2017年3月1日水曜日

2017年2月25日(土)14:00 明治安田生命J1リーグ第1節 ベガルタ仙台vs北海道コンサドーレ札幌 ~何も恐れず胸を張り戦え~

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-5-2、GKク ソンユン、DF菊地直哉、横山知伸、福森晃斗、MFマセード、キム ミンテ、深井一希、宮澤裕樹、石井謙伍、FW都倉賢、ジュリーニョ。サブメンバーはGK金山隼樹、DF永坂勇人、田中雄大、MF河合竜二、兵藤慎剛、FW内村圭宏、上原慎也。マセード、ジュリーニョのブラジルコンビはこの週になって練習に完全合流、兵藤はそれよりも少し回復が遅れてベンチスタート。ただ彼らが戻った途端、今度は早坂、稲本が肉離れで離脱。ほぼ1年ぶりに3センターの3-5-2でスタートするのはそうした事情(トップ下で使いたい選手が軒並み離脱)もあったと思われる。
 ベガルタ仙台のスターティングメンバーは3-4-2-1、GK関憲太郎、DF大岩一貴、平岡康裕、石川直樹、MF菅井直樹、富田晋伍、三田啓貴、永戸勝也、梁勇基、奥埜博亮、FW石原直樹。サブメンバーはGKシュミット ダニエル、DF蜂須賀孝治、増嶋竜也、MF藤村慶太、茂木駿佑、FW西村拓真、平山相太。新加入のFWクリスラン、金久保、中野が負傷で直前の練習に参加していないとの報道があった。
 歓喜のJ2優勝から早3ヶ月、札幌にとっては5年ぶりのJ1。開幕はアウェイ仙台。かつてJ2ではライバルとして張り合っていた?のも今は昔、8シーズン連続でJ1リーグに参加する大先輩となってしまった。個人的にはこの3ヶ月間、立て込んでいたこともあり、ヘイスがお母さんの手料理で豪快に太って合流したこと、非公開試合等が多くメンバーが読めないこと、キャンプ終盤にけが人が相次いだこと程度しか情報をフォローできていない。また今シーズンは実質4枠の外国籍選手の運用も興味深いものだと考えている。開幕戦は消去法でヘイスがメンバー外となったが、ブラジル人3人+韓国人2人のうち、ク ソンユンは不動として、残りは今後どのような起用法になるか。個人的には、攻撃面でもたらされるプレーの幅を考えるとマセードは安易に外してほしくないのだが。


1.前半

1.1 序盤の展開が決まるまでの攻防


 ここ数シーズン、4バックの4-4-2やアンカーを配した4-3-3(又は4-1-4-1)で戦ってきた仙台だが、キャンプからトライしてきた3バックの3-4-2-1でこの試合に臨んだ。序盤の攻防でポイントになったのは、3バック+αでボールを運ぼうとする仙台に対し、札幌は2トップ+αでどこまでリスクを冒し、またどこで安全策を取った守り方に切り替えるか、という点だったと思う。
 そして札幌も、中盤から前の配置はやや異なるものの仙台同様に3バックであり、3バック+αでボールを運びたいところだが、仙台は3-4-2-1なので前の人数は札幌よりも1枚多い。要するに、
 ・仙台がボールを持っている時:仙台3+α vs 札幌2+α ⇒仙台の数的優位が"ベース"
 ・札幌がボールを持っている時:札幌3+α vs 仙台3+α ⇒数的同数が"ベース"
 という数関係が、あくまで"ベース"、スタートでしかないが、成立している。
 
 結論としては、このベースにある数的優位を仙台は維持することができた。対する札幌は数的同数を崩して優位な状況を作ることができなかった。この両者の差が、マイボールの時間を作り、試合のコントロールに成功した仙台と、最後までコントロールができなかった札幌という試合展開の差異に直結していたと思う。

1)仙台の勇気と準備


 キックオフ直後、10分頃までの時間帯で、仙台はゴールキック等、自陣でボールを保持した状態から攻撃を開始する際、下の図のように3人のDFがペナルティエリアのすぐ外にポジションを取り、GK関からのパスを受ける態勢…要するに関が長い距離のキックをピッチ中央に蹴っ飛ばすのではなく、ショートパスとドリブルを使って着実にボールを運ぼうとする。
3バックvs2トップ

 対する札幌は、初めは2トップの都倉とジュリーニョの2枚で仙台の3バックのケアを試みる。下の図のように、サイドの選手にボールが出たところで都倉とジュリーニョの2人で寄せていく。ここで、ボールホルダーに寄せたところで一気に独力で奪うというところまでは期待しないが、プレッシャーを与え、自由にさせず、次の展開の精度を下げたいとの狙いがある。
ボールがサーブされたら追い込む

 そこで仙台は3バックの3枚だけではボールを運ぶことが難しいということで、先述の「+α」として、ボランチの2選手とGKの関を組み入れた展開を用意していた。まずボランチの1枚、主に富田が最終ラインの3枚の間に落ち、4バックに近い陣形をとる。枚数が3枚から4枚に増えたことで、4枚の両端となる大岩と石川は、3枚の時よりもワイドなポジションをとり、都倉とジュリーニョの守備範囲から逃れることが可能になる(下の図①)。
 ここで、札幌も2人だけでは足りないということで、「+α」としてキム ミンテが前線の守備に加わる(下の図②)。ミンテのポジションは基本的に3センターの右で、ここから全然に加わるので、右からミンテ、都倉、ジュリーニョと並び3枚で仙台の4枚に対抗する。
 ただ、ここまでは仙台も十二分に想定の範囲内といったところで、人数を増やして圧力と守備範囲を増強した札幌に対し、仙台は次の手…札幌の守備範囲外となっているGKの関と、もう一人のボランチの三田を使ってボールを逃がす(下の図③)。
 関と三田が加わることで、左右(横幅)だけでなく縦にも範囲が広がるため、札幌は3枚でも足りない状態に陥るが、ここで更に人を増やすかというと、中盤の深井や宮澤をこの攻防に投入してしまうと、札幌のDFの前のスペースはがら空きになってしまう。よって宮澤と深井はステイせざるを得ず(下の図④)、この攻防は仙台が札幌の前線からの守備をいなしてボールを運ぶことに成功し決着、ということになった。
後ろの枚数を自在に変えて札幌の前線守備を回避する仙台

2)勇気と準備よりも割り切りと気合だった札幌


 同じように、札幌が攻撃を開始する際の展開を見ていく。
 先述のように、仙台は3-4-2-1(⇔5-2-3)の陣形で前に3枚(梁、石原、奥埜)を配して守る。この3人が札幌の3バック、福森-横山-菊地に利かせる状態(特に福森に対しては、蹴らせる間を殆ど作らせない姿勢)だったが、こうした数的同数で守ってくる相手に対する一般的な手法としては、中盤の選手が下がるなどして人数を増やし、相手の守備の基準を曖昧にすればよい。特にこの日は札幌の中盤は3センターで、宮澤-深井-ミンテと並ぶと深井が余ることになる。
 よって深井を「+α」とした4枚で仙台の3枚に対抗することが十分できたと思うが、札幌の選択はそうではなく、中盤を省略し、都倉目がけてロングボールを放り込むことだった。おそらく開幕戦の前半ということで、極力リスクを犯したくないという考えがあり、また仙台のDF陣に対する都倉の高さという構図は、札幌にとって数少ない質的優位が確保できる部分であることもこの選択の理由だったと思う。
 また下の図で示したように、右の低い位置に終始いたマセードを起点にしたり、宮澤を落としたり、といったやり方も十分選択肢に入る(最終的に放り込むにせよ、目先を変えるくらいにはなる)と思うが、それもなくソンユン(3バックが誰も余れないので、ソンユンに返して蹴らせる)から放り込む光景が目立った。マセードは、恐らく仕掛けからのボールロストのパターンを減らすために、自重せよとの指示が出ていたと思われる。仮に早坂が使える状態ならば、マセードはベンチスタートだったかもしれない。
都倉が競ってジュリーニョや石井が左サイドから運ぶ

 都倉が競ったボールを拾って攻撃に繋げる役割は、2トップのジュリーニョ。ジュリーニョは昨シーズンのプレーを見る限りでは、左サイドが得意な選手だと思う。おそらくそのこともあり、都倉とジュリーニョを上の図のように左サイドに集めて、都倉に競らせてジュリーニョが拾って仕掛ける、という狙いがみてとれた。
 ただジュリーニョ、都倉の2人で何とかシュートまで持っていけ、というのは厳しい。そこでサポートするのが、札幌随一の労働者である石井と、キム ミンテだった。
 石井は攻撃時のスタートポジションがマセードよりはやや高いが、2トップのジュリーニョと都倉とは並ばない程度の高さにいることで、対面の菅井を引き出し、ジュリーニョが流れるスペースを作る。そして都倉が勝ち、ジュリーニョに渡るタイミングで一気にサイドを駆け上がりサポートする。確かにこの仕事をやらせるなら、田中雄大よりも石井のほうが適任だったと思う。
 そして左サイドを突破して、中央に折り返したとき、ゴール前に入り込む選手を、都倉だけでなく複数確保する役割を担っていたのがキム ミンテ。ミンテもかなり長い距離を走ることになるが、仙台からしてみると、都倉に加えてこのサイズ(187センチ)でこれだけ動ける運動能力を持つミンテが突っ込んでくるというのは一定の脅威を与えていたと思う。

 ただ札幌はこうした戦い方を選択したことで、ボールを保持する時間を作ることは難しくなっていく。次第にボールを保持する仙台、撤退して構える札幌という構図が明確になっていく。

1.2 右の見せ玉

1)札幌の5-3-2ブロック


 仙台が札幌の前線守備を突破し、ボールを運ぶことに成功すると、札幌はフィールドプレイヤー10人全員が自陣に下がり、5-3-2の守備ブロックを組む。この時仙台は富田を最終ラインに落としてボールを運び、大岩と石川は札幌の2トップ脇、4バックのSBのようなポジションをとる。
前からの守備がはまらないので5-3-2ブロックで撤退

 前半の仙台は右サイドからの組み立てが多かったが、ここで、大岩にボールが入ると札幌は下の図のように宮澤-深井-ミンテの3センターがボールサイドにスライド。宮澤がボールホルダーの大岩の前に立ち、中央へのパスコースを切るとともに、深井は宮澤、ミンテは深井を基準としたポジションを取ることでピッチ中央を守る。
 中央を消されると、仙台はサイド(大岩→菅井)しかパスコースがないが、ここで菅井がボールを受けると、タッチラインを背にした状態で石井と正対し、また味方と分断された状態でボールを受けることになる。
 アウトサイドに突破力のある選手を配しているならば、そうした状況で石井相手に1vs1を仕掛けてチャンスメイク…という攻撃もあるが、菅井はどちらかというとボールを持った状態で特徴を出すというタイプではないので、サイドで菅井にボールが渡るという状況は札幌としてはあまり脅威にならない。
FW脇は中盤の「3」がスライドして対応

2)仙台の揺さぶり①:梁と菅井の移動


 しかし仙台のこうした右サイドからの展開は、このサイドから一発で仕留めてしまおうというものではなく、札幌のディフェンスを揺さぶり、綻びを生じさせようとの試みだったと思う。
 具体的には、仙台は大岩にボールが渡ったタイミングで、その前方ではサイドに梁が流れ、菅井が内側に侵入するというポジションチェンジが行われる。2人の動きを図示すると下の図のようなもので、シャドーの梁は本来福森というマーカーを背負っているが、サイドに逃げることで福森の監視から逃れる。
梁がサイドのレーンでフリーになり受ける

 ここで、5バックで守る札幌において、福森は対面の選手にマンマーク気味に付いていって潰す"迎撃"が一定の範囲内で認められているが、梁がタッチライン際まで流れると、隣のゾーンを守る石井に受け渡すべきか迷いが生じる。
 そして同じタイミングで、福森の視界内には菅井が現れる。菅井という新たな守備基準が発生したことで、梁は福森から完全に開放された状態になる。一方、福森の隣の石井も、視界にボールの動きを捉えつつ菅井が目の前を横切る状況となるが、ここで更に梁がサイドに流れ、またマーカーがいないことを瞬時に把握することは難しい。したがって、梁は大岩の前方、菅井が元いたエリアよりは浅い位置でボールを安全に保持することができる。

3)仙台の揺さぶり②:U字パスで手薄な逆サイドへ


 上の図、梁にボールが渡った時の札幌の陣形を今一度見ると、3人の中盤がボールサイドに寄せているため、反対サイドががら空きになっている。仙台が右サイドでボールを動かし、菅井と梁がポジションチェンジしてからボールを戻す(右サイドでは勝負しない)…という一連のプレーを繰り返していたのは、このように札幌の3センターを左右に揺さぶり、反対サイドにスペースを作るため。
 札幌の3センターを十分サイドに寄せると、梁から大岩、平岡や富田を経由し、左サイドでオープンな状態で待つ左利きのDF石川にボールを送る。ここで石川にボールが渡ると、仙台は奥埜がマセードの背後に走ってボールを引き出したり、奥埜に菊地が動かされると、石原が移動してポストプレーを試みる、サイドに張る永戸で勝負する、といったパターンが発揮されてくる。
石川が起点

 前半の仙台は、右サイドからは殆どチャレンジパスをせず、最終的には必ず左サイドから勝負するということが徹底されていた。これにより、ボールロストの形も非常に限定され、想定しない形、位置でのボールロストが殆どなく、仮に石川から奥埜らへのパスが失敗したときにも迅速に攻撃→守備へと切り替えることができていた。

1.3 ヨモ将 2つの誤算


 もっとも札幌としても、こうした展開は想定通りで、自陣にブロックを落としはじめの前半15分頃の時間帯はやや浮足立ったものの、次第にやることが整理され、また仙台は右から勝負しないということをピッチ上の選手たちも感じ取り、梁に渡ったところで深追いする必要はないということで、逆サイド(ミンテ-石川のエリア)が極端に空くことは少なくなったと思う。
 ただ四方田監督としては誤算だったのは、一つは前半17分に警告を受けたミンテがその後もいろいろな意味で危なっかしいプレーを連発し、3センターの右側に継続して置いておくべきか、という判断を迫られたことだったか。ベンチからの指示があったかわからないが、前半30分過ぎ頃のプレーで、流れの中でミンテと深井が位置を入れ替え、深井が石川を見るような形があったが、この形をとってしまうとミンテがアンカーになり、前線への攻撃参加と守備の両立がより難しくなってしまう。結局この形はすぐに元通りとなっていたが、ミンテが必要以上に"安全運転"と化すると、守備の圧力と攻撃の威力が同時に失われてしまうため、その安定しない挙動は監督にとって悩ましい存在だったと思う。
 もう一つは、仙台が中央にパスを入れてきた際に、なかなか跳ね返せずカウンターに繋げることができなかった点。2016シーズンは5バック(3CB)で中央を固め、サイドから中央への斜めのパスを迎撃しカウンター…というパターンがしばしば決まっていたが、この試合は、中央に簡単にボールを入れてこない仙台の試合運びと、また最前線で裏を狙ったり、間で受けに下がったりと動き出しの巧みなFW石原の存在もあり、跳ね返せずセカンドボールを拾われて二次攻撃に繋げられてしまうことが多かった。

2.後半

2.1 動かされなければ怖くない


 後半開始直後、札幌は前半と同様に5-3-2ブロックでリトリートする選択。危ない場面もあったが、仙台相手ならばこのやり方で破綻するには至らないとの判断だったと思う。
 一方の仙台は、DAZN中継で紹介された渡邉監督のハーフタイムコメントで「このままでいい」という旨のやり取りがあったそうだが、後半立ち上がり10分頃までの仙台は、前半に比べると手数をかけずにボールを札幌ゴール前に入れてくる展開が目立った。特に、前半は殆ど右サイドからの「攻撃」(梁や菅井、大岩がゴール前にパスを入れてくる)がなかったが、後半立ち上がりは予想外に安易にボールを"放り込んでくれた"。平山がゴール前に鎮座しているわけでもないので、これならば5人のDFと3人のMFで問題なく跳ね返せる。
左右に振られていない段階で放り込まれても怖くない

 そして放り込まれたボールを跳ね返した後は、前掛かりになった仙台のDF(下の図では石川)の裏をサイドに流れたジュリーニョが突く。右でも左でもいいので、ジュリーニョの個人技で何とかしてもらう間に、フィジカル自慢の都倉やミンテがゴール前に駆け上がる、これまた前半と同様のパターンだった。少なくともこの点に関しては、「繋ぐのかカウンター狙いか意図がはっきりしない」という論説は全く当てはまらなかったと思う。J2と違い、ジュリーニョの前には仕掛けるスペースがあり、またジュリーニョ個人の出来も悪くなかったため、仙台が前に出てくる(かつ安易にボールを前に入れてくる)ほど、札幌としては徐々に形が作れるようになっていく。
跳ね返せばカウンターチャンス

2.2 狙いは「ボールが止まっている時」


 一方、仙台がゴールキックで等、「自陣後方で、ボールが静止した状態」になると、札幌は再び前半立ち上がりのように陣形を押し上げてハイプレスを敢行する姿勢を見せていた。これは、仙台がポゼッションをしていてボールが左右に動いている時は、ボールの位置を基準に陣形をスライドさせなくてはならないが、ボールが動いていない時は、札幌としても陣形を整えるチャンスになるので、このタイミングを利用して、何とか"ゲームの重心"を仙台ゴールに近づけたいとの考えがあったのだろう。
 昨シーズン3-5-2で戦っていた試合は大半の時間で自陣にリトリートして、相手の攻撃を待ち受ける戦い方だったので、恐らくJ1仕様の戦い方として、キャンプ中にハイプレスの練習はしていたのだと思う。
 このとき前半と異なったのは、前線の人数を都倉、ジュリーニョに加え、中盤のキムミンテ、宮澤と計4名にし、三田と富田が空かないようにした点。都倉とジュリーニョに2枚で3バックを見ることは変わらず、仙台の3バックが開いてプレーすれば誰かが空くことになるが、仙台のDF陣もドリブルでボールを運ぶ能力は備わっているわけではないため、札幌のこの陣形を見ると、ショートパスでのビルドアップを諦めて関が長いボールを蹴りこむようになる。
 関に長いボールを蹴らせた時点で、札幌としては思惑通り。高さでは札幌に分があり、ゴールキックを難なく跳ね返せるので、前半のように振り回される展開にはなりにくい状況をつくることができた。
仙台のGKからの組み立てに4人で対抗(これを見て仙台は繋ぐのを諦めた)

2.3 兵藤投入と焦る仙台


 59分、札幌は菊地⇒兵藤に交代。交代ボード「6」が示された時、安全策をとってミンテを下げるのだと思った札幌ゴール裏は予想外の交代にざわつく。後に菊地のアクシデント(左太もも裏の負傷)だったと知るのだが、この交代によりミンテが右CB、兵藤が中盤3センターの左に。確かに河合や永坂ではこの局面は厳しい。
59分~

 四方田監督としては、ミンテを後ろで使わざるを得ないことは予想外だっただろうが、0-0の局面での兵藤の投入は恐らくプラン通り。そして兵藤もミンテが担っていた役割…ゴール前への飛び出しに加え、都倉が競った後のセカンドボールの確保においてその才覚を発揮していたと思う。セカンドボールを拾えた場合、そのまま一気に攻め込むのもありだが、ちょうど、時間帯的にも仙台も前半ほどの勢いがなくなっていったタイミングだったので、一度後ろに戻して時間を作ったうえでゴール前や、仙台のボランチ脇に入っていく兵藤の動きはミンテの直線的なそれとは異なり、札幌に落ち着きを与えていたと思う。

 仙台は70分、梁⇒西村に交代。続けて75分、菅井⇒蜂須賀。蜂須賀は菅井が石井と走り合いで消耗が激しかったためで、それに対し西村は、放り込みに対する前線のフィニッシャーの補完として投入されたと思われる。70分過ぎ以降の仙台は、なかなかゴール前から動かない札幌のブロックに対してシンプルな放り込みで対抗しており、特に三田がサイドに流れ、マセードや宮澤からフリーな状態で何度かクロスを上げていたが、札幌がゴール前から動いていないことには変わらないので、クロッサ―が三田になったところで何かが起きる予感は乏しかった。
三田からの放り込み

2.4 ポロリとこぼれた勝ち点1


 DAZN中継で81:30頃、仙台は石原に代えて平山投入の準備、との一報が流れる。最終手段として前線の高さを増強し、放り込みにかけようとしていたのだろうが、結果的には、81:30頃から途切れなかった一連の流れの中で、右サイドから仙台に侵入を許し、最後は三田の強烈なミドルシュートをク ソンユンが正面に弾いてしまい、石原にリバウンドを流し込まれてしまった。失点直後の札幌の選手がガックリとした様子が非常に印象に残っている。ベンチで金山や河合は手を叩いて鼓舞していたが、ピッチ上にはそうした選手がおらず、この後、内村と上原を投入するも事実上、勝負は決まってしまった。
 直前のプレーから見ると、仙台の平岡が中央を持ち上がったところで明らかにジュリーニョの圧力が弱く、また札幌が一度攻撃を凌ぎ、仙台が右サイドから二次攻撃を仕掛けたところでは宮澤が絞れず、中盤のフィルターが弱まっている。この試合3センターの一角として攻守に走り回った宮澤と、再三ロングカウンターの起点となっていたジュリーニョの両選手の負担は相当なもので、ソンユンのミスだけでなく、最後のところでのベンチワークも試合の結果を左右した要因に挙げられるだろう。

3.雑感


 開幕戦ということで、よく言えばかなり手堅く慎重、悪く言えば消極的なゲームプランの選択であった。予想通り、ボールを持った時の仕込みは乏しかったが、J2から遥かにレベルが上がった舞台で試合を成立させるだけの守備は仕込まれていた。
 繰り返しになるが、「意図が見えなかった」という批評は的外れだと思う。ただ、この1試合を見る限りでは、札幌がJ1に残留するためのストロングポイントとなりそうな要素を挙げることは、個人的にはできなかった。次のゲームに向けては、特にボールを持った時にどれだけ勇気をもって戦うことができるか、をまず注目したいところである。

4 件のコメント:

  1. |´・ω・)ノこんばんは~ にゃんむる ですー。
    読みましたよー。でも試合は観ることできてないんですよ・・・(´・ω・`)
    夏までに生観戦できるの5~6試合になりそうで悲しいです。おまけに映像も観れない試合もかなり多くなりそうで、今季は冬眠状態かもしれません。それでも観戦予定少し増えたから良しとするか・・・。
    選手達にはJ1だという事にビビらずに精一杯戦って欲しいです。結果は考えず頑張れー!
    選手同様ブログ主さんの解説も期待してます。今季も頑張れー!
    んではまたねー(・∀・)ノ

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    1. >にゃんむるさん
      コメントありがとうございます。私のシーズンも何とか開幕にこぎつけることができました。
      前回前々回は夏にはほぼ終戦ムードでしたので、なんとか踏ん張ってほしいところですね。

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  2. 地上波で試合を観ました。
    妙にコンサを褒めるのでちょっと面映ゆい感じでしたが、単に“ひきこもり”の守備に終わらなかったのは良かったかな、と。
    全体の印象としては良くも悪くもミンテが目立った試合でしたね。
    開幕戦でなければ前半で退場&“戦犯”になっていてもおかしくありませんでした。
    都倉&ジュリーニョと謙伍を左サイドに固めるいわゆるスズメ刺しは解説の山本氏の指摘と相まって一定の効果があったことはわかりました。
    3-3-2-2で臨んだことから深井さんアンカーで宮澤とミンテがどこまで攻撃参加できるかという視点で試合を観ましたが、
    その意味においても逆サイドで攻撃参加するのはマセードではなくBOX to BOXで走れるミンテを起用したのは妥当な判断だったと思います。
    マセードまで上がってしまうとネガトラで「もろ差し」になってしまい守備があっという間に破綻しますしね。
    ミンテはよく言えば迫力がある、推進力があるとなりますが、一本調子とも言える。
    短い時間ながらも兵藤の巧さが却って際立つ格好となりました。
    内村を入れるにしてもシステム変更してまで入れるかどうかはアウェイかつ開幕戦という状況を考えると悩みどころ。
    堅くいくつもりが却って裏目になってしまったというのは結果論ですが、そのあたりの決断もJ1ではシビアに問われるのかもしれません。
    "stay"の判断は状況を考えると致し方なかったのかなあという感じですね。
    1点勝負の試合展開になったのであの時間帯での失点はガックリ来たでしょうが、それでも前を向き続けて欲しかった。
    不満があるとすればそこでしょうか。

    J1になってさらにディープな見方になると思いますが、だからこそJ1は面白いしJ1に残留して欲しい。
    貴ブログを大いに参考にさせていただくと共に、今年も暑苦しくコメントをしていこうと思います。
    よろしくお願いします。

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  3. >フラッ太さん
    コメントありがとうございます。今シーズンもよろしくお願いします。
    ミンテは外国人枠的にもどうかなぁと思った獲得でしたが、もう2試合で欠かせない選手になりつつあると思います。
    逆に残りの実質2枠の組み合わせが難しいですね。個人的には、このボールが行ったり来たり系の試合運びをするならマセードは厳しいかもしれません。ジュリーニョも非常に癖がある選手なので難しいですが、FW陣で一番ボールを運べそうなのはやはりジュリーニョなのでしょうか。

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