1.スターティングメンバー
- 17節時点で2位につけていた大宮。その17節から25節までの9試合は1勝5分け3敗とブレーキがかかります(17節よりも先に18節を消化)。直近の26-27節は愛媛と熊本に連勝を飾り、試合前時点で首位・水戸と勝ち点差5の4位につけ依然として自動昇格を狙える位置をキープ。
- 夏のマーケットではその昇格争いのライバル水戸から津久井を、広島から期限付き移籍でDFイヨハを獲得し、浦上をコンサに放出。ただこの新戦力がまだフィットしているとは言い難く夏場にかけて試行錯誤しているようです。
- 23節(7/12、vs甲府)から4バックのシステムを採用…ということですが、みた感じは別に3バックだとされていた以前のものとシステム的に明確な違いがあるかというと微妙で、以前もbuild-upの際は1-4-4-2気味だったり敵陣でのプレッシングはマンツーマン気味だったりしたので、どちらかというと選手起用と振る舞いに注目した方が良さそうです。
- キャプテンのガブリエウは24節以降欠場が続いており故障だと思われます。カプリーニも24節以降ベンチスタートとなっていますが、こちらは後半のジョーカーで、前半はオリオラサンデーのような選手を起用してボールを捨て(日本でよく用いられる表現に準ずると「シンプルにプレーする」か?)、後半に選手交代で試合を決めるというやり方にしているようです。おそらく夏場の気候なども考慮しているのだと推察します。
- コンサは前節甲府に勝利したメンバーからスタメンは変更なし。青木とバカヨコがサブ入りしキングと佐藤が外れています。
2.試合展開
RBブランドとインストラクションの存在:
- 直近の2試合を確認印象とこの日の大宮の印象にはあまり相違がなく、4月下旬に大宮公園で対戦した際から今はプレーモデルを意図的に変えているフェーズだと思われます。
- 4月の対戦時はシステム1-4-4-2のコンサが、田中克幸・バカヨコというあまり前で運動量がなさそうなユニットを2トップに据えながらも大宮のDFに圧力をかけようとしますが、大宮はGK笠原、CB市原・ガブリエウの3人でバカヨコの1stディフェンスを空転させてから、前線のカプリーニに縦パスを入れてコンサ陣内に侵入…という感じで、要は自陣でボール保持する局面で相手の守備を剥がして優位な状況を作ってから敵陣に入っていく、という狙いを持っていました。
2025年4月25日(金) 明治安田J2リーグ第11節 RB大宮アルディージャvs北海道コンサドーレ札幌 〜好き嫌い以前の要因〜https://t.co/VFk5tclqlk
— AB (@british_yakan) April 25, 2025
- 一方で直近の試合およびこの試合での大宮は、たとえ相手が下位の愛媛だろうと、ホームでの熊本戦だろうと、マイボールを早めに敵陣に蹴り出して、それに大宮の選手がアクセスできないことを念頭に置いた上で、そのクリアやセカンドボール争奪といった局面に関与する相手選手を素早く複数人で囲い込んでプレッシャーをかけ、ミスを誘ったりボール回収から速い攻撃に繋げたり…といった展開に持ち込もうとしていたと思います。
- 最近、大宮の社長である原博実氏がいろいろなメディアに出演し、レッドブル傘下となったことでの変化…主にレッドブルのガバナンスやクラブ運営・強化等のフレームワークに適合させることを要求されつつ、レッドブルから提供される各種インフラを使わせてもらっているという旨の話をしていますが、大宮のピッチ上での戦い方の変化の要因としては明らかに親会社の影響なのでしょう。
- 原氏の話では、レッドブル傘下の各クラブのアナリストやグループを統括するアナリストが毎試合、大宮の試合を確認しているとのことでしたが、普通に考えればこうしたディスカッションの際に議論のベースとなる共通認識がないといけませんので、そこで大宮独自のスタイルとか長澤徹監督の思考するスタイルをベースにやっていくというよりは、レッドブルグループとして共通のプレーモデルをベースに議論しつつチーム作りをしていくのだろうと考えるのが自然かなと思います。
- こうしたことを念頭において試合展開をみていきます。
エナジーフットボールvsレガシーフットボール:
- 大宮がエンド変更を選択してからキックオフ。
- ここから開始20分ほどは、ほとんどの局面はアウェイ側、つまりコンサ陣内での攻防が繰り広げられ、大宮が次々と敵陣侵入するのに対し、コンサは終始自陣で耐えることを強いられます。
- コンサがボールを持っている時に、大宮は、
- 2トップの豊川とオリオラサンデーが中央の選手を見て、ワイドの泉と津久井も高い位置を取ってワイドの選手を見る。
- 2トップがサイドに誘導したらそのまま2トップの二度追いが始まり、ボールホルダーに対して2人で追い込むようにして圧力をかけ、その圧力に負けてなるべく不安定な状態でボールを手放させ、DFラインを押し上げつつそのボールを回収。
- 回収したら、ボール保持していた札幌がボール保持→非保持の陣形を整える前に前線の選手に展開し、整う前にシュートに持ち込む
- といった狙いでプレーしていたと思います。
- 対するコンサのボール保持ですが、
- WBは最初から高めの位置どりで大宮のSBを牽制、build-upの際に受け手になるというよりは、前で仕掛けられる姿勢をとり続ける。
- 基本的には3バックの1-3-2-5のようなポジショニングでスタートするが、左右のDFが大きく開いて浦上の隣に高嶺が落ちてくる余地を常に用意(常にこの位置関係は浦上が右、高嶺が左になるよう留意)。
- 中央には高嶺と荒野のみ、高嶺が下がることも多いので中央は人は少ない。
- といったスタンスでスタート。ただ、
- 西野は状況を見てフリーマン的に前に出ていく姿勢も見せるが、大宮の圧力を見て後方に左DFとして留まる選択を増やす。
- GK高木はパントキックも多用し無理に繋ごうとしない。
- このような点はおそらく大宮の出方を見て選手がピッチ上で調整していたように思いえました。
- 雑感としては、柴田監督となって3試合目で前々監督である「ミ」から始まる3文字の名前の方っぽい要素…前と後ろに人が分断しつつワイドに開いてプレーする がより強まった感じはします。
- おそらく高嶺だったり、西野や髙尾だったりのポジショニングや振る舞いは、かつてのレガシーそのままのイメージというよりは、柴田監督になったことでより微調整されています。
- 例えばサイドのDFである髙尾と西野のところは、かつては最初にタッチライン付近に開いてボールの受け手(中央からワイドにボールを逃す)としての役割が必要なくなったらあとはフリーといった感じで、このチームはどんどん前に出ていく振る舞いをするサイドのDFを過去に複数輩出しましたが、この試合での髙尾と西野はそうした先人たちよりももう少しデリケートな仕事を意識していた印象で、サイドで受けた後にそこから前に運んでWBやシャドーを使おうとしていたと思います。
中央に人がいなくてもフットボールを成立させるための要素:
- 前々監督である「ミ」から始まる3文字の名前の方が監督だった際のコンサについては、①左DFである福森と、②前線で体を張れるFWまたはシャドーの選手の重要性に必ず言及しなくてはなりません。
- 福森はピッチのどこにいても、ピッチのどこへでもボールを到達できるような技術とパワーの持ち主で、その受け手または潰れ役となるフィジカルと技術のある選手(ジェイ、チャナティップ、アンデルソンロペス、駒井、武蔵…)が、福森だけでなく他の選手からも放り込まれるボールを落下点でサポートすることで、コンサはビルドアップというか、後方(DF)と前線(FW、5トップ)の間に特にアクセスがなくても、とりあえず放り込んでいるだけでもなんとなく最低限は試合が成立する状況を作っていたと思います。
- 今のコンサにはそうした名前を挙げたような選手たちはいませんので、この試合のように後方に5人(GK高木、髙尾、浦上、西野+高嶺)、前線に5人(白井、スパチョーク、マリオセルジオ、長谷川、パクミンギュ)、その間に荒野1人だけ、といったシステムでプレーすると、後方から前方に向かってボールを運ぶ際に経由できる選手が荒野1人しかいない。
- その荒野は↑で図示されたように大宮のアルトゥールシルバや小島が監視しているので、簡単にボールに触れない状況だとすると、コンサは後ろの選手がボールを持った時に前方にパスを出せそうな味方がいない。
- となると、前線の選手のうち、シャドーやWBの選手が荒野に次ぐ”中央の選手”として顔を出して、前線と後方へのアクセスを確保することが考えられますが、おそらくそこを明確にチームとして決めていなかったり、特にワイドの白井とパクミンギュは前で待つことになっていたと思われるので、コンサは前半のほとんどの時間、このアクセスを確保できない状態でした。
- ですので大宮としては、コンサのDFから出てくるパスの受け手は限定され(荒野)ますし、そこを避ける場合も長めの難しいパスになりますので、パスの受け手を潰してボールを奪って素早く逆襲に転じるといった狙いを遂行しやすい状況だったと思います(11:10頃の局面が、まさに荒野しか受け手がいない状態になっているのでよろしければ見てください)。
エナジーフットボールのキーマンと不安要素:
- 改めてですがコンサがボールを持っている時に、コンサのDFの選手は左右に広がったポジションを取り、また前線に5人の選手が出ていく…といった陣形に変化します。
- こうしたチームと対戦する際は、対戦相手(大宮)としては、大宮がボールを持っている展開よりも、コンサがボールを持っている展開からスタートして、そこでボールを奪って、コンサの選手が広がっている状態…要するにコンサのゴール前に人が集まっておらず陣形が整ってもいない状況でアタックする方が攻略しやすいとも言えます。
- 一方でコンサがボールを持っていなくて陣形が広がっていない、つまり大宮がボールを持ってコンサが陣形をセットし崩れていない時に大宮はどうするか。この解決策と位置付けられていそうなのが、ここ数試合で先発FWへと昇格した22歳のオリオラサンデーです。
- 大宮がボールを持った時に、前線の選手の準備が整ったら、↓のようにスペース(主に右寄り)に蹴って、それにサンデーがアプローチする。
- ↓のアニメーションでは、コンサの選手がサンデーに競り勝ってボール回収してバックパスからやり直そうとした時のイメージですが、このようにバックパスからやり直すプレーにおいて、コンサのようにボール保持と非保持で陣形を大きく変えるチームは必ずそのポジションチェンジに時間を要するので、GK高木がバックパスを受けた時にすぐに味方に展開することが難しくなります。
— AB (@british_yakan) August 31, 2025
- こういった、ボールを保持と非保持の境目となる(どちらでもなく中途半端である)局面はチームとして不安定になり、大宮はそのコンサが不安定になりがちな局面を意図的に作り出そうとしていたとも言えます。
- サンデーがボールをキープするなどして、コンサがバックパスをするようなシチュエーションが生じなかったとしても、その際もコンサの陣形が整っていない状況(DFの西野ややパクミンギュが中央にいない、MFが戻っていない、GKのポジショニングが不安定 など)は生じるので、その間に大宮の選手がより早く直線的にコンサゴールに向かい、コンサDFに不安定かつスペースがあるうちにシュートに持ち込むということができる。
- このような狙いは明確だった大宮ですが、不安要素としてはまずサンデーのようなプレーができる能力のある選手がおそらく今の大宮には何人もいない。
- ボールを持った時の技術というよりも、まず全体的に動きのスピードがある前提で、かつスペースに走る、相手のボールを持っている人に走る、外されてもまた走る、これを試合中に繰り返し行える運動能力が最も備わっているのがサンデーだから彼が使われているのでしょう。
- 一方でベンチを見ると、ベテランの域に入っている杉本、ラッソことファビアンゴンザレスといった、1回なら速く走れそうですけどそれを何回も繰り返し連続して行うことはちょっと難しそうな選手も入っている。
- 結果的にこの試合も、サンデーと組む2トップに豊川、後半開始から津久井に変わって入ったのが藤井と、スカッドの中でもより機動性やそれこそ”エナジー”がありそうな選手からピッチに入っていますが、コンサがDFや中盤センターで特定の選手と起用しないといけないようなスカッドの制約で苦労したのと同じく、大宮もプレーモデルが決まった(変わった)のに、選手の入れ替えを容易にできないことで、プレーモデルとスカッドの不一致の問題に直面していると感じます。
開始20分を凌いだことでコンサのターンに:
- 2点目は、サンデー以外も含めてですが前線の選手がこうしたアクションを求められることでフィジカル的な負荷が大きく、最後にシュートを枠に飛ばすためのエナジー確保が難しい点。
- 別な見方をすれば、フィジカルと得点能力やゴール前のクオリティを両立する選手にお金をかけられないうちはなかなかスコアに結びつかないかもしれないなと感じました。
- 大宮はこの試合の開始20分過ぎまでにペナルティエリア内で5回のシュートチャンスがあり(コンサは同じ時間帯で0)、
- 4分:シルバのがポケットを取ってボックス内に侵入しマイナスの折り返しをサンデーが反転シュート、高木の正面
- 11分:アルトゥールシルバのミドルシュートは高木が横っ飛びでセーブ
- 14分:泉のクロスのクリアが不十分だったところを茂木がハーフボレーも枠外
- 20分:放り込みから右のオーバーラップした茂木の低いクロス、津久井がスルーして豊川がフリーで狙うも枠の上。
- 22分:(これは厳密にはボックスのすぐ外からだが)コンサのビルドアップを小島が引っ掛けて泉→中央のサンデーが(右でフリーの津久井を使わず)反転からシュートも高木の正面
- いずれもプレッシングやセカンドボールの回収から素早くコンサゴールに迫るという狙いはできているのですが、最後のところで枠に飛ばす能力、またコンサのDFを外す能力がやや足りない印象はありました。
- 20分の豊川のシュートはほぼフリーでゴールエリアすぐ外からのビッグチャンス。彼ならGKを外して枠に飛ばす能力は十分あるように思えますが、こうしたミスを見ても、それ以外のプレーでの負荷が大きいことが影響しているのかと考えさせられます。
- 3点目の指摘としては、プレースピードを上げている状態で味方とタイミングを合わせたりコンビネーションを発揮して攻撃することの難易度が高い点。
- 大宮は左サイドの泉が崩しのキーマンで、この選手は前線の選手の中ではプレッシングの強度というよりも個人で相手のDFを外してチャンスを作ることを求められている。サンデーに放り込むプレーがほぼ右サイドなのも、泉と反対サイドから展開を始める(その後サイドチェンジなどして泉が1v1になりやすい)と意識しているのではないかと思います。
- 20分過ぎ頃から(速い攻撃で完結できないなどして)泉にボールが渡りサイドから主にカットインの1v1を仕掛ける局面が何度かありましたが、泉の仕掛けに大宮の選手が上手く合わせる形でポジションを取れるとよりコンサとしては怖かったかもしれません。そうした脅威がなく、とりあえずクロスボールだけ跳ね返していればOKだったのはコンサとしては助かりました。
- そして先ほどから何度か言及している「20分過ぎ(前後)」。サンデーと豊川の1列目が疲れてきた、もしくはペースを落としてきたのがこのくらいの時間帯でした。
- 以降は、開始から後方に4人体制で陣取っていたコンサのビルドアップ役(髙尾、浦上、高嶺、西野+GK高木)が一律に解放され、この4人がハーフウェーライン手前くらいのところまで前進できるようになったことで、コンサはそれまでは異なり前と後ろのアクセスが確保されようやく前線の選手にボールが渡るようになります。
- コンサは18分に白井がスパチョークのフリックから下口の背後を取って右サイドを抜け出して、グラウンダーのクロスから長谷川が角度のないところでシュート。
- これがようやくコンサが初めて大宮のボックス内でプレーした機会でしたが、この時も豊川とサンデーが休んでいてコンサのDFは徐々に高い位置を取れるようになって、それによって髙尾→白井のパスコースという”アクセス”ができたことから始まったプレーでした。
- 大宮は20分以降、一気に休むというよりも、時折ペースを落としつつ何度かコンサのDFにアタックしていくといった振る舞いは継続します。
- ただ開始当初のように、常にサンデーがスイッチを入れて皆で連動し、コンサの選手に2人で対応することが明確だった時と比べ、20分以降は大宮としてはいつスイッチが入るのかやや不明瞭だったということもあってか、頑張ってはいたのだけど、結果としてコンサの受け手の選手のマークにつくのが遅れたり、スペースがある状態で受けることを許容していたとは思います。
- この微妙な変化(受け手にややスペースができる)によって、それまでほとんどボールに関与しなかったコンサのサイドの選手、具体的には右DFの髙尾や左WBのパクミンギュが受けた時にドリブルで剥がすというプレーが発現するようになって、これも前掛かりの大宮(基本的に後ろに枚数を残してセットして守るやり方をしない)が、撤退せざるをえない状況を生み出します。
- 大宮が前に押し込めず、コンサが前に出てくる状況になったことで大宮のDFのストップする能力も測られることとなりますが、例えば30分〜31分の局面では、コンサが自陣後ろでマリオのディフェンスでボール回収からカウンター。
- 大宮が少ないDFで対処することになりますが、左サイドに出てきたスパチョークに対処した茂木は、そこまでドリブルで突破するプレーが得意でもないスパチョークに対しズルズル下がってしまい、クロスボールから白井のヘッドという決定機を招いてしまいます。
事実上45分で決着:
- 40分にコンサのGK高木が低い弾道のフィード。これをマリオがキープして長谷川とのコンビネーションでボックス付近に到達。大宮の若きDF市原が足を出したところで、マリオが軽やかにジャンプして転んでボックスすぐ外でFK(市原はプレーが終わった後も執拗に抗議していましたが、私にもマリオのステップが妙に軽やかに見えました)。
- このFKは壁に防がれましたが、スローインから高嶺が4人を突破するドリブルで今度亜明白なファウルを誘って再び似たような位置からFK。キャプテンが1人だけJ2離れしたクオリティを見せつけ、コンサが先制し前半を終えます。
フリーキックを獲得するまでのドリブルも素晴らしい❤️🔥❤️🔥❤️🔥#高嶺朋樹 #consadole #コンサドーレ https://t.co/ZtwT0tNhpc pic.twitter.com/ODbbaxmbIf
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) August 30, 2025
- 後半頭から大宮は津久井→藤井。ハーフタイム15分間のリカバリーと選手交代でエナジーをどれだけ取り戻せるかが注目でしたが、結論としては前半立ち上がりのような圧力は取り戻せず、後半はコンサからボールを奪うことにかなり苦労します。
- 56分に豊川・サンデー→カプリーニ・ファビアンゴンザレス(ラッソ)。
- カプリーニはここまで先発12試合ながら、6ゴール3アシストでいずれもチームトップ。おそらく速いペースの展開でスターターとして使うよりも、よりスローダウンしてからの方が切り札になりえるとの判断かと思います。一方ラッソはパワーはあるけど、ビハインドで相手DFにプレッシャーをかけることが求められる展開で使うのはややギャンブルに感じました。
- そしてこのギャンブルの結果は期待値を上回るものではありませんでした。展開は予想通り、大宮はラッソに放り込んだりしてきますが、サンデーと異なりDFのいないところを狙うのではなく中央のラッソにそのまま蹴ってくるので、確かに浦上だとサイズはないですが、展開としては大宮のやってくることは読みやすく決定的なものではありませんでした。
- コンサは浦上のコメントで「自分は背後を取られないように守るから中盤の選手はプレスバックしてほしい」みたいなものがありましたが、まさにここからは浦上の粘り強さと高嶺の潰す能力が何度かチームを救います。
- そして前線がラッソとカプリーニになって、特にプレースピードが上がらない(少なくとも二度追いはしてこないし、1stディフェンスに来るのも遅め)様子を見て、コンサは61分に荒野・白井→宮澤・近藤。
- 近藤は予定通りの投入だとして、こちらもプレースピードに懸念のある宮澤ということで、選手交代で大宮がどう変わるかを見て判断したのかと思いますが、結果的には選手交代でもエナジーが戻らず、かつやや大味になっていく大宮相手にコンサの選手がスペースを享受できゆっくりプレーできる状況になったので、そうした展開では宮澤のボールを持つ能力が活きこの交代は当たりだったと思います。
- 以降は70分に大宮が泉→杉本。コンサは長谷川→青木。大宮の中で唯一突破力がありワイドに開いて仕掛けられる選手を下げたことで、コンサゴール前での大宮は更に中央に密集する傾向となりましたが、特に一発必中のクロスボールもなければ十分に守れそうな様子でした。中央に前線の選手が密集して、ワイドはサイドバックが追い越してくる、いかにも”らしい”役割分担でしたが、SBもなかなか負荷が大きそうに思えました。
- 最後はコンサが家泉投入で空中戦を強化して逃げ切り。
雑感
- 書いたように開始20分で大宮に決定機が5回ほどあり、そこでの決定力不足やクオリティ不足に助けられたのは言えるとは思います。そこで失点していれば磐田との対戦(2度とも)のように前半で押し切られる展開だったかもしれません。
- 一方で、コンサの監督の仕事としては、就任から2週間ちょいの期間で
- 一部選手および社長が「こういう方向でいきたい」と(わがまま)言っているのを受け入れる
- 最低限「4局面」を整理する
- 点が入ったら選手起用で試合をコントロール
- これらのミッションをしっかりこなしてくれたので、監督の仕事としてはこの試合に関しては、できることを尽くして現状のこのチームのアウトプット出力を(あくまで現状の)最大限にしたという点では特にケチのつけようがないと感じます。これで100点満点で上に行けるのか?というとなんとも言えないですが、上位につける大宮相手によくやってくれたとは思います。
- いくつか細かい点を言うと、大宮に関しては、本文でも指摘したように”上”から提示されるプレーモデルとスカッドの問題がありそうで、おそらく津久井などこれから加入する選手は運動能力とボールを持った時のクオリティを両立するか、少なくとも一定の運動能力に対する要求水準は高まっていくと思われます。
- ただ既存の選手にいきなり基準を上げても難しいのは、コンサの例でも2020年にいきなり当時の監督が「トータルフットボール」と言い出してプレッシングの開始位置を一気に高くしたのを見ても明らかですし、大宮の場合もかなり大掛かりな取り組みになるのではないでしょうか。
- その辺はRBならコンサとは本気度が全然違うのでしょうけど、それこそ水戸でパワフルな突破を見せていた津久井もフィットが今ひとつなのを見ても容易な話ではなさそうに思えます。
- あとは大宮は縦方向へのプレッシングの意識は非常に強いのですが、コンサのスローインからのリスタートの際などの、横方向に圧縮してサイドチェンジを封じながらボールを回収して早く攻める…という点についてはどう考えているのかな?と感じました。
- この試合そこまでコンサがサイドチェンジを意識していなかった(ある意味で、慎重にプレーしていた)印象ですが、前半の早い時間に少なくとも2度ほどそうした展開からプレスがはまらない時があって、そこはフィジカル面の取り組みに頼らず改善できるかもしれません。
- コンサの方での細かい話としては、マリオセルジオの守備、具体的にはプレスバックで の対応が非常に目を引きました。
- 3分:高木のゴールキックを跳ね返されて大宮の速攻に、ハーフウェーラインからペナルティエリアまで戻ってくる
- 6分:サイドチェンジが引っかかった後に敵陣ボックスから自陣ボックスまで
- 16分:前線から戻ってシルバのミドルシュートをブロック
- 30分:大宮のボール保持に対しコンサがセット守備を開始という場面。大宮の茂木が高い位置を取ってからボックス付近のシルバへの横パスを、マリオがプレスバックで潰す
- ざっと前半見た限りで4度あり、もしかしたら↑は漏れているかもしれません。
- これは監督に言われてそうしていたのかもしれませんが、Jリーグの外国籍選手でよくあるのは、監督に「やってくれ」と言われるけど、「そのポジションにとりあえず居る」みたいな対応。
- この日のマリオを見ていて、明らかに守備が上手いと言える動きや判断でしたし、特に必要な時に必ずスピードを上げて自陣に加勢する判断とプレービジョン、基準の明確さ(自分がその気になった時だけ気分で守備をするような感じでもない)が光ります。
- おそらくは言われてやっている、というより、加入からここまで干され気味だったので彼はシンプルに必死にアピールしている、ということじゃないかと予想します。
- 試合やトレーニングといったピッチ上でしっかりアピールすることは競争の大原則ですので、自分が起用されないことに勝手にフラストレーションを溜めて好ましくない態度を取ったり、心中をなんらかの媒体(SNSなのかラジオなのか知りませんが)でペラペラと喋ったりする選手と比べてもマリオの態度は一流の選手のそれだと感じますし、この試合を見て今まで以上に応援したい選手となりました。
- 自分のエゴではなくて胸のエンブレムのためにプレーしている選手というのは、出身が地元出身か否かとか関係なく、チームが苦しい時のこうした振る舞いに表れるのではないでしょうか。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
那須さん曰く、ビジャやポルディもスタメンから外れると次の週のトレーニングから猛烈にアピールしてくると。チャンスやポジションは与えられるものではなくて掴みにいくものというのが理解できないとプロではやっていけない。
— LVG_bot (@cocu_yang) September 6, 2020
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