がより注意を払っていたのもヘイス。結果的に都倉vs中谷のエアバトルが頻発する。都倉は中央に固執せず、サイドに流れて基点を作ろうともするが、攻撃の枚数が2枚しかおらず、また両者の距離が離れていたこともあり柏DFの各個撃破に遭ってしまう。
札幌の戦術を揺るがす不安要素は前半の序盤から既に露見されていた。それは宮澤の体力がどれだけもつか、という話も勿論あるのだが、柏の右サイドへの警戒を強める札幌の中盤は、明らかにピッチ中央部のケアが疎かになっていた。下の写真のように、宮澤は中谷がボールを持った時点で小池を”ロックオン”しており、体の向きもポジショニングも、本来より優先度の高い中央のエリアを守り切れていない。
1.3 小さな巨人
札幌の戦術を揺るがす不安要素は前半の序盤から既に露見されていた。それは宮澤の体力がどれだけもつか、という話も勿論あるのだが、柏の右サイドへの警戒を強める札幌の中盤は、明らかにピッチ中央部のケアが疎かになっていた。下の写真のように、宮澤は中谷がボールを持った時点で小池を”ロックオン”しており、体の向きもポジショニングも、本来より優先度の高い中央のエリアを守り切れていない。
このルーズさを常に狙っていたのが柏のトップ下の中川。下の写真のように札幌のMF間のチェーンが分断されたと言ってよいほど距離が開いている状態ならば、中川が間で受けることは容易。見るからに小回りが利く中川は、度々札幌のDF-MF間で受けて前を向き、人数こそ揃っているものの対応が定まらない札幌のDFラインに対して仕掛けていく。
宮澤の意識が外の小池に向くと中央は疎かになる |
1.4 人海戦術の末に
結論としては、必死の抵抗も空しく札幌は40分に横山がボックス内で武富を倒してPKを献上、先制を許してしまった。直接的には、横山の武富に対する対応の問題もあるが、PKに至る一連の流れを見てみると、個人のスキルや能力に帰結できないチーム戦術としての構造的な問題が浮かび上がってくる。
↓の写真39:07は、PKに至る前のプレー、柏が中央から左の輪湖に展開した時。札幌の最終ラインは青い円で示したように、柏の3トップ+中川をマンマーク気味に対応している(大外の菅は伊東を離しているように見えるがここもマンマークで対応する)。
一方、試合開始からの40分間を3枚で耐えてきた中盤は既にガス欠気味、選手間が大きく開いていて、ユニットとしての体を成していない。これを察知した大谷が、兵藤が出た背後のスペースに走りこむが、ヘイスがプレスバック(チーム戦術というより自己判断)して手塚の侵入を防ぐ。
柏のSB輪湖が一旦中央にボールを戻したところが下の写真、39:10。輪湖⇒手塚⇒中谷と渡って右サイドにボールが動くが、中央の手塚にボールが渡ったところで、バイタルをケアしていた荒野は手塚に一気に寄せて”しまう”。荒野としては、中距離のキックも優れている手塚をこの位置でフリーにしたくないとの意図があったのだと思うが、この距離で寄せたところで横パスで簡単に逃げられてしまう。
そして荒野が空けたスペースは、隣のエリアを守っているはずの兵藤も宮澤もカバーできる状態にないので、写真に示したように赤い円の部分ががら空き。
中谷から小池に渡った時、宮澤は既に寄せるのが不可能なほど疲弊していることがわかる。そして荒野が空けたバイタルエリアはがら空きのまま。小池から、何にも妨げられることなく中央にパスが送られると、個で柏のアタッカーを封殺できるでもない札幌DF陣はクリアで逃れることができず、一瞬の隙を突いた武富を横山が倒してしまった。
このように、前半から中盤の選手をひたすら走らせて(特に宮澤)柏の攻撃に対抗しようとしたが故、既に中央を封鎖できる体制になっていなかったというチームとしての問題、守るべきスペースを離れてしまった荒野個人の問題、両方が露見された失点だった。ただ荒野の動きについては、チームとしてスペース管理よりもマンマークを基調とする対応をしているがために、スペース管理の意識がおろそかになってしまったという部分もあったのかもしれない(それでもこの場面で必要以上に動く選手にはアンカーは到底任せられない)。
1)40分でempty
↓の写真39:07は、PKに至る前のプレー、柏が中央から左の輪湖に展開した時。札幌の最終ラインは青い円で示したように、柏の3トップ+中川をマンマーク気味に対応している(大外の菅は伊東を離しているように見えるがここもマンマークで対応する)。
一方、試合開始からの40分間を3枚で耐えてきた中盤は既にガス欠気味、選手間が大きく開いていて、ユニットとしての体を成していない。これを察知した大谷が、兵藤が出た背後のスペースに走りこむが、ヘイスがプレスバック(チーム戦術というより自己判断)して手塚の侵入を防ぐ。
中盤は既に疲弊し瓦解している ヘイスのプレスバック |
2)個人戦術の欠如
柏のSB輪湖が一旦中央にボールを戻したところが下の写真、39:10。輪湖⇒手塚⇒中谷と渡って右サイドにボールが動くが、中央の手塚にボールが渡ったところで、バイタルをケアしていた荒野は手塚に一気に寄せて”しまう”。荒野としては、中距離のキックも優れている手塚をこの位置でフリーにしたくないとの意図があったのだと思うが、この距離で寄せたところで横パスで簡単に逃げられてしまう。
そして荒野が空けたスペースは、隣のエリアを守っているはずの兵藤も宮澤もカバーできる状態にないので、写真に示したように赤い円の部分ががら空き。
荒野が食いついたスペースはカバー不能 |
中谷から小池に渡った時、宮澤は既に寄せるのが不可能なほど疲弊していることがわかる。そして荒野が空けたバイタルエリアはがら空きのまま。小池から、何にも妨げられることなく中央にパスが送られると、個で柏のアタッカーを封殺できるでもない札幌DF陣はクリアで逃れることができず、一瞬の隙を突いた武富を横山が倒してしまった。
フリーな状態からがら空きのバイタルエリアへのパス |
このように、前半から中盤の選手をひたすら走らせて(特に宮澤)柏の攻撃に対抗しようとしたが故、既に中央を封鎖できる体制になっていなかったというチームとしての問題、守るべきスペースを離れてしまった荒野個人の問題、両方が露見された失点だった。ただ荒野の動きについては、チームとしてスペース管理よりもマンマークを基調とする対応をしているがために、スペース管理の意識がおろそかになってしまったという部分もあったのかもしれない(それでもこの場面で必要以上に動く選手にはアンカーは到底任せられない)。
2.後半
2.1 最初の動き
1)5-4-1へのシフト
後半立ち上がりから、札幌は守備を5-4-1に変更する。最前線にヘイス1枚を置き、ヘイスが相手CB間のパス交換を防ぎ攻撃のサイドを限定させ、最終ラインの5枚と2列目の4枚、計9枚ブロックで迎撃する。
ただ、恐らく四方田監督は「小池番」を都倉に求めていたのだったと思うが、後半開始から数分間は、都倉が自身の役割をベンチに向かって確認するような様子が見られ、詳細のタスクの確認が不十分な印象も受けた。
ただ、恐らく四方田監督は「小池番」を都倉に求めていたのだったと思うが、後半開始から数分間は、都倉が自身の役割をベンチに向かって確認するような様子が見られ、詳細のタスクの確認が不十分な印象も受けた。
5-4-1にして迎撃 |
2)都倉は「4」に含めるべきか?
具体的には、都倉の守備時のスタートポジションは2列目の左、宮澤と並ぶ位置にいるが、下の図、49:00のように小池が伊東を使って縦に突破、都倉を振り切ろうとするとあっさり都倉は小池を離してしまう。前半、宮澤が小池にずっと付いていったのとは全く異なる強度の対応で、結局カバーするのは宮澤、というような状況にもなっていた。
都倉の対応はルーズ |
下の写真、50:40の局面では、反対サイドで展開されいる時に全く中央に絞らず、守るべきエリアを大きく開けているという、MFとしては考えられない動きで、こうした動きを見ると5-4-1と言っていいのか、監督はどのような要求をしていたのか不可解な部分もある。
スペースを埋められない |
3)結局は個で対応
上の写真に続く場面も見ていくと、柏が中央経由で右サイドに展開、サイドに張る伊東にボールが届けられ、菅と1on1が発生する。都倉はこの時、中谷からSB小池へのパスを読んで前に出るが、伊東に渡ると菅の支援に切り替えたのか、後方に方向転換しステップを踏む。
都倉は伊東に対応する菅を助けに行くが中途半端 |
この時、伊東の中央方向への鋭い方向転換で菅が一発で置いていかれるが、中央方向の進路を塞ごうとしていた都倉は、(写真だとわかりにくいが)伊東が加速するとあっさりと突破を許してしまう。普段、中山元気とダヴィの中間ぐらいの水準で守備を頑張っている都倉にしては軽すぎる対応で、こうした場面を見ても、形の上では5-4-1にしているが、組織として整理されたとは言い難い札幌の守備だったと思う。
この局面ではやはり札幌のDFは人に付く対応をしており、左CBの菊地が動かされると青色で示したレーンはスライドがなくがら空き。トップスピードで伊東が侵入していくという目を覆いたくなる光景が画面に拡がる。結局ここは”人”を捨ててカバーに切り替えた菊地の判断と、伊東のドリブルのコース取りが微妙だったため防ぎきれたが、5-4-1にして安定したとは到底言えない代物だったことは改めて強調しておきたい。
個で対応する方針だが、菅では伊東を止めきれないので破綻している |
2.2 we go on ただひたすらに肉弾戦
それでも後半最初の10分を凌ぐと、徐々に流れが札幌に傾いてきたか、という期待感が膨らむ展開となっていく。62分にヘイスがペナルティエリアすぐ外のFKを、74年ワールドカップのリベリーノのようなシュートを決めて1-1の同点に追いついたが、このFKを獲得したのはGKク ソンユンから都倉へのロングフィード1発だった。
前半から繰り返していた都倉を狙ったロングボールは、序盤は中谷を中心とした柏の最終ラインが跳ね返す機会が多く、都倉も基点になれなかったが、時間を追うにつれて札幌に徐々に分がある展開となっていったように思える。
考えうる要因はいくつかあり、柏の体力的な問題もあるが、後半から札幌がヘイスの1トップ、都倉が左サイドの中途半端な位置にいることが多くなったため、CBの中谷が競らない状況が増えたという構造的な要因もあったと思う。
高さ勝負は柏の弱点であり札幌の絶対的な優位性 |
1トップに入ったヘイスは常に最前線に張り付くというよりも、ゼロトップのように引いて受けにくる仕事も担う。ヘイスはこの引く動きと前線に張る判断の使い分けが絶妙で、2トップで都倉との距離感を意識してプレーするよりも、1トップのほうがハマっているかもしれない。
ヘイスが中央で”ほどほどに”柏のCBの注意を引き連れると、SBに高さがない柏はボランチの大谷や手塚が都倉と競らなくてはならない。序盤からただ、ひたすらに都倉を使った肉弾戦を繰り返したことが実った形であった。
札幌に追いつかれた柏は直後の64分、中川を下げ、ディエゴ オリヴェイラを投入。精力的なチェイシングと間受けでゲームを作った中川はお役御免、フィニッシャーを増やして前線の圧力を強める。
対する札幌は首位・柏相手に勝ち点1の獲得、という現実的なプランが見えてくる。「札幌相手には勝ち点3以外は失敗」という心理が上位チームにあるとしたら、それこそが持たざる者・札幌の最大の強みと言えるかもしれない。それまで以上に前がかりになる柏の背後を引き続きロングボールで突き、高さで勝負する札幌、という構図が明確になっていく。5連敗中、相手に先行される展開が多かった札幌にとっては久々に心置きなく籠城できる展開。後半立ち上がりは怪しかった都倉の仕事も、5-4-1守備の左MFとしてすっかり整理され、ヘイスを残して9人で守りに入る。
73分に柏は武富⇒大津に交代。大津はそのまま左に入る。
同じタイミングで札幌は河合が準備、という情報がDAZN中継で流れたが、それから程なく75分頃には宮澤が足を攣ってピッチに倒れこむ。前半の戦いぶりを見ていれば安易に予想できたことだが、ここまでリーグ戦ではスタメン出場した試合は全てフル出場している宮澤の消耗度合いは相当なものだったと思う。
2.3 人海戦術の果てに
1)魔王第二形態vs籠城戦
札幌に追いつかれた柏は直後の64分、中川を下げ、ディエゴ オリヴェイラを投入。精力的なチェイシングと間受けでゲームを作った中川はお役御免、フィニッシャーを増やして前線の圧力を強める。
対する札幌は首位・柏相手に勝ち点1の獲得、という現実的なプランが見えてくる。「札幌相手には勝ち点3以外は失敗」という心理が上位チームにあるとしたら、それこそが持たざる者・札幌の最大の強みと言えるかもしれない。それまで以上に前がかりになる柏の背後を引き続きロングボールで突き、高さで勝負する札幌、という構図が明確になっていく。5連敗中、相手に先行される展開が多かった札幌にとっては久々に心置きなく籠城できる展開。後半立ち上がりは怪しかった都倉の仕事も、5-4-1守備の左MFとしてすっかり整理され、ヘイスを残して9人で守りに入る。
9人ブロックで意思統一される |
2)キャプテンの限界
73分に柏は武富⇒大津に交代。大津はそのまま左に入る。
74分~ |
同じタイミングで札幌は河合が準備、という情報がDAZN中継で流れたが、それから程なく75分頃には宮澤が足を攣ってピッチに倒れこむ。前半の戦いぶりを見ていれば安易に予想できたことだが、ここまでリーグ戦ではスタメン出場した試合は全てフル出場している宮澤の消耗度合いは相当なものだったと思う。
その後の交代からもわかるが、札幌のプランはまず守備に不安のあるマセードを下げ、河合を中盤に入れ、荒野を右サイドに移すこと。しかし宮澤が限界に達したことで、荒野は中央に留まらせざるを得ない、右は必然と早坂を入れることになる(公式記録では79分だが、実際は77分頃に投入された)。
アウトサイドを突破口としたい柏に対し、札幌は数的同数の原則…マンマークでの対応を徹底する。柏は2トップに加え、ボールと反対側のサイドの選手も中央に絞ってくるので最前線に3枚、4枚と選手が並ぶこともあるが、札幌は常時最終ラインに5枚を揃え、柏のポジションチェンジに対してスペースが空いてもおかまいなし、受け渡しをほとんどせずに付いていく。
79分~ |
3)人海戦術の果てに…
アウトサイドを突破口としたい柏に対し、札幌は数的同数の原則…マンマークでの対応を徹底する。柏は2トップに加え、ボールと反対側のサイドの選手も中央に絞ってくるので最前線に3枚、4枚と選手が並ぶこともあるが、札幌は常時最終ラインに5枚を揃え、柏のポジションチェンジに対してスペースが空いてもおかまいなし、受け渡しをほとんどせずに付いていく。
ディエゴ オリヴェイラに対してもマンマークを維持 |
82分に柏は輪湖⇒ユン ソギョン、84分に札幌はヘイス⇒金園に交代。
結果的にこの交代が明暗を分けた。金園の投入直後、札幌は菊地が足に限界を訴え、最終ラインでのプレーが事実上不可能となり前線に配される。河合がCB中央、横山が左CBにシフトし、最前線で金園と菊地の2トップのような形になる。
恐らく札幌ベンチの指示は、下の図のように9人ブロックを維持して守り切るイメージだったのだと思うが、菊地が置物と化してからの2,3分間も、札幌はボールを回収すると都倉や金園がスルスルと前線に張り、ロングボールに競り勝とうとする。
そして後方の選手も、まるで都倉や金園が競り勝ち、セカンドボールを拾って攻撃に繋げたいかのようなボールを蹴ってしまう。アディショナルタイムを含めてラスト7~8分程度という時間帯だったが、結果論だがもっと極端に「試合を殺しに行く」プレーをすべきだった。
84分~(菊地続行不可能後) |
決勝点となる柏の得点は、札幌のロングボール⇒都倉がファウルを取られて(主審とは非常に相性が悪かった)素早いリスタートで再開⇒右サイド、伊東のスルーパスで河合がディエゴ オリヴェイラのプルアウェイで置いていかれる…という形だった。
伊東と菅、河合とディエゴ オリヴェイラというマッチアップ自体がかなり厳しいものではあるが、その前段階のプレー、都倉がわざわざ前線に出張してボールを競る必要はなかった。伊東に渡った時、都倉は一応戻ってはいたが、余計なことはせずにブロックを作り、味方を助けることだけ考えていればよかった。
3.雑感
3.1 試合内容について
Twitter等で「監督はできる限りのことをやっている」という意見を見たが、この2か月程で、攻守ともにできることがずいぶん減ったな、という感想である。より正確には、減ったというか、開幕2戦ほどの状態…準備もできていない、自信もないのでボールを持てない、ただひたすら耐え忍んで、低い位置で何とか食い止めてロングボールを都倉に当てるだけ…という消耗の大きいサッカーに逆戻りしている。
イメージとしては、”持たざる者”という立場を改めて認識し、守備を再構築し、攻撃はヘイスや都倉の個人能力に懸けたいのだと思うが、だとすれば今のDFやMFのスカッドとはミスマッチ感は否めない(深井や増川が使える状態ならば籠城戦術もより有効だと思うが)。中川が走りまくる柏相手では難しかったが、今後は再び、ミンテ-横山-福森という、札幌史上で最もボールを動かせる最終ラインの能力をもう少し信用してもいいのではないか(もっとも監督に選手の能力を活かせるだけの手腕がある前提だが)。
3.2 ジュリーニョの負傷とジェイ ボスロイド加入報道について
主に2トップの一角として起用されてきたジュリーニョだが、この記事を書いている最中(6/28)に右アキレス腱断裂、シーズンアウトの大けがでブラジルに帰国して治療を行うとリリースされた。J2優勝の功労者であるとともに、今シーズンも開幕から体は切れていただけに非常に残念なこととなってしまった。
ただ個人的には、現状の外国人選手から一人入れ替えるならばジュリーニョ、とは思っていた。端的に言うと、ジュリーニョは中央(FWやトップ下)の選手ではない。J2ほどアバウト、オープンなサッカーをしないJ1では中央で思うようにプレーできないのは予想通りで、ウイングを置かない四方田札幌では使いどころが非常に難しい。
一方でボスロイドについては、補強ポイントはそこか?、チームに足りないのはそういうタイプか?というのが率直な印象である。現実的に考えると、恐らく今後も低い位置でボールを回収して長い距離のカウンターを仕掛ける戦い方が想定され、FWを加えるならば走力のあるロングカウンターに向く選手が必要(チャナティップがそうしたタイプかもしれないが)、もしくは田中雄大以外に計算のできる駒がない左サイドの選手を加えるべきだと思う。最終ラインは増川が帰ってくれば、ミンテを中盤に戻すオプションも生じるので、やはり左サイドをどうにかすべきではないか。勿論その決定力やヘイスの負担軽減といった観点から、前向きなイメージもなくはないが、間違いなくシーズンを左右するターニングポイントとなる決断だろう。
|´・ω・)ノおはようございます~ にゃんむるです。
返信削除読みました。概ね同意です。昨日ルヴァン杯のサブ組みの体たらくを見せ付けられてイライラしてましたが、主の文章を読み少々冷静になりましたこの上なし。
ついに愛すべきポンコツのヘイス様が帰ってきたので楽しみは増えましたが、私イチオシの風呂上りのオバサン中原がガンバに旅立っているため楽しみは半減しております。(おまけにガンバのU23でCBやらされてるし・・・。)しばらくは、ヘイスが入ってWジェイの加入もありチームがどう変わるかのんびり観察したいと思います。
と、ここまで書いててふと思ったことがあるので唐突に質問なんですが、主は荒野の適正ポジションは何処がよいと考えてるのでしょうか?ユース上がりの選手たちが一部の能力ある選手(奈良や深井)などを除けば、色々なポジションをやらされて結果伸び悩んで(理由は他にもあると思いますが)バイバイしていくのを見てきて育成もっとしっかりしてくれよといつも思っています。その中で荒野は決して能力無いわけではない(頭は悪いかもしれないwww)とトップ昇格後ずっと思ってきましたが、彼に関してだけはどうも自分の考えがまとまらずモヤモヤしてる感じ。 今回のジュリーニョの話もまったく以前から思ってたことを主は書いてくれているのでやっぱりいろいろと同じ方向見てる人だなーと思うので、そんな主は荒野をどう見ているのか、そして適正な居場所は何処だと思っているのかをチョット聞いてみたいです。別にフォーメーションとかにはこだわりませんよ。
長くなったので本日はここまでにしたいと思います。次回も期待してます。まったりでいいですよー。
んでわまたのー(・∀・)ノ にゃんむるでした。
>にゃんむるさん
削除まず「昇格した一部の選手の適正ポジションがわからない」というのは同感です。下部組織とトップを包括的に考えた育成は相当問題があると思っています。前貴之なんかが典型というか…
荒野はJ1の選手として見たときにストロングポイントになりそうなのは、ボールスキルよりも長い距離を走る、競るといった運動能力だと感じますので、荒野の本質は「技術のある労働者」ではないでしょうか。ラキティッチみたいな。一つあげるとしたら、3センターのインサイドハーフが一番今まででハマっていたと思います。
仕事で疲れて帰宅ー(´・ω・`) にゃんむるですー
削除お返事ありがとうございますー。
ラキティッチかー。人とボールをつなぐ魔人&いつの間にかそこにいて決めてる選手なイメージ。運動量もすごいと思われ。でも荒野と比べるのも失礼なくらい能力ある選手だなーwww バルサの選手は基本的なプレーの質が超高いから荒野ももっと基本プレーの質をあげてほしいねー。相手とボールの間に体をススーッて入れてボール奪取するプレーは好きですよ。まあ今まで観て来てサイドは向いてる感じしないし、運動量考えてもインサイドハーフということになっちゃうよねー。アンカーは期待してるんだけど、やはり動きすぎかなー。?
主に言われて思い出したけど前兄はトップに上がってからの使われ方が可哀想だったなー。さくっと移籍して居場所見つけたほうが良かった様な気がしますわ・・・。正直もうあきらめましたゾーンに入りかけてるんだよなー。
中原がバイバイキンしたら気が抜けてしばらくコンサから離れてしまいそうなにゃんむるは汗をフキフキ清水戦のハイライトでも観るとしますわー。
んでわまたのー(・∀・)ノ
鹿島戦はゴールシーンだけしか観ていないのですが、
返信削除鹿島戦であまりにもやられすぎたために四方田監督は「羮に懲りてなますを吹く」状態に陥ったのかな、と。
ダボハゼとまでは言いませんが人に行きたがる、つきたがる荒野のアンカーでは危なっかしくてダメですね。宮澤が足攣って途中交代って無茶させすぎでしょう。3CHを今の3人で考えるなら宮澤アンカー、荒野右インサイドハーフの方が明らかに攻守のバランスが良い。荒野に走らせた上で宮澤が捕まえる守備の方がよほど安心できると思います。荒野も後ろに人がいた方が安心して走り回れるでしょうしw。増川が戻れば横山を1つ前に出して宮澤をインサイドハーフにってのもアリなんでしょうが、稲本もまだ無理だし現状ではアンカー置くなら宮澤一択。
にしても、どうして左WBは菅のままなんでしょう?ドリブルで斬り込めるからくらいしか起用し続ける理由が思いつきません。サイドからクロスを入れまくるんだったらどのみち守備はどっこいだし田中でいいと思うんですが。ヘイスがやっと仕事してくれたのが救いですが、ヘイスを“感じられる”選手がさて何人いるのか。ジェイボスロイドとで大駒を並べるのはよほど点が欲しい時じゃなきゃ四方田監督やらないだろうなあ…。
>フラッ太さん
削除そうですね、荒野アンカーの「実験」はもう終了でいいのでは?という気がします。宮澤を前で使いたい意図はわかるのですが、そこまでボールが供給されないので走って潰されて終わりになってしまいますよね。
菅はサイドの選手、もしくは最終ラインの1枚としてみたときに、ポジションとか体の向きとか無茶苦茶だと思うのですが、それでもフィジカルコンタクトの強さと走力とキックだけであのレベルまでやれる18歳というのは凄いなとは思います。当たり前なんですけど、プロの選手として穴が少ないのは田中の方なんですよね。田中が戻ってきたので菅はスーパーサブでいいと思うんですが…