スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-1-2、GKク ソンユン、DF菊地直哉、増川隆洋、福森晃斗、MFマセード、宮澤裕樹、上里一将、堀米悠斗、ジュリーニョ、FW都倉賢、内村圭宏。サブメンバーはGK金山隼樹、DF永坂勇人、MF前寛之、石井謙伍、河合竜二、小野伸二、
FWヘイス。
札幌は8/27の筑波大学、9/3のファジアーノ岡山との天皇杯1・2回戦を挟んで2週間ぶりのリーグ戦。天皇杯初戦は過密日程もありほぼサブメンバーのみを起用して勝利したが、レギュラーメンバーに阿波加、永坂、神田らを含めて戦った岡山戦は1-2で敗れ、札幌の天皇杯は終わった。ただ永坂がこの試合ベンチ入りしているというのは、櫛引に故障や体調不良ということでなければ岡山戦での"見極め"の評価が悪くなかったということかもしれない。また8/7の清水戦で故障し離脱したヘイスが一ヶ月ぶりに戻ってきた。8/21京都戦で離脱した深井は今週ランニングを開始したところで、ボランチは宮澤と上里が組む。
ザスパクサツ群馬のスターティングメンバーは4-4-2、GK清水慶記、DF舩津徹也、乾大知、パク ゴン、高瀬優孝、MF小林竜樹、松下裕樹、中村駿、高橋駿太、FW山岸祐也、瀬川祐輔。サブメンバーはGK鈴木雄太、DF鵜飼亮多、坪内秀介、MFマテウス、FW常盤聡、小牟田洋佑、平秀斗。吉濱は「足の違和感」で欠場。MF登録が6人だが実際の配置は4-4-2だった。パク ゴンがMF登録の3-6-1という、札幌相手のミラーゲームを"偽装"してきたということもあるかもしれない。8月の4試合負けなしと好調で、順位を20位から15位にジャンプアップさせている。またチームの心臓であるボランチの松下は、8月のJ2月間MVPに選出されている。
1.前半
1.1 厚別に現れたのは劇的に変貌した群馬
コイントスに勝った群馬のキャプテン松下はエンド変更を要求し、前半は群馬が風上でキックオフ。厚別特有の両チームを悩ませる風の影響もあり、様子を見ながら蹴りあう展開が9分程度続く。
守備時の群馬の基本形は4-4-2で、数字上は前回6/26の正田醤油スタジアム群馬での対戦と変わらない。しかし大きく異なる点はその運用で、前回対戦時は2トップが高い位置から札幌のビルドアップ部隊に対してプレッシャーをかけようとするが、4-4のラインを構成するDF及びMFは後方にリトリートしてゴール前に"バスを停める"。札幌は後半に福森のクロスからゴール前に詰めたヘイスのヘッドでなんとかゴールをこじ開けたが、群馬としてはあれだけチーム全体の重心を低い位置に設定しては、籠城作戦でゴールは守れてもボールの回収位置が低くなり、効果的なカウンターを繰り出すことは難しくなってしまう。結果シュート本数は札幌:7本に対し群馬は3本とほぼ専守防衛になってしまった。
それに対し、この日の群馬は前回同様に2トップが札幌に対して高い位置からアグレッシブにプレッシングを仕掛けるが、今回はFW-DF間が非常にコンパクトで、選手間の距離が短い。そのため、前回は札幌の3バック+2ボランチに対してFW2枚で当たるという状況だったが、今回は例えば2トップが3バックに対してプレッシング→札幌がボールをサイドに逃がすとサイドハーフの小林や高橋がすぐに寄せ、札幌のボールホルダーをサイドに追い込んでプレーする空間を奪う、という具合に、4-4-2からの組織的なプレッシングを繰り出すことができるチームに2ヶ月半の間に"変貌"していた群馬であった。
群馬のプレッシングのスイッチは、札幌の最終ラインの中央、増川からその隣の菊池や福森にボールが渡ったところで起動される。福森や菊池…この試合では増川がほとんど福森を選択することが多かったので、福森に渡ることが多かったが、福森が持つと草津は2トップが中を切りながら一気に寄せ、ビルドアップの時間を奪おうとしてくる。ここでしっかりと中が切られているので、福森からのパスコースは①同一サイドで外→外で堀米に出す、②裏を狙う、に限定される。
こうした組織的にプレッシングを行うスタイルでは、陣形をコンパクトに保ち、選手間の密度を高めて相手選手がプレーする空間を奪うことが重要になる。サイドにボールが展開されればボールサイドに選手を集め、また前後を圧縮するため、最終ラインを高い位置に保つことも必要である。
ラインコントロールのセオリーは「ボールホルダーが後ろを向いている等、前にボールが出てこない時にラインを上げる」ことだが、このとき受け手と出し手の呼吸が完璧でない時…出し手が受け手の動きを見ないであてずっぽうにボールを前に蹴りだした場合でも、裏を取る選手がいればピンチになってしまうこともあり、ラインコントロールを誤ると裏を突かれるリスクと隣り合わせでもある。
札幌の先制点はまさにこのような、草津のラインコントロールの甘い隙を突いた形であった。9分頃のセット攻撃で、宮澤が福森の位置に落ちてから"縦ポン"でゴール前に送りこんだボールは跳ね返され最終ラインの増川へ。増川が再び跳ね返すが、このボールが小さくなったところで群馬は一気にラインを押し上げる。ボールにアプローチしたのは札幌の堀米と群馬の小林で、こぼれ球を拾ったのは上里だが、このとき堀米が競った段階では基本的に群馬のラインの裏にボールが出るシチュエーションはない。しかし上里が拾ったとき、上里はフリーでまたしっかりルックアップした状態から福森に縦パスを送ることができている。要するに堀米が競って、上里にこぼれることが分かった段階で群馬はラインを上げてはいけない。
結果、上里が左サイド高い位置に残っていた福森へ浮き球パスを送ると、福森がまったくケアされていない群馬DFラインの裏を突き、中央の都倉にマイナスのクロスを送ると余裕をもって右足ボレーで合わせることができた。ただ写真で見ると簡単そうに見えるが、増川~堀米~上里とボールが転がるのに要した時間は5秒程度で、また堀米~上里と渡る一瞬で草津のDFラインは対応しなくてはならない。言い換えればハイラインで守るというのは、それだけ高い集中力が要求され難しいということでもある。
群馬としては開始10分、様子見が終わり、さあゲームプラン通りに行くぞ、というところで、ウィークポイントを突かれていきなり先制点を献上してしまった格好だが、それでも群馬はめげずに、またブレずにゲームプラン通りに継続的にハイプレスを仕掛けてくる。
もっとも札幌としても、こうした群馬の前回とは異なるスタイルを見て、開始10分程度でラインの高さ、裏狙いが有効であることに気付いたはず。10分以降、札幌はしばらくのうちは徹底して裏に放り込むことでプレッシングを回避し、前線の3人に当てることでボールを落ち着かせようとする。
しかしながら、群馬としても裏を狙われることはいわば"想定の範囲内"。先制点の場面こそラインコントロールの拙さが出てしまったが、その後はDFラインの裏のケアも徹底されていく。裏に出されれば走りこむ札幌のアタッカーを超える人数とスピードでプレスバックを行い、札幌のボールホルダーを複数人で囲い込む。
そして点を取らなくてはいけなくなったことでむしろ高い位置でボールを奪ってカウンターを繰り出す意識は高まり、その結果が失点から9分後、19分のカウンターからの瀬川の同点ゴールを産んだともいえる。
試合前インタビューで群馬の服部監督の「札幌を研究しているし、弱点はわかっている」という旨のコメントが紹介されていたが、群馬の試合運びを見ていて、狙っていたのは主に以下の点だと考えられる。
1)守備:両ストッパーに起点を作らせず、ハイラインを維持しスペースを奪う
2)攻撃:札幌の攻→守トランジション時のサイドのスペースを突く速攻
群馬のプレッシング開始のスイッチとして、2トップが福森や菊池に対して強く寄せてきたのは先述の通りだが、おそらく群馬にとっては札幌の前節のリーグ戦…8/25の熊本戦@札幌ドームはスカウティングを行う上で非常に良いサンプルになったと思われる。熊本は献身的な2トップの働きにより、札幌の3バックがボールを保持する時間とスペースを奪うことに成功したが、札幌のビルドアップは特定の選手…足元の技術に優れる菊池と、高精度フィードを持つ福森の個人能力に拠るところが大きい。そのためこの2選手が封じられると、ボールを前に運ぶ機能が著しく低下する傾向にある。
福森や菊池からの展開を封じられた熊本戦で突破口となったのは、福森からの"飛び道具"…対角に張るマセードへのサイドチェンジであった。熊本はゾーンで守るので、ボールサイドへの密度が高くなる半面、逆サイドは空いている。この点はこの日厚別で対戦した群馬も同様だが、この日は福森からのサイドチェンジがほとんど繰り出されなかった。それは群馬の2トップが中央~反対サイドに蹴らせないように非常に上手く守っていたこともあるし、また厚別の風…前半は札幌にとって向かい風で、ロングフィードのコントロールが難しいということもあったと思われる。
札幌の攻撃を狭いサイドに限定させ、狭いゾーンでのプレーを強いたうえでボールを回収すると、両チームの攻守の関係が逆転する(トランジション)。この時、下の図の上半分が札幌の攻撃時のおおまかな選手配置だが、札幌はサイド攻撃を担うウイングバックが高い位置をとる。ここでボールを奪われると、ウイングバックの背後は大きく開いており、群馬のカウンターはこのスペースを素早く突いてくる。
群馬の4-4-2のメリットとして、守備時の陣形からポジションを崩さず、素早くサイド攻撃に移行できる点がある。下の図で示した通り、札幌のサイドの守備を担う両ウイングバックが戻る前に再度ハーフがスピードを生かして走りこめば、札幌は残っていた3バックのストッパーが対応せざるを得ないが、19分の瀬川の同点ゴールは群馬の左サイドからの攻撃だった。群馬の左サイドに対して応対したのは札幌の右ストッパーの菊池だが、恐らく菊池と福森のどちらが与し易いかという点も考えていたと思われる。また、左サイドバックの高瀬の攻撃参加が群馬の攻撃のストロングポイントであり、攻撃参加できるタイミングでは必ずサイドを駆け上がってくる。高瀬の存在も左偏重の攻撃の要因となっていたと考えられる。
この日の札幌のスターティングメンバーには、左利きの選手が5人(福森、上里、堀米、ジュリーニョ、都倉)が名を連ねたが、このうち組み立て段階で重要な役割を持つ選手は福森と上里。福森はピッチの左後方、上里は中央のポジションを取ることが多いが、両選手の持つ重要なミッションは、中~長距離のパスでサイドを変え、より手薄なサイドを突くことで攻撃を加速させることにある。特に福森or上里から右のマセードへの展開とドリブル突破による仕掛けは、札幌の崩しの主要なパターンの一つとなりつつある。
また基本的に高い位置にいるので、組み立てにはあまり関与しないが、崩しの局面では、ドリブル突破力とロングレンジのキックを持つジュリーニョの出来もゲームの行方を左右する。
上記の事実は逆に言えば、福森や上里が封じられると、札幌はピッチの横幅を広く使ったワイドな展開ができなくなることを意味している。そして群馬は密度(インテンシティ)の高い4-4-2ゾーンディフェンスを展開することで、これらのキーマンを試合から消すことに成功している。
サイドチェンジができないと、札幌の攻撃は展開は同一サイドで狭い袋小路に押し込められ、また群馬のディフェンスが全体を押し寄せてくると、ドリブルで強引に突破するといった強烈な"個"を発揮しない限り打開が難しくなる。
更には24分、マセードが足を痛めて石井と負傷交代。サイドチェンジが繰り出しにくいだけでなく、(石井には失礼だが)受け手もグレードダウンしてしまう。
前半の札幌で中央の上里経由のサイドチェンジが成功したのは1回だけ、26:32~の局面で、菊地のビルドアップから上里がセンターサークル付近で受け、左の堀米にパスを通している。ただ上里のパスは決して悪くなかったが、札幌右サイドに寄せていた群馬ディフェンスはこのパスが通ると全速力で札幌の左サイド…堀米に向かって横スライドする。
結果堀米がトラップしルックアップした際には、群馬の右SH小林と右SB船津が寄せており、仕掛ける余地はなくなっている。
守備時の群馬の基本形は4-4-2で、数字上は前回6/26の正田醤油スタジアム群馬での対戦と変わらない。しかし大きく異なる点はその運用で、前回対戦時は2トップが高い位置から札幌のビルドアップ部隊に対してプレッシャーをかけようとするが、4-4のラインを構成するDF及びMFは後方にリトリートしてゴール前に"バスを停める"。札幌は後半に福森のクロスからゴール前に詰めたヘイスのヘッドでなんとかゴールをこじ開けたが、群馬としてはあれだけチーム全体の重心を低い位置に設定しては、籠城作戦でゴールは守れてもボールの回収位置が低くなり、効果的なカウンターを繰り出すことは難しくなってしまう。結果シュート本数は札幌:7本に対し群馬は3本とほぼ専守防衛になってしまった。
それに対し、この日の群馬は前回同様に2トップが札幌に対して高い位置からアグレッシブにプレッシングを仕掛けるが、今回はFW-DF間が非常にコンパクトで、選手間の距離が短い。そのため、前回は札幌の3バック+2ボランチに対してFW2枚で当たるという状況だったが、今回は例えば2トップが3バックに対してプレッシング→札幌がボールをサイドに逃がすとサイドハーフの小林や高橋がすぐに寄せ、札幌のボールホルダーをサイドに追い込んでプレーする空間を奪う、という具合に、4-4-2からの組織的なプレッシングを繰り出すことができるチームに2ヶ月半の間に"変貌"していた群馬であった。
群馬のプレッシングのスイッチは、札幌の最終ラインの中央、増川からその隣の菊池や福森にボールが渡ったところで起動される。福森や菊池…この試合では増川がほとんど福森を選択することが多かったので、福森に渡ることが多かったが、福森が持つと草津は2トップが中を切りながら一気に寄せ、ビルドアップの時間を奪おうとしてくる。ここでしっかりと中が切られているので、福森からのパスコースは①同一サイドで外→外で堀米に出す、②裏を狙う、に限定される。
増川が持つと中央を切ってサイドに誘導する |
福森に出たところで中を切りながらサイドに追い込む |
1.2 排除しきれなかった後方のリスク
こうした組織的にプレッシングを行うスタイルでは、陣形をコンパクトに保ち、選手間の密度を高めて相手選手がプレーする空間を奪うことが重要になる。サイドにボールが展開されればボールサイドに選手を集め、また前後を圧縮するため、最終ラインを高い位置に保つことも必要である。
ラインコントロールのセオリーは「ボールホルダーが後ろを向いている等、前にボールが出てこない時にラインを上げる」ことだが、このとき受け手と出し手の呼吸が完璧でない時…出し手が受け手の動きを見ないであてずっぽうにボールを前に蹴りだした場合でも、裏を取る選手がいればピンチになってしまうこともあり、ラインコントロールを誤ると裏を突かれるリスクと隣り合わせでもある。
札幌の先制点はまさにこのような、草津のラインコントロールの甘い隙を突いた形であった。9分頃のセット攻撃で、宮澤が福森の位置に落ちてから"縦ポン"でゴール前に送りこんだボールは跳ね返され最終ラインの増川へ。増川が再び跳ね返すが、このボールが小さくなったところで群馬は一気にラインを押し上げる。ボールにアプローチしたのは札幌の堀米と群馬の小林で、こぼれ球を拾ったのは上里だが、このとき堀米が競った段階では基本的に群馬のラインの裏にボールが出るシチュエーションはない。しかし上里が拾ったとき、上里はフリーでまたしっかりルックアップした状態から福森に縦パスを送ることができている。要するに堀米が競って、上里にこぼれることが分かった段階で群馬はラインを上げてはいけない。
堀米が競った局面 ここまではラインを上げられる状況 |
上里にこぼれたところ 裏に出される危険性があるのでDFライン背後のケアに切り替えなくてはならないが 群馬の選手はまだ→方向に動く(ラインが上がる) |
結果、上里が左サイド高い位置に残っていた福森へ浮き球パスを送ると、福森がまったくケアされていない群馬DFラインの裏を突き、中央の都倉にマイナスのクロスを送ると余裕をもって右足ボレーで合わせることができた。ただ写真で見ると簡単そうに見えるが、増川~堀米~上里とボールが転がるのに要した時間は5秒程度で、また堀米~上里と渡る一瞬で草津のDFラインは対応しなくてはならない。言い換えればハイラインで守るというのは、それだけ高い集中力が要求され難しいということでもある。
福森が裏を突いたところ 円はパスが出た瞬間の福森と草津DFの推定ポジション |
1.3 挫けずブレなかった群馬
群馬としては開始10分、様子見が終わり、さあゲームプラン通りに行くぞ、というところで、ウィークポイントを突かれていきなり先制点を献上してしまった格好だが、それでも群馬はめげずに、またブレずにゲームプラン通りに継続的にハイプレスを仕掛けてくる。
もっとも札幌としても、こうした群馬の前回とは異なるスタイルを見て、開始10分程度でラインの高さ、裏狙いが有効であることに気付いたはず。10分以降、札幌はしばらくのうちは徹底して裏に放り込むことでプレッシングを回避し、前線の3人に当てることでボールを落ち着かせようとする。
高いラインの裏を狙う |
しかしながら、群馬としても裏を狙われることはいわば"想定の範囲内"。先制点の場面こそラインコントロールの拙さが出てしまったが、その後はDFラインの裏のケアも徹底されていく。裏に出されれば走りこむ札幌のアタッカーを超える人数とスピードでプレスバックを行い、札幌のボールホルダーを複数人で囲い込む。
群馬DFが跳ね返したところを内村が拾い、堀米に渡すが 既に群馬のプレスバックで囲まれている |
堀米が中央の上里に逃がすが 群馬の選手間が近く高密度なエリアなので囲まれる |
そして点を取らなくてはいけなくなったことでむしろ高い位置でボールを奪ってカウンターを繰り出す意識は高まり、その結果が失点から9分後、19分のカウンターからの瀬川の同点ゴールを産んだともいえる。
1.4 攻守における群馬の狙い
試合前インタビューで群馬の服部監督の「札幌を研究しているし、弱点はわかっている」という旨のコメントが紹介されていたが、群馬の試合運びを見ていて、狙っていたのは主に以下の点だと考えられる。
1)守備:両ストッパーに起点を作らせず、ハイラインを維持しスペースを奪う
2)攻撃:札幌の攻→守トランジション時のサイドのスペースを突く速攻
1)両ストッパーに起点を作らせず、ハイラインを維持
群馬のプレッシング開始のスイッチとして、2トップが福森や菊池に対して強く寄せてきたのは先述の通りだが、おそらく群馬にとっては札幌の前節のリーグ戦…8/25の熊本戦@札幌ドームはスカウティングを行う上で非常に良いサンプルになったと思われる。熊本は献身的な2トップの働きにより、札幌の3バックがボールを保持する時間とスペースを奪うことに成功したが、札幌のビルドアップは特定の選手…足元の技術に優れる菊池と、高精度フィードを持つ福森の個人能力に拠るところが大きい。そのためこの2選手が封じられると、ボールを前に運ぶ機能が著しく低下する傾向にある。
福森や菊池からの展開を封じられた熊本戦で突破口となったのは、福森からの"飛び道具"…対角に張るマセードへのサイドチェンジであった。熊本はゾーンで守るので、ボールサイドへの密度が高くなる半面、逆サイドは空いている。この点はこの日厚別で対戦した群馬も同様だが、この日は福森からのサイドチェンジがほとんど繰り出されなかった。それは群馬の2トップが中央~反対サイドに蹴らせないように非常に上手く守っていたこともあるし、また厚別の風…前半は札幌にとって向かい風で、ロングフィードのコントロールが難しいということもあったと思われる。
サイドで福森に渡るとFWが中央を切りながら寄せてくる 福森には本来①~④の選択肢があるが③と④は切られており ①狭い堀米への外→外コースか、②裏に縦パス1発しかない |
2)札幌の攻→守トランジション時のサイドのスペース
札幌の攻撃を狭いサイドに限定させ、狭いゾーンでのプレーを強いたうえでボールを回収すると、両チームの攻守の関係が逆転する(トランジション)。この時、下の図の上半分が札幌の攻撃時のおおまかな選手配置だが、札幌はサイド攻撃を担うウイングバックが高い位置をとる。ここでボールを奪われると、ウイングバックの背後は大きく開いており、群馬のカウンターはこのスペースを素早く突いてくる。
群馬の4-4-2のメリットとして、守備時の陣形からポジションを崩さず、素早くサイド攻撃に移行できる点がある。下の図で示した通り、札幌のサイドの守備を担う両ウイングバックが戻る前に再度ハーフがスピードを生かして走りこめば、札幌は残っていた3バックのストッパーが対応せざるを得ないが、19分の瀬川の同点ゴールは群馬の左サイドからの攻撃だった。群馬の左サイドに対して応対したのは札幌の右ストッパーの菊池だが、恐らく菊池と福森のどちらが与し易いかという点も考えていたと思われる。また、左サイドバックの高瀬の攻撃参加が群馬の攻撃のストロングポイントであり、攻撃参加できるタイミングでは必ずサイドを駆け上がってくる。高瀬の存在も左偏重の攻撃の要因となっていたと考えられる。
攻撃時(図の上半分)札幌はウイングバックが高い位置をとる この状態で奪われるとサイドのスペースを突かれやすい |
1.5 レフティ3銃士の沈黙
1)封じられたサイドチェンジ
この日の札幌のスターティングメンバーには、左利きの選手が5人(福森、上里、堀米、ジュリーニョ、都倉)が名を連ねたが、このうち組み立て段階で重要な役割を持つ選手は福森と上里。福森はピッチの左後方、上里は中央のポジションを取ることが多いが、両選手の持つ重要なミッションは、中~長距離のパスでサイドを変え、より手薄なサイドを突くことで攻撃を加速させることにある。特に福森or上里から右のマセードへの展開とドリブル突破による仕掛けは、札幌の崩しの主要なパターンの一つとなりつつある。
また基本的に高い位置にいるので、組み立てにはあまり関与しないが、崩しの局面では、ドリブル突破力とロングレンジのキックを持つジュリーニョの出来もゲームの行方を左右する。
上記の事実は逆に言えば、福森や上里が封じられると、札幌はピッチの横幅を広く使ったワイドな展開ができなくなることを意味している。そして群馬は密度(インテンシティ)の高い4-4-2ゾーンディフェンスを展開することで、これらのキーマンを試合から消すことに成功している。
福森は2トップの守備で潰し、上里はゾーンの網で捕まえる サイドは堀米やジュリーニョに渡ると全体で寄せてスペースを奪う ジュリーニョは狭いゾーンの中を嫌って流れてくる傾向が強い |
サイドチェンジができないと、札幌の攻撃は展開は同一サイドで狭い袋小路に押し込められ、また群馬のディフェンスが全体を押し寄せてくると、ドリブルで強引に突破するといった強烈な"個"を発揮しない限り打開が難しくなる。
更には24分、マセードが足を痛めて石井と負傷交代。サイドチェンジが繰り出しにくいだけでなく、(石井には失礼だが)受け手もグレードダウンしてしまう。
前半の札幌で中央の上里経由のサイドチェンジが成功したのは1回だけ、26:32~の局面で、菊地のビルドアップから上里がセンターサークル付近で受け、左の堀米にパスを通している。ただ上里のパスは決して悪くなかったが、札幌右サイドに寄せていた群馬ディフェンスはこのパスが通ると全速力で札幌の左サイド…堀米に向かって横スライドする。
菊池がサイドに拡がり群馬FWを引き付けて上里へ 上里は十分なスペースを得られる |
サイドチェンジが成功するが、群馬の横スライドが迫る |
結果堀米がトラップしルックアップした際には、群馬の右SH小林と右SB船津が寄せており、仕掛ける余地はなくなっている。
こうしたワイドな展開を何度も続け、群馬の守備を続けて横にスライドさせれば、次第にスライドが甘くなり仕掛ける隙が生じる。しかしサイドチェンジの発射台となる福森や上里が封じられたので、単発の揺さぶりに終わってしまい群馬の守備に隙を作ることができない。
群馬の横スライドが速く堀米は2人にストップされる 結果バックパスを選択 |
手薄な逆サイドを使おうとすると横スライド |
2)仕掛けるスペースがないジュリーニョ
札幌でドリブルの"個"というとジュリーニョがいる。何度か過去の記事で触れているが、ジュリーニョは本質的に中央の選手ではない(狭いゾーンでターンしたり苦手)ので、特にこの試合のようにボールが供給されないと頻繁に左サイドに流れてくる。
しかし、草津がサイドに蓋をしている以上、ただ中央から流れてくるだけでは狭いエリアに自分から突っ込んでいくようなものなの。例えばジュリーニョがサイドに動き、堀米がクロスする動きで中央に走って草津のディフェンスを動かすようなアクションがあれば、守備に隙を作り、いい形でボールを受けることができるが、札幌にはそうしたシステムも存在しないので、ジュリーニョはサイドでも前を向いて仕掛ける状況を作れないでいた。
見ていての疑問としては、上里と宮澤のポジションと役割を逆にすべきだったと考える。宮澤のほうが足元の技術やボールの受け方、体の使い方が優れており、また前線への攻撃参加ができる走力もある。逆に上里はロングキックが優秀だが、狭いエリアで前を向けないので、プレッシャーが緩い最後方に落としたほうが良い。もしくは草津が2トップなので、ボランチを落とさずに3枚でビルドアップを行う。いずれにせよ、宮澤を落とした4バック化はほとんど有効ではなかったように思える。
吉原宏太氏のこの試合に対するコメントは「全体的にはぼやっとした感じに見えた」というものだが、ぼやっとというよりは攻守が短い時間で入れ替わり混沌としていた(カオス化)試合だったという表現のほうが適切なのではないか。そしてこのカオス展開は、選手個々のスキルでは劣るが、若くてエネルギッシュな選手が揃う群馬が意図していたもので、よりスキルがあるが走り合いでは劣る札幌は終始、群馬のペースで試合を運ばれてしまう。
ボールを回収した後の群馬の狙いとしては、ベストな展開は先に指摘した通り、素早くオープンなサイドに展開して、札幌が人数を揃える前にシュートまで持ち込むこと。
では速攻が難しい場合はどうするかというと、この試合で何度か群馬が見せていたやり方は、とにかくどんな形であっても、札幌のサイドの深い位置(ウイングバックの裏)にボールを送り込む。これはサイドを崩そうという意図に加え、札幌の選手にサイドの深い位置まで下がって処理をさせることで札幌を自陣に押し込むという意図があったと考えられる。
そうしてまずボールと全体の重心を札幌ゴール側に一度押し込んだうえで、ボール周辺に選手が密集してボールが落ち着かない、攻守の入れ替わりが激しい(宏太風に言うと「ぼやっとした」)カオス展開に持ち込むことで札幌との戦力差を補うことに成功している。
見ていての疑問としては、上里と宮澤のポジションと役割を逆にすべきだったと考える。宮澤のほうが足元の技術やボールの受け方、体の使い方が優れており、また前線への攻撃参加ができる走力もある。逆に上里はロングキックが優秀だが、狭いエリアで前を向けないので、プレッシャーが緩い最後方に落としたほうが良い。もしくは草津が2トップなので、ボランチを落とさずに3枚でビルドアップを行う。いずれにせよ、宮澤を落とした4バック化はほとんど有効ではなかったように思える。
上里が図のような位置にいれば 群馬は福森と上里両方を見ることが難しくなる ゾーンの内側は宮澤の方が適している |
1.6 準備したうえでカオス展開に誘う群馬と引き込まれた札幌
吉原宏太氏のこの試合に対するコメントは「全体的にはぼやっとした感じに見えた」というものだが、ぼやっとというよりは攻守が短い時間で入れ替わり混沌としていた(カオス化)試合だったという表現のほうが適切なのではないか。そしてこのカオス展開は、選手個々のスキルでは劣るが、若くてエネルギッシュな選手が揃う群馬が意図していたもので、よりスキルがあるが走り合いでは劣る札幌は終始、群馬のペースで試合を運ばれてしまう。
ボールを回収した後の群馬の狙いとしては、ベストな展開は先に指摘した通り、素早くオープンなサイドに展開して、札幌が人数を揃える前にシュートまで持ち込むこと。
では速攻が難しい場合はどうするかというと、この試合で何度か群馬が見せていたやり方は、とにかくどんな形であっても、札幌のサイドの深い位置(ウイングバックの裏)にボールを送り込む。これはサイドを崩そうという意図に加え、札幌の選手にサイドの深い位置まで下がって処理をさせることで札幌を自陣に押し込むという意図があったと考えられる。
そうしてまずボールと全体の重心を札幌ゴール側に一度押し込んだうえで、ボール周辺に選手が密集してボールが落ち着かない、攻守の入れ替わりが激しい(宏太風に言うと「ぼやっとした」)カオス展開に持ち込むことで札幌との戦力差を補うことに成功している。
ゴールキックの競り合いなど、ピッチ中央でボールを奪い合う展開から まず札幌陣内(サイド深い位置)に蹴りだし、試合の重心を動かす |
例えば下の写真からの局面では、札幌の左サイド、堀米が一度前に出て対応した裏のスペースをSHの小林とSBの船津のコンビで突いている。このとき堀米がプレスバックし、仕掛けた船津からボールを奪うが、堀米がボールを奪った位置はかなり低いポジションである。
また注目したいのが、群馬は上の写真31:41では最前線に5人が並び、かなり人数をかけて攻勢に出ているような印象を受けるが、この選手たちは札幌の堀米がボールを回収すると、途端に守備に切り替えてボール周辺に密集する。
サイドに流れてSH小林がキープ SB船津がオーバーラップしてフォローする |
船津のドリブルをプレスバックした堀米が体を入れてストップ |
堀米はボールを奪った後、下がってきたジュリーニョにパスするが、ジュリーニョに対し先ほど守備に切り替えた群馬の選手が素早く囲い込む。結果さすがのジュリーニョもボールキープに失敗し、再び群馬がボールを回収する。
ジュリーニョに渡るがすぐに囲い込まれる |
一連の展開は数秒のうちに攻守が群馬の攻撃→守備→攻撃と切り替わり、落ち着かない混沌とした展開になっている印象を受けるが、群馬ははじめの攻撃の段階で、意図して再度にボールを送り込み、札幌はそれによって陣形を後退させられている。また群馬は攻撃の段階でボール周辺の密度を高めることで、ボールを失った後にすぐに取り返すことができる状態にある。一度の仕掛けで綺麗に崩すことができなくても、ボールを奪い返せば再びカウンターパンチを浴びせるチャンスができる。完成度はさすがに劣るが、ヨーロッパでもこうしたトランジションを突き詰めて、攻守の境目をなくしたかのような試合運びをするチームが徐々に増えている。
背後を狙っていると見せかけて(実際狙ってもいるが) 中盤でのセカンドボール争奪戦に人数を割く |
札幌はこの場面の堀米のように、ボールを回収した後に近くの選手に繋ごうとして再び奪われる局面が前半何度かあった。"カオス"に引き込まれなくなったのは35分頃からで、回収した後には機械的にボールを最前線めがけて蹴りこむことで群馬の包囲網を回避している。
2.後半
2.1 勇敢なアウェイチームの背後
エンドが変わって後半は札幌が風上になる。この日の公式記録では「風:弱風」となっていて、厚別の風が試合展開に影響したということを何度も書くのは憚られるが、後半風上に立った札幌はロングボールで裏を狙う姿勢を何度か見せており、またフィードの"発射台"が増川だったり、GKのク ソンユンだったりで、発射位置が前半よりも後退している。
このときポイントなのは、増川やク ソンユンにボールを下げると群馬は(非常に勇敢に)ラインを押し上げ、背後に広大なスペースが生まれるので、後方から長いキックでこのスペースに蹴り、裏を狙う選手を用意しておけば、一気に形勢をひっくり返すことができる。
巧かったのは下の図で示す52:36頃、最前線に張る内村をおとりとして、中盤から宮澤が裏に飛び出した局面。群馬は前線の都倉、内村、ジュリーニョの動きは注意深く見ているが、その後方から飛び出す選手のケアが難しく、宮澤に裏への侵入を許している。
ソンユンの長いキックに宮澤がタイミングを合わせて裏へ走る |
もう一つ裏狙いからチャンスになった局面が下の写真、57:01で、札幌が最終ラインの菊池にボールを下げるとやはり群馬は押し上げてくる。菊池は前方にダイレクトで時間をかけずに配給すると、群馬のDFは背走しながらの都倉との競り合いを余儀なくされる。ただでさえでかくて屈強な都倉相手に、下がりながら対抗するのは群馬の乾にせよ、パク ゴンにせよほぼ勝ち目がなく、都倉の落としからフリーでジュリーニョがミドルシュート。
群馬DFは下がりながらの対応 都倉の落としからジュリーニョのシュート |
2.2 ぶれない姿勢と落ちない運動量
しかしながら後半もいまいち札幌は波に乗り切れず、群馬は手数をかけない展開から幾度か決定的なシュートチャンスを迎えている。前半の展開でいくつか説明した戦術的な要因に加えて、群馬は札幌がボールを持つと、いかなる位置でも、必ずボールに近い選手が札幌ボールホルダーを自由にさせないプレッシャーを与えつづけるため、札幌はミスを連発する。
下の写真57:49は、福森のクリアミス(赤い曲線)が再び福森に転がってきたところだが、群馬は福森が一度ミスキックした時点で前線4人が「何かが起こる」ことを察知して、ボールの近くに集まってくる。無論ミスした選手の技術の問題が第一だが、とにかくこの姿勢を継続していたことが、札幌の選手のミスを誘発していたといえる。
福森のミスを誘発 |
2.3 左サイドジュリーニョ…「個人で殴れ」?
63分に札幌はヘイスを投入するが、このとき下げられたのは堀米。ジュリーニョがついに本職(と聞く)左サイドにシフトする。群馬の高密度4-4-2に地上戦では殆どボールの収まりどころを作れなかったので、時間を作れるヘイスを中央に置きたい、ただ裏狙いも必要なので内村や都倉も残したいという考えもあったと思われる。
63分~ 堀米→ヘイスに交代 |
ジュリーニョが左サイドにシフトすると、札幌の攻撃は更に左偏重になる。当然群馬もマークが厳しくなるのだが、それでもジュリーニョには1vs1での強烈な突破力がある。札幌としては、ジュリーニョが群馬のDFとサイドで1vs1になる形をつくり、サイド突破から都倉や内村、ヘイスに加えて総力のある石井が右サイドから突っ込んでいくという形を作りたい。
ジュリーニョに求める仕事(狭いスペース下での1vs1を制してチャンスメイク) |
が、しかしジュリーニョ投入後の展開を見ると、ピッチ上の札幌の選手たちにこうした共通理解があったのかは疑問である。下の写真、76:13の局面が象徴的だが、交代後前がかりになった札幌は、各選手がシステマチックに動くというより、勢いに任せて無秩序な動きがみられてしまう。このときは福森が(おそらく「いける」と判断して)前線まで攻撃参加し、セカンドボールを上里が拾ってジュリーニョに展開した際、ジュリーニョのポジションを追い越して左サイド高い位置まで上がっていく。
これでは、ジュリーニョの後方にはサポート役が誰もいなくなるのでジュリーニョは高い位置をとれない。結果低いポジション…まさに福森の定位置からジュリーニョがクロスを放り込むという何とも勿体ないプレーでこの攻撃は終わってしまう。
結局ヘイスをトップ下、ジュリーニョをサイドという采配は、それまで都倉、内村、ジュリーニョで「個人で殴れ」というコンセプトが、人を増やして殴り方を少し変えてみました、という程度の意図しか感じられないもので、結果的にはこの後の78分にジュリーニョの突破からのアシストで札幌が決勝点を奪うが、これも非常に偶発的で再現性のある展開だったとは言い難い。
福森がジュリーニョを追い越してしまう |
結局ヘイスをトップ下、ジュリーニョをサイドという采配は、それまで都倉、内村、ジュリーニョで「個人で殴れ」というコンセプトが、人を増やして殴り方を少し変えてみました、という程度の意図しか感じられないもので、結果的にはこの後の78分にジュリーニョの突破からのアシストで札幌が決勝点を奪うが、これも非常に偶発的で再現性のある展開だったとは言い難い。
攻め残ってウイング化する福森とDF化するジュリーニョ |
決勝点の場面は、ドリブルでボールを運ぶ役割を本来担うべき福森ではなく増川が行い、増川の中央へのドリブルによって群馬の中盤が、またゴール前で張るヘイスと内村のポジショニングによって群馬のDFがそれぞれ中央に引き寄せられている。この2つの働きによってサイドのジュリーニョがオープンになり、有利な状況での仕掛けからゴールが生まれたといえる。
北海道コンサドーレ札幌 3-1 ザスパクサツ群馬
10' 都倉 賢
19' 瀬川 祐輔
78' 石井 謙伍
82' 都倉 賢
マッチデータ
天皇杯の2試合はあまりよく見ていないが、決して褒められる内容ではなかったということで、恐らく深井以外は経験のある選手を中心にベストメンバーに戻して、悪い流れをしっかり断ち切りたかったという意図が感じられるスタメン起用だったが、シュート本数15-19という数字が示すように、序盤から出足の鋭い群馬に地上戦で圧倒された。ク ソンユンの幾度のセーブがなければ、逆のスコアもありうる展開だった。
群馬については、松田浩氏は「4-4-2ゾーンディフェンスなんて3週間で落とし込める」と語っていたが、実際にこれだけ短期間で、シーズン途中に同じ監督の下でしっかりと戦術が仕込まれた例はJリーグでもあまり見ないように思える。またセットされた状態でのディフェンスに加え、トランジションが非常に整備されていたことが札幌が苦戦した大きな要因であった。ただ次節以降に対戦する長崎や町田も基本的にゾーンで守ってくるチームなので、おそらく同様の対策をしてくると思われる。いつまでも「相手が良かった」では済まされない。
以前から何度かこのブログに書いていたが、ジュリーニョは中央の選手ではないと思うし、本職が左サイドということでこの試合の途中からの起用法は特段驚きはなく、四方田監督の打った手はマジックではない。ただ、適切なタイミングで適切な策を打ったということ、また(この試合に限らず)与えられた戦力を腐らせずに最大限活用しているという点は監督として優れている部分だと思う。そして左ジュリーニョ、中央ヘイスに小野という形(おそらくフロントが当初描いていた布陣)は正直なところ、スタートから使うことは確実に無理だが、確かにロマンはあるし、なんとか機能する形を見つけることができればいろいろな意味で面白くなるだろう。
後方でサポート(カバーリング/ボールを届ける)する選手と 中央で勝負する選手がいて初めてジュリーニョのサイドアタックの舞台が整う |
北海道コンサドーレ札幌 3-1 ザスパクサツ群馬
10' 都倉 賢
19' 瀬川 祐輔
78' 石井 謙伍
82' 都倉 賢
マッチデータ
3.雑感
天皇杯の2試合はあまりよく見ていないが、決して褒められる内容ではなかったということで、恐らく深井以外は経験のある選手を中心にベストメンバーに戻して、悪い流れをしっかり断ち切りたかったという意図が感じられるスタメン起用だったが、シュート本数15-19という数字が示すように、序盤から出足の鋭い群馬に地上戦で圧倒された。ク ソンユンの幾度のセーブがなければ、逆のスコアもありうる展開だった。
群馬については、松田浩氏は「4-4-2ゾーンディフェンスなんて3週間で落とし込める」と語っていたが、実際にこれだけ短期間で、シーズン途中に同じ監督の下でしっかりと戦術が仕込まれた例はJリーグでもあまり見ないように思える。またセットされた状態でのディフェンスに加え、トランジションが非常に整備されていたことが札幌が苦戦した大きな要因であった。ただ次節以降に対戦する長崎や町田も基本的にゾーンで守ってくるチームなので、おそらく同様の対策をしてくると思われる。いつまでも「相手が良かった」では済まされない。
以前から何度かこのブログに書いていたが、ジュリーニョは中央の選手ではないと思うし、本職が左サイドということでこの試合の途中からの起用法は特段驚きはなく、四方田監督の打った手はマジックではない。ただ、適切なタイミングで適切な策を打ったということ、また(この試合に限らず)与えられた戦力を腐らせずに最大限活用しているという点は監督として優れている部分だと思う。そして左ジュリーニョ、中央ヘイスに小野という形(おそらくフロントが当初描いていた布陣)は正直なところ、スタートから使うことは確実に無理だが、確かにロマンはあるし、なんとか機能する形を見つけることができればいろいろな意味で面白くなるだろう。
|・ω・`) コソーリ読んだ。20分間でいい。ロマンが観たいんだよ俺は( ・ω・)つ≡つつ
返信削除スピードのある攻撃観たいけど無理だよね。速い人いないもんね。残念だわ。
ヘイス来年も居てくれー。そんな感じwww